デート・ア・ペルソナ   作:黒ソニア

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作者(黒ソニア)
見たいもの(真実)はいつも一つ!」

士道
「何を言っているんだお前は…」





番外編11:日常5

 

 

 

①【撫で撫で】

 

学校の日常。

今日も変わらずに十香は士道に褒められようと頑張っていた。

 

「シドー! 今日も授業を頑張ったぞ!」

 

「ん、頑張ったな。」

 

「〜〜〜♪」

 

…理由は学生としては当たり前なのだが、彼女は『精霊』という特殊生命体。

普通の人間では無い。

それ故に、少しでも機嫌を損ねでもすれば霊力が暴走してこの天宮市を…

いや、世界を滅ぼしかねない。

なので、小さな事でも彼女を褒めて機嫌を良くするさせるのが、この主人公『五河士道()』である。

彼は女の子に優しい紳士であるため、そんな十香を苦もなく優しく褒めるのであった。

 

「士道、私にも褒めて欲しい。」

 

「ん、んん?」

 

「先程の授業や体育の授業などでは士道の為に貢献した。」

 

「あぁ…うん。

…体育の時はシャツを盗まれた分、寧ろ…

あ、いや、うん。頑張ったな。」

 

士道は諦めて折紙にも頭を撫でる。

 

「むぅぅぅ!!」

 

それを見た十香が不機嫌となる。

 

「そう怒るなよ十香。」

 

そう言いつつ士道は再び十香の頭を撫でる。

 

「〜〜〜♪」

 

十香は嬉しそうにしていた。

 

「「「…」」」

 

それを静かに見て、引き気味の反応を示した3トリオの亜衣麻衣美衣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

士道が運良く一人になったタイミングで亜衣麻衣美衣は仕掛ける。

 

「ねぇ、五河くん。」

 

「へ、何?」

 

「さっき、十香ちゃんと鳶一さんの頭を撫でてたよね?」

 

「あ、うん。」

 

「マジ引くわー。」

 

「え?」

 

3人の雰囲気に士道は固まる。

 

「な、何が?」

 

「五河くんてさ、女の子が頭を撫でられて本気で嬉しいって思ってるの?」

 

「え、あぁいや…頭を撫でられたら嬉しくないか?」

 

「えぇ…無いわ。」

 

3人は心底士道を軽蔑する眼差しにへとなった。

 

「そ…そんなに?」

 

「当たり前じゃない。」

 

「よくもまー、そんなので十香ちゃん達が五河の側に寄るのか意味わかんない。」

 

…と辛辣な言葉を士道に放った。

中でも三番手の美衣からはかなり棘の入った言葉を吐いた。

 

「…」

 

「ほら、スマホで調べてみなよ。

その理由が分かるから。」

 

「あ…あぁ。」

 

士道がスマホを開いて検索して調べると…

 

「なん…だと…っ!?」

 

そこに記されていたのは「嬉しくない」「ウザイ」「キモい」などなど…

かなり悪辣な意見が多かった。

それを知った士道はプルプルと震え始めた。

 

(え、嘘…こんなに評価悪いの?

だ、だとしたら…今まで十香や琴里にしてきた事って───)

 

士道は想像し始める。

 

 

 

 

 

『琴里…今日もシドーに頭を撫でられてしまった…

私はそこまで子供でもないのにだ…』

 

『ごめんなさい十香…

ウチの朴念仁兄貴がいつも迷惑かけちゃって…

いい加減に嫌だって事を理解してほしいものね…』

 

 

 

 

 

脳内で十香と琴里のやり取りを想像してしまった士道は───

 

「うわぁ…俺って…」

 

自分の考え(主観)を押し付けていた事に失望した。

 

「ようやく分かってくれた見たいね。」

 

「気づくの遅い気もするけど。」

 

「言わないよりマシ。

十香ちゃんの為だし。」

 

と、うんうんと頷きながら3トリオは呆然としている士道をほっといて教室を後にした。

 

「…ど、どうすれば…今後、俺は…どうすればいいんだ…?」

 

士道は1人悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シドー! 夕餉の時間だ!」

 

朝に続いて十香が元気いっぱいで士道に呼びかけていた。

 

「あら、早いわね十香。

ん? それって着替え?」

 

「うむ! 夕餉の後はシドーと共にいっぱい汗を掻くからな!」

 

ガタッ!

 

リビングの扉が強く開いた。

 

「はぁ…はぁ…そのいっぱい汗を掻く事について…

詳しく教えてくださいですぅぅ!

私の十香さぁぁぁぁん!!」

 

犯人は美九。

何処から十香の声を聞きつけたのかは知らないが、少なくても家にはいなかった筈。

そして何より…「ハァハァ」と涎を垂らしながら、十香に目掛けて飛びかかる美九はとても不審者だった。

 

「うわぁぁあ!」

 

「フンッ!」

 

「あふん!」

 

琴里が美九を大人しくさせた。

 

「あぁん! 痛いですよぉ、琴里さん〜。」

 

「アンタが悪いのよ美九。

十香はアンタのじゃないでしょうが。」

 

「うぅ〜…でもぉ…

可愛い子に蹴られるのってイイですよねぇ…

私、新しい扉が開いた感じがしますぅ…」

 

「開かんでいい!」

 

新しい扉…恐らく神無月の発している病気『M(マゾヒスト)』の事であろうか。

美九は頬を恍惚とさせていた。

 

「もう勘弁して頂戴…士道、夕飯はまだ?」

 

「…あぁ、もう少し。」

 

「?」

 

何処か覇気のない声に疑問を抱く琴里。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…疲れたのだ。」

 

夜のランニングを終えた十香。

他にも琴里・美九に夕飯を手伝っていた士織に真那と士道と5人で走り込みをしていた。

 

「ふふふ…汗を掻いた可愛い私の女の子の姿…

ハァ…ハァ…じゅるり。」

 

「ひぃ!?」

 

「き、気味わりぃです!」

 

それを見た十香と士織と真那が怯えていた。

 

「いい加減になさい。」

 

「あふん!」

 

再び琴里が美九にお仕置きをして大人しくさせる。

 

「ハァ…ハァ…琴里さんのお仕置きが癖になりそうですぅ。」

 

「そういうのは神無月一人で事足りてるのよ。」

 

美九のせいで琴里の疲労が更に増す。

 

「ハハハ…なんだか五河邸(ウチ)でお風呂を借りると美九さんに襲われそう。

このまま帰ろっか真那ちゃん。」

 

「てすね。それでは兄様、真那達はここで失礼しますね!」

 

「…ああ。」

 

「士織アンタ…私の家をもう既に我が家認定してない?

その認識間違ってるから訂正しなさい。」

 

「んん?」

 

「(イラッ!)」

 

可愛らしく首を傾げる士織にそれを見て頬に青筋を立てる琴里。

この前の一件があってからか、士織が更に積極的になっている。

 

「あぁん! 待って下さい士織さーん!

このまま私も士織さん家でシャワーを…いえ、一緒にお風呂にでも───」

 

時は遅し、士織達は速やかに家に帰った。

 

「しくしく…ではだーりん、一緒にお風呂でも?」

 

「え?」

 

「変な期待すんな!」

 

「グホッ! 何で…」

 

琴里に制裁される士道。

 

「全く…美九は自宅に帰って浴びなさい。」

 

「あぁん、殺生なぁ…」

 

しょんぼりする美九だった。

 

「シドー! 今日も沢山食べて沢山動いたぞ!」

 

昼に続いて十香は士道に褒められたくて、撫で撫でを要求する。

それに対して士道は───

 

「…そうだな。頑張ったな。」

 

十香の頭にへと手を動かすも、何かを思い出したかの様にピタッと止まり、頭から肩を軽く叩いた。

 

「…むぅ?」

 

「「?」」

 

十香が不満げな声を漏らし、それに対して琴里と美九が首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シドー! 今日の小テストでは満点を取ったぞ!」

 

翌日、小テストで満点を取った十香は士道に褒められようとしていた、

※因みに士道くんは40点です。

 

「…え、偉いな。」

 

士道はいつも通り、子犬のように可愛い表情で『撫で撫で』を求める十香の期待に応えたい所だった───が。

 

「…」

 

先日の事があってか、頭を撫でる事が出来なかった。

 

「うぅ…シドー?」

 

(考えろ…昨日の肩を叩くのは琴里から言われてNG。

ならば、大雑把に褒めるべきか…?

それはそれで陰湿な俺にはまず無理だしなぁ…)

 

「シドォ…?」

 

「士道はアナタに愛想を尽かした。

故に私に褒美を与えるべき。」

 

「何だと!?」

 

当然、ハイスペックである折紙も満点をとっているからか、十香の対抗心で『撫で撫で』を要求するが、士道は丸メガネを曇らせて微動だにしなかった。

やがて、十香と折紙の言い争いが勃発した。

 

「…シン。」

 

「……ん?」

 

考え事をしていると、士道に手招きをする令音に気付いてそのまま誘導に乗って物理準備室にへと歩んだ。

 

「…シン、琴里から連絡を受けたのだが何があったのかね?」

 

「実は…」

 

士道は事の詳細を説明した。

 

「…ふむ。」

 

令音は顎に手をやる。

 

「令音さん?」

 

「シン、私が思うにそこまで気に病む必要はないと思うよ?」

 

「へ?」

 

「クラスメイトに言われたからって十香が求めているのは『撫で撫で(ソレ)』なんだ。

だから構わずにやってあげるといい。」

 

「そう…なんですか?」

 

士道が少し不安げに問うと、令音は豊満な胸に士道を抱き寄せる。

 

「!?」

 

「よしよし。シン、いい子いい子。」

 

久々に士道は令音からの抱擁を受け、満更でもない表情をする。

 

(あぁ…これは何度されても癒される。)

 

「…他者が何を言おうが、キミはキミの正しいと思った事をすると良い。

大丈夫さ、何があろうと私はキミの味方だよ。

だから、寂しそうにしている十香にしてあげるんだ。」

 

「…はい。」

 

「ん、よしよし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…こうして、令音に説得された士道は教室に戻り、十香に『撫で撫で』を行い、昨日の件を含めて謝罪した。

 

「〜〜〜♪」

 

とても嬉しそうにする十香。

それを見た3トリオは───

 

「と、十香ちゃんは五河くんにああして欲しいんだ…」

 

「まぁ、十香ちゃんが求めるなら仕方ないか。」

 

「まじ引くわー。」

 

ポカンとした顔で呟いた。

 

そして、令音はインカムを通して琴里と会話しながら廊下から見ていた。

 

『やれやれ、困ったものよね。』

 

「まぁ、仕方ないんじゃないかな。

シン自身、自分が何を言われようが構わないが、自身以外が傷つくのが許せないという考えだからね。」

 

『……そうね。』

 

琴里は少し間を置いて反応した。

 

『士道も考えすぎるのよ。

好きな人からならやって貰える事は何だって嬉しいのだから。』

 

琴里の意見に令音はコクリと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②【士織母】

 

「切れてた醤油っと…片栗粉を持ってくるね。」

 

士織はテキパキと片栗粉ある場所へと向かった。

 

「えっと…後は鶏もも肉と…ん?」

 

学校帰り、士道は夕飯の買い出しに士織と共にスーパーにいた。

残りの鶏もも肉を取りに行こうとしていると…

 

「…」

 

士道をじーっと見つめるサングラスをかけた怪しい女性がいた。

 

「…えっと、どうかしましたか?」

 

士道が問うとその女性は笑みをこぼす。

 

「ううん、ちょっとキミを観察してるだけだから〜。」

 

(それ…ただの不審者なのでは?)

 

士道が不気味がっていると、士織が片栗粉を持って来た。

 

「士道くん、どうかしたの?」

 

「あ、いや…なんか変な人に見られてるんだけど…」

 

「変な人?」

 

士織が怪しい女性を見る。

 

「…あれ、お母さん?」

 

「え?」

 

「こんな所で何をしてるの?」

 

士織がそう言うと、怪しい女性はサングラスを軽くずらして可愛らいウィンクをする。

 

「あら〜、流石に『しーちゃん』には気づかれちゃうか〜。」

 

「…しーちゃん?」

 

「もう、来るなら連絡入れてよもー。

…てか、士道くんにきちんと挨拶してよ!」

 

「あら、これは失礼♪」

 

士織の母は士道にウィンクをする。

 

「初めまして、五河士道くん。

しーちゃん…士織ちゃんの母の雨宮有希子でーす。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。」

 

「おかえりー!」

 

士道はリビングにて元気よく返事をする琴里(白リボン状態)を見て安堵する。

 

「あぁ、良かった。」

 

「んー? 何がだー?」

 

「いや、紹介したい人がいるんだけど。」

 

「兄様、それは誰なのですか?

…ハッ! まさか、また兄様は誰かを口説いたのですね?

兄様もお年頃とはいえ、そこそこに抑えてくだせー。」

 

「いや、違うよ?」

 

「えへへ、冗談でやがりますよ。

で、何処のどなたでどういった事でいやがりますか?」

 

家にいた真那と琴里が士道を見る。

 

「えっと…琴里は特に平常でいてな?」

 

「んー?」

 

士道は先程出会った人を士織と共にリビングまで招き入れた。

 

「ん? 誰なのおにーちゃん?」

 

「初めましてー、士織ちゃんの母の雨宮有希子でーす。

士織ちゃん共々よろしくねー?」

 

「「…」」

 

明るいテンションで士織の母がやって来た事により、ポカンとする真那と琴里。

すると、有希子は琴里を見てサングラスを取ってお目目を輝かせる。

 

「きゃー! キミが琴里ちゃんねー!」

 

「ふぇ!? な、何なのだー!?」

 

「琴里ちゃん達のお母さん、遥子と私は同級生なのー!

話を聞いていたけど昔の遥子にすっごくそっくりー!

可愛い〜!!」

 

有希子はそれもうハイテンションであった。

 

「そういえば、ウチの母さんと同級生なんだっけ?」

 

「うん。詳しい事は聞いてないけど、そう聞いているよ?」

 

「ふむ…それにしても───」

 

「きゃー!!」

 

「ふえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「…おおぉ、あの琴里さんが丸込められてやがります。」

 

とても珍しいものを見る士道なのであった。

 

「呵呵々、八舞耶倶矢ここに見参である!」

 

「同調。八舞夕弦も見参です。」

 

そこに息ピッタリの双子の八舞姉妹が参上する。

 

「ああ、二人共いらっしゃい。

ご飯ならもう少ししたら作るから。」

 

「うむ、良き計らいであるな。

…所で、琴里が見知らぬ人に抱きしめられてるけど何事?」

 

「要求。とても珍しい光景ですので、解説を求めます。」

 

「私のお母さん。」

 

「何と!」

 

「驚愕。思わなぬ人物でした。」

 

「あら、可愛い双子さんね?

ウチの士織ちゃん、しーちゃんがお世話になってます。

…しーちゃんと士道くんも顔が似てるし、この子達の様にトリオを組むのも面白いかもねー。」

 

「「しーちゃん?」」

 

「そこ気になるよな。」

 

士織以外の者達が『しーちゃん』に反応する。

 

「うふふ。だって可愛いじゃない、しーちゃん。」

 

「なるほど…」

 

「まぁ…俺も母さんに『しーくん』って呼ばれてるし、別に変ではないな。」

 

「そうそう!

士道くんも遥ちゃんに『しーくん』て呼ばれてる訳だし。

私も“しーくん”て呼んじゃおー!」

 

とても自由な方だった。

 

「あ、それは良い案かも。」

 

士織も母と似た反応を示した。

親子だなって理解が出来る。

 

…そして、何よりさっきから気になる事が一つ───

 

「お母さんにしては若くない?」

 

そう、士織の母であるならば精々40手前が良いとこだろう。

だが彼女の容姿は何処からどう見ても20代のものだった。

 

「お母さん、いい加減サングラス外したら?」

 

「あ、それもそうね。」

 

士織に言われて思い出した有希子はサングラスを外した。

 

「ほわぁ…美人な方ですねぇ…」

 

「とても高校生の娘のいる人に見えない。」

 

「ふふふ、ありがとねー。」

 

「…」

 

士道は有希子の顔を見て何処か見た事のある感覚に襲われる。

 

「疑問。士道、どうかしましたか?」

 

「ん? いや、5年前に病院で少し見た事あるけど…

それよりも見たことある感じがしてな?」

 

「…同意。夕弦もそんな気がします。」

 

士道と夕弦が首を傾げていると───

 

「私の美女レーダーに大きく反応がありますぅ!」

 

「お、お邪します。」

 

《ハロー!》

 

扉からまたもや勢いよく美九が現れた。

と、ついでに四糸乃もペコリとやって来ていた。

 

「くんくん、くんくん!

匂う、匂いますよ!

これは激レアの予感!」

 

美九は琴里を抱きしめている有希子を見る。

 

「あららー!

もしかして、あの大女優の有希子さんですかぁ!?」

 

「…大女優?」

 

そのワードに士道は思い出した。

そう、雨宮有希子…かつて日本中や海外でも大活躍した工藤有希子。

20代半までは老若男女共々人気だった彼女はまさに大スターだった。

しかし…その後に結婚を理由に突然の芸能界引退宣言をし、姿をくらませたのだ。

 

「まさか士織のお母さんだったとはなぁ…」

 

「懐かしいわねー。」

 

「あぁん! まさか、士織さんのお母様だったなんて…

私感激ですぅ!

是非、娘さんの士織さんをくださぁぁい!」

 

「…何を言ってるの?」

 

「個性の強い子ねぇ、現役売れっ子アイドルちゃん♪」

 

「あらぁ、私の事ご存知なんですかぁ!?」

 

「そりゃね?」

 

「嬉しいですぅ!

ささ、士織さんも私のお隣に来てお話ししましょう!」

 

「僕は士道くんのとーなり!」

 

士織は美九から逃げるように抱きついた。

それにより、女子達の視線がキツくなる。

 

「!?」

 

「…ほほう。」

 

ビクッとする士道に凝視するように観察する有希子。

 

「あぁん、じゃあ私は士織さんとだーりんの間にしますぅ。」

 

「…だーりん?」

 

「あ、もうズルイし!」

 

「同調。夕弦達も士道とがいいです!」

 

「わ、私だって…っ!」

 

「おにーちゃんは私のなのー!」

 

「…まぁ、私は? 兄様の実妹ですので当然側にいるのが当然なのでやがりますがね!」

 

皆が負けず士道に密着し始める。

 

「あら〜。」

 

それを見ていた有希子は士織に視線を送る。

 

「(士道くん…見ないうちにとんでもない女たらしになっちゃってたわね。

遥ちゃんはこの事を知ったらどうなるかしら…

ま…この子ならモテちゃうわよね。)」

 

有希子はそう思うと立ち上がって士道に手招きをする。

 

「士道くん…ちょっと良いかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうかしましたか?」

 

士道と有希子が暗い廊下で2人きりになっていた。

 

「士道くん…単刀直入に聞くわね?

しーちゃん、ウチの娘の事をどう思ってるの?」

 

「え?」

 

さっきまでのほんわかした雰囲気から一変した事に一瞬戸惑うも、士道は答える。

 

「…大切な友人、です。」

 

「…そう。」

 

有希子は深呼吸をして口開く。

 

「士道くん…人気上昇中の()()()()のアイドルやそれに匹敵する美人の子達に囲まれている状況。

コレって()()()()()()がある感じよね?」

 

「!?」

 

雨宮有希子は賢い。

若くありながら大女優へと登り詰めたのも頭脳が関与している。

先程の沢山の女の子に囲まれていた事にも察しをつけていたのだ。

 

「…」

 

士道はそんな彼女を見て決意をする。

 

「はい、そうです。」

 

「…」

 

それを認めた。

 

「でも…ごめんなさい、今はその事情を話せません。」

 

「どうしても?」

 

「はい。」

 

「おおよそだけど、その事情ってただの人間関係によるものじゃないわよね?

きっと…命絡みの危険のある事よね?

それも、警察にも告知出来ない大事の話。」

 

「…はい。」

 

「…誑かさないのね?」

 

「嘘をついてもバレるって思ったからです。」

 

「ふーん…」

 

有希子の中で士道への印象が変わる。

 

「今日来たのはね?

ただただ、可愛い我が子の様子を見に来たって訳じゃないの。

数ヶ月前から様子や雰囲気に大きな変化があったから、その原因を探る為にも日本に来たの。

…どんな事情かは知らないけど、事は思ってた以上に複雑なのね。」

 

有希子が目を鋭くすると士道は真っ直ぐ答える。

 

「…有希子さん。

正直、この事に関して…冷静になって考えるとすぐに告知しておかないといけないって自分でも思います。

…しかし、それでも今の俺には事情を教える事が出来ません。」

 

「へぇ…」

 

「既に少し前に危ない目にも遭ってきましたし、今後も間違いなく遭う…

いや、間違いなくもっと危ない目に遭うのは明確です。」

 

「なら…一人の親としては───」

 

「それでも、士織と───大切な娘さんと一緒に居させて下さい。」

 

「!」

 

「俺には…俺達には彼女の力が必要です。

これから立ち塞がる相手に抗うには士織がいないと勝てない。

そして、それで間違いなく士織は傷つきます。」

 

「…」

 

「でも、コレだけは誓います。

士織は何があっても絶対に俺が守ると。」

 

士道は有希子に今持てる覚悟(全て)をぶつけた。

 

「…そう。」

 

有希子はそれを受け止めた上で、母として向き合う。

 

「なら…ウチの大切な一人娘をどうかお願いね?

泣かせたら承知しないわよ、しーくん。」

 

「ええ、任せて下さい。

と言っても、多分泣かされるのは俺の気がするけど…」

 

士織と学生生活を送って早一ヶ月が経とうとする。

その中で士道は士織から沢山仕打ちを受けた。

十香達が士道にイチャイチャとしていると、ムスッとしながら頬を強く捻ったり、登校中や買い物の中で美人でスタイルの良い女性を見るとチラッと見る度に足を踏んだりとしていた。

 

「ふふふ。何やかんだ青春しているのね。

関心関心。」

 

有希子は先程のほんわかした雰囲気になった。

 

「それじゃ、ウチの子を改めてよろしくね?

それから、あわよくばしーちゃんが選ばれる事を祈ってるわ。」

 

「?」

 

「…アハハ、これはしーちゃん苦戦しそう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道達がリビングに戻ると士織達がテキパキと料理を並べていた。

 

「あ、長かったね士道くん、お母さん。」

 

「ああ、悪いな一人で作って貰っちゃって。」

 

「ううん、全然問題ないよ?」

 

「しーちゃん。」

 

「ん?」

 

有希子が士織の耳打ちをする。

 

「頑張りなさいよ?

彼、結構な朴念仁気質だから。」

 

そう告げると、士織は自身のある笑みを浮かべた。

 

「大丈夫、分かってるから。

それに、既に仕掛けてるから負けないよ?」

 

「そう、それは良かったわ。」

 

有希子は流石は我が子と胸を張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

③【令音の休日】

 

「令音、今日はもう休みなさい。」

 

「?」

 

フラクシナスにて作業中、親友兼上司の琴里からその様に命じられる令音。

 

「……あぁ、休憩なら少し前にとったから問題ないよ。」

 

「そう言う事じゃなくて。」

 

「じゃなくて?」

 

「働きすぎなのよ。」

 

琴里はビシッと指で指し示す。

 

「教師の仕事、フラクシナスでの仕事も然り。

以前の旅行の件(事件)の時といい、色々とありながら有給も取らずにいるもの…半休でもいいから羽を伸ばしなさい。」

 

「…そう言われてもね。

私個人、好きでやっている訳なのだが…

それに、頼まれた仕事がある。」

 

「面倒な事が好きだって意地貼らなくていいのよ。

中津川に頼まれた仕事だって自分でやらせれば良いのよ。

どうせ、アニメをリアタイで見るためでしょ?」

 

「な、何故それを…」

 

ギクッ…と琴里に看破されて中津川が汗を滝の様に流し始めた。

 

「それに、皆が有給をこまめに取る中、令音だけとってないのも社会としては問題よ?

本来は今日休みの筈なのだし、充分に取りなさい。」

 

「…」

 

「司令命令。」

 

頬を掻きながらどう言い丸めようか考えていたが、琴里からの圧で観念する。

 

「…分かった。折角の琴里からのご好意だ。

お言葉に甘えさせて貰うよ。」

 

「ん、宜しい。」

 

琴里は納得して中津川の肩を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…しかし、困ったな。」

 

令音は言葉通り困った顔をしていた。

 

「私個人としては休みを取る理由も、やる事もない。

気遣ってくれるのはありがたいのだが…困ったものだ。」

 

そう、令音には暇つぶしにする事がない。

()()()()()』の為に行動をしている訳だが、それを成すため時間を潰すのがフラクシナスでの仕事の為、本気で困っていた。

 

「さて…何か目的は…」

 

そう考えていると、一つ思い浮かんだことがあった。

それは『お菓子作り』。

…予想外の敵によって力を身につける為に日々努力している()の為に何か出来ないかと始めた事だ。

 

今日も頑張っているだろうから、そんな彼の為に何を作ろうか考えていると───

 

「令音さん?」

 

声のする方へ振り向くとその彼…五河士道がいた。

 

「…やぁ、シン。奇遇だね。」

 

彼を見てふと自然に笑みを浮かべて返事をする。

 

「こんな所でどうしたんです?

珍しいですね?」

 

「…ん、いや何…先程まで仕事をしていたのだが、琴里に休めと言われてね。

気遣ってくれているのは有り難いのだが…やりたい事もなくてね。

丁度、キミの為に何か作ってあげようかと考えていてね。」

 

「え、ホントですか? それは嬉し───」

 

士道が言いかけた所で突如として固まった。

 

「(しまった…今日は少し休もうかと思ってたが、トレーニングすべきだったか?

いや、それそれで作ってくれるのはとても有り難いが、琴里に後であーだこーだと言われてしまうなぁ…

どうするべきか………にしても可愛らしく首を傾げるなぁ…)」

 

黙り込む士道に令音は優しく微笑み首を傾げており、士道は思わず頬が緩みかける。

 

「(何か…名案は…そうだ!)

令音さん、少し付き合ってくれませんか?」

 

「ん? あぁ、キミの頼みなら構わないよ。」

 

令音はそう言って士道について行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きました。」

 

「ここは…」

 

士道に誘導された場所は人目が極端に少ない河川敷にある、大きな木にそれを囲むベンチであった。

 

「ちょっとした癒しスポットですよ。」

 

「それはどういう───」

 

令音が言いかけた所でとても気持ちの良い風が吹いた。

 

「今日みたいな暖かくて暑すぎず、心地いい風がある日はここが一番なんですよ。

風によって囁く木の音が良い音色を奏でるし、昼寝には最高なんですよ。」

 

「ほほう。」

 

士道が言うようにとても良い気分になる令音だった。

 

「…ん、なら…シン。」

 

「はい。…ん?」

 

令音はベンチに座って足をポンポンと叩く。

それはつまり───

 

「…あの、令音さん。

それはつまり…あの、膝枕?」

 

「そうだよ?」

 

「えっと、その…」

 

「…嫌かい?」

 

「そんな事はあり得ないです。」

 

令音のしょぼんとした声と雰囲気にそれをかき消す良い声で跳ね返した。

 

士道は令音の期待に応えるようにそのまま令音の横に座り、そのまま令音の柔らかい太ももに頭を乗っけた。

 

「(や、ヤバい! 令音さんの太もも柔らかい!

しかも令音さんの女性の香りも良いし…幸せすぎる。)」

 

思わず頬が緩んでしまう士道。

それを見た令音が微笑み、しまいには士道の顔を見るように動かした。

 

「ほわっ!?」

 

「ふふ…」

 

毎度の如く、いい子いい子と頭を撫でる令音。

彼女にとっての癒しとはコレなのである。

 

…そして、士道はというとだ───

 

「(令音さんの綺麗な顔…普段眠たげにしているのにもそこに美が集約されているのを感じるし、

目元の隈も…最初は心配だったけど、今ではそれも令音さんの美徳を引き出してる様に見えるし、

何より…目の前に聳え立つ二つの太陽っ!!

あ、ありがとうごさいます!!)」

 

…最初の二つはともかく、後半は何を思っているのだろうか?

まぁ、それは置いといて士道の様子が変わる。

 

「……ん、なんか眠たくなって…」

 

目をショボショボとする士道。

 

「ふふ…安心して眠りたまえ。

キミは普段から頑張っている……いや、頑張りすぎているんだ。

私で良ければいつでも…眠たくなったら来たまえ。

キミの疲れを癒してあげよう。」

 

「それは…幸せ贅沢…すぎ…る… Zzz」

 

士道は眠ってしまった。

それを見た令音はいい感じに囁く風を髪をかき上げ、靡かせながら呟く。

 

「…キミへのこの異常とも感じる程の()

これは…果たして『キミ』だからか…?

もし……もし、()()としたら…

私は……『私』は一体どう思うのか…」

 

令音は上の空を見上げながらそう呟いた。

 

「………分からない。

だが、今は……今だけは何も考えずに…

キミを…()()を…」

 

令音も心地よい風による木の音色を感じながら、士道の頭を撫でて癒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いずれ来るだろう『別れ』を忘れて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







・①この回はいつかやろうと思っていました。
それ以外は特にないのですが…ただただ、脳内で再生されていると十香が可愛いと感じる。


・②はい、士織母の登場回です。
モチーフキャラは名探偵コナンで登場する工藤有希子です。
…正直、話し方や口調が違うと感じますが…動画とか見てると、なんか美九と同化されてしまうのでこんな感じで振る舞ってます。
後、母がこのキャラなので父はというと『あの人』です。
いずれ登場します。


・③これをやりたかった。
本当は次章の2期分ラストに描きたかったけど、今のⅤの放送を見て急遽予定を変更しました。
…だって…色んな意味で辛いんだもん。

はい。とまぁ、本来やる筈だったお話は次にやります。
このお話と同じくらいの需要のあるのをやるつもりです。
(※あくまでも自分からしたらの話です。)


・さてさてさーて、そろそろ次章の告知をしましょう。
次は次で大事な物語。
士織編でのちょっとした伏線を回収する感じでスタートするつもりです。
それが一体…何なのか…そして、どう結末を辿るのか…
はたまたどんな物語にへとなるのか…

それでは、どうぞ───




















「アナタに…問います。
───『愛』とは何ですか?」

広がる世界は作り出された試練。

そこで出会った彼女は敵か味方なのか。

予測不能の事態に待ち受ける真実とは。

第十章 鞠亜編
芽生える命:ナビ

───それを変えてやる。


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