帝国のエースストライカー   作:カンナセン

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ひっさしぶりにイナイレ(GO2)やって懐かしくなって見切り発車。

サッカーエアプ、初投稿、そもそも進めてるゲームがイナイレ初代じゃないから諸々の展開は思い出しながらとか言うエグい状態ですがどうぞよしなに。



優勝

 フットボールフロンティア決勝。

 中学サッカー日本一を決めるその大会で待ち構えるは常勝無敗、絶対王者帝国学園。それに挑む今年の挑戦者は、一年生エースストライカー豪炎寺修也擁する、攻撃的なサッカーが持ち味の木戸川清修。肝心のエース豪炎寺が不在ながら、優秀な三つ子のフォワードを中心に、そこそこの善戦を繰り広げていた。

 この少年たちが入るまでは。

 

「ありえ……ないっしょ……」

「わたしたちが、こんな……」

「豪炎寺さえいれば…………」

 

 絶望を顔に映しながら肩で息をする木戸川清修のフォワード。

 現在の得点は五対ゼロ。帝国学園の圧倒的リードである。

 後半も時間が残りわずかとなり、敗色濃厚どころか確定と言っても過言ではない試合状況となっている。しかし、会場は戦意を喪失した三人のフォワードなど目に入っていない。熱気を帯びた歓声が、二人のサッカープレイヤーに降り注いでいた。

 ドレッドヘアにマント、ゴーグルという変わった出立ちの少年はそれをなんでもないように受け流し、華麗なボールさばきで木戸川の選手を翻弄する。

 一人でごぼう抜きの大活躍を見せるその少年の名は、鬼道有人。一年生にして天才ゲームメイカーとして名を馳せ、この決勝において後半から投入された二人のうち一人である。

 彼のその技術に思わず木戸川のディフェンダーの位置がわずかに上がると同時に、鬼道からレーザーのような美しいパスが飛び出る。

 ディフェンダーの虚をつくそのパスは、抜け出したもう一人の一年生の元に届く。オフサイドはなし、キーパーとの一対一である。

 そう、もう一人、後半に投入され、観客の視線を集める存在はもう一人いた。

 システマチックな帝国のサッカーにそぐわないような強烈な個性を持つ、スター選手の芽をすでに開花させつつあるその少年は、強烈な野生を感じさせるボサボサの長い銀髪をたなびかせ、切り込んでいく。

 すでに必殺技を使用することすらなく、二点獲得しているこの少年は最後となるであろうこのゴールを、キーパーまで抜き去って決めようという魂胆すら感じさせた。

 そのことを感じ取れないキーパーではなく、その傲慢とも言えるようなプレーに最後くらい鼻をあかしてやろうと気合を入れ、パスが出たそのタイミングですでに飛び出していた。パスはペナルティエリアにギリギリ入るタイミングで届く計算だと考えたキーパーは、そのパスを体ごと滑り込み、押さえ込んで見せようと考えていたのだ。

 このキーパーは木戸川清修の正ゴールキーパーとなるために三年間努力を積み重ね、後輩に胸を張れるような名キーパーであった。チームの方針で攻撃に力を入れており、ディフェンスが得意でないこの学校が決勝まで来れたのはこの少年のおかげでもあったのだ。

 しかし、その彼の自信を軽々と崩していくのが、常勝無敗、規律を重んじる帝国にて、光を放つこの新たなエースストライカーである。

 

「甘いねぇ」

 

 キーパーは一度パスを受け取った少年が抜き去りに来ることを、そしてそのために一度トラップのために地面に落とすことを予想していた。そのタイミングで抑え込みに行けば、無理にドリブル、シュートに行くにしろ頭を蹴ってしまう可能性が頭をよぎり、躊躇してしまうだろう。

 その瞬間にボールを確保できれば、こちらの勝ちだ。

 しかし。

 ニヤリと笑った少年にキーパーが気づいた時にはもう遅く、ボールは高々と上がっていた。

 ヘディングシュートである。鬼道からの直線的なパスを受け取る際、キーパーの予測よりも少し手前で飛び上がったこの少年はトラップせず、高く跳び上がり、ダイレクトシュートを敢行した。ループ気味に宙に浮いたボールは放物線を描き、キーパーの頭上を嘲笑うかのように越していった。

 必殺技を出す暇もない。必死に飛び上がり、手を伸ばす。しかし無常にもボールには届かず、ゴールに向かっていく。

 

「あんたが飛び出したの、短い間に俺の目立ちたがり屋な性格をよく読んでいたし、いい判断だったと思うよ」

 

 ボールがゴールへと落ちていくわずかな、しかしキーパーにとっては無限に感じる時間の中、シュートを打った少年の言葉が耳を打つ。

 

「けど、俺の方が強い」

 

 思わず観客たちが息を呑むような芸術的なシュートは、ゴールネットを揺らした。

 

 そしてホイッスル。

 

 六対ゼロ。帝国学園の無敗の歴史に新たなる一ページが刻まれた。

 そして同時に、決勝にてハットトリックを一年生ながらに決めた伝説の少年として、人々の記憶にも彼の名前は刻まれただろう。

 

 帝国のエースストライカー、九鬼夏樹の名前が。

 

「よくやった、九鬼」

「鬼道か。わるいな、自由に動かせてくれってわがまま言って」

 

 やってきた鬼道に満面の笑みで肩を組みに行く九鬼。鬼道はそれを軽くいなしながら返答する。

 

「勝利は揺るがなかった。だから問題はないだろう。強いていうのであれば、お前が少しスタンドプレーに走りすぎたのは反省点だろうな」

「…………」

 

 鬼道の言葉には答えず、熱気に包まれた会場に拳を突き上げ、さらに煽る九鬼。しかしその顔は、熱気に浮かされたものとは違い、なんとも微妙なバツの悪そうなものであった。

 

 ***

 

「九鬼」

「…………総帥」

 

 表彰式が終わり、乗ってきたバスに戻る途中。この試合の指揮を遠隔でとっていた男、『帝国学園総帥』影山零治の姿があった。細身ながらその体から発せられるオーラに周囲の選手が圧倒される中、九鬼はなんでもないような顔で話しかける。

 

「……ぁんすか、なんか文句でも?」

 

 先ほどの鬼道からの言葉を思い出して、苦虫を噛んだような表情の九鬼。

 絶対に突っ込まれるんだろうな、と考えながら質問する。

 

「派手に動くことに意識が寄りすぎだ。より鬼道の指示通りに動き、組織だった行動を意識すれば、もう二点は取れただろう」

「あー。……まあ、言いたいことはわかんすけどねぇ」

 

 案の定な影山の言葉に頭をガリガリかきながら答える九鬼。あまりに態度が悪いために周りの上級生が嗜めようと口を開きかけるが、ジロリ、と九鬼にひと睨みされ、黙る。

 たしかに天才的なゲームメイクをする鬼道の指示通りに動き、試合に出ていた他のフォワードたちと息を合わせればもっと点を取れただろうことは想像に難くない。

 しかし。

 

「いや、鬼道にも言われて思ったんすけど、つまんなくね? それ」

「…………なに?」

「帝国のサッカーってさ、華がねぇんだよ。個人技はもちろんあるけど、それよりも集団の連携を意識したシステマチックなサッカーはまぁ、おもろいよ。芸術的とすら言える」

 

 けど、と続ける。

 

「俺っていうスターが一人いた方が映える。違う……っすか?」

 

 うっかり形ばかりの敬語すら抜けていたことに気がつき、へらり、と破顔する九鬼。影山はその言葉にふん、と鼻を鳴らす。

 

「貴様、『豪炎寺修也』が不在だったことがそんなにも気に食わないのか」

 

 図星であると言わんばかりに顔を顰める九鬼に、影山は表情ひとつ変えずに続ける。

 

「『強敵と戦いたい』、これが貴様が我が帝国に来た理由だったな」

「ん、そっすね」

「貴様は今回、それを果たせなかったために退屈しのぎ……いや、八つ当たりとしてあそこまで自身を派手に見せるように動いた。最後のプレイだけではなく、他にも何度か必殺技に頼ることなく、相手をわざと翻弄するようなプレーを行っていたな」

 

「貴様が勝てる間はその子供じみた癇癪を容認してやろう。しかし、そのプレイで鬼道の足を引っ張るようなことがあれば……」

 

 わかるな。

 影山の無言の圧力に屈さず、九鬼は肩をすくめる。

 

「……ま、足を引っ張る前にちゃんと意識を切り替えるくらいはできますよ、俺は。帝国のエースストライカーですし、総帥にも報います」

 

 なにより、と続ける。

 

「俺が一人楽しくサッカーやってたとしても、鬼道の本気のゲームメイク力なら俺すらも手駒として動かせる。それは育てたあんたが一番理解していると思ってたんすけど」

 

 しばしの沈黙ののち、その答えに納得したのか、影山は踵を返す。

 

「……鬼道の指示にはもっと従え。今の貴様は少し考えすぎて動いている。貴様の場合、多少直感で判断し、考えず動いた方が視野が広がる。その経験を得た方が貴様の身になる」

 

 影山は続ける。

 

「強敵と戦うばかりが貴様の糧になるわけではないことを理解するべきだ」

「……なるほど、了解」

 

 目から鱗、と言わんばかりに目を瞬かせた九鬼をよそに影山は去っていく。その背中に、九鬼は声をかける。

 

「総帥! あんたのおかげでもっとサッカーが楽しめるよ! サンキューな!」

 

 年相応の笑みを浮かべた九鬼の言葉に、影山は答えなかった。

 

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