デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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いやー、今年も残り1ヶ月半となりましたねー。
今年で何処まで進められるか、というか続けられるか心配でしたが、無事に原作6巻まではいけましたねー(笑)
…けど、まぁ、原作って思っていたより長いね…
22巻は冷静に考えて長いよね。
けど、自分が計画している中としてはそれ以上なんですよね…
続けていけるよう、頑張りますので応援宜しくお願いします。

それでは、美九編ラストです。





第七話:暴走する歌

 

 

 

「フフフ…いいざまですねぇ。

私を騙したんです、簡単に死ねるなんて思わないで下さい。」

 

士道に向けて、美九はそう告げる。

 

「それにしてもぉ…士織さん(?)の封印した精霊達、みーんな可愛い子ばかりじゃないですかぁ!

そうですそうです!

こういうのを求めていたんですよぉ!」

 

美九はウキウキとしながら四糸乃に駆け寄って四糸乃の頬を撫でる。

四糸乃は撫でられて、頬を赤める。

 

「く、くすぐったいです…お姉様…」

 

「キャー! 可愛いですぅー!

後で、一杯可愛がってあげますからねぇー。

───あの憎たらしい人間のオトコを葬った後で。」

 

ゾクッ!

 

美九の冷たい視線と言葉によって、士道は鳥肌が立つ。

美九はそんな士道に向けて慈悲なく告げる。

 

【あのオトコを殺して下さい!】

 

刹那、その死の宣告によって四糸乃、耶倶矢、夕弦を筆頭に周りの客達が士道を襲い掛かる。

 

「…っ!? 一般人まで!?

───ぐっ!」

 

士道は一般人である観客に殴られる。

それに続き、耶倶矢と夕弦が士道に殴り掛かった。

 

「せいや!」

 

「追撃。はっ!」

 

「ぐっ!? ガハッ!」

 

霊力を封印されたとはいえ、人間とはかけ離れた力を持った精霊であるため、威力は段違いだった。

 

士道はなす術なく、ただ殴られるだけであった。

無関係である一般人に手は出せず、仲間であり家族である四糸乃達に手を上げることなんて出来ない。

だから、ただただ一方的にやられるだけであった。

 

「……う、うぅ。ケホッ!」

 

耐えきれず、壁に背に縋り、口から血を吐き出す。

その無様な姿を見て、美九は嘲笑いながら士道を見下す。

 

「フフ…ハハハハハッ!

良いです、良い光景ですぅー。

私を騙して、コケにして、私からこの力を奪おうとする人なんて、この世から消えた方のが世のため、人のためなんですよぉー。

───そうですよ。

この声がなくなったら、私は…」

 

美九は途中、脳裏に()()()()()を思い出す。

それにより、一瞬()()()()になった。

 

「…?」

 

【だから…消えて下さい。】

 

美九は士道に向けてそう告げる。

だが、士道はその声が一瞬()()()()()()に気づき、違和感を抱いた。

 

(なんだ…今の感じは?

今、美九(彼女)の声が震えていた?)

 

だが、そんな事は一瞬で忘れる。

士道の顔に耶倶矢達の霊力(風)を纏った拳がゆっくりと迫ってくる事に気づいた。

この至近距離で攻撃が当たってしまえば…

恐らく助からない。

 

(あ、コレは───)

 

士道は諦めて目を瞑る。

仲間からの攻撃により、その運命を受けれ入れてしまうかの様に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、まだ1()()、士道には味方がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───シドーに手を上げるとは何事かぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その掛け声と共に、声の主が一瞬の内に士道に詰め寄る。

間一髪の所で、耶倶矢達の拳は届くことは無かった。

 

「「ぐぅ!」」

 

悲痛な声を上げて、八舞姉妹は客席に吹き飛ばされる。

美九はありえないモノを見るかのような目で見ていた。

士道は恐る恐る目を開けると───

 

「大丈夫か! シドー!!」

 

「十…香?」

 

「うむ!」

 

その凛々しくも頼もしい人物が士道に微笑む。

 

「な!? 我が眷属、十香!

何故、姉様に楯突いた奴の守るのだ!?」

 

「疑問。何故、士道を守るのですか?」

 

ゆらりと立ち上がる姉妹。

そんな2人に向けて十香は怒りながら告げる。

 

「お前達こそ何故シドーに敵意を向ける!

シドーは私達に居場所をくれた大切な人なんだぞ!?」

 

「何故って…姉様の命令だし。」

 

「…む? 何て言ったのだ?」

 

「?」

 

その光景を見て、士道は疑問を抱いた。

十香の顔…否、耳元を見る。

すると、十香の耳に無線型のイヤホンが付いていた。

 

「十香、そのイヤホン。」

 

「む? …おお、そういえば付けっぱなしだったのだ。

曲はうろ覚えだったから、コレを付けながら歌っていたのだ。」

 

「…!」

 

(そうか。耳がある程度塞がっていたから、美九の力の影響を及ばなかったのか。

後は霊力で補った、という感じか?)

 

士道は内心で理解した。

 

「…信じられません、私の破軍歌姫(ガブリエル)の力に抗うなんて。」

 

「美九と言ったな!

貴様がどうやって、耶倶矢達を操っているかは知らんが、シドーに手を上げるというなら容赦はせん!

覚悟しろ!」

 

「…っ!?」

 

美九は十香からの殺気を受けて、後退りをする。

その美九の前に四糸乃、耶倶矢、夕弦が立ち塞がる。

 

「3人とも、シドーではなく、その女を守ると言うのか。」

 

「「「…」」」

 

「そうか、残念だ。」

 

十香は士道に駆け寄り、士道に語る。

 

「シドー、この状況で逃げるのは厳しい。

私が3人を相手にする。

その隙に───」

 

「駄目だ。」

 

士道なキッパリと断る。

 

「な、何故だシドー!?

私が、信用───」

 

「やるなら、2人一緒だ!」

 

士道の掛け声と共に、十香に変化が生じる。

それにより、限定霊装から完全霊装へと変化する。

 

「っ! うむ! そうだな!

共に、皆を正気に戻すのだ!」

 

「ああ、行くぞ!」

 

十香は鏖殺公(サンダルフォン)を構え、士道はナイフを鎧腕へと変化させる。

 

「何、2人でイチャついてるんですかー?

そんなの、私が許しません!

───っ!」

 

美九は嫌な笑みを浮かべて、命令する。

 

【その可愛い子を拘束して下さい!

あのオトコの前で私の虜にしてあげます!】

 

美九の命令により、四糸乃達と観客は士道達へと突撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「くっ…流石に数が多すぎる。」

 

「このままじゃ、士道くんが!」

 

2人は額に汗ををかきながら、バンダースナッチを蹴散らしていた。

だが、エレンとの戦闘で披露しつつあるデオンに、それを補って一人多くバンダースナッチを倒していたドリス。

ドリスはデオンよりかはまだ余裕あるものの、数が一向に減らない状況に長い顔をしていた。

 

そんな中、更にバンダースナッチが数体加勢にやって来る。その数体はデオンとドリスを視認すると、様子が変わる。

デオン達の周りの空気が重くなる。

この予兆はシャドウが現れる知らせでもある。

 

───つまり

 

バンダースナッチの胸パーツからシャドウが溢れ出し、バンダースナッチを覆いこむ。

すると、図体が大きくなり、事前に聞いていた機械生命体へと変貌を遂げる。

 

「これは…厄介な事になったね。」

 

「ええ、あのクソ社長はもやしっこー部長と違い、相当頭がキレやがりますからね…

嫌なタイミングで腹立ちますよ!」

 

会話をしながら、ドリスはバンダースナッチを大きく薙ぎ払う。

ドリスの『紫の炎』は広範囲に攻撃が及ぶようだ。

 

「さて───ん?」

 

2人の耳についてるインカムから通信が入る。

その声はとても焦っているものだった。

 

『悪い2人とも! そっちも大変なのは分かるが、こっちの状況も悪くなった!』

 

「分かってるよ! そっちにエレンという人が向かっちゃったのは私達のせい!」

 

「直ぐに駆けつけやがります!」

 

『いや、それよりも更に厄介な事になった!』

 

「「!?」」

 

2人は驚くも攻撃し、躱したりしながら通信を聞きいていた。

 

『美九ちゃんの『天使』によって、フラクシナスも支配下に置かれてしまった!

このままだと『ミストルティン』と呼ばれる兵器で士道や会場の一般人が危ない!』

 

「な、なんて事!?」

 

「琴里さん、一体何をやらかしてやがりますか!?」

 

『そうは言っても、状況は変わらない!

───デオン!

『キミの力』が必要だ!

フラクシナスにハッキングを仕掛けてある、直ちに向かってくれ!』

 

「!? それは構わないけど、こっちも手が離せなくて!」

 

そう、デオン達はバンダースナッチの軍隊を蹴散らしながらも、シャドウと融合した機械生命体とも交戦している。

数が数が故に、向かいたくても向かえない。

 

と、そこにデオンの肩をポンと叩くドリスが呟く。

 

「行ってください。

ここは私が全て片付けますので。」

 

「な、何を言っているの!?

これだけの数に、例の機械生命体までいるんだよ!?」

 

「大丈夫です。

───奥の手を使いますので。」

 

ドリスはニヤリとした顔でそう呟く。

それを見たデオンは彼女なら大丈夫だと理解する。

それ故、コクリと頷く。

 

「そうだね。もうドリスは『アレ』を完全に己がモノにしてるし、その破壊力は私のシュヴァリエよりも高いしね。」

 

「はい。だから、そっちは頼みます。」

 

「うん。頼んだよ!」

 

2人は再度ハイタッチをする。

デオンは通信機から指示された場所へ向かう。

そして、ドリスは()()()の不適な笑みを浮かべる。

 

「さて、いっちょコチラも本気でやりますか!」

 

ドリスは己が内から『もう一人の自分』を顕現させる。

 

「───“ランスロット”!」

 

紫の禍々しいオーラを放つ鎧騎士だった。

 

長い角が付いたヘルム

 

巨体な全身鎧に橙の模様があり

 

一本の大剣を構えていた。

 

「さぁ、一気に片付けてやりますよ!」

 

紫色の炎を纏った大剣が機械生命体と残ったバンダースナッチへと振るい上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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フラクシナス

 

「美九様に楯突く愚か者を殺せぇ!」

 

「お姉様に敵意を向ける奴をぶっ殺せぇ!」

 

艦内では美九の洗脳を受けてしまったクルー達がモニターで戦っている士道に向けて心にない事を言っていた。

 

「…フム、この惨状は。」

 

軍服に着替えた令音が惨状を冷静に見る。

 

「(恐らく、美九の破軍歌姫(ガブリエル)による影響だろう。

あの子の『天使』は機械を通して離れた所にいる人も洗脳する事が出来る。

故に、琴里達は操られている訳か。)」

 

令音は破軍歌姫(ガブリエル)の事を()()()()()()()

故に、フラクシナスにやって来たのだ。

 

「(…とはいえだ、士道(シン)の悪口は聞くに耐えないな。

早々に処置しておこう。)」

 

令音が手のひらに何かしようとするも、直ぐに止める。

その理由は、ただ1人、洗脳を受けていない者がいた。

その人物は椎崎であった。

令音は彼女に駆け寄り、事情を聞く。

 

「…何があった?」

 

「…!? 村雨解析官!?

どうしてここに!?」

 

「…少々気になる事があってね。

椎崎、キミは?

見たところ、琴里達は正気ではないと分かるのだが。」

 

「わ、私はお手洗いで少し席を外しておりまして…

戻ってきたら皆んな、可笑しくなっちゃってて…」

 

椎崎は動揺していた。

令音は少々困った顔になるが、事態は一刻を争う事態へと陥いる。

 

「アナタ達。今すぐに席に戻りなさい!

───ミストルティンを使ってあの『ゴミクズ』をぶち殺すわ。」

 

「「!?」」

 

クルー達が席に戻る中、椎崎と令音は慌てて琴里に語る。

 

「し、司令! 止めて下さい!」

 

「そうだ、琴里! 相手はシンだ!

キミの大事なおにーちゃんだ!」

 

「はぁ? 五月蝿いわね、アンタ達。」

 

琴里は指をパチンと鳴らすと、スタッフ達が令音達を拘束する。

 

「ふ、副司令! アナタからも止めてください!」

 

他のクルー達と違って、琴里に四つん這いで椅子にされていた…

何故か幸せな顔をしていた神無月に問いかける。

彼は幸せな顔からキリッとした顔つきになって否定する。

 

「邪魔しないでいただきたい。

漸く見つけたのです…

ここが! 私の! ユートピア!」

 

真剣な顔で否定するといなや、パァ!っと幸せな顔に成る神無月。

この男も正気じゃなかった。

美九の洗脳を受けているが、彼の本質はロリコンな故に一番は琴里のままだった。

 

「アンタ実は正気でしょーが!」

 

「ロリ以外、逝ってよし!」

 

椎崎が暴言を吐くも、神無月は動かない。

 

「(くっ…この状況では、迂闊に手が出せない!)」

 

令音が困惑する中、琴里は慈悲なく魔力装填されたミストルティンの引き金を引こうとする。

 

「止めるんだ、琴里!」

 

令音の必死の訴えも、虚しく終わる。

 

───引き金は引かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ!」

 

「「せいや!」」

 

「やぁ!」

 

《あいさー!》

 

十香は1人で四糸乃、耶倶矢、夕弦を相手に戦っていた。

十香は士道の力により、完全霊装へとなっているためか、3人相手にギリギリ戦えていた。

 

「十香! 気をつけろ!

美九の力は『音』だ!

音を使って攻撃をしてくる!

加えて、洗脳する力もいつやって来るか分からない、気をつけろ!」

 

「了解した!」

 

「くっ!」

 

士道とこれまでの分析を十香に伝え、美九は苦い顔する。

 

そして、士道は迫り来る観客を相手にしていた。

 

「くらえ───黒の絶霧(ブラック・ミスト)!」

 

士道は黒い炎を球体に圧縮し、床に叩きつける。すると、黒い霧が士道の周り一帯を包む。

その隙に、士道は気配を殺して複数人を黒の鞭(ブラック・ウィップ)で縛り上げ、身動き取れない様にしていた。

『鎧腕』の状態では通常時よりも効果が高い。

 

「よし! ───!?」

 

だが、この場においても『奴ら』は現れる。

 

ドクドク…ドクトク…

ジュクジュ…ジュクトク…

 

アリーナ内の空気が重くなる。

 

『ーーー!!!』

 

「くっ! この状況で来るか!」

 

「な、何ですかコレ!? 気味悪いですぅ!」

 

美九はシャドウを初めて見るせいか、動揺していた。

 

「くそぉ!」

 

士道は黒の籠爪(ブラック・アームズ)で一掃する。

十香達もシャドウと対峙しながら耶倶矢達と交戦していた。

 

だが、乱闘の最中に更に敵がやって来る。

 

ドォンッ!

 

凄まじい音を上げて、天井を突き破り、最強の魔術師が姿を見せる。

 

「これはまた、予想外の事態ですね。」

 

「エレン・メイザース!?」

 

「これはこれは、お久しぶりですね、五河士道。

アナタとプリンセスの身柄を拘束させていただきます。」

 

「何!?」

 

(狙いは俺と十香だって!?)

 

士道が疑問を抱くと、美九は「キャー!」と喜び叫ぶ。

 

「これはまた、素敵なおねーさんがやって来てくれましたー!」

【私のモノになって下さい!】

 

「…ディーヴァまでいるとは、好都合です。」

 

と、エレンはブレイドを速やかに取り出して、美九に斬りかかる。

 

「え?」

 

美九は素っ頓狂な声を上げる。

自分の力が士道達以外にも聞かない事に驚き、加えて殺してくる事に戸惑う。

それに、察知した四糸乃達が盾になって立ち塞がるも、エレンの攻撃に瞬時に吹き飛ばされる。

 

「「「…っ!?」」」

 

【わ、わ!!】

 

悲痛な声を上げて、美九の方へと飛ばされる。

美九は瞬時に声を上げて声による障壁を作り出し、自分だけを守る。

四糸乃達はそれぞれ倒れ込む。

 

「フッ、これ程の精霊をアイクの元へと連れて行けば、さぞ喜ぶでしょう。」

 

「ヒッ!?」

 

エレンが悪い笑みでコツコツと美九へと歩み寄る。

美九はそれに恐怖し、座り込んでしまう。

 

「…何のつもりですか?」

 

「アンタの相手は俺だ。」

 

士道は黒の鞭でエレンの腕を拘束してそう告げる。

 

「いいでしょう。───フッ!」

 

「くっ!」

 

エレンが士道に目掛けてブレイドを振り上げる。

そして、士道は鎧腕でガードする。

 

「今度は珍妙なモノを付けていますね。」

 

「…甘く見ていると、痛い目に会うってな!」

 

士道はエレンを押し返すと、瞬時に鎧腕に力を込める。

青黒い閃光を放ちながらエレンに手刀の攻撃を放つ!

 

「くらえっ!」

 

「何!? ───ガハッ!」

 

エレンはブレイドでガードするも、破壊されて後方へ勢い良く吹き飛んだ。

 

「次は───」

 

士道が美九の方に振り向こうとすると、全身に悪寒が走る。

天井穴から異様な光がアリーナ内を照らす。

 

「何だ? 今度は何が起きている?」

 

ピキンッ!

 

士道が疑問を抱くと、またイメージが頭に流れ込んだ。

それは、天空から眩い光線がアリーナへ向けて放たれている所だった。

 

「ま、まさか?」

 

士道は理解してしまった。

この異様な光はここは光線が落ちてくる予兆であると。

 

「このままでは…」

 

士道は周りを見渡すも、十香は四糸乃達とシャドウ相手に息を切らしながら奮闘しており、美九は座り込んだままだった。

 

「俺が、やるしかない!」

 

士道は天井へと向けて黒の鞭で外へと出る。

アリーナ会場を飛び出した士道は更に足元を蹴り、宙に飛ぶ。

外の周りにバンダースナッチやそれを排除する者達に気づかず、目の前の光線に集中する。

 

「アルセーヌッ!」

 

士道はアルセーヌを顕現させる。

 

「行くぞっ!」

 

士道は両腕を構えて『波打つ水面の様な青い炎』を生み出す。

そして、同時にアルセーヌの『焼きつく様な青い炎』も発火させる。

 

二つの似た色の『炎』が掛け混ざり合う。

それは、凄まじい高密度の熱に『支配』される様な()()()だった。

 

凄まじい質量の蒼い炎を光線に向けて放つ!

 

「煉獄の蒼炎(ニヴルフレイム)!」

 

それは、まるで冥府にて燃え続ける獄炎を彷彿させる『煉獄』だった。

 

空から放たれた光線と蒼炎がぶつかり合って、空間に衝撃波が走る。

それにより、周りの建物は損傷し、バンダースナッチの大半が破壊され、消滅していった。

 

二つの力による衝突は拮抗の後に爆発し、相殺し合う。

 

士道は大技を出し切り、そのままアリーナ内へと下に落ちていく。

アルセーヌを顕現させたまま地上へと落ちていき、アルセーヌを下敷きにする事により何とか士道は耐える。

力を使い果たした事により、アルセーヌは消え、士道はゆらりと立ち上がる。

 

「…くっ…がっ…はぁ…十香…無事か?」

 

士道が十香の名を呼びながら見渡すと───

 

「シ…シドォ…」

 

エレンがボロボロの十香を抱き上げていた。

 

「十香さんは捕縛しました。

アナタも捕縛したい所ですが…

あの様な力をまた使われてしまえば、今の私では流石に太刀打ちが厳しい。

───ですので、彼女だけでも連れて行きます。

さらばです。」

 

エレンは急加速でその場を離脱した。

 

「待てっ! 十香を離せっ!」

 

黒の鞭で掴もうとしても、届かなかった。

 

「くそっ…十香ァァァァァ!!!」

 

「───何で、この場をやり切った顔をしているのですかぁ?」

 

視線を声のする方へと向けると、仁王立ちしている美九に、彼女に洗脳されている四糸乃達が待ち伏せていた。

 

「くくく…観念して、降参されるが良いぞ?」

 

「警告。これ以上、姉様を困らせないで下さい。」

 

「捕まって…下さい。」

 

《観念しちゃいなよー!》

 

「───」

 

四糸乃達は美九によって奪われてしまった。

 

「クソォ…」

 

士道は自分一人ではどうしようもないと判断してしまう。

それ故、投げやりな形だが、黒の濃霧を利用し、まるで皆や美九から逃げ出してしまう様にアリーナを出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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フラクシナス

 

「ふふ…ふふふ。あの『ゴミクズ』が何処へ行こうと、私達からは逃げられないわよ。」

 

未だ洗脳にかけられている琴里がモニターに映る士道を見て、そう呟く。

 

「士道くん…折角先程のミストルティンを耐え凌いだのに…っ!」

 

「琴里、止めるんだ。本当のキミはそんな事を望まない筈だ!」

 

何処から出したのか、檻に入れられている令音達。

そして、再びミストルティンの魔力(エネルギー)を充填させ、起動させようとする。

 

───すると突然、扉が開き始める。

 

「え? アナタは誰です?」

 

椎崎がつい口を開く。

だが、令音もまた驚きの顔を浮かべていた。

その人物は、士道の怪盗服に似た格好をしていた女性だった。

 

「私はデオン。彼女達を止めに来ました。」

 

「デオン?」

 

令音はその言葉に心当たりがあった。

それは、士道が八舞姉妹の元へ向かう途中にシャドウに囲まれた時に助けれてくれた人物であると。

 

「何者よ!? それに、どうやってここに入ったのよ!」

 

琴里がそう反応する。

クルー達が拘束具を用意するも、デオンを名乗る女性は慌てずに、掌に()()()()を灯し始めた。

その炎は次第に煙の様なモノを発生させ、この部屋を充満させていく。

 

「口と鼻を塞いで下さい!」

 

デオンは檻にいる令音と椎崎にそう告げる。

突然の事に困惑する2人だったが、とりあえず言われるままに口元と鼻をハンカチで抑え、琴里達は桃色の煙を嗅いで忽ち眠るように倒れる。

 

全員が眠ったのを確認すると、デオンは煙を消し、檻をレイピアで破壊し、2人を解放した。

 

「ありがとうございます。けど…アナタは一体?」

 

「…キミはデオンと言ったね。

キミはシンを知っているのかい?」

 

「シン…それは、士道くんの事ですか?

それなら、はい勿論。」

 

「…そうか。だが、どうやってここに入ったんだい?

ここは、上空1万5千メートルに浮いている。

普通に入れる訳がないのだが…」

 

「あ、ならコレを…」

 

令音の問いにデオンは答えるように耳元のインカムから指示を聞いてなのか、近くの席の令音の操作盤を操作する。

すると、ある人物の声が流れる。

 

『ザーザー…あー、てすてす。

聞こえているかー?』

 

「え? 夢界くん?」

 

その声を聞いて椎崎が驚く。

 

『あー、その訳など説明したい所だけど、まだそれを伝える余裕がない!

デオン!

次は、フラクシナスの外に出てくれ!

バンダースナッチと融合したシャドウがフラクシナスのエンジンルームに攻撃しようとしているっ!』

 

夢界がそう告げると、艦が揺れる。

どうやら、攻撃が始まったようだ。

 

「了解! すみません、どうやってここから出ればいいですか!?」

 

「え? あ、はい!

今からやりますので、お願いします!」

 

椎崎は自分の席に座り操作し始める。

令音は疑問に思う所があるも、今は大人しく夢界の言う事に従う体制になる。

 

「!? し、システムに大きな損害!

一部のシステムが大きく破損しました!」

 

「その部分は私がカバーしよう。

キミは速やかに敵を倒して来てくれ。」

 

「はい!」

 

デオンは指示された場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…フラクシナスはこれで大丈夫かね。

デオンが敵さんを倒した訳だし、問題ないだろう。

システムの方も、念のために顕現装置(リアライザ)を補強しておいたから、墜落の恐れはない。

美九ちゃんの洗脳も令音ちゃんがおるから何とかなるだろう。

ただ問題は…

士道の奴だな。」

 

夢界は端末でフラクシナスの様子を見た後で、士道の様子を見ていた。

 

あれから士道はアリーナを抜け出して、隠蔽工作(フェイク)を使用して、着替えを奪取して離れた所へと身を隠していた。

 

「…場所は廃ビルか? それなら早い所向かって

───おや?」

 

画面に士道以外に()()()()が映り出された。

 

「…フムフム。この様子では───大丈夫っぽいな。

なら、こっちはフラクシナスに移動して、タイミングを伺った後で士道と合流する形でいいかな?」

 

夢界は1人で考えた後、アリーナ会場の上から下の様子を見ていた。

下では、美九の支配下に置かれていた人達が訓練された兵隊の如く整列していた。

 

「しかし…面倒な事になったな。」

 

美九との対決に士道達は勝ったものの、美九の暴走して精霊達まで奪われてしまった。

加えて、唯一洗脳されなかった十香はエレンに破れ、連れてかれてしまう有様。

 

フラクシナスは現状、デオンによって収まったものの、琴里を含めたクルー達が復帰するのに少し時間がかかる。

 

…ここから、士道はどうするのか。

 

そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道と宿敵となろう男と対面する時、何が起こるのだろうか。

 

 

 







…はい、美九編(前編)は終わりました。
次はいよいよ、士道達とDEMとの乱闘が始まります…
が、その前に幕間編が入ります。
士道の行方、十香の行方、フラクシナス、その他の状況を描くつもりです。
次回をお楽しみにして下さい。


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