デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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ようやくこの作品の新ヒロイン、士織ちゃんを出せれた。
いやー、ここまで長かったなぁ。
タイトルを幕間にして他の事も加える予定でしたが、士織ちゃんの話だけで一話が作れました。
実はこれでも、大分カットしたというね。





【第8.5章(集結編)】
番外編9:雨宮士織


 

 

 

「あ、雨宮さん。いや、士織さん。

アナタと初めてあってからキミの事ばかり考えてました。

突然ですけど、俺と付き合って下さ───」

 

「お前なんかが士織さんの相手になるわけないだろ!

んん…士織さん。

今日の放課後、予定空いて───」

 

「おい、お前も狙ってるじゃねぇか!」

 

クラスの男性陣はまだ会って間もないだというのに、彼女を呼び捨てにしているのはいかがなものであろうか。

 

「ちょっと、男子共。

いきなり馴れ馴れしくない?

雨宮さん困ってるよ。」

 

「美人だからお近づきになりたいからって、強引は良くないよねー。」

 

「マジ引くわー。」

 

「大丈夫よ、雨宮さん。

私達がついてるから。」

 

「にしても、突然転校して来るのはビックリ!

しかもイギリスから来たって事は帰国子女?」

 

「マジ引くわー。

美人な上にステータス強いとはやるー。」

 

3トリオが男性陣達を軽くあしらいながら、人混みで困っていた士織を助けていた。

 

「あ、ありがとう。」

 

士織は笑顔でそう答える。

 

『雨宮士織』

 

イギリスからやって来た転校生。

その容姿、美貌に惹かれて違うクラスから多くの生徒が拝見しに来る。(主に男子。)

 

「…」

 

多くの視線を送るのさ何も男子だけではない。

士織を後ろの席から用心深く観察している者がいた。

そう、鳶一折紙である。

 

「え、えぇと…」

 

「あぁ、気にしないで。

鳶一さん、ああいった所があるから。」

 

「ちょっと変わってるとだけ理解してもらえれば。」

 

「そーそー。」

 

「そ、そうなんだ…」

 

士織は思わず若干引き気味な返事をする。

まぁ、折紙の事なら仕方ないだろう。

 

「それに、鳶一さんの本命は五河くんだしねー。」

 

ビクッ

 

その言葉に士織は大きく反応を示す。

 

「そういえば、あの時士織さんって五河くんのヘルプで来てたけど…どういった関係なの?」

 

「あー、それ。私も気になってたー。」

 

「弱みを握られてるのなら、遠慮なく言って。」

 

周りが士道との関わりについて聞いて来る。

それについては折紙も分かりやすく聞き耳を立てる。

 

「それはね───」

 

士織は語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

その一方で、士道は令音に連れられて物理準備室にへと連れて行かれていた。

因みに十香も一緒である。

 

「さて…シン。

早速だが、彼女について教えてもらいたい。

どういう事なんだい?」

 

「そうだぞ、シドー。

あの時のはシドーだろう?

なのに何故、あの様な女がいるのだ?」

 

「いいや…それが俺にもよく分かっていないんだ。」

 

士道は正直に答えた。

 

「…むう、令音。

シドーは何も知らなさそうだぞ。」

 

「…その様だね。

だとしたら、彼女は一体…」

 

「…」

 

(士織…士織?)

 

今となって、士道は少し昔の事を思い出す。

5年前、琴里が精霊となって起こしてしまう前、唯一仲が良かった友人がいた。

初めて出来た友人で、仲睦まじかったが、彼女はあの火災により海外にへと引っ越してしまった。

 

(アレ…彼女はもしかして…でも、何で?)

 

士道は士織の事を考え、ある事を思い出す。

天央祭のある出来事である。

 

 

 

 

 

『うん、近いうちに…キミに会えるから、その為の準備だよ。』

 

 

 

 

 

「アレって…そう言う事だったのか。

だとしたら…彼女は───」

 

士道が察すると、物理準備室のドアが開く。

 

「どうやら、気がついた様だな。」

 

その人物は夢界だった。

 

「…夢界藍。何故キミが此処に?」

 

「いやー、士道なら気がつくと思ったからな。」

 

「…夢界、彼女は『デオン』なんだな。」

 

士道の言葉に令音は察して驚く。

十香は未だ理解できずき首を傾げていた。

 

「ああ、よく分かったな。」

 

「それと…士織は───」

 

「その様子だと完全に分かった様だな。

気がつかない様子だったら、ヒントでも与えようとしたが…余計な気遣いだったな。」

 

「…夢界、お前が説明をしないでいたのって、こう言う事だったのか?」

 

「まぁな。」

 

士道はある程度の事を察した。

とはいえ、まだ疑問に思う事がある。

 

何故、彼女が『ペルソナ使い』になったのか。

 

その答えを知らなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道達は教室にへと戻る。

 

「…」

 

目の前にはクラスメイトに囲まれている士織。

陰キャである士道にはその群れの中に語りかけるのには至難の業である。

 

(…今じゃなくてもいいか。

昼…または放課後にでも声を掛けれれば…

いや、それも難しいか。

何処かのタイミングを伺って───)

 

士道が考え事をしていると、士織が士道に気づいて目線が合う。

すると、士織は士道に笑顔を送り、手を振る。

 

「…!」

 

彼女の笑顔にドキッとする士道。

 

「…シドー。」

 

嫉妬の目線を送る十香。

 

「あ、いや、十香?

───ヒッ!?」

 

十香だけでなく、折紙も嫉妬の視線を送り、クラスの男子が溜まりに溜まった殺気を送る。

 

「五河くん、意外な一面があったんだ。」

 

「人は見かけによらないってこう言う事だったんだねー。」

 

「…マジ引くわー。」

 

女子達は士道に意外なものを見る視線を送っていた。

 

「…」

 

周り全体から送られる視線に士道は丸メガネを曇らせ、困惑するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

実のところ、士織(彼女)に声をかける事が出来なかったのである。

常に人が駆け寄り、士織(彼女)も人が良く、柔和な笑みで対応し、授業でも難問も容易に答えており、クラスの者やクラス外からも人気者となっていた。

 

「…どうしたものかな。」

 

士道が呟きながら帰りの支度をしていると、士道に士織が駆け寄る。

 

「士道くん。」

 

「ん?」

 

「この後、予定大丈夫?」

 

ザワザワ

 

クラス内がざわつき始めた。

 

「あ、ああ。勿論。」

 

「そっか、良かった。

()()()()()士道くんと遊びたかったんだ。

だから、一緒に帰ろ?」

 

「あぁ…丁度、俺の方からも用があったんだ。」

 

「良かった!」

 

士織は嬉しそうに手を合わせると、士道の手を取って教室を後にしようとする。

 

「皆さん、またね!」

 

士織はクラスの者達に挨拶し、教室を後にする。

その際、クラスの男子達は嬉しそうにするも、次第に士道に対しての憎悪の視線を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふふーん♪」

 

士織は気分が良いのか、鼻歌を歌っていた。

 

「…」

 

士道はそんな士織を見つめていた。

 

「なんか久しぶりだね。

こうして、一緒に帰るの。」

 

「…そう、だな。

うん、5年ぶり…だな。」

 

「うん、やっと思い出してくれた?」

 

「…あぁ。まさか、『キミ』だとは思わなかった。」

 

無論、士道は士織(彼女)の事を忘れてなどいない。

だが、デオンの正体が、士道に陰で手を貸してくれたのが彼女とは思えなかったのだ。

当然だ。

別に何も『士織』という名前は彼女だけを示す訳ではない。

この日本中ではどこでもいそうな名前である。

だから、『士織』と名乗っていた事に何も疑問を抱かなかったのである。

 

「それは無理ないよ。

僕も逆の立場だったら分からないだろうし。」

 

「…そう、だな。」

 

士道はぎこちない感じで答える中、会話を続けるために思った事を問う。

 

「なぁ、士織。

今、一人称を『僕』にしてるのは何故だ?

学校とかでは『私』で通してたじゃないか?」

 

士道がそう聞くと、士織はムッとした表情で答える。

 

「そんなの、士道くんだけは特別だからだよ。」

 

「特別…?」

 

「うん。

だって、女の子が『僕』だなんて、世間では疑問視されるでしょう?

昔はそれも原因で虐められたからねぇ。

だから、外ではお淑やかに『私』にして、家族や大切な人の前では本来の僕でありたいの。」

 

「そっか…

でも、別に『僕』のままでも良い気がするけど。」

 

「?」

 

「だって、士織は士織だ。

例え、昔みたいに何か言われても、俺がずっと一緒にいる。」

 

「…!」

 

士織は士道を見て今の士道()が昔の士道()と何も変わらないと知る。

それが嬉しくてつい頬が緩む。

 

素敵な(そういう)所は変わらないね、キミは。」

 

「ん?」

 

「ふふ。でも、良いの。

僕の全ては大切な人にだけ知って欲しいから。」

 

「…!」

 

士道は笑顔で語る士織にドキドキするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道達が二人で歩いている所を離れた所から見ている者達がいた。

 

「…ねぇ、あれが今日転校してきた子?」

 

「…そうなのだ。」

 

「…困惑。どう見ても、女装した士道です。」

 

上から耶倶矢、十香、夕弦が語る。

 

「いやね、あの時の士道の方が士織ちゃんに寄せてたんだけどね。」

 

そうフォローするのは夢界。

しかし、相手にされないのであった。

 

「アナタ達は勘違いをしている。」

 

何故か折紙までもが十香達と一緒に士道達を尾行していた。

いや、彼女は常にやっている事であった。

 

「疑問。マスター折紙、それはどう言う事でしょうか。」

 

「女装した士道の方が、放出されているフェロモンが強い。

そのフェロモンは私のDNAが躍動し、潜在能力の全てを開花させるもの。

彼女にはそれがない。」

 

「…ふぇろもん(?)とやらは知らぬが、そうだ。

シドーの方がシドーなのだ。」

 

「あ、いやね、十香ちゃん。

さっきも言ったけど、あの時は士道の方が寄せてたからね?」

 

夢界がそう言っても無視される。

 

「夜刀神十香。

アナタとは普段波長が合わないけど、今は同意する。」

 

「…ねぇ、何で無視されるの?

これ、前にもあったよね。

ねぇ、どう言う事なの? ねえ?」

 

「フェロモンとか正直よく分からないけど、士道に近いのずるくない?」

 

「肯定。耶倶矢の言う通りです。」

 

「むむ…むむむ…

ズルい、ズルいズルいズルいぞ!!!

私もシドーと一緒にいたいのだ!!!」

 

「そう、そのポジションは私にこそ相応しい。」

 

女子達は嫉妬の視線を送る。

それを感じてなのか、士道は適度に体を振るい上げるのだった。

 

「…皆、落ち着きたまえ。」

 

そんな十香達に大人として前にでる令音だった。

 

「そうそう、流石は令音ちゃん。

ついでに俺の事もフォローもしてくれると───」

 

「今は様子を見るんだ。

彼女がシンに迫った時には全力で阻止するんだ。」

 

[おお!]

 

令音の一言により、十香達は距離を詰めていくのであった。

 

「…ねぇ、何でさ。」

 

夢界はただ一人にされるのであった。

 

「おおい、夢界。

お前まで何で実行委員の最後の後処理をしねーんだよ。」

 

そんな夢界に声をかけるのは翔である。

 

「よお、天宮。

お前は俺の事を無視しないよな?」

 

「ああ? 何を言ってんだお前?

…あぁ、アレってもしかして例の転校生か?」

 

「そうそう。本物の士織ちゃん。」

 

「ふーん。

確かにあの時の女装した士道にそっくりだな。

んじゃ、とりまコッチを手伝えよ、夢界。」

 

「え? それだけ?

しかも、最後の後処理って何よ?」

 

「何って、会場で使われた金額と稼いだ金の集計とかやる事あんだろ。

士道の奴は実質、実行委員から外れたみたいなもんだし、お前はコッチを手伝えっての。

後、俺はロリじゃねぇ時点で誰だろうと興味がねぇや。」

 

「あ、そうだったな。お前。」

 

夢界はトホホとなりながらも実行委員の最後の仕事にへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、士織。

今、どこに向かっているんだ?」

 

士道は問いかける。

 

「僕としてはこのまま買い物とかしたい所だけど…

士道くんとしては私の事を知りたいんだよね?

何で『ペルソナ使い』なのか。」

 

「…あぁ。」

 

「その説明をするのに、もう1人。」

 

士織は士道を連れてあるマンションにへと誘導する。

そこは五河家に近い場所であった。

 

「ここに、今住んでいるのか。

いつから天宮市(ここ)に帰ってきたんだ?」

 

「帰って来たのは夏にだよ。」

 

「一ヶ月前からか…ご両親は?」

 

士道が両親について問いかけると、士織はニヤつく顔になる。

 

「それは…僕のお父さんにお母さんに『娘さんを下さい!』って?」

 

「え?」

 

「ふふ…半分冗談。」

 

(冗談…半分冗談?

え、ええ?

どう言う事なの? 士織さん?)

 

士道が心の中で疑問を抱く中、マンションに入ろうとすると、見覚えのある人物が出て来る。

 

「残念。中に連れて紹介したかったのに。」

 

士道はその人物を見て驚愕する。

その人物とは───

 

「あ、士織さん今お帰りでやがりますか?

───あ、兄様!!」

 

士道を見るや否や、真那は士道に飛びついた。

 

「真那!」

 

士道は真那を優しく受け止め、無意識に頭を撫でる。

 

「へへ…兄様!

お会いしたかったです!」

 

「あぁ…勿論、俺もだよ…

ん? 真那が居るって事は。」

 

士道は士織に顔を向ける。

 

「うん。真那ちゃんは私と一緒に住んでるの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五河邸

 

時刻は夕方の18時頃。

今、五河家には多くの人でリビングは一杯だった。

 

「さて、話し合いましょうか?

デオン…いえ、雨宮士織?」

 

黒リボンの司令官モードの琴里がソファで脚を組みながら問いかける。

 

「この場に夢界がいないけど、アナタから答えて欲しい事もあるからね。

アナタが一体何者なのか、何故真那と一緒にいるのかをね。」

 

琴里の言葉で皆が険しい顔になる。

十香、耶倶矢、夕弦は士道を含めて士織を威圧しており、四糸乃とよしのんは上手く分からない状況で令音がそれを宥めながら、十香達同様に士道にプレッシャーをかけていた。

因みに夢界はもう少し時間かかるかると、後に翔を連れて来ると連絡があり、美九は学校とアイドル絡みで遅れているのであった。

因みに折紙はこの場にはいないが、住所は知られました。

 

(…何で、俺まで正座させられてるだろう。

何で…十香達はそんなに怒ってるの?

令音さん…まで、どうしてそんなプレッシャーを放ってるの?)

 

士道が正座しながら困惑していると士織が口を開き始める。

 

「えぇと、まずもう一度自己紹介するね。

私は雨宮士織。

改めて、よろしくお願いします。

士道くんとは5年前にこの天宮市で仲良くしてました。」

 

「5年前…?」

 

琴里はその言葉に何か引っ掛かるものを感じた。

それは、何故かファントムに霊結晶(セフィラ)を与えられる前の事、士道と見知らぬ女の子が共に出かけている所だった。

 

「…あ。」

 

そして、琴里はその事を理解した。

あの時の女がコイツなのだと。

 

「もしかして、私の事知ってたかな?」

 

「アンタは…私の誕生日におにーちゃんを奪った泥棒女ぁぁぁっっ!!!」

 

「…え、ええ?」

 

琴里が怒り叫ぶ事に困惑する士織だった。

 

「私のおにーちゃんの初笑顔を奪った女が、何処の馬の骨の女かと思ったけど、アンタだったとはねぇ!

此処で会ったが百年目!

地獄を見せてやるわぁぁぁ!!!」

 

琴里が暴走する。

 

「し、士道くん、助けて!」

 

「え、あ、あぁ。

お、落ち着けよ、琴里!

別に初めて笑顔を見せた訳ではないだろう?

そりゃ…あの頃は色々とあって、あんまり笑わなかったけど…」

 

「私はハッキリ見たのよ!

あの時のおにーちゃんの顔をぉぉぉ!!!」

 

「ま、待て、落ち着けって琴里!

───あ"あ"あ"ぁぁぁーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…(※琴里の暴走を身を挺して受けた士道)」

 

士道は倒れる。

 

「全く…何で士道が庇うのよ。」

 

「まぁまあ、落ち着きやがれです。琴里さん。

そんなのだから、私よりも妹序列が下なんですよ。

大丈夫ですか? 兄様?」

 

それを一人、落ち着いている真那が言う。

 

「ちょっと…何で真那は人事の様に言ってるのよ。

後、妹序列はアンタのが下だから。」

 

「へ?

いや、私の方が上でやがりますが?」

 

「アナタは何でその女と一緒にいるって事よ!

私がナンバーワン妹よ。」

 

「そりゃ…私は兄様との深い深ぁーい絆で結ばれてますので、兄様の力を有する事出来たんですよ。

それで、ナイトメアを探しながら、力試しでシャドウを狩っていたんですよ。

そんな時に夢界さんから指示があって、士織さんと合流したって訳ですよ。

いえ、ナンバーワン妹は私です。」

 

「…そこでアイツが出てくるのね。

真那が行方不明の中、悠長にしていたのは自分が関わっていたからね。

いいえ、私がナンバーワンよ。」

 

「ま、真面目な会話をしながら士道の妹について語り合っているし。」

 

「驚嘆。どっちも引けを取っていません。」

 

「…!」

 

痺れを切らした琴里は真那に飛び蹴りを放つ。

 

「フッ…」

 

それを真那は見切り、脚を上げて難なく防御する。

 

「はんっ! そんなので勝ったつもり?」

 

「いえいえそっちこそ、こんなので私に勝てるとでも?」

 

琴里と真那による妹序列の戦いが始まる。

漫画にありそうな展開…拳、蹴りによる乱舞、格闘が始まる。

(※周りに被害はありません。)

 

「大体、琴里さんは兄様に対して直ぐ暴力で制裁する時点でもうダメなんですよ!」

 

「はぁ!? これは愛の鞭よ!」

 

「愛の鞭ぃ?

ただ一方的に兄様を痛めつけているだけでやがりませんか!」

 

「んな訳ないでしょ!

これでも、手加減してるのよ!

士道だって、そんなの理解してるわよ!」

 

琴里の言葉に皆は倒れている士道にへと視線を向ける。

令音が士道の確認をする。

 

「…これは…気絶してるね。」

 

「全然加減できてないし…」

 

「ほうら、見た事ですか!

ただただ兄様を痛めつけているだけではありませんか!」

 

戦いながらも真那と琴里も視認していた様だ。

 

「〜〜〜!!!

仕方ないでしょ!

愛ゆえに加減できなかったのよ!」

 

「何が愛ゆえですか!

愛なら真那の方が優ってますよ!!」

 

「「はぁぁぁぁぁ!!!」」

 

戦いの規模が段々と激しくなる。

家の中だと言うのにドラ⚫︎ンボールの様な戦いをし始めていた。

(※これでも周りに被害はありません。)

 

「…やれやれ、シン。

キミは人気者だね。」

 

しれっと令音は士道を抱き寄せる。

 

「ちょっと待ってください。」

 

それを防ぐ様に士織が士道を自身に寄せる。

 

「そのポジションは僕がやります。

ですので、士道くんを離してください。」

 

「…丁重に断ろうか。」

 

「「…」」

 

令音と士織の無言の睨み合いがここに勃発する。

 

「ちょ、ちょっと!

何か勝手に士道の争奪戦始まってない!?」

 

「奇襲。そのポジションは夕弦がやります。

そもそも、士道は私達八舞姉妹のモノです。」

 

耶倶矢と夕弦…もとい、八舞姉妹が士道の取り合いに参戦する。

 

「むう〜〜〜!!!

こらぁぁぁ!!!

シドーは渡さんのだぁぁ!!」

 

士道大好きっ子…十香も痺れを切らして参戦!

 

「…っ!!

だ、ダメです…し、士道さんは、譲れません…っ!」

 

《行っけーい、四糸乃!

士道くんを独占するんだよー!》

 

普段大人しめの四糸乃も参戦する。

 

「ぐぬぬ…我が眷属、十香よ!

貴様は大人しくしておれ!」

 

「ぐぬぬ、シドーは渡さん!

ぜぇぇっったいに渡さんのだぁぁ!!」

 

「抵抗。士道には夕弦の抱擁が必要です!」

 

「わ、私だって…負けてないです!」

 

《そうだよー、四糸乃の方が抱擁力が高いんだよー!》

 

琴里を抜いた精霊達は負けずと気絶している士道を引っ張る。

 

「…皆、一旦落ちつくんだ。

シンが苦しそうにしている。」

 

一番士道を独占している令音がそう言うも、説得力はない。

 

「…あの、いい加減にしてくれませんか?」

 

士織が声を暗くしながら言う。

それも何処か、涙声になっていた。

 

「…僕、士道くんにずっと、ずぅっと会いたかったんです。

5年前にあの火災が起きて、イギリスに渡った後でもずっと彼に会いたくて、会いたかったんです。

…そしたら、知らないうちに世界を救うために女の子にナンパしてデレさせて、キスをするって聞いた時…僕がどれだけ…どれだけ辛かったか、分かるんですか!?」

 

士織は気絶している士道を令音から奪い取り抱き寄せる。

 

「皆さんには申し訳ないですけど、僕の方が士道くんを想っていますので、皆さんは一歩身を引いてください!」

 

5年間士道を思い続けた士織(乙女)の必至の訴えもあったのか、一瞬静かになる。

 

…しかし、こんなので引くような十香達(乙女達)では無かった!

 

「…5年前とか言われようが、シドーは譲らんっ!」

 

十香は負けずと士道の手を引っ張り始めた!

 

「ふふん、何を言おうが士道は既に我ら八舞のモノである!」

 

「警告。夕弦達の士道への想いは5年間想い続けた士織にも負けませんっ!」

 

八舞たる耶倶矢と夕弦も負けずと士道を渡すまいと引っ付く。

 

「…そう、です。

私だって、士道さんの想いは、負けてません!」

 

《そうだよー、よく言ったね四糸乃!》

 

四糸乃も皆に負けずと士道にくっつく。

 

「…アンタ達ねぇ。」

 

いつの間にか真那との喧嘩を辞めていた琴里が近寄る。

 

「士道の想いは…私の方が上だぁぁぁ!!!」

 

琴里が力一杯、士道を奪い取ろうと飛びつく。

 

「ちょっ…っ! 取らないで!

僕の士道くんをっ!」

 

「アンタのじゃ無いわよ!

私のなの! 私のおにーちゃん、私のなの!」

 

「否! 我等のである!」

 

「肯定。耶倶矢の言う通りです!」

 

「…っ!」

 

「むぅぅぅぅ!!!!

シドーは誰だろうと渡さんっ!!」

 

琴里に士道を奪われない様に士織は抵抗し

 

続いて耶倶矢と夕弦が二人同時に仕掛け

 

四糸乃は必死に士道にしがみつき

 

十香は士道に胸に抱きつき始めた。

 

今、目の前に広がる光景は気絶している士道に、想いを馳せる乙女達が奪い合っていた。

 

「おおう…に、兄様…ふ、不潔でやがります。

ろ、六股だなんて…

し、しかしですね!

そんな兄様でも慕う真那なのでいやがります!」

 

一拍遅れて真那も士道に抱きつき始めるのであった。

 

「…」

 

令音もその光景に沈黙しながらも、何らかの理由で士道争奪戦に参戦しようかと考えていると、玄関のドアが開き、リビング部屋のドアも開く。

 

「あらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

士道にくっついている女の子達を見てお目目を煌めかせ、ある一人の人物を見て更に輝かせる。

そう、先週攻略した精霊…美九である。

 

「皆さんでだーりんの取り合いですかぁぁぁ!?

でしたら私も混ざりますぅぅぅ!!

だーりんも独占したいし、皆さんも独占したい…はっ!?

そうです、皆さん同時に独占しちゃいましょぉぉぉ!!」

 

[う、うわぁぁぁぁぁ!!!!!]

 

美九が皆を見て美味しそうにヨダレを垂らす姿を見て、皆は身の危険を感じ、恐怖を抱く。

皆が騒つく中、美九は士道を抱き寄せる士織を見る。

 

「え!?

だーりんとだーりんの女装した姿の筈の士織さんが…実在してるぅ!?」

 

「えっと…確かアナタは───」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!

本物!! 本物の士織さぁぁぁぁぁんっっ!!!!」

 

「え、ちょっと、やめ───」

 

士織に飛び掛かる美九に間一髪で回避する士織。

 

「あぁん! 逃ないで下さい、士織さぁぁぁん!!!」

 

「あのぉ! 何か怖いんですけど、この人!」

 

「フッ、ちょうど良いわ。

彼女は美九に押し付けましょう。」

 

「…いやぁ、琴里ちゃんも中々酷いね。」

 

ドヤ顔をしている琴里に美九と一緒に五河邸に入った夢界がそう告げる。

 

「…アンタも来たのね、夢界。」

 

「まぁね。

士織ちゃんについて俺からも説明をしようかと馳せ参じたんだけどぉ…それどころじゃないね。」

 

美九から逃げる士織、巻き込まれた真那に精霊組を見ながら夢界は語る。

そして、そこに更に客人の翔がリビングに入り気絶している士道を指さす。

 

「なぁ、士道の奴倒れてね?

───いや、それよりも!」

 

翔は琴里、逃げ回ってる真那に四糸乃を見ると、恍惚した顔になる。

 

「おいおい、ここは天国か何か!?

麗しの四糸乃ちゃん(天使)真那ちゃん(天使)琴里ちゃん(天使)…嗚呼、なんて素晴らしい。」

 

「…あぁ、そうだな。

でも、全員士道大好きっ子達だからお前には脈はないぞ。」

 

「は?」

 

翔はこれまでに見たことのないキレた般若顔になる。

 

「おい…それって、つまり…皆んな…士道にしか眼中になくて…俺には…」

 

「おん。だから脈ねぇって。」

 

「ざっけんなぁ!! 士道ぉぉ!!」

 

翔が気絶している士道を揺さぶり始めた。

 

「ぅぅ…しょ…翔…?

いらっしゃい…」

 

「おう、邪魔するわー。

───じゃねぇ!!

何で、お前だけがロリ達にモテるんだよぉぉ!!」

 

「おい、やめとけ翔。」

 

夢界が翔の肩をポンと叩く。

それにより、翔が正面を見ると───

 

[(ゴゴゴゴゴッッッッッ!!!!!)]

 

凄まじい殺気を放つ女子達が翔を睨む。

 

「あ、いや、な、仲良しー!!」

 

翔は無理にでも士道と仲良しアピールをする。

そして、再び女子達は士道の奪い合いが始まる。

 

[ぐぬぬぬぬぬぬっ!!!]

 

「…なぁ、俺はこれからこの光景を見る羽目になるのか?」

 

「あぁ、そう言う事だな。」

 

「…ちくしょう。

年増達はともかく、ロリ達に抱きつかれるのは羨ましすぎる…ちくしょぉぉぉう!!!」

 

「…なんか今日の俺、最初以外テンション低いわ。」

 

夢界はしょんぼりとし始めるも、そんな夢界を無視して女子達は士道の取り合いを始める。

 

「…皆んな、シンがボロボロだよ。

とりあえず、シンを安静にさせて目覚めてから真面目な話し合いを始めようか。」

 

年長者の令音が指示していく。

渋々皆は落ち着く…も、意識が朦朧としている士道は令音に抱き寄せられ、頭を撫でられて寝息を立て始める。

その様を目の当たりにして黒いオーラを放出させるのであった。

 

「…この調子で仲良く話し合い出来るのかねぇ。」

 

夢界は溜め息を吐くのであった。

 

 

 





・士織ちゃん登場話、これで良いだろうか。
一番絡ませたかった美九との絡み合いは正直上手く出来てる自信ないけど、長引かせると終わりが見えないので、こんな形にへと進みました。
いやー、それにしても士道くん羨ましいなぁ(血涙)
そして、最後にしれっと美味しい所を持っていき、終わるのがこの作品の令音クオリティ…

・はい、前回の番外編に続いての番外編ですが、今回は士織の自己紹介ストーリーみたいなもの。
彼女のメイン回は…おっと、この話は一旦置いておくとしようか。

・ここでさらっとこの作品自体のおさらいしておきます。
番外編には二種類と分けてありまして、前回の『日常』の茶番がメインなお話。
そして、今回のは『まとめ・総集編』のお話。
方針を例としたちょっとした大事なお話がこれに含まれます。
まぁ、今回は茶番に近い様な気はしますが、士織というキャラの紹介がメインなので『まとめ』の分類に…
後は過去がメインの『追憶編』。
嵐前の静けさとなる『幕間編』。
と、分けられております。

・次回は番外編10となりますが、茶番よりも真面目要素多めの『方針2』となります。
夢界くんがDEMで手にした情報が明らかとなるメイン回となります。
次回をお楽しみにして下さい。



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