美九編後半(騒動編)ラストです。
それではどうぞ。
…そして、いよいよ今回で長かった謎のペルソナ使いの正体がっ!?
とあるホテル
「ふむ。」
ワインを飲み干し、事の全てを見ていたマリスは目を細めていた。
「『反転』したプリンセスは彼等の元に戻ったか。
ま、どうでも良い事だ。
それより、今回の騒動は実に愉快な劇場だった。
私の慈悲を無駄にしようとした
まぁ、良い結果を残してくれた。
このデータを元に更に『アンプル』を完成に近づける事が出来るだろう。
『TYPE-Ⅱ』、『TYPE-Ⅲ』の強化に向けての必要経費だったとしておこうか。
それよりも…だ。
───精霊の『反転』により
初めてこの世界に『
ジェシカ・ベイリーの事を『出来損ない』。
アレとは『白い人型巨大ロボット』。
その二つのことについて渋い顔をしていたが…
マリスがグラスにワインを入れ直すと、部屋に人が入って来る。
「やぁマリス。
今回の『お祭り』はどうだったかい?
私は存分に楽しめたよ。」
ウェストコットはウキウキとした口調でマリスに語りかける。
「フフフ…キミは上機嫌だね。
無論、私も実に楽しめたよ。」
マリスはウェストコットの分のワインを注ぎ、グラスを渡す。
「それは良かった。」
ウェスコットは渡されたワインを取る。
「今回の事に関して語りたい所だが…
常に一緒にいる執行部長殿はどうしたんだい?」
「エレンは今、治療中さ。
想定以上にルパン…いや、五河士道がそれなりの手練れだったようでね。
勝ったものの、それなりの怪我と消耗をした訳さ。」
「…そうか。ダイナは彼について、大した事の無いやつと言っていたからね。
少し意外な意見だったな。」
「そうなのかい?
ふむ、彼女は相当実力があるのだね。」
「あぁ、実力では執行部長に匹敵…
いや、私の予想では上回るだろうと思っているよ。」
「ほほう。」
ウェストコットはマリスの言葉に興味を抱く。
「その彼女は…何処にいるんだい?」
「あの子は…戦場だった所を直接の見に行きたいといってね。
キミ達と入れ違いという形になるのかな。」
「おや、そうだったのかい?」
「とはいえだ、今回の実験は実に愉快だった。
祝いに乾杯しようではないか。」
「良いね。」
カツンとグラスを当てた。
「我々の悲願成就の為に───」
「───乾杯。」
戦場となった半壊したDEM日本支社を遠くからから見物していた人物がいた。
「…」
丸いキャンディを手にしていた、少女であった。
「…アレが我らの悲願成就の為の世界。」
数時間前に出現した『穴』…『異界』を思い出す。
「この穢れた世界に、不純物である『人間』の世界に、終止符を打つのは…この───」
ガクッ
ポリポリとまだ硬いキャンディを噛み砕く。
「もう少し…もう少しだけの辛抱だ。
『その時』は来る。」
その狂気を宿す瞳は一体、何を感じているのだろうか。
◇◇◇
「!?」
意識を取り戻し、速やかに体を起こす折紙。
「ここ…は?」
「あ、折紙さん! 目を覚ましたのですね!
ここはASTの特殊医務室ですよ。」
折紙の問いに答えたのが、後輩のミケが答えた。
「私…は。」
折紙はミケの言葉を聞くなり、直ぐに自分に何があったのかを思い出していた。
「私は…そう、DEMの魔術師達と戦い。
その後に…」
「そ、アンタはホワイト・リコリスを使用した影響で気絶。
私達は民間人に気づかれない様、直ぐに撤退した訳。」
次に折紙達の部屋に入った、隊長の日下部が答える。
「そう。…あの後、何が起きたの?」
「まず最初に言うと、天宮市は滅茶苦茶になったわ。
アリーナ会場周辺の民間人はディーヴァによって洗脳され、パニック状態。
DEMからは大人しくしろとあの社長さんが指示した影響でウチは待機。
…そんで、今は民間人達の健康調査も兼ねて事態の隠蔽にDEM日本支社周辺の建物の修復中ってところね。」
「そう……
っ! 隊長、士道は、士道はどうなったの!?」
無理に体を起こそうとする。
心は動かそうとしても、体は正直。
激痛が走り蹲った。
「落ち着きなさい。
一先ず、彼に関しては大丈夫な筈よ。
被害者のリストに彼の名前は上がらなかった。
何なら、避難シェルターにいた経歴があったそうよ。」
「そう…なら、良かった。」
折紙は安堵の溜め息を吐いた。
「今は
DEMは今回の騒動を引き起こした原因だから、上層部がアレコレしている間、暫くは上から目線で語る事はないでしょう。
いい気味よね。」
「…」
それに関しては全く眼中にない折紙だった。
「けど…問題はここからよ。」
日下部は深刻な顔になる。
「ホワイト・リコリスの無断使用の件は一応、私の指示として伝えた。
後からあーだなのこーだの言われるだろうけど、あまり耳にしなくてもいいわ。」
「了解。」
「あはは…」
「けど、どう転がるかは分からないわね。
今は事態の収集で後回しにされているだけで、処罰は後々来るから、アンタも覚悟しておいて。」
「…分かっている。」
「…とまぁ、ここまでにしておきましょう。
今は待つ事しか出来ない訳だから。
怪我を治す事に集中していなさい。」
そう言って、部屋を後にする日下部だった。
◇◇◇
「…あらあら、派手にしましたわね。士道さん。」
半壊したDEM日本支社の瓦礫の上に腰をかける。
「…」
狂三は士道の流した大量の血に視線を送り顔を曇らせる。
【十の弾(ユッド)】を使用しなくても理解できる。
士道の身に何が起きたのか、どれだけ無茶をしたのかを。
「…全く、本当に困ったお方ですわね。」
狂三は士道に告げられた事を思い出す。
『───けど、お前が危機に陥ったら、何処であろうと絶対に助けに行くからな。』
「…そのアナタが危機に陥っているではありませんの。
そのお人好しな所は控えた方がいいですわよ。
士道さん。」
「あらあら。そうは言っても、心配でわたくしを忍ばせた『わたくし』が言えた事ではありませんわね。」
影から狂三の分身体が現れる。
「…さぁ、何のことですの。」
恥ずかしそうに顔を隠す様に立ち上がる狂三だった。
「しかし…薄々分かってはいましたけど。
『第二の精霊』
この世界で二番目に顕現したとされる精霊。
その身に宿す『天使』の能力や所在は一切分からないでいたが、狂三は最初に顕現した『始まりの精霊』について調べている所、精霊に関して異常な程理解のあるDEM…
いや、正確にはアイザック・ウェストコットであるのだが、彼の息がかかったある建物にて彼女について情報を手にしたのであった。
その情報は正に狂三が知りたい事、『始まりの精霊』に近づける唯一の手段を有する力、即ち『天使』。
その能力は
過去・現在を知る能力である。
それを知った狂三は今現在、血眼になるくらい探し求めているのである。
「アイザック・ウェストコットにエレン・メイザース。
あの2人が
やはり、それは無かったですわね。」
嘆息を吐く言い方をする。
「…あらあら、それではわたくし達の努力は無駄になってしまったと?」
「いいえ、本命は空振りに終わりましたけど、士道さん達について知れましたわ。」
士道達『ペルソナ使い』。
以前、崇宮真那に遭遇した所で精霊とは違う力を察知し、士道に似た何かを感じ取っていた事からそれについても色々と模索していた。
しかし、それが今回判明した。
神話に童話といった存在が形となって振る舞う事が出来る力。
士道の『アルセーヌ』
崇宮真那の『ランスロット』
天宮翔太の『セイテンタイセイ』
デオンを名乗る少女の『シュヴァリエ』
と、加えてそれぞれ色の違う『炎』を扱い、『シャドウ』に関して有効な力を有していると。
「加えて、士道さん達にはそれぞれの『炎』を宿している。
真那さんは『紫』
翔太さんは『黄』
デオンさんは『桃』
士道さんは『黒』と『青』
士道さん以外は一つでそれぞれに能力を有している。」
愉快そうに士道達について語るも、次の事には目を細めて語る。
「そして…アイザック・ウェストコットの目的に精霊以外にシャドウも利用しようとしている事。
デオンの前に現れたという『白い人型巨大ロボット』。
シャドウと融合したバンダースナッチ『機械生命体』。
「これだけの情報を手に入れたのですもの。
それだけでも士道さんに手を貸した甲斐はありましたわ。
…それに、士道さんに優しくして貰いましたし…
頭も、撫でて頂きましたわ。」
頬を赤く染めながら狂三は微笑む。
そんな
「さて…わたくし達もここから離れるとしましょう。
嗚呼…ただ、一つ気になるのはデオンと名乗るあのお方。
一体何者でしょう?
あの後ろ姿…まるで、女装した士道さんに似ていたのは気のせいでしょうか。」
そんな事を呟くも、思い当たる事もないので考えのをやめる。
クルクルと踊りながら影中にへと姿を消した。
◇◇◇
フラクシナス
「…シドー。」
十香は窓の向こうにいる酸素マスクを付け、医療用顕現装置(リアライザ)で治療を受けている士道を見て呟く。
十香以外にも琴里、四糸乃、耶倶矢、夕弦が心配そうに顔を曇らせていた。
「士道…さん。大丈夫…なのですか?」
《意識不明の状態で、琴里ちゃんの再生能力も上手く機能していないんだよね?》
「…ええ、こんな事は初めてだわ。」
四糸乃とよしのんの問いに琴里は顔を暗くしながら答える。
「士道、大丈夫だよね?
明日には…元気になっているよね?」
「不安。士道、早く元気なアナタに会いたいです。」
精霊組が不安な心境になっていく。
今の彼女達の精神メーターを見れば間違いなく
皆が心配し、少し時間が経つと治療室から令音が出てきた。
「令音! 士道はどうなの!?
私と士道の
「…落ち着くんだ、琴里。
皆もまずは落ち着いてくれ。」
令音からそう言われて皆は一旦大人しくなる。
「…ん。理解してもらえて助かるよ。
…シンについて、率直に言うのなら体の方は完治した。
琴里の霊力による
その言葉に皆は表情を少し明るくする。
「…だが、シンの意識が戻らない。
恐らく、相当の無茶をしたため精神と身体のズレのような現象が起きているのだと推測される。」
令音の言葉に皆はまた顔を曇らせる。
「…すまないね。
本当ならばあまり心配かけさせたくはないのだが…嘘をつくのも良くないと判断した。」
「…いいえ、令音は何も悪くないわ。
後は士道が早く目を覚ますのを待つだけって事で良いわけね?」
「…あぁ。」
琴里は令音の心情を察して深呼吸して、そう告げた。
令音は手を強く握り締めて、何も出来ない自分を追い詰めているのだと理解したからだ。
「…皆、聞いてちょうだい。」
琴里の言葉に皆が注目する。
「士道の事が心配で気になるのは仕方ないわ。
けど、いつまでも落ち込んでいると、士道の回復の妨げになるわ。
そうしないためにも、私達はいつも通り元気に過ごすのよ。」
琴里の言葉に皆は頷く。
「それに、目が覚めたら皆んなで士道を支えてあげましょ。」
[!]
琴里の言葉に皆は目を見開く。
そして、次第にコクリと頷く。
「…うむ、琴里の言う通りなのだ。」
「…はい!」
《はーい!》
「承知した。」
「承諾。分かりました。」
「そのためにも、皆の怪我も見てもらいなさい。
特に十香。
アナタはこれからバイタルチェックも兼ねて行うからね。」
「う、うむ。」
と、首元や腕など所々に包帯を巻いている十香は頷く。
「それじゃ、令音。
士道は任せたわよ。お願いね。」
「…あぁ、任せてくれ。」
琴里は皆を連れて精霊専用の治療室へと向かった。
「…さて。」
令音は再び士道の眠る治療室にへと入る。
そこにいたのは昏睡している士道。
椅子に座り、士道の手を握る。
「…」
令音は昨夜の事を思い出す。
『無事に帰ってきてくれ。』
『はい。』
「…無事じゃ、ないじゃないか。」
令音は目を細め、悲しそうな顔をする。
『そんな深刻な顔もしないでほしい。
令音さんは───誰よりも笑顔が似合う人だから。』
以前に告げられた事を思い出し、士道の手をおでこに当てる。
「…なら、私を…私を笑顔にしてくれ、
そう呟く中、令音の瞳から一粒の涙が流れる。
◇◇◇
暗闇の中、自分は誰かの手を引っ張りながら逃ている。
『何に』、『誰か』なのか分からないが、必死に逃ている。
「───」
引っ張ってる誰かは何かを告げている。
しかし、自分はそれを
何故なのか、その理由も分からない。
そうして、走って逃げてを繰り返していくと目の前に立ち塞がる者が現れる。
「───」
「───」
そいつが何かを言い、自分が否定する。
振り向いて、再び逃げようとした瞬間───
バンッ!
銃声の音が鳴り響く。
その音と共に自身の体に激痛が走る。
「───」
自分の胸に『穴』が開き、血が流れていた。
「───」
後ろの者が何か呟きながら、
笑っている奴の顔が一瞬露わになる。
その『
死体の様な真っ白すぎる肌に、いかにもいけ好かない様な男だった。
◇◇◇
「………令音さん?」
「!?」
令音は声を聞き、振り向く。
そこには薄ら瞼を開いていた士道だった。
「泣いちゃ…駄目です…だって…令音さん…は…」
士道は令音にそう告げる。
女性が泣いている。
それだけで、何があっても起きてしまうのだ。
「……泣いてないさ。
さ、疲れているだろう?
今日はゆっくり…ゆっくり眠るといい
───士道。」
令音は士道の頭を優しく、優しく撫でる。
「…はい。お休みなさい…令音さん。」
優しい手で、温もりを感じながら、再度士道は眠りにつく。
◇◇◇
「やれやれ…今回は流石にハラハラしたな。」
夢界は自室にて、一人呟いていた。
あれから、士道の身を案じていたデオンや真那に問い詰められ、それを何とか説得させていた。
「まさか…まじで死ぬとは思わなかった。
少々、甘くみすぎてたな。」
額に手を当てて反省していた。
翔についてはフラクシナスについて軽く説明し、日を改めて説明すると説得させた。
「とはいえ…変身云々の話の途中、タイミングよく解けて『メガネ』が現れただなんて、都合が良すぎやしないか?」
【別にいいじゃないか。
彼に関しては突如、現実離れした世界に紛れ込んだもの。
多少な強引さがあったてもう驚きも疑いもしないだろうさ。
現に彼は特に気にしてなかっただろう?】
夢界の問いに謎の声が答える。
今現在、夢界のいる部屋には誰もいない。
電子機器による音声でもなく。
あたかも、
「…まぁ、それに関しては良いか。
それにしても…だ。
奴らめ、
そう言って、パソコンを起動する。
そこに表示されていたのは、限られた限り盗んだデータだった。
【人間とシャドウを融合させる技術『アンプル』。
そして、シャドウを利用した『兵器』か。
随分とシャドウを利用しているじゃないか。
一体…何者だろうね。
『マリス・エンワード』。
彼に関して調べてみたが…特段、
なのに、今ではアイザック・ウェストコットの影の参謀にして研究部長。
何より…
「…」
【…おっと、私が『この世界』に干渉できるのはここまでのようだね。
色々と気になる事は多々あるが…
まぁ、そこは『キミ』がいるんだ。
問題ないだろう?】
「あぁ、問題ないぜ。」
【…フフ、コレは中々面白い物だね。】
意味ありげな事を言って、声は途切れた。
「…さて。」
夢界は画面に映るデータを見ていく。
「やれやれ…士道、ウェストコットが難敵なのはよく理解しただろう。
流石に今回で倒せるとは思えなかったが…
正直に言ってしまうと…
この先…奴が行なっている事、仕掛けて来る事にお前は挫けず、前に進めるか?
…いや、進まなければならない。
お前は【破滅の運命】を阻止しなければならない。
でなければ…」
夢界はそっと、画面を閉じて告げる。
「この世界は滅びる。」
◇◇◇
数日後
今現在、士道は天宮アリーナ会場のある場所に向かっていた。
アレから天央祭は延期となった。
本来なら中止になっても可笑しくはないのだが、天宮市が誇るビックイベントが無くなってしまうのは市としては困るのだろう。
故に延期して今、行われているのだ。
あの日、美九が起こしてしまった出来事は全てテロリストによる仕業だと報道された。
令音さんや神無月さんから聞いた話ではラタトスクも関与しているそうだが、殆どはAST側の者達が裏で手を回した結果だそうだ。
それに関してツッコミ所が多いのだが…やめておう。
数分が経ち、士道はある部屋の近くに向かう。
そして、琴里に連絡を入れる。
『どうしたのよ? 十香達が士道を探してるわよ。』
「…悪い琴里。俺、生きて帰れるか分からない。」
『…はあ!? ちょ、ちょっとそれどういう───』
琴里が事情を聞いて来る前に士道はインカムを外した。
「ふぅ…」
深呼吸してドアをノックする。
「はーい!」
「…俺だ。」
「…どうぞ。」
許可を得て、士道はドアを開け中に入る。
「…本当に…本当に、来てくれたのですね。」
「…あぁ、約束だからな。」
士道は美九との約束を守るために来た。
ここに来るまで、美九から手紙を貰っており、控え室にいる時間と人気がいないルートを教えてもらったのだ。
「…まずは美九。
皆んなを解放してくれてありがとう。
お陰で十香を救えた。」
美九は静かに士道に近づく。
「…今度は俺が約束を守る番だ。
俺を───」
士道が言いかけた所で美九は
士道の唇に自分の唇を当て、キスをする。
「!?」
突然の事で士道は目を見開く。
そうしている間にも美九の服が消えてゆく。
実の所、美九は霊装の姿で待っていたのだ。
長めのキスから離れる。
「み、美九…? ど、どうして?」
「何故って、『だーりん』の目的は霊力の封印なのでしょう?」
「だ、だーりん?」
「ふふ。」
美九は自ら裸の体を士道に押し付け、士道の胸元から士道に告げ始める。
(〜〜〜!?
み、美九の…美九の胸とか胸とか胸とか!
あ、当たってるぅぅぅぅぅ!!
し、しかも…令音さんに負けない大きさ───)
心中で美九の裸体を堪能してる士道に美九は更に体を寄せながら語り続ける。
「アナタは約束を守ってくれました。
自分が…どうなるか分からない。
死んでしまうかもしれないのに、アナタは来てくれた。」
「そ、それは当然だろ?
だ、だって約束だから───」
「ええ。だから私は…私の全てをアナタに託せられます。
アナタは私を裏切らない。
何があっても一緒にいてくれる。
助けてくれる、素敵な人だって。
分かったから。」
「美九…」
「アナタなら…だーりんなら、信じられます。
例え、『声』を失っても、皆が私の歌を声を聞いてくれなくても。
───だーりんは私の…側に…いてくれますか?」
「当たり前だ。
何があっても、キミの側にいる。
キミの味方でいる。
キミの…『居場所』でいる。」
「!! ありがとう、ございます…だーりん!!」
「おわ!!」
美九に押し倒される形で士道は倒れる。
この状況を他の者達に見られれば…
士道はどうなるのだろう。
『セクシャルビースト』
『人気アイドルに手を出した狼男』
様々な呼ばれ方をするだろう。
そして、士道は周りから何言われようとも、美九に何かあるとすれば士道は反抗するだろう。
士道は…
…だが
もし…もし。
この場に…
大切な『家族』が目撃すればどうなるだろうか。
「シドー!? 琴里から聞いたぞ!?
生きて帰らぬとはどういう───」
…答えは言うまでもないだろう。
「士道!! また地獄の戦場に向かうとは───」
「返答。一体何があったの───」
「士道さ───」
十香に続き、耶倶矢、夕弦、四糸乃とやって来る。
「な、ななななな、し、士道…
お主また…女を裸にひん剥いたのか!?」
「…警告。士道、どうしてこうなったのか。
詳しく…お聞かせください。」
「…士道さん。」
《いんやー、士道くん。
女の子の取り替えする癖はどうにか方が良いかもしれないねぇ…》
ゆっくりと、罪人に罰を与えるが如く歩み寄る。
「ちょっ! ちょっと待ってくれ皆んな!
これは霊力───」
「うふふ…
だーりんに服を奪われてしまいましたー。
そ・れ・もー、もっと
「あのぉ!? 美九さん!?
誤解を招く真似はやめてもらって良いですかぁ!?」
[(ゴゴゴゴゴッッッッッ!!!!!)]
死が…士道にへと歩み寄る。
「ま…待ってよ…皆んなぁ…」
「…シドォォォォォォォォォォ!!!!!」
十香を筆頭に士道の至る所にへと噛み付く。
「あ"あ"あ"ぁぁぁーーー!!!!!!」
士道の叫び…断末魔が鳴り響く。
◇◇◇
『令音急いで!
士道が…おにーちゃんの身に何か迫ってる!』
インカムから琴里の切羽詰まってる声が聞こえる。
琴里は今、フラクシナスにいない。
だから、士道の現状を把握できていないのである。
「分かっている! 直ぐにシンの居場所へ辿り着く!」
令音は普段のクールな雰囲気を出しつつも、声は切羽詰まっていた。
数日前に命に関わる事件が起きたのだ。
無理もないだろう。
「シン!」
令音が士道のある部屋に辿り着くとそこには───
「あ"あ"あ"ぁぁぁーーー!!」
「ガルルルルル!」
十香が士道の頭を噛みついたいる場面であった。
それに加え、他の精霊達も士道にお仕置きをしているという絵面。
「…これは。」
「キャァァァ!!
スタイルの良いお姉さんが来てくれましたぁぁぁ!
だーりんといると、沢山の美少女に美女に恵まれますぅ!」
生まれたての姿…裸体の状態でお目目を爛々とキラキラさせている美九が令音を見て興奮し始めていた。
「…あぁ、そう言うことか。
霊力の封印に成功したのか。」
ラタトスクの目的が突然成功した事に喜ぶべきだろうが…
今回は胸にチクリと突き刺さる感覚に襲われた。
「……やぁ、シン。随分と楽しそうだね。」
「いや、楽しく見ないでしょう!?
この現状を見てぇ!!」
「令音! 聞くのだ!
シドーが美九の大切なモノを奪ったというのだぞ!?」
ピクッ
十香の言葉を聞いて、何故か無性にイライラと感じ始める。
「…琴里。シンが女の子の大事なモノを奪ったそうだ。」
『…何ですって? 直ぐに私もそっちに行くわ。』
「ちょっ! 何で琴里にまで連絡を入れてるんですか!
そんな事をしたら殺されちゃうじゃないですか!?」
士道の言葉に耳を傾けず、令音は士道の元まで歩み───
頬をつね始めた。
「詳しく事情を聞かせてもらおうか。」
「いででででで…」
令音による尋問も始まる。
そして数分後、琴里が般若の様な顔をしてやって来る。
◇◇◇
天央祭が終わり、一段落ついた頃
士道達は日常へと戻り、いつも通りの学校。
毎朝行われるホームルームを迎えていた。
「はーい! 皆さーん、おはようございます!」
久しぶりに見たタマちゃんが担任としての業務を行っていた。
「先ずは、天央祭ご苦労様でした!
一日目は大変な事があって、色々と台無しになってしまいましたけど…
優勝は我が校、それも一番の功績はなんと、このクラスでした!」
[イェーイ!!]
タマちゃんの言葉にクラスの者達が喜び騒つく。
「うぅ…ひぐっ。
私…このクラスの担任やれて嬉しいですぅぅぅ…」
タマちゃんは目から滝の様な…噴水の様な涙を流していた。
(本当に…良い先生だよな、タマちゃん。
それにしても、スッゴイ涙だな。
実現出来るのか、それ。)
「…岡峰先生。お気持ちは分かりますが…落ち着きましょう。」
副担任の令音がタマちゃんを落ち着かせる。
「す、すみません。村雨先生。」
ゴホンッと咳払いしてタマちゃんは落ち着きを取り戻す。
「そして、そんな皆さんにビックニュースです!
なんと…今日からこのクラスに新しい生徒が転校してきます!」
ザワザワ…
クラスの者達がざわつき始める。
「さて、大変お待たせしました。
中に入ってきてくださーい!」
タマちゃんが笑顔で指示を送る。
それにより、ドアが開き中に転校生が入る。
だが、その人物は───
「おお!!」
「また会えて良かったぁぁぁぁぁ!!!!」
「放課後に俺、行くわ!」
副担任の令音はさっきまで眠たそうにしていたのだが、転校生を見てクールな表情から一変し、驚きが隠さないでいた。
令音に次ぐクールな折紙も、その人物を見て驚愕し、士道と交互に見始める。
十香は「ん? んん?」と首を傾げ、士道を見る。
夢界は分かっていた様な顔をしていた。
そして、士道はというと───
「え?」
素っ頓狂な声をあげ、口を開き、目をメガネと同じ様な形で丸くしていた。
士道と同じ青色をした美しい長髪
モデルの様なスタイル
転校生は士道に向けてニコリと笑顔を送り、口を開き始めた。
「今日からこのクラスの生徒になります。
───『
よろしくお願いします。」
そう、その転校生とは天央祭にて士道の助っ人として現れた人物。
だが、それは女装した士道の筈。
故に、その人物が存在している事に士道達は驚きを隠せないでいた。
・ここまで長かったなと感じるなぁ…
どうも黒ソニアです。
美九編後半(騒動編)はコレにて終幕でございます。
いや、分かる。
最後に現れた人物について…語りたい事が多いですが…
ようやく出せました。
さぁ…彼女は一体何者なのか。
それは次回…
すみません、次回では判明しません!
その前に番外編を挟みます。
気になる事を語ってくれない焦らしになってしまいますが、番外編も力を入れるので、楽しみにしてください!