天才異能Vtuber少女、受験間近で親友を誘拐されてしまう。   作:ボカロ厨

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「考え事する時の癖ってあるだろ?私はボソボソ独り言言っちゃうんだ。アンタは?」

──とある女子高生H、教室での会話より


1日目 私立探偵

「仕事に情を持ち込むな、会社にいれば一度は聞いたことがある言葉だろ?だけどな、完全に感情を排除できる存在なんていやしねぇんだよ。情動こそが人を動かす、ビジネスであれどそれは変わらない」

 

 天井まで届く本棚がズラリと並べたれた部屋、そこに一枚のみ存在するガラスから差し込む陽光を浴びる女がいた。

 彼女は腰まで届く赤髪を弄りながら自論を述べる。

 その言葉は誰に届くわけでもなく、霞のように虚空へ消える。

 ピロリン、スマホの音が鳴って画面が光る。

 

「あ?新しい依頼か……?どれどれ」

 

 探偵という職業が存在する。

 だが彼らは少年漫画のように、警察が扱う事件や捜査には介入できない。

 制限も多く届出を出さなければ事務所を開くことすら出来ない。

 この国において探偵というものは華々しさとは遠く離れた場所に位置することだろう。

 だが、彼女は違う。正真正銘少年漫画の主人公のような探偵だ。

 

「……依頼、じゃねぇなこれは。『J案件』か」

 

 唐突に立ち上がった彼女は、パソコンの電源をつけると身嗜みを整え始めた。

 髪を櫛で解かし、カーキ色のコートを着て、荷物の準備を済ます。

 

「ハッ、今度こそ捕まえてやるよジョーカー」

 

 殺意を携え、パソコンの画面へと手を押し当てる。

 目を瞑り、息を整え、彼女にしか許されない技を使用する。

 異能が発動した瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 後に残されたのは静寂の中で一際目立つ排気音、ただそれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 S&WM&P9シールド、反動が少ない小型の拳銃……見た目も構造も本の通り。本物かよ……」

 

 先程ジョーカーを名乗る謎の存在がさった後。私はソファに母を寝かせていた。

 その途中母は持っていたバックの中を覗いてみたのだ、生野菜などがあったら冷蔵庫に入れなければいけないし。

 だが、中に入っていたものはこの国で所持が明確に禁じられているものであった。

 

「予想外にも程があるんだけどな……親友の誘拐に母親の乗っ取られに麻痺したか?たいして驚いてないことに一番驚いてるよ」

 

 持っているだけでお縄になるそれを手にしてなお意外にも頭は冷静だった、今日は色々なことがありすぎて疲れ切って鈍感になっているのかもしれない。

 

 

 「とりあえずこれ隠さなきゃな……カエデん家に連絡もしたし警察も動いてるし、少ししたらここにも警察が来る」

 

 あの後もう一度警察から電話があり、カエデの母親と相談したりして捜査を進めていくことになったらしい、話を伺いにここへも来るとのこと。

 誘拐事件マニュアルを知っている身からすれば少々違和感のある行動だ、だがその違和感の正体に気づく前に拳銃の存在に気付いてしまった。

 

 聞くところによると、カエデの部屋は犯人により荒らされてたとか。羽毛布団は切り裂かれワタが飛び出し、棚は倒され、机には幾つもの切り傷。

 

 されど肝心の安西楓の血痕は残されていないことから、正真正銘の誘拐と認めて貰ったという次第。

 犯人の行動に違和感は多いが、本職でもない私が気にしたところで意味がないことだろう。

 

「どこからどう見てもこの拳銃はジョーカーが仕掛けた物、さっきの言葉からして『これを使って僕を追い詰めてみろ』ってところ?」

 

 ふざけやがって、明らかに楽しんでやがる。しかも小型の拳銃をチョイスする辺り、微妙に配慮されている気がして更に苛立ちが高まる。

 しかし実際ジョーカーの居場所を見つけるとしてもどうすれば良いのだろう、あれだけのヒントでは一週間という期間はあまりに短過ぎる。

 

「私が今迄コラボしたVtuberは二十五人、そのうち今も交流があるのが十六人。住所を知っているのまで含めると一人……」

 

 その一人とは時折互いの家に遊びに行く友人関係にある、彼女がこんな事件を起こしたとは考えたくもないし実際その可能性は低いだろう。

 

「何よりあんなパフォーマンスをしでかしたジョーカーがそんな簡単なゲームにするはずが無い」

 

 誰にもバレずに誘拐したいのなら簡単だ、カエデを洗脳するなり憑依するなりして本人の足で自分の住処まで歩かせればいい。

 監視カメラを掻い潜って歩くことも可能だろう、ここはそこまで都会ではないし厚いメイクをした十代の女子高生がパーカーを着てフードを被ったりの変装をしたら一目で見抜くことは困難だ。最新機器を使えば話は別だが。

 

 「にもかからわずわざわざ私との通話中に気絶させスマホを奪いとったってことは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 どこまでもふざけたやつだジョーカーというのは。母のバックからの拳銃といい、母の姿で目の前まで来てからの正体開示といい、劇的なショーが好きなのだろう。

 まるでアメリカンコミックに出てくるジョーカーのようじゃないか、案外名前の由来はそんなところかもしれない。

 

「でも、そんな性格のやつならきっとすぐにはカエデを殺さない。最高のタイミングで私に追い詰められた瞬間にでも殺しそうだ」

 

 猶予はある、だが油断はしていられない。

 アレは到底警察では対処しきれない相手だ、私自身がやつの居場所を突き止めカエデを取り戻さなければならない。

 その時だった、玄関のチャイムが鳴ったのは。

 

「はーい、今出ます」

 

 警戒心は過去最高に上がっていた。何しろさっきの今だ、警察が来るには早すぎるしまたジョーカーなのかと身構えてしまう。

 お誂え向きに用意された拳銃をコートの内ポケットに、弾薬はバックの中に、私は慎重に鍵を開けた。この家には画面インターフォンなどという便利なものはないのだ、悲しいね。

 

「どうも、私立探偵の天内果林です。本日は先ほど起きた誘拐事件について少々お話を伺いに来ました」

 

 綺麗な人だと、そう思った。

 非現実的なまでに美しい深紅の長髪は腰まで垂れ下がっていて、北欧風の顔立ちはまるで精巧に造られた人形のようだった。

 身長は私より高く、ハッキリとしたことはわからないが180すら超えているのではないかとも思える程だった。

 

「あ、はい……ちょっと待てよ」

 

 あまりの美しさに気を取られてつい素直に応じてしまうところだったが、よく考えてみればこの状況はおかし過ぎる。

 

「なんでしょう、私は依頼を受けただけなのですが」

 

「まずこんな短時間で探偵が来るわけないだろ、それに誰が依頼するんだ誰が。ねぇ、一つ聞くぞ……アンタ、ジョーカーか?」

 

 いつでも消失時間を発動できる心構えをしておく、懐から拳銃を取り出して威嚇するためだ。

 当然発砲はしない、私が捕まってしまうし相手も操られているだけの可能性があるからだ。

 だけどもし、もしも目の前の女が本物のジョーカーならすぐさま撃っても構わない。

 私はそう思えてしまう程の怒りを内包していた、それでジョーカーが死ねばカエデが助かるのだから。

 

「ハッ、ハハハハハ!アタシがジョーカー⁉︎そりゃ滑稽だ!あのクズに間違われるほどに落ちぶれちゃいねぇよアタシは」

 

 そう考えていた僕を嘲笑うように、赤い髪の彼女は大きく笑った。嗤った。

 

「……じゃあ誰だよアンタ」

 

「アタシ?アタシかい?いいぜ、答えてやるよ」

 

 仰々しく彼女は自分の髪を掻き上げると言葉を産み出し吐き出し始めた。

 

「アタシは私立探偵にして電脳探偵。ジョーカーと同じ……そしてアンタとも同じ」

 

一呼吸置いて、彼女は今日何度目かになるかもわからない衝撃を私にぶつけた。

 

 

 

「異能を持つ存在だ」

 

 

 

 

 

 

 




次回は掲示板回です
Vtuber要素はこれから濃くなっていく……はず。
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