帝国のエースストライカー   作:カンナセン

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奮起と開発

 

「やっぱ源田、お前(なま)ってたんじゃねぇの? それか筋肉のつけすぎで(にぶ)くなったか」

「……油断だ、言い訳のしようもない。デスゾーンが止められたことに驚き、その隙に……」

 

 九鬼は雷門との練習試合との顛末を聞いた。いわく、ボコボコにしていたのにもかかわらず土壇場でキーパーが覚醒してデスゾーンを止められた挙句、豪炎寺に一点決められ、とりあえず豪炎寺の力量を測ったため棄権して帰ってきたという。

 お陰で帝国が一点に泣いただとか雷門がすごいチームだとか噂が広まっているらしい。もちろんそんなことはないのだが。

 

 それにしても、と九鬼は心の中で驚いていた。まさかこの前サッカーの相手をした稲妻KFC。そこに顔を出している中学生が円堂守であり、そしてデスゾーンを止めた雷門中キャプテンも、円堂守。

 KFCの子供達に好かれているらしいことはあの短い期間でも十分伝わっていた。しかし、円堂守が性格面だけでなく、実力面、今回だけでいえば爆発力に秀でているだけかもしれないが、ともかく話だけ聞くのであれば……。と、九鬼は目の前の源田を見る。

 

「とりあえず後でシュート練に付き合ってもらうぞ。お前が油断のゆの字も思い浮かべられないくらい全力でやってやっから」

「感謝する……」

 

 キング・オブ・ゴールキーパーも超えられちまうかもな。

 などと、源田本人に知られたら本気で怒られかねないことを考える九鬼。とりあえず源田を軽く小突きつつ、今回浮かび上がった課題であるメンタルトレーニングの方法について思考を巡らせていた。

 しかし、デスゾーンが止められ、豪炎寺に一点決められたという事実は帝国メンバーの気を引き締めるという点では効果的だったらしい。特にノーマークで豪炎寺を通してしまったディフェンス陣などは、アメリカのことも思い出して相当奮起してそれぞれの練習に励んでいる。

 

「総帥の狙いはこれだったのかもしれないな……かくいう俺も、油断していたと言えるだろう。自分を見つめ直すいい機会になった」

「けど実際どうよ、ファイアトルネードだっけ、豪炎寺のシュート」

 

 源田は九鬼の言葉に表情を引き締めると、真っ直ぐな目で言った。

 

「俺のパワーシールドの敵ではない」

「ふーん……ま、もし俺らと当たるようなことがあれば、その時にはもっと強くなってるだろうし、パワーシールド自体は俺が真正面から破れるんだし、もっと特訓しとけよ」

 

 勿論だ、と気合十分な源田を引き連れてシュート練習をしようとしたタイミングで、佐久間から声をかけられる。

 

「九鬼、総帥と鬼道さんがお呼びだ」

「あぁ? わかった」

 

 話を聞き、移動しようとしたタイミングでふと思い出し、佐久間に話しかける。

 

「どうよ。デスゾーン、お前も関わるシュートだったよな。止められて目、覚めたか?」

「ああ、もちろんだ。鬼道さんにも、お前にも迷惑をかけたな」

 

 ならばよし、と肩を叩くと佐久間、源田と笑い合う。

 本当ならばここから練習に入りたいところではあるが、呼び出されているため影山の部屋まで向かうことにする。

 

 影山の部屋に入ると、鬼道と影山の両名が揃っており、自分を待っていたらしいことがわかる。わりわり、などと軽く謝りつつ、その謝罪にため息をついている鬼道の横に立つと、影山は喋り出した。

 

「デスゾーンが止められたそうだな」

「はい、ゴッドハンドと呼ばれる技でした」

「ゴッドハンド……か」

 

 鬼道の言葉に対して憎々しげに吐き捨てた影山の言葉には、自分のチームのシュートが止められたという事実を覆い隠すような憎悪の色が見え隠れしていた。

 本当であればデリカシーのかけらもない男、九鬼は一言二言軽口を挟みたかったのだが、鬼道に脇腹をつねられ、本題について話す。

 

「んで、俺を呼んだ理由ってなんすか? ゴッドハンドの対策でもしろって感じすか? いっちゃあ悪いけど、デスゾーンを超える必殺技なら、俺の『デスバレット』がまさにそれじゃないんすか?」

「貴様には対ゴッドハンド用の合体シュート技考案のため協力してもらう」

 

 影山の言葉に疑問符を浮かべる鬼道、九鬼両名。

 影山曰く、九鬼の持つ圧倒的な『個』の力を利用し、デスゾーンに代わる新たな必殺技のプロトタイプを作ろうという計画である。目標はデスゾーン同様三人で打つ技であるが、そのためにいちいち三人の中ですり合わせをするよりも、先に『型』を作ってしまった方が早いと判断したという。

 

「なるほど……では、その話をなぜ俺に?」

「新必殺技は、鬼道を起点として打つ予定だ。お前の意見も聞いておきたい。また、九鬼本人が気づかないレベルの癖や、九鬼個人の色などが入ると、九鬼のプレイスタイルや身体能力の性質上、合体シュートとして落とし込みづらい。お前の目であればそれを修正しつつ開発できるはずだ」

「理解しました」

 

 影山は鬼道の疑問に澱みなく答え、鬼道も納得した様子で下がった。そこで九鬼が口を挟む。

 

「俺の必殺技を三人用に変えるんじゃダメなのか?」

「今も言った通り、貴様のシュートは帝国とは合わないだろう。たしかに貴様の『デスバレット』はデスゾーンよりも強力だが、それは貴様の身体能力だからこそ真価を発揮する技だ。誰でも扱える技に落とし込むと、おそらく多少なりとも弱体化する」

 

 九鬼のプレイスタイルは帝国とは合わない。それに目を瞑ってなおあまりある九鬼の才能を正しく理解している影山は九鬼の必殺技をそう評した。

 

「ふーん……まぁ、新しい必殺技とか俺自身のスキルアップにもつながって一石二鳥か…………ぃよし、やりましょう(やりゃーしょー)。今からさっそく」

「必要とあればチームメイトを招集しても構わん。しかし通常の練習に支障が出るようなことはないように加減はしろ、九鬼」

「……っす、了解です。総帥」

 

 ばっちり釘を刺されて気まずそうな九鬼。鬼道はその様子に僅かに顔を緩めると、影山の後について九鬼と共に総帥室を出た。

 

 そうして、鬼道と九鬼、そして影山によるシュート開発が始まった。開発のために使われるコートは特別仕様で、このコートでデスゾーンをはじめとする、多くの必殺技が生まれてきたとされる。タブレット端末から、指定した場所、しかもコート上だけでなく、好きな高さにも好きな角度で射出されると言う形で自動的にセットされる。そこから、好きな角度からシュートを打つことができるという優れもので、しかも四方八方に用意されたカメラでデータも取れる。何度か訪れたことのある九鬼も、ここの設備には舌を巻く。

 

 九鬼はボールをゴールの真正面、ペナルティエリア内の適当な距離にセットさせる。

 そして、深呼吸を一つ置いて、想像する。イメージはコートに来るまでに映像資料で見たゴッドハンドを突き破ること。パワーシールドのように衝撃波ではなく、手のオーラといった印象から、暴力的な威力や一点突破よりも、面で全体的に削りながら中央突破をするイメージの方が誰にでも使いやすくしやすいだろうか。ついでに素早さも欲しい。

 

「鬼道、お前好きな動物とかいる? 参考にしたいわ」

「……ペンギンだ」

「可愛らしいご趣味で」

 

 鬼道の方から飛んできたシュートを避けながら、何度かとりあえず力を込めてシュートを打ってみる。しかし、うっすらとした鳥のオーラこそ出るものの、なんとなく想像がつきづらい。多分方向性は合ってる、という感触こそあるが。

 試しに源田を呼び寄せ、パワーシールドを使わせた上で何度かシュートを放つが、ゴッドハンドと毛色が違う必殺技なのでいまいち。まだ試作以下の段階であるものの、九鬼の必殺技のシュートを止めてご満悦の源田のパワーシールドを九鬼の必殺技で粉砕し、ついでにプライドも粉砕して帰らせた後、影山、鬼道と話し合いながら試行錯誤を続ける。

 

 しばらくしてサッカー協会の副会長でもあり、多忙である影山は鬼道に任せてコートを去った。その際、影山からは帝国の必殺技の肝である統率力をイメージしてみろ、というアドバイスがあった。

 結局、若干落ち込んだ様子の源田をまた呼び寄せ、時折フィードバックをもらい、ついでに源田側の必殺技も開発しながら新必殺技会議は進んでいった。

 方向性は動物、とりあえず鬼道が好きだというペンギン、広く見て鳥類をイメージして行うこととなった。

 

 それから数日後。都合のついた影山がコートを訪れると、そこには鬼道しかいなかった。

 

「九鬼はどうした」

「…………行方不明です」

「……なんだと?」

 




イナイレ特有のやけに技術力の高い特訓施設登場です。
これ書いてる時に思ったんですけど、世代的に影山はイナビカリ修練場は知ってたんですかね? 知ってたらそれ参考にしてより実用的な施設とか作ってそうと感じたのでそれっぽいの作りました。
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