キングちゃんの『ほうれん草のリゾット』の効果があったのか、やたら元気になったキングちゃんのトレーナーが直々にお礼を言いに来た。
例の招待状にも気がついたようで、天皇賞・秋に勝ったら改めてお願いに来ると自信満々に言い残し去っていったのがつい先日。
そして来たる天皇賞・秋。
黄金世代のスペちゃんならびにセイちゃんと対決する事になって、結果クビ差でスペちゃんに勝利し見事1着。
これにより全距離G1制覇に王手がかかり、年末のグランプリ有マ記念で記録達成になるのかとまだ2ヶ月あるにも関わらずもう既に盛り上がっている。
キングちゃんのトレーナーさんだか、宣言通りキングちゃんを引き連れて報告に来たし、模擬レースの件をお願いすると言ってきたので引き受けた。
とは言ってもあの時はファン感謝祭が近くて生徒会役員も忙しかった上に、キングちゃんにも取材やインタビューの話がきていたため早くても走るのは半月後ぐらいになるだろうと。
なおキングちゃんは天皇賞・秋に勝利した事もあって、有マ記念に備えるためジャパンカップを回避することにしたようだ。
その分俺との模擬レースを走るから是非とも本気でお願いするわと言われたので思わず苦笑いしたっけな。
まぁその時は、本気で相手させてもらおうと思うよ。
そしてもう一つの出来事としては、秋のファン感謝祭が無事終わった事。
これにより俺の外部講師の役目は無事に終わり、店の営業は元に戻った。
もちろん俺が面倒を見ていたブルボンちゃんのクラスには遊びに行ったし、ファインちゃんお手製ラーメンやゴルシちゃんの焼きそばに舌鼓を打ったりで非常に楽しめた。
ゴルシちゃんとファインちゃんが手を組んで、これからは屋台仲間を増やしたいと言っていたので、とりあえずたこ焼きのプロフェッショナル、タマちゃんを推薦しておいた。
「うーん、多いなぁ。
流石に普通に食べるだけじゃ飽きるし、モンブランにでもしようかな」
テーブルの上に置いた大量の甘栗の袋を見て思わず苦笑いする。
この大量の甘栗は俺が買ったわけじゃなく、商店街に買い出しに行ったらオマケで貰ったものである。
八百屋はまだわかるが、魚屋や肉屋、ひいては電子レンジを買った家電屋さんからも渡された時は流石に笑ったね。
空前の甘栗ブームだったりするのかな?秋だからね。
というわけで普通に食べる分にも美味しいのだが、流石に1人で食べるとなると飽きるのでここは一つスイーツに変えてしまおうと思う。
秋のスイーツかつ栗と言えば、定番のモンブランだろう。
ーーー
材料は直径約7センチ、4個分を参考に。
土台となるダックワーズ生地
卵白40g、砂糖12g、アーモンドプードル28g、粉砂糖20g、薄力粉12g、粉砂糖適量。
モンブランクリーム
甘栗200g、牛乳160ml、砂糖30g。
ホイップクリーム
生クリーム100g、砂糖20g。
栗は中身に4つと飾り用に2つ。
初めに土台となるダックワーズから。
ボウルに卵白を入れてハンドミキサーで泡立てる。
空気を含んできたら、砂糖を3回に分けて加える。
角が立つ位のしっかりとしたメレンゲを作る。
粉類をふるって加えて、ゴムベラでさっくりと粉っぽさが無くなるように混ぜる。
絞り袋に出来た生地を入れ、準備した天板に中心から外に渦を巻くように直径7cmの円状にしぼる。
粉糖を茶こしでまんべんなく表面にふり、溶けたらもう一度全体にふる。
190℃のオーブンでだいたい12分焼く。
表面全体がうっすら茶色に色づいてきたらオーブンから出せば土台の完成
次にモンブランクリーム。
本来ならミキサーでやっても良いのだが、食感を残したいため今回は電子レンジを使って作っていく。
耐熱ボウルに甘栗を入れて600wの電子レンジで1分30秒加熱する。
皿と網目の細かいザルを用意し、甘栗を裏ごししていく。
裏ごしが終わったらボウルに戻し、砂糖、牛乳を3回に分けて入れて混ぜる。
クリーム状になってきたら、ラップをせず先ほどと同じように電子レンジで1分30秒加熱する。
加熱が終わったら混ぜ合わせたら、ペタッと表面が乾燥しないようにラップを貼り付け、粗熱を取ったら冷蔵庫で1時間冷やす。
中のクリーム用の生クリームに砂糖を加え、しっかり角が立つまで泡立てる。
最後に飾りつけ。
土台の真ん中に生クリームを少し絞り、その上に栗を一粒乗せる。
栗の周りに巻きつけるように生クリームを絞る。
口金をつけた絞り袋にモンブランクリームを入れて生クリームを絞った土台に絞っていく。
最後に天辺に半分に切った栗を乗せたら完成だ。
ーーー
「うん、美味い」
ダックワーズのパリッと焼けたサクサクの表面とフワッとやわらかい食感。
そして口の中に広がるアーモンドの風味とモンブランクリームが滑らかだがほんの少し栗の粒々感があって楽しめて美味しい。
ーカランッ
「ん?いらっしゃい。
空いてるところにどうぞ」
「こんにちはー!店長さん!」
元気よく入ってきたのはまんまる顔のキュートな栗毛のウマ娘。
彼女はスマートファルコン。
ウマドルなるウマ娘のアイドルを目指して日々邁進しており、時々トレセン校門前などでゲリラライブしていたりするのを目にする。
校則違反なのか、たづなさんに見つかって怒られているのもセットで目にするけど。
うちのデジたんとも深く関係があり、ウマ娘を推したいデジたんとウマドルとしてアイドルを目指すファルコンちゃんは需要と供給関係にあり、言ってしまえばファンとアイドルの関係だったり。
そのためデジたんはファルコンちゃんの古参のファンで、まだデビュー前でファンもいなかった時のゲリラライブにも参加していたぐらいで、仲が良かったりする。
あ、ちなみにファン1号はファルコンちゃんのトレーナーさんである。
2号はデジたん、3号は俺らしい。
3号、ライブで踊った事とかないから曲の合間のコールとかわからんのよ。
見てる分には楽しませてもらってるけどね。
なお今現在、ファルコンちゃんのファンは3兆人を超えているらしい。
一体、どういう事なの…?
「なんか久しぶりに見た気がするね。
今日も地方からの帰りかい?」
「うん!ダートのレースを盛り上げるためだもん。
地方の解説のお仕事だって引き受けるよ☆」
そんなファルコンちゃんだが既にトゥインクルシリーズからは引退しており、地方のダートレースの解説に行ったり、地方でゲリラライブしていたりする関係でトレセン学園にいる時間の方が少なかったりする。
ダートより芝のレースの方が世間的には人気なので、ダート専門で走っていたファルコンちゃんからすれば少し気に入らないらしい。
それでも圧倒的な強さでダートのレースを蹂躙し、ダートの帝王に君臨したファルコンちゃんに憧れてダートレースを走る為にトレセンに入学する子もいるし、日々の活動は着実に実を結んでいる。
まぁ、そんな後輩から赤鬼って呼ばれているのを聞いちゃったんだけど。
合宿中に呼ばれたトレーニング中に蹴りで海を割ったって本当かい?
「それはお疲れ様。
そんな頑張るファルコンちゃんには、出来立てのモンブランをプレゼントだ」
「わーい、ありがとうございます☆」
出来立てのモンブランを皿に移し、差し出す。
スプーンで小さく掬って口に運ばれていく。
くりくりのまんまるな子に栗のまんまるケーキ…。
栗毛も相まって似てるね、共食いかな?
「…ん?ファルコの顔に付いてる?」
「…いや、口にはあったかな?って」
「うん!とっても美味しいよ☆
生クリームとモンブランクリームの優しい甘さが混ざってふんわりと滑らかな口溶けだし、この土台はメレンゲクッキーかな?それもサクフワで癖になるね」
「おー…食レポみたいだね。
流石ウマドル、慣れてるね」
「えへへ☆」
我ながらくだらないなぁと思いつつも、まるで食レポのような感想をくれるファルコンちゃんに素直に感嘆する。
そういえばファルコンちゃんはスイーツが好きで、よくリサーチしてるんだったっけ。
この前ウマスタで、デパ地下のスイーツショップ全42品をブルボンちゃんと完食して実食レビューを書いていたのをたまたま見たし。
とりあえず1日で全部食べてて太り気味にならないあたり、若いっていいなぁと思った次第。
間違いなく俺が同じことをやろうもんなら太る。
というか、甘いものをそんなに一気に食べれないわ。
あ、そうだ。
今日のモンブラン、気まぐれスイーツセットにしようと思うし、ウマッターにあげる写真を撮ってもらおうかな。
「ファルコンちゃん、ちょっと写真を撮ってもらってもいいかな?
今日のモンブラン、気まぐれスイーツセットにするつもりでね。
頑張ってはいるんだけど、映え?というのはいまいち分からなくて…」
「ん、まかせて。
綺麗に撮っちゃうよ☆」
「ちょっと紅茶も淹れるから、それも映してもらっていいかな?」
「スイーツセットだもんね☆」
引き受けてもらえたのでモンブランを違う皿に乗せて差し出し、紅茶を淹れて横に添える。
俺のウマホを渡すと、ファルコンちゃんは手慣れた手付きで迷いなく写真を撮っていく。
「はい!これでオッケーだよ☆
投稿の方は店長さんの方でやれるよね?」
「ん、ありがとね。
投稿は流石にできるよ。
その紅茶とモンブランは食べちゃって良いよ」
「やった☆」
ウマホを返してもらい、告知として投稿する。
写真を見れば、ライトに照らされて天辺の栗が光ってるし紅茶の水面も輝いているように見える。
うーん、さすがだ。
「そういえば注文聞いてなかったけど…、何か食べる?」
「んー、正直スイーツ目当てだったからコレだけでいいかも。
この後、みんなとレッスンもあるからね☆」
「はは、それならいらないね。
みんなというとあれかい?えっと『逃げ切りシスターズ』だっけ?」
スマートファルコン、サイレンススズカ、ミホノブルボン、アイネスフウジン、マルゼンスキーの5人で構成されたユニットで、つい先日の秋のファン感謝祭の舞台でライブをしていたのをちょっとだけ見た。
現役の学生にも関わらずプロさながらの歌と踊りをしていて、舞台の観客たちも非常に盛り上がっていたのを覚えている。
なおデジたんはしっかりと最前席でペンライトを装備してコールしていた。
流石である。
「うん!ウマドルユニットとしてこれから本格的にデビューしていくんだ。
店長さんも応援よろしくね☆」
「もちろん応援させてもらうよ。
とは言っても、ライブとかは行けないのは許してね」
「そっちはデジタルちゃんが代わりに来てくれるかな?
この前も1番前に来てくれてたし☆」
「当然のように1番前にいるからね、デジたん。
というかファルコンちゃんもよく見てるね」
「デジタルちゃんの声はよく聞こえるもん☆
コールもしっかり返してくれて、ファル子としてもありがたいなぁって思ってるんだよ」
まぁ、デジたんは身長は低いし体格も華奢だけど声量はすごいからね。
昔カラオケに行った際には、マイクを使わずに歌っていたぐらいだし。
「あの子は推し事にも全力だからねぇ。
俺としては、ぶっ倒れないかが心配だけど」
「あはは…そういえばファル子のレッスンに応援に来てくれた事があったけど、その時もウインクしたら団扇を持ったまま倒れたっけな。
あの時はフラッシュさんが一緒にいてくれたから、保健室にすぐ運んだけど幸せそうな顔してたなぁ」
「ウチの子が迷惑をかけるね。
これからも多分何度か死ぬだろうけど、よろしくね」
その分デジたんは何度も蘇るけど。
というかファンサービスで致命傷を負うのは防御力が弱すぎないかい?
それにしてもフラッシュさんとは。
…あ、もしかして。
「ん、そういえばフラッシュさんっていうのはエイシンフラッシュ?」
「そうだけど…あれ?もしかして店長さん、会ったことない?」
「うん、ないね。
確かドイツから来てる子で、実家がパティシエの子だよね?」
「ファル子と同室なんだよ、フラッシュさん。
そっか、フラッシュさんここに来た事なかったんだ」
「まぁ、全校生徒が来るわけじゃないからね。
…そうだ、じゃあモンブランを持っていってもらっても良いかな?
実家がパティシエの子がいるって聞いた時から、ちょっとばかり意見が欲しいと思ってたんだよね」
趣味で喫茶店をやってる身だから、お菓子作り本職の娘さんからはどういう意見が出るのかと思っていたんだよね。
ケーキ作りの秘訣とかあれば聞いてみたいし。
「話を聞く限りデジたんが迷惑をかけたようだからね。
それのお礼も兼ねてってことでさ」
「うん、わかった。
ここのスイーツもオススメって事を伝えておくね☆」
「ありがとね。
…そうだ、この後逃げ切りシスターズの子が集まるんだよね?
ついでにそっちへの差し入れも入れておくね」
小さい箱と大きい箱にモンブランを詰めていく。
気まぐれスイーツセットとして出せる分もまだまだあるし、消費して貰えるなら俺としても願ったりだし。
「…それってファル子の分もあるかな?☆」
「…え、食べるの?何個欲しい?」
笑顔でピースサインを見せるファルコンちゃん。
逃げ切りシスターズへの差し入れの時に1個、部屋に帰ってフラッシュちゃんに渡すときに一緒に1個かな。
いや、良いんだけどさ。
作ってる俺からしても嬉しいけど。
「…カロリー大丈夫なのかい?」
「レッスンで動くし大丈夫☆」
「じゃあ、入れておくよ。
みんなによろしくね」
持ち運びやすいように箱を袋に入れ、差し出す。
ふと見ればすでにモンブランも紅茶も空だった。
ファルコンちゃん、結構食べるの早いね?
「ご馳走様でした☆
店長さん、お会計お願いします!」
「あ、うん、お粗末様。
…ん?いや、注文取ってないよね?」
「…確かに?」
最初のモンブランはプレゼントだし、2個目のモンブランと紅茶はサービスだから無料だな。
差し入れは俺からの気持ちだし…。
「お代は良いよ。
レッスン、頑張っておいで」
「うん、ファル子頑張っちゃう☆」
元気よく手を振って去っていくファルコンちゃんを見送る。
ウマドルかぁ…よくよく考えれば居そうで居なかったもんなぁ。
まぁ俺の現役時代に、そもそもウイニングライブなんて言うものはなかったんだけど。
「…うん、そんなには食べれそうにないね。
若いっていいねぇ」
モンブランをもう一つ口に運ぶと、甘さを感じる。
紅茶では無くてコーヒーが欲しくなり、無糖のまま流し込む。
去る年月は早いものだと感じるね。
ーカランッ
「ごきげんよう、マスターさん。
まだ気まぐれスイーツセットは残っていまして?」
「いらっしゃい。
大丈夫まだあるよ」
本日の営業はまだまだ続く。
登場ウマ娘をアプリのホーム画面のランダムを使用すればいいのでは?と思ってやってみたのですが、4連続ファル子でした。
そんなに食べたかった…?
以上、裏話でした。