デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

77 / 110



この投稿が今年最後です。
綺麗に75話で締めくくり。
この調子で来年も頑張りたいと思います。
どうも、黒ソニアです。





第八話:紫炎の剣士

 

 

 

「ンガッ! ア、アアアアァァァァッ!」

 

ジェシカが話の途中で体に異変が起きたのか、声を上げながら、体を痙攣させていた。

 

「ジェシカ!?」

 

真那がジェシカを呼びかけるも、ジェシカは痙攣しながら更に姿が変わっていく。

 

全身がまた一回り大きくなって、全長が約5メートル

 

細長い腕が二本から、四本に増え

 

腕や脚に体の至る所に体毛が全身を包み、羽根が生え

 

顔の目元部分が再び覆われ、気味の悪い目になり

 

その姿形はまるで『虫』

 

ジェシカは異臭と悪臭を放つ、『蝿の化け物』へと変貌を遂げてしまった。

 

『アァ…』

 

声がノイズにかかった様になり、もうジェシカ・ベイリーですら無くなってしまった。

 

「何…ですか…これは…っ!?」

 

真那(ドリス)が瞼を大きく開けて驚愕するも───

刹那、再び真那(ドリス)の体に激痛が走る。

今度は更に勢いよく吹き飛ばされ、ビルとビルを貫通し、最後には建物の中の壁に叩きつけられた。

 

「ごふっ…!」

 

口から血が吹き出す。全身が痛くてたまらない。

ナイトメア…時崎狂三に完膚なきまでされた時よりも、全身の痛みが真那(ドリス)を遅い、一瞬気絶しかけてしまった。

 

「…っ、やりやがるじゃ…ねーですか…」

 

真那(ドリス)がそう言葉を溢すも、息を吐く暇なく攻撃はやって来る。

 

「…っ!?」

 

一瞬にして大きな爪の手が真那(ドリス)の頭を叩き割ろうする攻撃を見切り、剣でガードする。

だが、力では圧倒的に負けており、そのまま壁に叩きつけられてしまった。

 

「うぐ…っ!」

 

真那(ドリス)は先程の痛みと今の攻撃による圧力によって意識が朦朧して来る。

 

「(不味い…意識が…)」

 

真那(ドリス)の瞼が閉じかけようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真那。』

 

その声と共に自分が抱きしめられた感覚を思い出す。

士道()再会し、あまりの嬉しさに抱きついてしまった時、彼はそんな真那を優しく抱きしめてくれた。

頭まで撫でくれて居心地が良かったのだ。

 

『真那!』

 

今度は時崎狂三(ナイトメア)に襲われた所を救い、首を切断した事を士道()に咎められ、自分の為に恐怖を抱いてる中でも叱ってくれた。

 

…実を言うと、止めて欲しかったかもしれない。

 

その温かい手の温もりが嬉しかった。

 

そして、士道達と共に食事をする光景を思い浮かべる。

それを見て、()()は思う。

 

まだ、一緒に食事をしていない

 

まだ、一緒に出かけてもない

 

まだ、一緒に遊んですらない

 

そうだ…優しい士道(兄様)と一緒にこれから共にするためにも

 

ここで、こんな所で、死ねない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切り開け、ランスロットッ!」

 

真那(ドリス)はもう一人の自分。

『剣聖:ランスロット』を顕現させた。

 

バァァァァァンンッッッッッ!!!!!

 

凄まじい『炎』が吹き荒れる。

その『炎』…

『濃い紫の炎』はまるで燃えている箇所をしつこくこびりつくかの様に、それを蝕む様に燃えていた。

その『濃い紫の炎』を直に浴びた、『蝿の化け物』は全身を焼かれて倒れ、転がっていた。

 

『ア"ア"ア"ァァァァァッッッ!!!!!』

 

その化け物を見下ろす様に真那(ドリス)は立っていた。

真那(ドリス)のいる建物は『濃い紫の炎』によって全焼し、半壊され、上の部分は全て破壊され、嫌な暗闇の夜の真下だった。

 

「…ジェシカ、何があったかは知らねーですが。

()()()()()()()()()()()()()。」

 

真那(ドリス)は『炎』にもがきながら立ち上がる化け物にそう告げた。

 

「私のこの『濃い炎』…

『紫毒の炎』はランスロットの『紫毒』を合わせた力で、放った対象の内部に圧縮する性質がありやがるんですよ。

それによって、しつこく燃え続けて痛みと苦痛が残り続けるんですよ。」

 

真那(ドリス)は周りと化け物に降りかかっている『濃い紫の炎』を見ながらそう語る。

 

「…ま、今のアナタには聞こえていやがりませんよね。

───直ぐ終わらせます。」

 

真那(ドリス)は手でランスロットに合図を送る。

すると、ランスロットは大剣を両手で構えて、忠義を示す体勢になる。

大剣が光輝き、炎を収束し始めた。

 

「そんで、()()が私の『炎』の特徴でいやがります。」

 

真那(ドリス)は手に『紫の炎』を発生させる。

 

「この常時使ってる『紫の炎』が『増殖の炎』。

膨張させて広範囲攻撃が可能で、ついでに言うとモノを投影する事が出来やがるんですよ。

───こんな風に。」

 

真那(ドリス)がパチンと指を鳴らす。

すると、真那の握っている剣が真那(ドリス)の周りに複数本出現した。

 

「そんで、ランスロットの最大火力は周りの『炎』を一つに収束させる!」

 

真那(ドリス)がそう言うと、ランスロットの剣に増殖で増やした剣を吸収するかの様に収束し、紫の閃光を強く放ち始めた。

 

「こいつで締めーです。」

 

ランスロットと共に飛び掛かり、大剣を『蝿の化け物』へと振りかざす!

 

「紫毒の天使(ロスト・エンジェル)!」

 

化け物は防御領域(プロテクト・テリトリー)の障壁を展開するも、凄まじい剣圧による斬撃は防御領域を切り裂き、化け物の肉体を容易に斬りつけた。

 

「『ア"ア"ァァガガァァァァッッッッ!!!!!』」

 

断末魔を上げる化け物。

そして更に、斬りつけられた所から紫の閃光が放たれ、追い討ちをかけるが如く切り刻まれた。

 

『ア…アァ…ガ…ァ…』

 

化け物は消沈するかの様に膝を落とし、倒れ込んだ。

 

「ジェシカ…」

 

真那(ドリス)は剣を傘(鞘)に収め、倒れた化け物の姿をしたジェシカへと駆け寄る。

 

『ア…アァ…』

 

「しっかりしやがれです、ジェシカ!」

 

『ア…アァ…マナァ…?』

 

「! そうです、そのまま気を───」

 

『マ…ナァ…ウェスト、コットサマ…キョウ、ジュ…ウェストコットサマウェストコットサマキョウジュキョウジュ───』

 

グシャッ!

 

真那(ドリス)の頬にジェシカだった化け物の気味の悪い血が掠る。

真那の事よりも、『ウェストコット』と『教授』への強い忠誠心の方が勝り、異常な崇拝を向けながら、最期は彼らに使い捨てされる結末を迎えてしまった。

本人は自覚していたのか、自覚していなかったのか分からない。

ただ、一つ言えることは───

 

彼らに…ジェシカに対する期待、情なんてモノは一切無いという事だった。

 

「こんな…」

 

真那は特別、ジェシカに対して友情を感じた事はない。

有るとすれば、日頃から何やら自分への固執が鬱陶しいくらいしつこく、傍迷惑だと感じていた。

 

…だが、彼女の人生をこうも弄ばれて、見て見ぬふりをしてやる程、ジェシカに対して情が薄い訳ではない。

 

頬に掠った血を拭い、『炎』が真那の思いに応えるかの様に消化する。

 

「…許さねーです。

自分達に向けられた敬愛を…

こんな使い捨ての物の様に…

アンタ達は絶対許せねーですっ!!」

 

怒りの方向をDEMインダストリー第一社屋へと向ける。

すると、その第一社屋に異変が生じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっらぁぁ!」

 

『黄の炎』を灯した鉄パイプを振り回しながら、魔術師達を薙ぎ払っていた。

 

「何アイツ! いつの間にか、士道と似た格好と戦いしてるし!?」

 

「驚愕。本当に何者なのでしょうか?」

 

「…なんか、怖いです。」

 

耶倶矢と夕弦は(キッド)の戦いに驚き、四糸乃は合間に感じる異様な視線に恐怖を抱いていた。

 

「全く…双子はどうでも良いが、可愛いロリをイジメるとは、この俺が許さんっ!」

 

(キッド)は再び、『炎』を灯した鉄パイプで魔術師達を殴りかかる。

彼は地を強く蹴って跳躍し、空中の相手と戦っていた。

『ペルソナ使い』として目覚め、喧嘩慣れしているとはいえ、平然と戦っていた事に驚くべきだろう。

因みに初の空中戦にて戦えているのは『炎』の扱いに慣れたとかでもなく、才能でもなく、『ロリコン』という規格外の属性を持っているからだ。

目の前でロリ(今回は四糸乃)が年増に攻撃を受けているのを目撃し、超人的覚醒(?)を果たした(ロリコン)は誰にも止められない!

ロリコンとは恐ろしい生命体、現に四糸乃達は驚愕している。

 

《あの骸骨の人、やたらと四糸乃をチラチラと見てくるんだよねー。》

 

「…ロリコンってやつだよね?

ほら、確か…琴里の側近してる神無月とかがそうだった気がするし。」

 

「嘆息。末恐ろしい人物です。

教室にいる時は机に突っ伏してるか、スマホを見ながら何やら不気味な笑みをしていましたが…まさか、そういう事でしたとは。」

 

「だよね。」

 

彼女達はそんな会話をしながら、魔術師達相手に戦っていた。

 

「疑問。それにしても、士道は大丈夫でしょうか?

姉様がついているとはいえ心配です。」

 

「だよねー、さっきチラッと見たら息を切らし気味になってたし…」

 

「…心配です。」

 

「…あれ? 私達なんで姉様より真っ先に士道の身を案じてるんだろう?」

 

「疑問。何を言っているのですか耶倶矢。

姉様も大事ですが、それよりも士道の方が優先かと。」

 

「…心配です。」

 

「まぁ、そうだよね。」

 

彼女達は徐々に美九の『破軍歌姫(ガブリエル)』の影響が薄れていた。

その原因は狂三が士道に密着しているのを見てからか、それとも美九が士道の事について問いかけてからなのか…少なくても彼女達の士道への『愛』なのだろう。

 

「オラァッ!───うお!?」

 

再び跳躍して殴りかかろうとすると、突如として謎の『桃色の煙』が背後から現れ通り過ぎ、魔術師達を包む。

『桃色の煙』に包まれた魔術師達は戦意を喪失し、無気力な顔になる。

そして、次第に戦意が戻って武器を構えると(キッド)達ではなく自陣の魔術師達へと攻撃し始めた。

 

「な、何だ!? 味方同士でやりやってる?」

 

冷静となった(キッド)がそう呟くと、デオンがブーツに『桃の炎』を灯し、手には『桃の炎』を霧状にして駆け寄って来た。

 

「無事みたいだね。」

 

「あぁ…てか何だそれ?見たり、嗅ぐとなんか頭が…」

 

「あまり嗅がない様にね。

私のこの『桃の炎』は『幻惑の炎』。

見ての通り霧の様な炎でね、この霧は幻覚を見せたり眠らせたりする性質があるの。

今、あの人達には私達の存在を認識できずに味方が私達に見える様に催眠してるから襲ってこないよ。」

 

「お、おう…ヤバい能力じゃねぇか。」

 

「うん、だからキミはあまり嗅がない様に気をつけてね?」

 

デオンがそう語るも、(キッド)はある事に察する。

 

「(ん? 待てよ…その力があればロリ達に催眠かけて、俺の存在を大好きな親に見せて愛でたりする事が出来るじゃねぇか!)」

 

内心でガッツポーズをしていると───

 

『しょうおに〜ちゃ〜ん!!』

 

そこには何故か目の前にいるはずのない幼い子達の群れがいた。

 

「いやー、翔おにーちゃんだってさぁ…相手してあげないとなぁ…」

 

「言ったそばから影響受けてるじゃない!?

戻って! 正気に戻って!」

 

ビシッ! バシッ!

 

と、強めのビンタを(キッド)の顔にくらわした。

 

「んごっ! て、テメェ! 何しやがるだ!?」

 

「ぎゃ、逆ギレは良くないと思うんだけど…」

 

「あぁ!? …いや、待てよ?」

 

(キッド)は少し前のやり取りを思い出し、理解する。

 

「あぁそうか、悪ぃ。

うっし、喝を入れ直すか!」

 

(キッド)は気合を入れる姿勢になって体中から『黄の炎』を溢れさせ、頭痛や顔の痛みを治す。

 

「っ! 怪我を治せるの?」

 

「みたいだな。医者の息子だからかねぇ…」

 

そんなやり取りを黙って様子を見ていた四糸乃達。

 

「な、何? 何者なの?

あの2人───って、霧がコッチに………あれ?」

 

「疑問。夕弦達は一体何を…?」

 

「…何を、していたんでしょうか。」

 

《なーんか、頭にモヤがかかっていたようなぁ…》

 

フラクシナスで琴里達を眠らせて正気に戻した様に夕弦達も正気に戻った。

ただ、彼女達は人間とは違い眠る事なく、似た能力同士の影響が相対して正気に戻った様だ。

それを見たデオンは安堵する。

 

「ふぅ…これで後は───」

 

デオンが呟く途中、DEMインダストリー第一社屋に異変が生じる。

 

空間震が起こっているかの様に、大気が揺れ、気味の悪い夜が更に怪しくなる。

 

一体、士道達に何が起きたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!!

 

ブレイドとナイフのぶつかる音が鳴り響く。

士道(ルパン)がエレンへと攻撃をしかけ、エレンはその攻撃を正面から堂々と受け止める。

 

「こんなものですか?」

 

「まだだ!」

 

ガキンッ! ガキンッ!

 

士道(ルパン)は素早い動きをしながらエレンへと攻撃をする。

しかし、士道(ルパン)の攻撃は悉く防がれる。

 

「ちぃっ!」

 

士道(ルパン)は思わず舌打ちを溢した。

そして、今度はエレンからの反撃が襲いかかる。

 

「っ!」

 

士道(ルパン)はエレンの攻撃を上手く躱したり、ナイフで受け流したりして回避する。

 

「くっ…」

 

(攻撃の一つ一つが重い。

細かい動きでも難なく防がれる。

…このままでは体力を無駄に消費するだけ…なら!)

 

士道(ルパン)はナイフに『黒い炎』を灯す。

それを見たウェストコットが反応する。

 

「ほう…イフリートの炎…ではないな。

成程、それがシャドウを滅する事のできる力か。」

 

ウェストコットを興味深そうにそう呟いた。

だが、戦いに集中している為士道(ルパン)の耳に入らなかった。

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

叫びながら士道(ルパン)は素早く動きながら、『炎』を纏う攻撃を放つ。

エレンはその攻撃をブレイドで受け止めるが、先ほどよりも威力が上がっており、一瞬苦渋の顔になる。

 

「(…っ! 先程よりも、力が上がっている!

真那の時といい、その力は一体…っ!?)」

 

そして、次第にエレンは力に抗っていると、自分の腹に激痛が走る。

 

「ぐぅっ!」

 

士道(ルパン)が『炎』を纏ったナイフに意識を誘導させ、蹴りを入れたのだ。

それにより、一瞬力が緩むのを確認すると士道(ルパン)は透かさずナイフを形態変化させ鎧腕にする。それにより、渾身の拳を放つ!

 

「おおぉっ!」

 

黒い閃光を放つ拳を放つ───

 

が、何かに阻まれるかの様に凄まじい火花が散る。

エレンが防御領域により完全に防いだのだ。

 

「何…っ!?」

 

士道(ルパン)が閃光を放つ拳を連続で放つが全て無効にされる。

 

「私の随意領域(テリトリー)は全魔術師(ウィザード)の中で最強です。

アナタのその攻撃は私にはもう通用しないっ!」

 

攻撃を反射させるかのように、士道(ルパン)を吹き飛ばす。

 

「くうぅ…」

 

士道(ルパン)は体勢を直して苦言を漏らすが、今度はエレンが飛びかかり士道(ルパン)は咄嗟に鎧腕を盾にする様にガードする。

 

「ちぃっ…!」

 

「フッ…攻撃ばかりで防御には弱いようですねっ!」

 

「ぐっ…!」

 

エレンの剣圧に士道(ルパン)は険しい顔になる。

 

(早い…そして重いっ!

コイツ、精霊じゃないのに何でこんな力があるんだ…?)

 

士道(ルパン)はエレンの強さに圧倒されていた。

 

(けど、俺はこの一ヶ月で力をつけたんだ!

その成果を…お前に見せてやるっ!)

 

士道(ルパン)は防御している状態で、『黒の籠爪(ブラック・アームズ)』を展開する。

 

「ぬうっ…!」

 

「くっ…」

 

士道(ルパン)の底力でエレンを吹き飛ばし、『黒の籠爪』の状態でエレンに向けて弾丸を放つ!

 

「おおっ!」

 

士道(ルパン)は『黒の咆哮(ブラック・ロアー)』を放った。

特訓の成果は何も士道(ルパン)自身の新技、アルセーヌの技、『黒』と『青』の『炎』を合わせた大技、そして自身の『炎』の性質だけではない。

『黒の籠爪』の状態で『黒の咆哮』を放つ技術を手にした。

力の消費はデカいが効果は覿面だった。

『黒の籠爪』の力が合わさった『黒の咆哮』は通常の数段上がった力と速さを誇った。

これに技名を当てるのなれば、そう。

 

(黒の轟砲(ブラック・バニッシュ)ッ!)

 

「!?」

 

エレンは再び防御領域を展開させようとするも、間に合わず、咄嗟にブレイドで防御する。

だが、その力に負け、ブレイドは砕かれ、衝撃を受ける。

 

「ぅ…っ。」

 

エレンは地に着地するも、体から煙が少し上がっていた。

そんなエレンにウェストコットは呼びかける。

 

「大丈夫かい? エレン?」

 

「…えぇ、問題ありません。」

 

エレンは死傷はない様にスッと立ち上がる。

 

「ご心配をおかけしました。アイク。」

 

「いや、キミなら大丈夫だと思っていたさ。

しかし、彼中々やる様だね。まさか、キミが傷を負う所を見るとは思わなかった。」

 

「えぇ。見て分かるとおり、彼は実力者です。」

 

エレンは士道(ルパン)を見てそう告げる。

これまでは自分の圧倒的な力に慢心してしまっていた。

だが、未知なる力を持って自身を退ける士道(ルパン)を見て認識を改める。

彼は慢心して良い相手ではないと。

 

「ほう、キミにそこまで言わせるか。」

 

「はい。ですので───」

 

エレンから凄まじい闘気(魔力)を発し、雰囲気を変える。

 

「本気で殺しにかかります。」

 

エレンはブレイドを素早く取り出し、士道(ルパン)へと猛攻を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレンとの戦いを見ているウェストコットは愉快そうにしていた。

 

「ん〜。良いね。エレンのあの活き活きとしてる顔は実に久しいな。

()()以来じゃないかな?」

 

ウェストコットは意味ありげにそう呟いた。

すると、ウェストコットは隣から金属の音が鳴り、気がつく。

 

「おや、良い所で目覚めたね。プリンセス。」

 

そう、エレンの随意領域によって気絶していた十香が戦闘の音に反応し、意識を回復させた。

 

「…何だ?」

 

目覚めたばかりで視界がボヤけているが、その瞳に大切な人が写り、意識を完全に目覚めさせる。

 

「シドー! シドー!!」

 

十香は思わず叫び上げる。

それは助けに来てくれて嬉しいのか、それとも…

大切な人が自分のせいで巻き込まれたと思っての悲痛の声だったのか。

 

「ハハハ…無駄だよ。

キミの声は届かない。

それに、目の前には対精霊用特殊ガラスが展開されている。

仮にキミの『天使』を用いても破壊する事は不可能さ。

だから、キミの声も届かない。

まぁ、これほどの戦闘をしているんだ。気づく訳がないよ。」

 

「キサマッ!」

 

十香はいけ好かないウェストコットに殴りかかろうとするも、身動き取れずにいた。

 

「フフフ…まぁ、見ていたまえ。」

 

ウェスコットは面白そうに告げるた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんですか…この人達…」

 

美九は士道(ルパン)達の戦いを見て戦慄していた。

人間を遥かに凌駕している精霊だというのに、目の前の戦いについていかないでいた。

士道(ルパン)に下がる様に見られ、渋々従い、隙を見てエレンを『天使(ガブリエル)』で洗脳し、十香も助けて洗脳し、気味の悪い男を下し、士道(ルパン)の言葉の真意を確かめてやろうと考えていたが、その全てが瞬時に無にかえす。

自分はこの場において足手纏いだと肌で、本能で理解したからだ。

 

「…あの人、本当に…本当に人の為に戦うんですか?

自分が…あんなに傷ついていても…?」

 

美九の瞳に写るのはエレンの攻撃によって傷つき、苦しい顔になったり、血が飛び散る士道(ルパン)だった。

 

自分だったら逃げ出しているのに、彼は逃げる事なく戦っている。

 

羨ましい。

 

そう思った。そこまでしてくれる人が身近にいて、そう思わずにはいられない。

 

そう思うと、ふとあの言葉が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆んなが大切だから!

誰も傷ついて欲しくないから!

一人でもいなくなったら嫌だから!

女の子には笑って欲しい!

幸せになって欲しいから!

辛い思いをしている精霊みんなのために、俺は戦うんだ!』

 

『無論、キミにもそうなって欲しいから、俺はキミに近づいたんだ。』

 

『…じゃあ、何ですか。もし、私が危ない目にあったら十香さん達の様に助けに来るとでも言うんですか?』

 

『あぁ。勿論、助けに行くさ。』

 

『俺はもうキミを知った。

ならどんな状況だって、駆けつけに行くさ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの人は…本当に誰かの為に…」

 

戦いを見ている美九はそう小声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁっ!」

 

「フンッ!」

 

士道(ルパン)とエレンは互いに狭い空間の中、高速で戦っていた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

「…っ、やります…ねっ!」

 

士道(ルパン)はエレンの斬撃を少しづつ受けており、体の至る所から血が流れていた。

エレンは士道(ルパン)とまでいかないが、数箇所から爪傷や『炎』を受けた傷が出来ていた。

 

「…っ。」

 

士道(ルパン)はエレンから離れ、銃を取り出して素早く『炎』を装填し、放つ。

 

「黒の咆哮弾(ブラック・ショット)ッ!」

 

『黒の炎』の弾丸がエレンを襲う、だがそれを防御領域で容易に受け流す。

 

「フッ…それで終わりですか?」

 

「…っ!」

 

エレンの挑発に士道(ルパン)は乗っかり、今度は『黒』と『青』の炎を掛け合わせて放つ!

 

「無閃(セロ)ッ!」

 

凄まじい黒と青の光線がエレンを襲うも、防御領域を展開して防御する。

今度は同等の力がぶつかり合い、凄まじい火花が散り、拮抗していた。

 

「…っ! これは中々!」

 

流石のエレンも苦渋な顔をしながら、耐えていた。

 

(無閃でも倒しきれない…ッ!

なら、この技で!)

 

片手に黒い霧を発し、それを領域全体に渡るように放つ。

 

(黒の絶霧(ブラック・ミスト)ッ!)

 

黒い霧がエレンの防御領域を中心に広がるも、下で戦った魔術師の様に無力化する事が出来なかった。

 

(何!?)

 

霧を発せられて疑問に抱いてるエレンを見て、士道(ルパン)は動揺する。

 

(…さっき言っていた、『最強』ってのは伊達ではなかったのかよっ!?)

 

心の内で苦言するも、段々と視界が霞んでいくのを感じる。

力を消費していき、焦りを感じた。

 

(なら…ここで打って出るしかないっ!)

 

士道(ルパン)は決意を固め、更に畳み掛ける。

 

「アルセーヌッ!」

 

士道(ルパン)はアルセーヌを顕現させ、『鎮静の炎』を強く発生させると、それを圧縮し始める。

 

「…っ!(アレは…以前現れた…っ!)」

 

「ほう…」

 

エレンは士道(ルパン)からアルセーヌが出現した事に驚き、ウェストコットはエレンから聞いており、興味深そうに目を細めていた。

 

「時雨の波紋(ブルー・ノヴァ)ッ!」

 

水の様な『炎』はエレンの防御領域を覆うと、防御領域を抑制し、徐々に剥がされていき、無閃と共に相殺され消える。

 

「んなっ!?」

 

「…っ、今だ!!」

 

士道(ルパン)は『無閃』と『時雨の波紋』の攻撃により疲労が襲う中、トドメを指す様にアルセーヌと共に飛び上がり、『蒼炎』を強く発火させる。

 

「蒼炎の波動(インフェルノ)ッ!」

 

荒れ狂う『蒼炎』をエレンへと強く叩きつけた。

そして、直撃したのか、『蒼炎』による爆発が生じる。

煙が漂う中、士道(ルパン)は汗を沢山掻き、息を荒くしながらも勝ったと思い込む。

大技のオンパレードだ。持てる力を使い、報いてやったのだ。

効いてくれなければ困るものだ。

 

「…はぁ…はぁ…、んっ…これで俺の───」

 

士道(ルパン)がふとニヤリとするが、嫌な予感が襲った。

煙から人影が見えただけでなく、何やら異彩を放つ槍を携えていた。

煙が晴れると、エレンは凄まじいオーラを放つ()()()()()()()()を握っていた。

 

「まさか…これを使う事になるとは思いませんでした。」

 

エレンはそう呟いた。

ガラスの向こうにあるウェストコットは勝利を確信した笑みを浮かべていた。

 

「ふむ。エレン、どうやらそれを使った様だね。

───なら、キミの勝利は確定した。」

 

()()()を知っているウェストコットはそう告げた。

 

「認めましょう。五河士道。

アナタは強い。

これを使うに値する者として誇りなさい。」

 

エレンがそう言うと、槍からとんでもない質量の光を放ち始めた。

 

「ただし、あの世でですが。」

 

エレンからの死の宣告により、空気が一変する。

 

「聖槍───抜錨!」

 

『聖槍』と呼ばれるその槍は名を呼ぶ事で更に周りを圧倒する。

 

その名は、()()()()()()()

 

それは、伝説の剣と並ぶ力を持つ伝説の槍

 

アーサー王が持っていたとされる『宝具』である。

 

 

 







・ジェシカ戦はこれで終了しました。
ただ、あまり納得いかない感じがするのは…
スカーレット・リコリスの要素を活かしきれなかったのがなぁ…
ジェシカがどういった感じの化け物へと変貌したかここで分かりやすく言うと、BLEACHの東山の帰刃による虚化ですね。

・さて、エレン戦なのですが…
今回で終わらせたかったけど、無理でした。
いやー、それにしても強い、強すぎるよエレン。
真那が強い感じで圧倒していたから原作寄りかと思いきや、全然そんな事のない原作以上の強者として立ち塞がりました。
それとロンゴミニアドまで出てきました。
因みに形状としてのイメージはFGOのアルトリア・ランサーの槍です。
…今の所はそれだけ伝えときます。

・さぁ、エレンとの戦闘も次で決着がつきます。
…大体察するだろうけども、どう展開していくのかお楽しみ下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。