デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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デート・ア・ライブⅤが迫る中、士織編スタートです。





【第9章】士織編『繋がる花』
第一話:新たな幕開け


 

 

 

ザーザー

 

心地よい潮風による波の音。

 

クゥー クゥー

 

雲一つのない快晴の空にてカモメが鳴きながら飛んでいる。

 

ザーザー

 

着々と寒い季節が迫る中、その日の海は夏の暖かみが残り、とても穏やかな気持ちにさせる。

 

パシャパシャ

 

水を踏む音が鳴り響く。

 

「───」

 

水をパシャパシャと踏み鳴らす、その女性は美しい。

 

その綺麗か海と同じ色をした煌びやかな長い髪を靡かせ

 

水飛沫による水滴がその美しい女体を更に輝かせる様に流れ

 

その美貌は多くの者の視線を奪う宝玉だ。

 

「───士道くーん♪」

 

『国宝』と呼んでも差し支えない美貌を持ったその女性は思春期真っ最中の青年を刺激させる。

 

「───」

 

その青年は美しい女性の誘惑にゴクリと息を呑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいるのは見慣れない教室

 

知らない景色、光景の筈なのに、()()()()()()()()()

 

「───」

 

ザワザワ ガヤガヤ

 

誰か何か語っているのに何を言っているのか全く分からない。

 

「───はぁ。」

 

意図してやっているわけではないが、溜め息をしている自分。

とはいえ、今の気持ちを表しているともいえる。

 

ガラガラ

 

扉が開く音が無性に耳に入る。

扉が開いたのと同時に周りの視線がその扉にへと向けられる。

 

「───!?」

 

自分は扉にいる───を見て、驚愕する。

 

「───」

 

…相変わらず、その人物が分からない。

だが、その人物が()()()()()()、自分を見つめながら何かを手渡す。

 

「───」

 

自分は恥ずかしそうにしながら受け取り、その人物に感謝の気持ちを向けていた。

渡されたのは…体操服らしき物だった。

…が、その体操服は来禅高校の物では無かった。

 

 

 

 

 

これは…一体…どう言う事なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コツン コツン コツン

 

怪しい足跡が鳴り響く。

 

「…」

 

その人物…男は不気味なオーラを纏いながら無言で、何やら怪しいモノでつながれ、横たわっている女を見つめる。

 

「…ふん、こんなものか。」

 

男はつまらなさそうに呟きながらも、機器を操作する。

 

「うぅ…っ…」

 

女は眠っている状態で呻き声を上げる。

 

「頑張りたまえ、キミの努力は私の研究に強く貢献する。」

 

その言葉に反応し、女は必死に期待に応えようと苦痛に耐える。

 

「…フッ。」

 

男は嫌な笑みをしながら、更に出力を上げていく。

 

「うっ…くっ…ぁ…」

 

「その調子だ。」

 

男はモニターを見てそう呟くと、次第にその場から離れて行く。

そして、ある扉の前に立ち、暗唱コードを入力してその部屋にへと歩んで行く。

 

そこにいたのは、生物の様な『青い機体』だった。

 

男はそれを見るや、語り始める。

 

「『TYPE-Ⅰ』はあっさりと破壊されてしまったが…お前はそうならずにあってくれよ。

───『TYPE-Ⅱ』。」

 

邪悪の笑みを溢しながら男はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルベットルーム

 

ギシンッ!

 

金属の鈍い音が耳に刻まれる。

それ故に目が覚める。

 

「…ここは、ベルベットルーム。」

 

士道は立ち上がり、檻の前に立つ。

 

「ごきげんよう、我等が素敵な怪盗様。」

 

士道を見てラヴェンツァは語る。

その表情は何処か安堵をしているものだった。

 

「なんか…久しぶりだな。」

 

「そうですね…それだけ、アナタが大変だった。

と言う事でしょう。」

 

ラヴェンツァは何とも言えない表情になり始めた。

 

(…そうか、ことの顛末を知っているのか。)

 

士道はどう答えるか迷い始めた。

すると───

 

「んんっ!」

 

イゴールが咳払いをする。

 

「まずは、大いなる試練を乗り越えた事、お疲れ様でした。」

 

「乗り越えた…で、良いのかな。」

 

「ええ、それは間違いなく。

私達共々はアナタが苦難を乗り越えると信じておりました。

ただ…アナタが『死』を迎える事になるとは思いませんでしたが…」

 

「…『死』か。

俺はあの時、死んでいたのか。」

 

士道は()()()()()()()()

 

「はい。

春の時とは違い、生命の死を感知していました。

アナタの身に宿している炎の精霊(イフリート)の加護が機能しなかったからです。

しかし…アナタは奇跡を起こした。

寸前で意識を…自ら魂を呼び起こしたのです。」

 

「魂…を?」

 

士道がそう問いかけると、ラヴェンツァが手に抱いていた本を開く。

本から光の玉が浮かび上がり、少しづつ灯火が消える様な演出をし始めた。

 

「主人の仰った通り、アナタは意識が消えていく中、魂を取り戻す様な形で炎を燃え上がらせたのです。」

 

消えゆく灯火が突如として少しづつ復活していくものだった。

 

「我々は安堵と共にその理由を模索しました。

しかし、それに該当する答えまでは出せませんでした。

アナタはどう震え上がらせたのですか?」

 

「どう…って。」

 

実の所、士道には自身に何があったのか分からなかった。

覚えているのは尋常ならぬ苦痛と意識が途切れる感覚だけ。

 

「…すまない、分からない。

あの時の事は全く覚えがないんだ。」

 

士道は素直に答えた。

 

(とはいえ…誰かに会っていた気がするが…気のせいだろうか?)

 

「そうですか。

…アナタのペルソナや精霊の力を封印する力がアナタを寸前で救った…と言う所でしょうか。」

 

イゴール達は士道が嘘をついておらず、分かっていないのを理解すると、何が起きたのかを考え始めた。

しかし、ラヴェンツァはその答えに辿り着けず、話を変え始める。

 

「それは兎も角として、アナタは新たな力を手にしました。

───仲間という力を。」

 

「あぁ…翔の事だよな?

まさか俺に力を目覚めさせる力があるとは知らなかった。」

 

「『ペルソナ使い』は共鳴し合う事があります。

彼にはその潜在能力があった。

それ故に、破滅する運命に抗おうとするアナタの想いが強く動いたのでしょう。」

 

「破滅する運命…【破滅の運命】の事だよな。」

 

士道は決意を固めて問い始める。

 

「教えてくれ、【破滅の運命】とは何だ?

俺に…何が迫っているんだ?」

 

「それは分かりません。

アナタに初めてお会いした時にお伝えした通りとしか…我々もそれが何なのかを知りたいのです。

それが───この世界に招かれた我等の行動理由でもあります。」

 

「この世界に招かれた、だって?」

 

士道は目を大きく開く。

 

「左様。」

 

今度はイゴールが答える。

 

「我々は()()()()()()()()ではありません。

何らかの原因で『シャドウ』がこの世界に漂流した事が理由なのか、アナタの導き者としてここにいます。」

 

「…」

 

「とは言え、アナタにこれについて語らなかった事、深くお詫びします。」

 

「…いや、大丈夫。

仕方の無い事だと思う。」

 

(これで何処か警戒心を向けられている理由が分かった気がする。)

 

イゴール達について少し理解していく士道。

そして、ラヴェンツァが口開く。

 

「ですがご安心を、我々はアナタの味方として最大限に役目を果たすと断言致します。」

 

「…あぁ。頼りにしている。」

 

互いに微笑み合う。

すると、少しずつ意識が途切れていく。

 

「…時間が迫っておりますね。

最後に、我々としては未だ夢界藍達について疑問視している所がありますが…」

 

「敵じゃない。

士織も真那も大切な仲間だ。」

 

「ええ。

アナタならそう言うと思っていました。

なので、我々も彼女達を味方だと認識した上でサポートして参ります。

…そして、アナタ自身について伝えたい事です。

一度、『死』を体験した故なのかアナタ自身の力が強くなっております。

それを生かして頑張ってください。」

 

ラヴェンツァがスカートの裾を軽く上げて答える。

 

「あぁ。助言ありがとう。

頑張って行くよ。」

 

「えぇ。期待しています。」

 

ラヴェンツァがそう答えると夢は醒めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

懐かしい様な朝の囀りが鳴り響く。

 

「…うーん。」

 

士道は朝に弱いため、ベットから起きれないでいた。

すると、ガチャッとドアの開く音が耳に入る。

恐らく琴里が遅い士道を起こしにきたのだろう。

 

「…もう少しだけ寝かせてくれ、琴里…」

 

「起きないと駄目だよ、士道くん。」

 

「…んん?」

 

いつも起こしに来てくれる天真爛漫の白リボンの感じでもない、かと言って黒いリボンの偉そうな感じでもない。

別人の反応だった。

 

「フフ…寝ている士道くんは可愛いなぁ。」

 

その声を聞いて士道は眠たい瞼を開けていく。

 

士道と同じ色である美しい長髪

 

5年前に別れ際にプレゼントした四つ葉のクローバーのヘアピン

 

髪をかきあげ、士道だけに見せる穏やかな笑みをする士織だった。

 

「…おはよう、士織。」

 

「うん。

おはよう、士道くん。」

 

挨拶を交わして士道は体を起こす。

 

「士道くん、今日は僕が朝ご飯を作ったよ。

だから落ち着いて着替えて、降りてきてね。」

 

「ありがとう、士織。」

 

「うん。

じゃあ、先に下で待っているね。」

 

そう言って士織は士道の部屋を後にする。

 

「…」

 

士道はゆっくりと立ち上がり、着替えてリビングにへと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングへの扉を開けると、目の前に赤い髪を白いリボンで結びツインテールにしている義妹の琴里が立っていた。

 

「おはよう、琴里。」

 

「うーん、おはよーおにーちゃん。」

 

いつもの通りの朝の挨拶をすると、次に士道に抱き付く者が現れる。

彼女もまた士道と同じ色の髪をし、それをヘアゴムでポニーテイルにしている実妹の真那だった。

 

「おはようございます、兄様!」

 

「うん、おはよう真那。」

 

士道は真那の頭を優しく撫でる。

 

「へへー♪」

 

「…」

 

嬉しそうにする真那にそれを見て白いリボンの状態でありながらも笑顔の殺気を送る琴里。

それを見た士道はビクッとするが、エプロンを付けている士織がテーブルにご飯を並べる。

 

「士道くんも降りてきたね、早速食べよう?」

 

「あぁ、ありがとう士織。」

 

士道達はテーブルにへと向かい椅子に座る。

 

「「「いただきまーす。」」」

 

「…いただきます。」

 

士道は早速、士織が作ってくれた卵焼きを食す。

 

「うん、美味しい。

俺が作るのより美味いな。」

 

「良かったー。

でも、士道くんのも美味しいからそんな事はないよ?」

 

「そうか?」

 

「そーですよ。

士織さんのも美味ーですし、兄様の美味ーですよ!」

 

「そっか、それは良かった。」

 

そんな会話をしながら朝食を食べて行く。

 

「…」

 

ただ一人、無言で食べている琴里に士道は声をかける。

 

「琴里? どうかしたのか?

調子でも悪いのか?」

 

「もしかして、琴里ちゃんの口に合わなかった?」

 

「え? マジですか?

なら、真那にくだせー琴里さん。」

 

「…ううん、大丈夫だよおにーちゃん。

ご飯も美味しいし、真那にあげないけど…」

 

琴里は真那を一度見て、次に士織を見て口を開く。

 

「何で平然と我が家にいるのか問い出したいのだけど。」

 

いつの間にか黒いリボンになっている琴里が何処か不機嫌そうにしていた。

 

「え? 変かな?」

 

「いやそうでしょ!?」

 

っと勢いよく反応する琴里。

 

「何で平然と我が家の一員ズラしているのよ!?

ここは私とおにーちゃんの愛の巣なの!!」

 

「あ、愛の…?」

 

琴里の爆弾発言に士道は恥ずかしそうに頬を赤らめていく。

 

「まぁまぁ、落ち着きやがれです琴里さん。」

 

真那が琴里を宥めようとする。

 

「アンタもよ真那!

てか真那は普段何処で生活をしてるのよ?」

 

「へ? あー…

今は士織さん家で生活してますね。

そこでなら夢界さんが用意した装置で軽い検査だけで済みますし、何かと都合が良いんですよねー。」

 

真那はそう答える。

今の真那の容体はDEMによる『処置』により、余命10年という恐ろしい事態になってしまっている。

それを知った士道や琴里はフラクシナスで検査を受けつつ生活する様に促しているが、真那は検査生活といった縛られる生活が嫌なので士織の住んでいるマンションで生活している様だ。

 

「全く…まぁ、詳しい情報は夢界から搾り取るとしましょう。

───というか士織。

アナタと真那が一緒に生活しているなら、ここで朝食を取る必要は無いでしょう?」

 

琴里は半眼で士織に語りかける。

 

「まぁ、今はマンションで生活しているけど、ゆくゆくはここでお世話になるつもりだけど───」

 

「んなもん、この家の主人の私が許すかぁぁ!!!」

 

琴里が若干キレながら答える。

 

「え? この家の主人って琴里だったの?」

 

初耳の言葉に士道は目を丸くする。

どうやら五河家では士道の序列は琴里より下の様だ。

…因みに序列を分かりやすくしたのが以下である。

 

 

 

 

 

『王様(主人)』

遥子(母)

琴里(妹)

竜雄(父)

士道(兄)

『家来(下僕)』

 

 

 

 

 

「俺がまさかの一番下…」

 

士道はウルウルと涙を流し始める。

…ついでにこの場にいない父の竜雄もウルウルと涙を流している幻影も見えた気がする。

 

「「うわー…」」

 

堂々としている態度にドン引きしている士織と真那。

 

「(…あれ? 『竜雄』に『遥子』?

何か…頭にモヤが掛っていやがるこの感じは一体?)」

 

真那が違和感を感じている中、琴里は続ける。

 

「これで分かったかしら?

お母さんとお父さんがいない今、この家では私がナンバーワンなの。

妹序列もナンバーワン。

だから、私の意見が絶対なの。お分かり?」

 

「琴里さん、一番訂正しなきゃならねー事があります。

一番の妹は私です。」

 

「あぁ?」

 

真那と琴里が火花を散らし睨み合う。

 

「…でも、士道くんが長兄であって、私は『姉』になるわけだから、今の内に清く正しくしておこう?」

 

「は? 『姉』ってど言う事よ?」

 

「どう言う事も何も、僕と士道くんは『()()』の関係だから。」

 

ピキッ

 

空気にヒビが入る音がした。

 

…数日前、士織が言い放った『許嫁』。

士道は琴里を筆頭に皆から色々と仕打ちを受けた。

士道本人は全く身に覚えがなく、両親に連絡を入れる。

すると、帰ってきた答えが───

 

 

 

 

 

『あ! そういえば、言うの忘れてた!

ごめんねー、しーくん!

お詫びは…もう少ししたら家に帰るから、それで許してね!』

 

 

 

 

 

…っと、どうやら士織が言っていた事が事実である事が判明したわけだった。

 

「私は認めてないから。

その事についてはその内、お父さん達が帰ってきてからにしましょう。

その間、許嫁とかいう愚かでふざけた設定は保留って事で。」

 

「ふざけてないんだけどなぁ…」

 

朝食を食べながら、2人は言い合う。

 

「「…」」

 

そして、ビリビリと睨み合う。

 

「…せめて、朝ご飯だけは楽しくてとろうよ。」

 

士道はご飯を食べながらそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れてその日の夜

 

『フッ!』

 

『はぁ!』

 

『ぜあっ!』

 

『フッ!』

 

ギシンッ! キィンッ!

 

刃と刃が交わる音が鳴り響く。

 

「今更だが、ラタトスクだっけ?

戦艦といい、地下のこの施設といい。

もう何でもありだよなぁ。」

 

「そうだね。

正直、私も驚いてるよ。」

 

翔と士織がそう感想を述べる。

 

「だよな、普通はそう言う反応だよな。

───お?」

 

2人の意見に反応する夢界。

そして、管制室にいる3人はモニターに映る2人の戦闘に注目しだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オォッ!」

 

怪盗服を纏い、『ルパン』となった士道は掛け声と共に『黒の咆哮(ブラック・ロアー)』を放つ。

 

「甘ーです!」

 

その攻撃を士道と同じく怪盗服を纏う、『ドリス』となった真那が特攻しながら躱していく。

士道の元まで迫ると、真那は剣に『紫の炎』を灯して攻撃する。

 

「フッ!」

 

その攻撃を士道は空にへと華麗に躱し、足に『黒い炎』を灯し、宙に浮く。

真那、翔、士織も加わった特訓にて士道達は互いに力の扱いについて話し合った。

真那と士織は士道と違って空での戦闘方法を身につけており、足に『炎』を灯す事が出来ると知ると、士道はポカンとした顔になった。

因みにこの手段は戦闘経験豊富の真那が見つけたものである。

 

「空に逃げたとしても、それは真那も

───っ!?」

 

真那も足に『炎』を灯そうとした瞬間、士道が足の『炎』を強く噴射させ、ナイフで突撃して来た。

 

「くっ…!」

 

真那は鞘である傘を展開させて盾を形成させる。

真那の武器である仕込み剣は剣と盾を合わせ持っているのである。

 

「成程…足の『炎』を噴射させて勢い良く突撃ですか。

悪くねーです……が!」

 

真那は軽く流し、素早く移動し、一定の距離を取る。

 

「…っ!」

 

真那は居合いの構えを取り、周りに『紫の炎』による円状の領域が展開される。

 

「これで終いです!」

 

士道が地に着地した瞬間に領域が迫り来る。

それを見た士道は咄嗟に体中を青黒い電流を放出し出し、凄まじい速度で距離を取る。

高速移動(アクセル)』を使用したのだ。

 

「!? マジでいやがりますか!」

 

真那はそれに驚愕する。

 

「(瞬間移動?

…いえ、多分、高速移動ってやつですね。

ワープしたかの様に見えましたが、脚に力を集約しているのが見えました。)」

 

経験値が高い真那は士道の技を看破する。

そして、士道は距離を取って冷静に分析する。

 

(やるな、真那。

…いや、当然だよな。

真那は俺よりも戦闘経験が豊富だ。

並大抵の手段は通じない。

なら───)

 

士道は再び電流を放出させて『高速移動(アクセル)』を使用し、領域外を囲う様に素早く動く。

 

「!?」

 

真那は警戒を強め、更に領域を展開させようとするも、士道の動きの方が早く真那へと近づいた。

 

キィィンッ!

 

ナイフの攻撃を剣で受け身を取る。

しかし、士道はナイフを滑らせる様に手を動かし、互いの武器を取っ払うも、寸前でナイフを形態変化させていきながら『鎧腕』にへと変化させて手刀で真那を狙う。

 

(取った!)

 

士道は不意打ちを成功させ、勝利を確信するも、真那は片手で盾を構えて足に『炎』を噴射させて突進し始めた。

 

「ぐっ…!」

 

士道はその突進を受けてしまい、吹き飛ばされる。

素早く立ち上がろうとするも、いつの間にか吹き飛ばした筈の剣を首に突きつけられていた。

 

「流石は兄様、高度なテクニックをお持ちです。

真那も一瞬、呆気を取られてしまいましたが、保険は掛けてあるもんです。

真那の『炎』の性質は『増殖』。

物質を増やす…即ち、剣を複製できやがるんですよ。」

 

どうやら、真那は剣を突破られる寸前で剣を複製させ、盾攻撃で気を取らさせた事で武器を忍ばせていた様である。

 

「…くそぉ、負けたか。」

 

士道は鎧腕を解除させて両手を上げて、降参の意思表示を示す。

が───

 

ゴンッ!

 

盾で軽く頭を叩いたのである。

 

「痛っ! 何するんだよ!」

 

「簡単に負けを示しては駄目です。

最後まで抗わねーとです。」

 

「…」

 

士道は痛かったのか刺さりながらジト目で真那を見つめる。

 

「…へへ、すみません。

ちょっと、兄様を揶揄いたくてワザとやりました!」

 

テヘペロと悪戯染みた顔で真那は笑う。

 

「…やれやれ。」

 

兄貴としてはそれを軽く流す生き物であると考える士道は溜め息を吐くも、妹の悪戯を受け入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れーい!」

 

戦闘を終えた士道達に夢界がタオルを投げ渡す。

 

「おう。」

 

「ありがとです。」

 

2人がタオルで汗を拭く中、士織が口開く。

 

「凄かったね、2人とも。

どっちが勝っても可笑しくなかったけど…

やっぱり、戦闘経験が高い真那ちゃんの方が一枚上手だったね。」

 

「あぁ。

薄々分かってはいたけど…

正直、悔しいのが本音だな。」

 

「ほほう…」

 

夢界が興味深そうにする。

 

「どうした?」

 

「いや、珍しいと感じてな。」

 

「何が?」

 

「お前が悔しいって言うの。

お前、あんまりそういうの言わないしさ。」

 

「あぁ…確かに。」

 

士道はこれまでの事を思い出しながら呟く。

 

「…今まで1人で頑張っていたからか、それとも兄貴として情け無いと言うのか…

この感じ、初めてだから…

いや、前にもあった様な…

よく分かんないや。」

 

「ま、それならあんま深く考え込まない方がいいな。」

 

「そーですよ。

真那としては兄様の役に立ちてーんです!」

 

「うん、そうだよ。

これからは一緒に頑張ろうよ!」

 

「そういうこった。

うっし! 次は俺がやるかなー。

パワーがあっても、この中で戦闘経験が一番乏しいからよ。」

 

翔が軽いストレッチをしながら語る。

 

「じゃあ、今度の相手は私かな。

私自身、この中で爆発的な決定打がないから、その対策も考えて行かなきゃ。」

 

士織も軽いストレッチをしながらそう告げる。

 

「うい。

んじゃ、お二人さんは俺と一緒に観戦な。」

 

夢界がそう言うと、戦闘ルームに琴里達がやって来る。

 

「あら、気合い入ってるわね士道。

それを女の子に慣れるための訓練に精を注いで欲しいものね。」

 

「うぉぉぉ!!!

琴里ちゃんだぁぁ!!」

 

「ア…アハハ…」

 

士道はバツが悪そうに苦笑いする。

 

「…んー、私は反対かなー。」

 

士織が横槍を入れる。

 

「…どう言う事よ?」

 

「女の子に慣れる訓練についてだよ。

他にどうにかする手段を見つけるべきだよ。

例えば他の適任者を見つけるとか。

それに…これからは私達が一緒に行けばいいじゃない。

どの道、邪魔が入ってきちゃうから。」

 

「それはそうです。

ただでさえ、兄様には士織さんや皆さんがいるのでこれ以上は口説く考えを変えて、力尽くで力を抑える方法を模索すべきです。」

 

「そんな方法は無いわよ。

あったら私だってその方向で進めたいって思うわよ。

けど、あれこれ言っても無い以上は仕方ない。

それに…精霊と接触の時はこれまで通りに士道単独で行ってもらうわ。

他の女の子が一緒にいるとか論外よ。

…ってか、士織の言いたい事は分かるけど、真那が言っているのDEMと同じ考えよ、それ。」

 

「んげ…」

 

琴里に言われて真那は苦い顔をする。

 

「…」

 

士織は事情を把握している分、何も言い返さなかったが、何処か納得いかない様子だった。

 

「(なぁ…この雰囲気不味くね?)」

 

「(大丈夫だって、見てな。)」

 

空気の悪さに翔が夢界の耳打ちするも、夢界が言った通りに事が運ぶ。

 

「…落ち着くんだ、二人とも。」

 

令音が2人の間に割って入る。

 

「…すまないね、雨宮士織。

現状、他に精霊の霊力を封印する手立てはないんだ。

キミがシンの事を思って言っているのは理解しているし、琴里も理解している。

…どちらかで言うと、本心としてはキミと同意見なんだ。

そこは分かってあげて欲しい。」

 

令音がそう言うと、士織は渋々理解する。

 

「はい…分かりました。

ごめんね? 琴里ちゃん。」

 

「…別に良いわよ。

士道の身を案じているから、熱くなるのも仕方ないわよ。」

 

2人は喧嘩にならずに大人の対応をする。

 

「…ふむ、良かった。

───それからシン。

疲れているだろう?

ちょっとした夜食だ。」

 

そう言って令音は手に持っていた箱を開け、手作りお菓子を摘み、士道に向ける。

 

「あ、ありがとございま───」

 

「…ん。」

 

「…令音さん?」

 

「…あーん。」

 

珍しく言葉を令音の口から発し、お菓子を食べさせようとしていた。

 

「…えっと、自分で食べられますが…」

 

「…」

 

士道がそう言うと、令音はしょんぼりとした顔になる。

普段クールな令音がその様な可愛い態度を取ると、男としては拒否できない!

 

「…あーん。」

 

「ん、よしよし。」

 

そのお菓子の美味しい甘さだけでなく、甘やかしまでしてしまう令音であった。

 

「「…(ゴゴゴゴゴ!!!!)」」

 

無言で圧力をかける琴里と士織。

真那も2人までとはいかないが、ムスっとした顔になる。

 

「…っ!?」

 

そして、それを見てビクビクと怯え出す士道と可愛らしく首を小さく傾げる令音であった。

 

「(ほらな?)」

 

「(こういったのをこれから見ていくのか…

ちくしょう、四糸乃ちゃんや琴里ちゃんに真那ちゃんからもされていくとか羨ましすぎる…っ!!!)」

 

「(…俺は違う意味でも疲れるなぁ。)」

 

少し離れた所で夢界と翔は士道達を見ていた。

そして、この場に更に他の者達が現れる。

 

「きゃぁぁぁぁ!!

皆さんでだーりんの取り合いですかぁぁ!?

しかも、だーりんに食べさせてるって楽しそうですねぇ!!

是非、私にも…私にも食べさせてください、令音さぁぁぁん!!」

 

「そっち?」

 

美九の言葉にツッコミを入れる夢界。

 

「シドー! お疲れなのだー!」

 

「…お疲れ、様です。」

 

《今日も精が出るねー!》

 

「呵呵々、今日も魂を燃やしておるな士道よ。」

 

「謝礼。今日も特訓、お疲れ様です。士道。」

 

次々と精霊組がやって来る。

十香達は定期調査の為にさっきまで居なかったのである。

そして、令音に飛びつこうとする美九を琴里がセーブする。

 

「はいはい、美九は大人しくしていなさい。」

 

「ああん! 殺生ですぅ!

それじゃあ、琴里さんと愛しの士織さんにやってもらいますぅ!!」

 

「却下。」

 

「右に同じく。」

 

「のおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

今日も元気な美九。

少し前に色々とやらかした美九だが、今ではすっかり士道達に溶け込み。

更には士織が実在する事によって元気100億満点なのである。

 

「…それより、美九。

大事な意見があるんでしょ?

せっかく良いアイデアを思いついたんだから、ちゃんと言いなさい。」

 

「?」

 

琴里の言葉に士道達は首を傾げる。

 

「そうですそうですぅ! だーりん!

次の三連休には親睦を深めるバカンス旅行に行きましょう!」

 

ビシッとそう告げる美九である。

その言葉に周りは「おおっ!」と歓喜の雰囲気になる。

 

「旅行か。」

 

「はいですぅ。

この頃、だーりんは私達を守ってくれる為に頑張ってくれてますけどぉ。

羽休めが必要だと感じたんですよぉ!」

 

「それはまぁ…」

 

士道がそう答えると、美九は南の島と記述された旅行パンフレットを見せる。

 

「南の島!?

何だって…

しかも、この人数となると結構な金額じゃないか?」

 

「そこは安心して頂戴。

メンタルケアを名目に上層部から許可は降りてるわ。

お金などは全部負担するから安心なさい。」

 

「…」

 

きょとんとする士道に夢界が肩を組みながら説得する。

 

「良いじゃねぇか。

折角美九ちゃんがお前を思ってプランを考えた訳だし、金もラタトスクが出してくれるんだし、乗っかろうぜ。」

 

「まぁ…」

 

「それにさ…士織ちゃんの水着姿や美九ちゃんの水着姿や令音ちゃんの水着姿とか見たくね?」

 

「…水着。」

 

夢界は士道の女の好みを既に把握している。

故に士道に水着の誘惑を耳打ちする。

 

ほわんほわん

 

脳裏に美九や令音を筆頭に夕弦や十香達の水着姿を妄想しだした。

 

「…確かに。」

 

士道は良い顔で眼鏡をキランと光らせる。

すると、怪しいオーラを放つ者達が視界に入る。

 

「…ロリ達の水着姿…

むふふ…むふふふふ…」

 

「うふふ…うふふふふ…

皆さんの水着姿…ふひひ…」

 

「…雲行き怪しいけど、まぁ、楽しみだな。」

 

ギュッと士道の服を引っ張る琴里。

 

「久しぶりにおにーちゃんと出かけるの楽しみ。」

 

「あぁ…そうだな。」

 

「真那も兄様と海とか楽しみでやがります!」

 

「だな。」

 

喜び舞う真那を微笑みながら答える士道。

そんな士道を見て、無言で決意を抱く者がいた。

そう、士織である。

 

「(士道くんとバカンス旅行。

この機会を逃さない。

今まで一緒に居られなかった分、士道くんと沢山遊ぶ。

そして…っ!)」

 

瞳に炎を灯し、拳を握りしめる士織。

彼女もまた士道に強い想いを抱く乙女の一人。

士織を含めた士道に恋心を抱く乙女達の勝負が今始まる!

 

 

 







・士織編が開始しました。
士織の性格はキャラ紹介通り、アスナをイメージして描いてますが…所々思うところがあるかもしれませんが、ご了承下さい。
精進していきます。

・2月は忙しすぎて、ストーリーの大体の流れは決めたけど、執筆がまー無理でした。
オリジナルの事もあって、士織にはもうしわけないのですがあまり長めにはしないようにしたいと考えてます。
美九編と騒動編が長く細かくしすぎたかな?って思っちゃったりしてます。
まぁ、あれでも大分削った部分多いですけどね。
本当ならもっと戦闘描写を描きたかった…
けど、それどといつまでも進まないからやむなく発射ってしまった部分があるとは思いますが…
これからも応援していただけると嬉しいです。

・後…『SAO』以外にアマプラで『陰の実力者になりたくて!』を見たんですよ。
そしたら…主人公のシャドウ様の戦闘スタイルに僕の厨二心が爆発しました。
「スライムでそんな闘いが出来るのか!」
「主要キャラ以外の名前酷くね?
特にドエムって…(笑)」
って…もっと早く見ていたらなぁ…
この作品の士道くんのジョーカーと巌窟王を合わせたものよりも分かりやすく描けたかも知れないのに…
っと最近思い始めましたが、今は今で頑張っていきたいと思ってます!


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