デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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さあ、いよいよ皆んな大好き『士織ちゃん』初登場です(笑)





第三話:進撃

 

フラクシナス

 

琴里達は夢界からの連絡により、天央祭の準備をしている来禅高校の控え室の状況を見ていた。

 

「あ、あれ、本当に()()くん何ですか!?」

 

「想像以上に似合いすぎない!?」

 

クルー女性員は驚きつつ、何処か嫉妬じみた様なリアクションをする。

 

「ヤバいな。何かに目覚めそうだ。」

 

「いいですね〜いいですね〜。」

 

「ふむ…彼でひと稼ぎいけそうですね。」

 

クルー男性員からも評価が高かった。その内1人は女装士道を見て金儲け出来るのではないかと怪しい眼光をする自称シャチョさん。

 

「んー、流石は士道くんですね〜。私は生粋のロリコンなので、萌える事はありませんが…あの容姿でボンテージ姿をした士道くんに鞭などで虐められたいという欲求に目覚めそうですね〜。」

 

この男に関しては何ともまぁ…触れない方が良いだろう。

 

そして、女装した士道を見て琴里は───

 

「おにーちゃん…」

 

その目に涙を浮かべていた。それは、精霊攻略するために自らの黒歴史にしてトラウマを自ら行動することに感動していた。

 

「ぐすん。おにーちゃん、琴里見直しちゃった。おにーちゃんは世界一カッコいいおにーちゃんよ!

後、幹本は後でアンタ、おにーちゃんを利用して何をしようと考えているか知らないけど…念の為言っておくけど、辞めておいた方が身の為よ。」

 

後半の発言に幹本は恐怖により「すみませんすみません、冗談で御座います。」と土下座をしていた。

 

そして、最後の1人…解析官の令音はというと───

 

「…ふむ。ここの角度ならば…いや、この角度も捨て難い。

───いい、シンの素敵な写真コレクションが大きく埋まりそうだ。」

 

…と、普段のクールな彼女とは思えないほど、コクコクと頷きながら積極的に女装した士道の写真を沢山撮り始めていた。

 

この姿を『彼女』が見た場合、どんな反応をするだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、士織さんは何処から来たの!?」

 

「うへぇ、背ぇたっけぇ…モデルみたい。」

 

「まじ引くわー! まじ引くわー!」

 

「士織さん、彼氏とかいる? いない? なら、俺とかどお?」

 

「おいおい、お前なんかが相手になるかよ。ところで天央祭一緒にめぐらない?」

 

「え、えぇと…」

 

…と、普段の士道とは天地がひっくり返る様な出来事に、士道は困惑していた。

 

「む? 何かあったのか?」

 

十香がやって来る。十香達にはまだ女装について一言も伝えていない。だから、士道がいないかキョロキョロとしている。そして、次第に士織を見て、ジッと見つめながらコチラへと寄って来る。

 

「むう?」

 

「え、えぇっと…」

 

「…何故、女性服を着てるのだ? シ───」

 

十香が言いかけた所で、士道は十香の口を塞ぐ。

 

「た、頼む。十香、この格好は訳があるんだ。『士織』って呼んで欲しい。」

 

と小声で十香に呟く。

 

「む? うむ。分かった。」

 

十香は必死にお願いする士道の頼みに頷く。十香にとりあえず理解して安堵すると───

 

カシャッ! カシャッカシャッ!

 

無言でカメラを嵐の如くフラッシュさせながら撮りまくる。

 

「…いい。凄くいい。もっと、もっと。」

 

この折紙()は既に勘づいていた。突如現れた美女の正体は『士道』であると…そして、その似合いっぷりに折紙の中で何かが弾け、目覚めた事により自然と体が動いていた。

 

「えぇっと…ちょっと…」

 

「いい…凄くいい…」

 

「こらー! 鳶一折紙! 貴様ぁ、シド…士織が困っているではないか! 今すぐ離れろ!」

 

…と、普段と変わらないじゃれ合いをしていた。因みに、折紙が士織のスカートの下などを撮ったりしているのを見て、鼻血を垂らしながらどうにかして写真を買収できないかと考えていた。

 

まぁ、そんな事(買収)は叶わないだろうが…

 

「はいはい、折紙ちゃん落ち着こうなぁ。」

 

と、夢界がやって来て中和する。そして、控え室にいる者達に告げる。

 

「皆んな聞いてくれ。まずこの場にいない士道の奴は、過労によってぶっ倒れてしまってな。だから急遽人手が足りなくなって困ってた所に『士織』ちゃんがやって来てくれたのさ。話は通してあるから安心してくれ。

後、悪いけど『士織』ちゃん、早速助っ人としてやってもらいたい事があるから着いて来てくれ。十香ちゃんと折紙ちゃんは、亜衣ちゃん達の言う事を聞いて行動してくれ。それじゃ、行動開始!」

 

と、夢界が士道のヘルプに入る。皆は夢界の言う通りに従い、行動し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまん、助かった。」

 

「いや、どうって事はない。言ったろ? サポートしてやるってさ。」

 

2人は美九攻略のために行動をしだす。夢界は表向きで実行委員の仕事をしつつ士道の現場サポートに入り、士道は覚悟を決めて美九攻略に行動を移す。

 

「んじゃ、ここから先が美九ちゃんのいるステージだ。幸いな事に美九ちゃん以外誰もいない。コイツはチャンスだ。行ってこい。」

 

背中を軽く叩いて後押しをして仕事に戻って行った。士道はインカムを取り付けてラタトスクと通信を取る。

 

「聞こえるか、琴里。これから彼女の元へと向かう。」

 

『ぐすっ。ええ、頑張っておにーちゃん!』

 

「…っ!? ちょっと待て! 琴里泣いているのか!? 何があった!?」

 

士道は琴里が泣いていることにすぐ気づいた。士道は女の子が悲しみに暮れている事に非常に敏感である。

 

加えて、家族であり可愛い妹である琴里が泣いている事にシスコンパワーが解放され、徐々に殺気が溢れる。

 

『ちょっ!? ちょっと、士道!? 落ち着きなさい! 私はただ、美九の攻略のためにトラウマである女装で挑む士道の勇姿に感動しただけよ!』

 

「そ、そっか…」

 

『…一応、遅れちゃったけど…偉いわね士道。文句なしで成長したわね。流石、私のカッコいいおにーちゃん。』

 

「『今回だけ』だけどな。」

 

司令官としての賛辞とフラグを設立してしまった士道。フラクシナスの援護をつけて、ディーヴァ攻略に足を運ぶ。

 

「…ふぅ。」

 

カチッ

 

深呼吸をして気持ちを切り替える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…失礼しまーす。」

 

士道は扉を開けて顔を出す。すると───

 

「あらー?」

 

無論、そこにはディーヴァである美九の姿があった。

 

「どなたです───まぁ!!」

 

美九はお目目を輝かせて美九の元へと駆け寄る。

 

「何て可愛くて美しい方なんでしょう! 良いですね良いですねぇ! 日頃の行いが良いからですかねぇ? こんな美少女に出会えるなんて!」

 

「…」

 

一昨日の態度とはえらく違う事に少し戸惑いだす士道。とはいえ、第一印象は最高数値であった。

 

「え、えぇと…ここには───」

 

「えぇ、えぇ! 言わなくて良いですよぉ! 私に会いに来てくださったファンの方ですよねぇ! 今日も沢山の可愛い子達が来てくれたので分かってますぅ! …でも、その中でもアナタはナンバーワン! いえ、今までお会いしてきた中でもナンバーワンですぅ!」

 

「…」

 

美九の一方的さを再認識し、加えてナルシストな一面に、顔には出さないも若干引いていた士道であった。とはいえ、好都合であるためこのまま進めていく。

 

「あ、ありがとうごさいます。」

 

「うふふ。」

 

丁寧な女の口調で礼儀良く返答した士道。それに恍惚する美九であった。

 

どう切り返して行こうか困っていたところにインカムから琴里の指示が入る。

 

『…士道。選択肢が出たわ。『突然ですがすいません、今穿いてるパンツ三万円で売ってくれませんか?』だそうよ。』

 

(はぁ!?)

 

久しぶりに選択肢の無茶振りに士道は頬を赤め、心の中で驚愕する。

 

今の士道は丸メガネをポケットにしまっているため、選択肢の内容が分からないが、絶対に他の選択肢があったろうと怒りを感じた。

 

(絶対、神無月さんだ。あの人が変な発言したからそれに便乗した男性クルー達が…アイツッ!)

 

日頃の行いや夏休みに琴里の誕生日の出来事にて士道の中で神無月への印象・扱いが悪くなった。平たく言えば、琴里と似たような印象へとなった。その内、制裁を加えるようになるだろう。

 

因みに、士道くんのこの読みは当たっていた。

 

そして数分、黙り込んでいた士道に更に恍惚させる美九が寄って来ており、士道の左耳元に「ふぅ」と息を吹きかける。

 

「ひゃっ!?」

 

「あらー。可愛らしい声出すますねぇ。

ハァ…ハァ…」

 

「そ、それは、急に耳元に息を吹きかけるから…」

 

顔を真っ赤にしだす士道。因みにここで明らかになる士道の弱点。士道自身から見て左側は妙に弱く、腰に耳に肩など体の部位が敏感である。

 

美九の言動に引き気味になっていると、突如として壁に建ててあった木材が倒れだす。このままでは美九が大怪我をしてしまうと察知した士道は気持ちが切り替わって美九をお姫様抱っこして回避する。

 

「だ、大丈夫?」

 

「はいぃ…」

 

美九の表情は士道にメロンメロンだった。そのふくよかな胸と同じ───

 

「はぁん、士織さん素敵ですぅ。そうです、そうです!

今日の夕方、予定は空いてますかぁ? 是非、ティータイムをしましょう!」

 

「え、あ、はい。大丈夫です。」

 

「まぁ、まぁ! 良かったですぅ! では、お待ちしてますね! 士織さん!」

 

と、約束をしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(凄い所に来ちゃったな…こういうの初めてだから緊張して落ち着かない…)

 

ドクッ! ドクッ! と心臓の鼓動が激しかった。

 

「ウフフ…緊張しなくてもいいですよぉ。」

 

と、微笑む美九である。今、士道がいる場所は美九の家である。最初はティータイムということで何処かの喫茶店だと思ったら家まで誘導されてしまった。

 

美九が優雅に紅茶を飲んで、テーブルに置くと微笑みながら士道に語りかける。

 

「士織さん。」

 

「は、はい。」

 

【明日から竜胆女学院に通って下さい。】

 

「…へ?」

 

突然の美九からの言葉に動揺をし始める。

 

(なんだ…この感じは。)

 

美九は士道の隣に座り、手を上から優しく重ねながら問いかける。

 

【お願い。】

 

「あの、それは困ります。」

 

士道は美九からの妙な声に戸惑いながらも美九の『おねだり』を拒否する。

 

「あらー? 私の『お願い』が通じないとは…もしかして、士織さん。精霊ですかぁ?」

 

「!?」

 

美九の言葉に士道は反応する。妙な違和感は天使を使ってのおねだりだと理解する。

 

「別にいいですよぉー。無理にとぼけなくても。私の『お願い』が通じないのは『普通の人ではない』という事ですからー。」

 

「…」

 

士道は沈黙する。そして、口を開く。

 

「はい、私は普通の人間ではありません。ただ、精霊ではありません。

私は精霊の力を封印することが出来る人間です。」

 

「精霊の力を…封印?」

 

美九は士道の言葉に驚きが隠せない表情をする。その表情に何かを感じたが、今は説明する事が先決だと判断して美九に事情を説明する。説明を終えると美九は先程の朗らかな表情とは変わって険しくなっていた。

 

「事情は分かりましたー。」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「えぇ、士織さんが嘘を言っていない様に見えますので先程の説明を信じますよぉー。」

 

「そ、そうですか。なら───」

 

「あ、でも私には不要ですので、結構ですよぉー。」

 

「へ?」

 

士道は呆気に取られた顔になる。今、美九は『不要』だと言ったのだ。

 

「だってぇ、私は今の現状に満足しているんですよー。それに、この力も手放す気も無いですので、士織さんには申し訳ないですけどぉ、お断りしますぅ。」

 

美九は生活に困っておらず、寧ろ満喫しているような感じで士道の申し出を断った。

 

『…困ったわね。』

 

琴里も士道と同じ気持ちなのか、困惑していた。そこで士道は空間震が起きた事について問う。すると、美九は「そうですねー。」と軽く言いながら答える。

 

「あれは、私の意思で起こしたものですからー。」

 

「え?」

 

特に悪気もなく答えた事に驚きが隠せない。空間震を己の意志で引き起こせることに関しては、狂三の一件で把握している。問題は、何も悪びれずにいる事だった。

 

「何で…引き起こしたんですか?」

 

「それはですねー。私、職業上からステージで歌うの好きなんですよぉ。」

 

「…」

 

「あの日、偶然アリーナでライブをやってたんですけどぉ、その時にふと思ったんですよぉ。

───天宮アリーナで歌ったことないなーって。」

 

「…それで。」

 

「はいー。歌いたい気分になったのでぇー、えいやー!って感じで空間震を起こして退いてもらったわけなんですよぉー。」

 

「…そんな…理由で、空間震を…?」

 

士道は震えた声で呟く。

 

『…何て、ふざけた理由かしら…っ。』

 

インカムから琴里が静かに怒りを露わにしているのに気づく。

 

「そんな理由だなんて、酷いですよぉ、士織さぁん。」

 

「酷いって…空間震によって苦しんでいる人がどれだけいるのか分かっているんですか!?」

 

「えぇー、いるんですかぁー?」

 

「それに…あの空間震で、もし逃げ遅れていた人がいたとしたら───」

 

「仕方ないじゃないですかー。歌いたいなーってなっちゃったんですからー。」

 

「…っ。」

 

士道はスカートの裾を握りしめる。美九と話していて、彼女の価値観が嫌というほど理解してしまった。

 

「…もし、その空間震で大切な友達が巻き込まれていたら、一体どうするんだ!?」

 

「まぁ、それは困りますねぇー。」

 

「! そう、だったら───」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「…はぁ?」

 

士道は瞼を大きく広げる。『彼女の価値観はおかしい、間違っている』と思わずにいられなかった。

 

「…間違っている。」

 

「はいー?」

 

「その考えは間違っている。」

 

士道は立ち上がって美九に告げる。

 

「アナタのその考えは間違っている。」

 

士道は真っ直ぐに告げる。言わずにはいられなかった。ここで、言わなければならないと。

 

そう言われて、美九は少々癇に障ったのか険しい顔につきになるも、何かを閃いたのか、余裕のある顔に戻る。

 

「それじゃーこうしましょー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()勝負しましょう。

士織さんが勝てば、士織さんの望む通り、霊力を封印するのに従います。

───でも、私が勝ったら士織さんは私のモノになって貰いますし、士織が封印して来た精霊さん達も私が貰います。勿論、いますよねぇー?」

 

「…」

 

士道は肯定しなかったけど、否定しなかった。それにより、美九の瞳が細くなり怪しいものとなる。

 

「あぁー、やっぱりいますよねぇー。」

 

(何という事だ。思わず美九に啖呵を切ったのは良いが…想定外の事態になってしまった。)

 

士道は悩む。自分がどうなろうと構わないが、皆を巻き込まないと。

 

士道の考えを読んでか、インカムから琴里の声が聞こえる。

 

『士道、その勝負を受けなさい。』

 

ビクッ!

 

琴里の言葉に士道は少し戸惑う。だが、琴里は返事を返す事の出来ない士道の心中をも察して答える。

 

『ここまで来てしまった以上は受けるしかないわ。応じなさい、士道。

後、女の子の口調じゃなくなっているわよ、気をつけなさい。』

 

「…」

 

返事が出来ない上に、琴里の意見は間違っていないと判断し、美九に応える。

 

「…その勝負、受けます。」

 

士道がそう答えると、美九は薄い笑みを浮かべたのであった。

 

こうして、美九との勝負の引き金が引かれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この作戦、正気?」

 

日下部が手に持った資料内容を見てジェシカに発言する。

 

「えぇ、そうヨ?」

 

「…っ!」

 

そこに記されていた主な内容はというと───

 

決行日は天央祭一日目

 

・“プリンセス”と思わしき人物、"夜刀神十香"の捕縛

 

・そして、()()()()()()も同時に捕縛

 

であった。

 

「『プリンセス』と思わしき子については理解できるとして、問題は実行日よ! この日は天央祭よ!? 一般人が多く来るビッグイベントに…人目につく所で顕現装置(リアライザ)を用いた奇襲だなんてっ!?」

 

日下部は正義感の強い女である。若くしてAST部隊の隊長を務め、自分より歳下の部下達の為に忙しい日々を送っている。

 

中でも、折紙といった問題児を抱えながらも、怒る時は怒り、時に優しくする事がある。正に理想の上司。折紙も日下部には敬意を向けている。

 

そして、何より陸自衛隊として市民の生活を脅やかす『空間震』を引き起こす精霊に対して快く思っていない。故に、精霊プリンセスに似ている少女の捕縛に関しては言及しなかった。

 

もし違っていれば、全力で彼女を守ろうとも考えている。

 

だが、今回の作戦は自分達の存在意義を揺らがす事態。市民に『一般人に武器を向ける自衛隊』として認知されれば…今の社会ではもう生きていけない。自分も部下達も。

 

何より頑なに秘匿されている人智を超えた技術である顕現装置を市民に向けるといった事は立場上からも容認できない。

 

「アンタ達の意見は聞いてないノ。黙って我々の指示に従っていればいいノ。」

 

それだけ言うとジェシカはそっぽを向き始める。が、何かを思い出したために顔だけを日下部に向けて告げる。

 

「ああ、そうそう。この事はあの…鳶一一曹。あの小娘にはこの作戦の一切を教えないように。」

 

「はぁ!?」

 

「これは上からの指示ヨ。文句があれば上に報告すれバ?」

 

「…アンタ達、一体何をする気?」

 

ジェシカを睨む日下部。するとジェシカは嫌な笑みを浮かべて告げる。

 

「コレは我々から怨敵へのセレモニーなのヨ。邪魔せずに、アンタ達は指示に従ってればいいのヨ。」

 

「アンタ、何を言って───」

 

それだけ告げると、ジェシカは去って行った。

 

「ま、待ちなさい!」

 

日下部が止めようとするも、聞く耳を持たずに去っていってしまい唇を噛む。ふと、記述された一般人の名前を見る。

 

そこには───

 

「『五河士道』。この名前何処かで───あっ!」

 

日下部は日々の折紙との会話でのやり取りを思い出す。

度々、折紙は恋人がいると告げていた。最初は羨ましく思いながらも微笑ましく思っていたが…彼女の発言から片想いをしている子だって認識(真実)へと至った。

だが、折紙が彼をとても大事に思っているという事は十分理解している。

 

だからこそ、折紙に教えるなの意図が読めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ…物騒な事になってきたじゃないか。」

 

ジェシカと日下部との会話のやり取りを双方の携帯端末をハッキングして盗み聞きしていた夢界は目を細めていた。

 

「連絡を受けて盗聴してみれば…一般人のいる中での奇襲作戦とか正気を疑うな。」

 

おでこに指を当てながら夢界は考える。

 

「しかも、ここで十香ちゃんと士道の捕縛と来たか…いよいよ、敵さんも本腰を入れて何かをする気だな?」

 

考えられる候補はいくつかある。だが、どれも碌な事ではない。

 

「さて、こっちもただ待ってはいられない。行動に移さないとな。」

 

夢界は携帯を取り出して、ある人物達に連絡を入れる。

 

「もしもし? 2人ともいる?

…なら良かった。事態は一刻を争う。敵さんがいよいよ動き出す。決行日は天央祭一日目だ。いつでも対応出来るように準備してくれ。俺も身を隠しながら出来ることはこなすつもりでいるから安心してくれ。

…あぁ、健闘を祈るさ。」

 

そう言って連絡を終えて一安心する。だが、まだ落ち着いてはいられない。

 

「…問題は、ASTとDEMの魔術師(ウィザード)達以外の動きだな。絶対に何かある。」

 

明日の天央祭にて待ち受ける運命は如何に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラクシナス

 

美九との交渉(?)を終えた士道は、本日の業務も終え、フラクシナスへと足を運んだ。

 

「…で、厄介な事になってしまったけど、何か言う事はある?」

 

「…大変、申し訳ございませんでした。」

 

琴里からの圧力に、士道は申し訳なさに謝罪する。

 

「まぁ、気持ちは分からなくもないわ。まさか、空間震を意図的に発生させた挙句、何も悪くないって思っている。こんな考えの子には少々灸を据える必要もあるってもんでしょ。」

 

「…っ! 琴里。」

 

「ええ、勝てるように、私達も尽力を尽くしてあげる。感謝しなさい。」

 

「助かる。」

 

安堵する士道。だが、まだ話は終わらない。

 

「問題はどうやって勝つかね。…令音、天央祭一日目の内容を教えて頂戴。」

 

「…既に準備してあるさ。」

 

そう言った令音は映像をあげる。

 

「…一日目は主に午後からのステージだね。彼女が一日目の勝負といったのも、これが理由だろう。」

 

彼女はアイドル。それ故に、多くの人の前でライブをする事に慣れているため、向こうが一方的に有利である。

 

「ならコチラも、そのステージで戦えるよう準備しないとね。」

 

「なら、うってつけな手がある。」

 

夢界が意見する。

 

「それは何?」

 

「クラスの亜衣ちゃん達がライブに出場するらしくてな、けど仲違いを起こして人材が足りないらしいから、そこに士道も加えて勝てるようするって算段な訳だが、どうよ?」

 

夢界がそう言うと、琴里はニヤリとし始める。

 

「…なるほどね。士道、それで良いわね?」

 

「…あ、あぁ。」

 

士道は歯切りの悪い返事を返す。その訳とは。

 

「…問題は、士道が楽器の一つも碌に出来ないって点ね。」

 

「うぐっ。」

 

そう、実は士道、楽器が碌に出来るものがないのである。

 

琴里はダンッ!と勢いよく立ち上がり司令官として指示をする。

 

「夢界、その面子に足りない人材は!」

 

「聞いた話では、エレキギターの係だな。」

 

「なら、士道を…いえ、士織を出場させるって伝えなさい!」

 

「了解。」

 

夢界は手元の携帯をいじり始める。

 

「次! 川越、幹本、中津川! アナタ達は至急、ギターの準備と、初心者にでも簡単に引ける秘訣策をできる限り収集しなさい!」

 

「「「了解!」」」

 

「箕輪、椎崎! アナタ達は会場当日の美九を含めた他校の情報と、会場にラタトスクのスタッフを派遣させない!」

 

「「了解!」」

 

クルー達は琴里の指示のもと行動を取る。

 

「完了したぜ、後は士道のもう特訓だな。」

 

夢界が士道を見て告げる。

 

「えぇ。さて、令音は士道にギターのレクチャーをしてあげて頂戴。一番苦労すると思うけど、お願いね。」

 

「…あぁ、任せてくれたまえ。」

 

琴里は部下でもあり、親友でもある令音にそう告げる。

 

「…さぁ、シン。行こうか。」

 

令音が手を差し出す。

 

「は、はい。お願いします。」

 

士道はその手を取るのであった。

 

 

 





はい、前半パートはこれで終わったかな。次からが、後半パートになると思います。ただ、内容は前半よりも濃い内容でハードだけど。










おまけ

「ところで、令音。さっきから何をしているの?」

「…ん、いや、特に気にする必要はないよ。」

「…」

コソコソと何かをしている令音に無言で近づく琴里。

「何よ、何してるのか教えて───」

琴里は令音の行っている行動を知ってしまう。その訳とは───

「こ、これって───士道の女装写真ばっかじゃない!」

「…可愛らしいかったのでね、つい手先が動いてしまった。」

「えぇ…令音に女の子らしい趣味あったの?」

「…そこかね?…私だって女の子なのさ。それに…中々悪くないよ? 例えばコレとかね。」

その写真は士道が密かに頬を赤らめて、恥ずかしそうにしている瞬間の写真だった。

「…令音、いつくか私にも頂戴。その写真。」

士道の女装によって違う意味で仲が更に深まった親友同士であった。





…ナニコレ?


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