帝国のエースストライカー   作:カンナセン

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早めの投稿


勝負

 九鬼が突然挑んだサッカー対決。円堂は困惑した様子だが、もってきていた自分のボールを指で回しながら空いた手で円堂を手招きする。

 そして、ルールは簡単、と円堂を連れてゴール前までやってきた九鬼が喋り始めた。

 

「ペナルティエリアぎりぎりくらいの距離で、俺がシュートをうつ。止めたらお前の勝ち、俺の負け」

 

 な、簡単だろ? と言わんばかりの九鬼に、理解を示した様子で気合十分な円堂。円堂本人は正直どうしてこうなっているのかいまいち理解していないし、なんならKFCのことなど、話してみたいことはたくさんある。しかしそれはそれ。帝国のエースストライカーのシュートが受けられるということで、本番の試合のように気合が入っている。

 

 思い返すのはKFCのまこの言葉。『豪炎寺よりもすごい』かもしれないシュートを受けられることに、わくわくを隠せないでいた。

 

 そんな中、染岡が抗議の声を上げる。

 

「お前、突然きて何言ってんだ!?」

「あん? 別に、取られたら負けの十一対一の戦いでもいいんだぜ?」

 

 なんだと、とわかりやすい九鬼の挑発に乗りかける染岡だが、円堂が慌てて止めてその場は収まる。

 

「まぁまぁ、いいじゃないか染岡! 今のうちに全国最強のエースストライカーのシュートが見られるなんて、そうないぞ?」

 

 全国最強と言われて嫌な気はしない九鬼。ふむ、と手を顎に当てて少し考えると、

 

「よし、じゃあディフェンス陣……何人? 四人? ……含めた五人対俺の戦いやろうか」

「なに?」

「ああいや、染岡……だよな。別にこれは煽ってるわけじゃねぇよ。お前たちの練度はさっき見ててかなりいい感じだと思った。地区大会でもいいとこまで行けるだろうよ」

 

 だが、と九鬼はニヤリと笑って言葉を切る。そして、センターラインまで歩くとボールを地面に叩きつける。

 

「まだ! ウチとやれるレベルじゃ到底ない!」

 

「だから見せてやるよ。全国最強の実力を」

 

 ***

 

 突然始まったサッカーミニバトル。円堂たち雷門ディフェンス陣に相対するのは九鬼。

 

 雷門が九鬼を止めたら雷門の勝ち。九鬼がシュートを決めたら、九鬼の勝ち。

 

 そんなルールで始まったこのバトル。ディフェンス陣は完全に染岡の言葉から巻き込まれた形になるが、文句を言うことなくしっかりと九鬼を見つめている。一年生と思われる選手は不安になって円堂を見たりもしているが、そこは円堂が信頼されていると言うことの証左だろう。

 

 九鬼はそんな様子を見て頷くと、ボールを地面に置きなおす。一つ息を吐くと、円堂を見てニヤリと笑う。

 円堂も九鬼のオーラにあてられてか、口角が上がる。腰を落とし、臍の下に力を入れ、両手を前に出した。

 

 

 

「いくぜ? 雷門中」

「……来い!!」

 

 

 

 ドリブルを開始する。

 センターサークルスタートなので、少しだけ時間が空いて、ディフェンスラインに到達する。

 

「囲い込むぞ!」

 

 髪の長い少年、風丸の指示に従って動く雷門中。まず栗頭の栗松と陰気な様子の影野が止めようと足を出してくる。

 

 それを軽くボールを上げてジャンプで回避すると、その隙を狙ってきた風丸をヘディングでさらにボールを上げて対処。

 

 なかなかいいディフェンスだな、と感心しながら胸でトラップして地面に落とすと、目の前にいた壁山を吹き飛ばそうとする形でシュートを放とうとする。

 

「ひっ!?」

「怖がんな、怖がんな」

 

 苦笑しながら、九鬼の放ったボールは緩やかな放物線を描いて壁山の後ろに落ちる。シュートフェイクだ。その隙に壁山の後ろに抜け出した九鬼は、あっという間に円堂と一対一になる。

 

「すげぇ……」

 

 そんな染岡の感嘆の声に笑いながら、九鬼は必殺シュートの準備に入る。

 

 

「止めてみな、円堂!」

 

 

 さて、九鬼夏樹という男は、非常に身体能力が高い。それは、かの影山零治が身体能力のみでいえば帝国学園史上最高の才能であると認めるほどのものである。日本の現状、表に出ているストライカーたちの中で並び立つものはいない。

 海外に目を向ければその限りではないが、今の日本ではおそらく、鍛錬を続けていた場合の豪炎寺修也のみが、九鬼を越えられるだろう。

 

 それはともかく、九鬼の武器は理想的な筋肉の発達や、多少の接触ではブレない体幹、中学生離れしたパワー、そしてボールへの執念などを指すが、影山がとくに評価したのは関節や筋肉のしなやかさである。

 

 

 九鬼はボールを蹴り上げると半身になる。九鬼の体に黒いオーラが纏わり付いていく。

 軽く飛び上がると空中で体を捻り、ボールが落ちてくるとともに、シュートを打ち出す──。

 

 瞬間。

 

 ゴッドハンドを繰り出そうとしている円堂が感じたのは、『遅い』という疑問であった。

 九鬼のシュートフォームは、簡単に言えば空中回し蹴りであるが、本来体を捻り、蹴りを繰り出そうとすると、上半身と下半身の動きに、そこまで大きな差は生まれないはず。

 

 しかし九鬼の体は、上半身と下半身の動きの差が大きい。まるで弓の弦が限界まで引き伸ばされているかのように。あるいは、銃弾が発射される直前の銃のように。

 九鬼が円堂の方向に手を伸ばす。

 そうすることで、銃身が完成する。黒いオーラが無骨な狙撃銃の形をとる。

 

「デス──」

 

 伸ばした手を思い切り体側に引き寄せ、引き金が引かれる。

 

「バレットォ!!!!」

 

「ゴッドハンド──!?」

 

 金色のオーラが円堂の前に展開される。

 ゴッドハンドとデスバレットがぶつかった際、円堂は予想外のシュートスピードに困惑すると同時に、そのシュートの重さに驚愕する。あまりの重さに鉄球でもぶつかったのかという衝撃を感じながら、どうにか止めようと足を踏ん張る。

 

 伝説のイナズマイレブンが使用したとされる、幻のゴッドハンド。先日の練習試合では帝国の必殺技、デスゾーン止めてみせたそれですら、デスバレットの前では届かない。

 二つの必殺技は、数瞬、均衡したかに見えたが、しかし、それでも。足りなかった。

 

「うわあああああっっ!!??」

 

 耐えきれなくなった円堂は破壊されたゴッドハンドのオーラと、ボールと共にゴールネットへ叩きつけられた。

 チームメイトたちは、あのゴッドハンドが破られた事実に驚愕を隠せない。それは、河川敷グラウンド近くの橋に停められていたリムジンの中から覗いている雷門中理事長の娘、雷門夏未と、そのリムジンの隣に立っていた豪炎寺修也ですら、ゴッドハンドが破られた事実に驚いていた。

 

 そして何より、デスバレットがわずかな間でも止められていたことに九鬼が驚いていた。

 

 九鬼夏樹というサッカープレイヤーにおそらく並び立つプレイヤーは多くいる。日本のストライカーとしてならブランクをどうにかした豪炎寺が並び立つだろう。

 サッカープレイヤーとしての技術ならアメリカで戦ったとある日本人の少年が、エースとしての責任感なら同じくアメリカで戦った二人のストライカーが、それぞれ九鬼を超える存在であると言える。

 日本人に限っても、先述の少年の他にも、噂に聞くイタリアにいる少年が九鬼を超える存在だろう。

 

 九鬼はそのような少年たちに並び立つため、そして同じ中学の鬼道有人に負けないために、日々自身の刃を研ぎ続けている。

 

 そんな九鬼が絶対の信頼を置き、幾度となく自身を助けてきた必殺技がデスバレットだ。

 九鬼のデスバレットの完成度は非常に高い。多少完成度にブレのある時代だった去年のフットボールフロンティアでも、木戸川清修の正ゴールキーパーから最後に魅せたノーマルシュート以外のゴールを演出し、源田のパワーシールドも容易く破り、去年時点でアメリカで戦ったゴールキーパーの必殺技すらも、ゴッドハンドほどの拮抗こそあったが、突破し、ゴールを決めていた。

 

 つまり、国内においては初めてだったのだ。デスバレットにわずかながらではあるが、拮抗を見せたキーパーは。

 

「っ、は」

 

 思わず口角が上がり、声が漏れる。いまだ痺れが残るのか、自身の手をじっと見つめながら手を開いたり閉じたりしている円堂に、九鬼は駆け寄ろうとして、やめる。

 

「円堂ぉ!」

「っ!?」

 

 地面に座り込む円堂と、不遜に立つ九鬼。

 九鬼は円堂に背を向け歩き出す時、ただ一言言った。

 

「またサッカー、しような」

 

 

「────ああ!!」

 

 

 手応えを感じながら、九鬼は帝国への帰途についた。

 




プロットを書いていたら12話くらいまでまともな試合描写をかけないことに気がついてやばみです。
がっつりな試合を楽しみにしてくださっている方は気長にお待ちください。
どうぞよしなに。
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