感想の方も返事が遅くなり申し訳ない。
夜中に書くとお腹減りますね()
12月に入り、日に日に冷え込みが厳しくなってきた今日この頃。
お供え物の効果があったのか、ドトウちゃんが本格化を迎えたらしくて年明けに早速重賞へ出走するそうだ。
それに伴ってお礼に来たのだが、何故か肩にタヌキを乗せており聞けば懐かれたとの事。
どう言うことなの?とツッコミを入れるのも野暮と言うものだし、仲良くやっているようで理事長のやよいちゃんもネコ乗せてるしと言うことで、飼うことが許されたらしい。
とりあえずバケットをあげたら喜んで食べた、可愛い。
これでトレセン学園には動物連れの子が3人いるわけで。
ネコ、鷹、タヌキ。
次は何が増えるのだろうか。
それの後日談なのだが。
いなり寿司をお供え物にした事をおばあちゃんに報告しようと思って訪ねたのだが、なんと空き家であった。
不思議に思って商店街の人に聞けば、なんでもすでに何年も前から空き家だそうでおばあちゃんなんて住んでないぞとの事。
どうやら俺は化かされていたらしい。
それが狐なのかタヌキなのかは定かではないが。
閑話休題。
「それで、ね。
要件はよくわかった」
日が上り寒さも和らぐ昼下がり、既に来客が居て店の方は貸切りになっている。
俺の手元にはファイリングされた資料があり、その内容をざっとではあるが目を通した。
一通り読んだ感想だが、本気で考えてるとは思わなかった、である。
「新学期から授業の内容に調理実習を追加するなんてね。
ただまぁ、別に講師を務めるのは俺じゃなくても良くない?」
「トレセン学園運営の関係者からの推薦が多いので。
まぁ、そんな建前は置いておくとして。
生徒たちウマ娘と親交もあり、信用に足る人物を今から探すとなると結構手間でして。
貴女であれば色々と学ぶことも多いと、私個人としてもお受けしてもらいたいと思っています」
来年度から授業内容に調理実習を取り入れるため、講師としてトレセン学園に勤務するつもりはないかという話である。
相変わらずやると決めたら行動が早いね、やよいちゃんとたづなさんは。
そしてそれを伝えにきたのは生徒会長たるシンボリルドルフ。
交渉の場なのにいい笑顔で言うじゃないか。
どう考えてもグルである。
君たち、俺にトレーナーをやらせたい派閥筆頭じゃないか。
「ルドルフちゃんは絶対、個人的な思惑もあるだろ?」
「…まぁ、それなりには。
本音を言うなら調理実習の講師よりも、トレーニングの教官の方をやってもらいたいものです。
主にピークを迎えてからも、それを維持し続けるトレーニング方法とか」
「気ままに生きる、適度に運動する、余裕を持つ、そんぐらいだよ」
「…それで維持できたら苦労はしないんですよ」
苦笑いされてもなぁ、割と事実だし。
別に今でもレースするために鍛えてるかと言われれば否だし。
今じゃ、明日のメニューは何にしようかと悩むしがない店長だからね。
「というかそもそも今の授業内容って、ヒトの学校と比べるとかなり詰め込んでやってるんだろ?
ここに調理実習なんてやってる時間があるのかね?
調理に携わる人間としては、勉学みたいに広く浅くなんて教えれないぞ」
「理事長との話では、この間のファン感謝祭のようなちょっとしたものの調理ぐらいを考えているとのことでしたが」
「いや、あれはちょっとじゃないから。
…ルドルフちゃん、試しに聞くけど君はどのくらい料理はできる?」
「む…あまりしたことはないですが。
心配無用、レシピ通りに作ることは可能です」
琴線に触れたのか、少しばかりルドルフちゃんの耳が倒れた。
別に煽ってるわけじゃないんだけど、聞き方が悪かったかな?
けどまぁルドルフちゃんはやらなそうだけどやれば出来るだろうなぁと。
だからこそ、出来ない子のレベルがわからない。
「出来ない子というのはレシピ通りすら出来ないし、なんなら見ないよ。
単純に焼くだけの卵焼きですら失敗する子だっている。
…それを踏まえた上で聞くけど、本当に簡単な調理かい?」
「…それを言われると、否としか。
しかしながらそれは下を見た場合では?
授業である以上、段階を踏んで難しくしていくべきだろうと思うのですが」
「その段階を考えるのをあと4ヶ月でしろと?
流石にそれは、今から調理指導できる人間を探すとなると手間だろうね。
俺としても店があるし厳しいを越して無理だろうよ」
いくら趣味で喫茶店をやっているとは言え、一応こっちが本業だし蔑ろにはできない。
生活に困る…ことはないけど。
変な話、金には困ってないし。
「別に条件もいいし引き受けても良いかなぁとは思うけど、単純に準備期間が欲しいよね。
あまりに急すぎるんじゃないかって俺は思うよ」
「それは…」
ーぐぅ…
言葉を遮るように気の抜ける音がした。
俺ではないし、ルドルフちゃんの腹の虫の音だ。
ルドルフちゃんを見る目がジト目になっていくのを感じる。
気まずくなったのかルドルフちゃんは視線を逸らすし。
「もしかして、また昼ごはん食べずにきたのかい?」
「…そういえば食べていなかったか」
「おバカ。
仕事に勤しむのはいいけど、ちゃんとご飯ぐらい食べなさいな」
ファイルを閉じて、ルドルフちゃんの頭を小突いて返す。
幸いにも今日のランチのシチューが余っているし、それでも食べさせよう。
少し温めたらボウルによそい、バケットと共に差し出す。
「ほら、今日のランチの余りだけど」
「…すいません、ありがたくいただきます」
とりあえずこれでこの話は終わりと言うことを悟ったのか、静かに食事を始めるルドルフちゃん。
しかし…なんか事あるごとにご飯を食べ損ねてるな生徒会役員。
普通に心配になるし…ふむ。
「ルドルフちゃんや、まだ時間の方は大丈夫かい?」
「ええ、今日はこの後の用事は特にないので。
エアグルーヴに仕事を取られてしまったのでね」
「それはよかった。
それじゃ、腹の足しになるかはわからないけどすぐ食べれるような携帯食を作ってあげる」
購買で携帯食を買えばいいのでは、とか言ってはいけない。
ーーー
材料は25センチ×25センチ型一台分。
オートミール(インスタントオーツ)200g、ナッツ50g、ドライフルーツ50g、はちみつ100g、牛乳大さじ4、有塩バター30g。
ナッツをビニール袋に入れてめん棒などで粗めに砕く。
大きめのドライフルーツはレーズンサイズに刻んでおく。
耐熱容器にはちみつ、バター、牛乳を入れ、電子レンジ600wで1分30秒加熱する。
オーブンを180度に予熱する。
加熱したはちみつ、バター、牛乳にオートミール、ナッツ、ドライフルーツを加えて、全体がしっとりとするまでしっかりと混ぜる。
牛乳を入れると乾燥した麦に水分が加わって食べやすくなる。
オーブン用の耐熱容器にオーブンペーパーを敷き、混ぜ合わせたものを入れ、ヘラやスプーンで底に押し付けるように平らに均す。
ここで隙間がないようにしっかりと押し付けておかないと焼き上がった後に崩れてしまう。
オーブン用の耐熱容器ならなんでも良いが、四角い方が完成した時に切り分けやすい。
オーブンでうっすら焦げ目がつくくらいを目安に、20〜25分焼く。
粗熱を取ったら包丁で切り分ければ完成だ。
ーーー
「…うん、ドライフルーツがいいアクセントになってる。
ルドルフちゃんも食べるかい?」
「ん、どうも…なるほど、これは結構食べ応えがありますね」
「おやつにもなるだろうし、携帯食にはなるんじゃないかな?
レシピは書いてあげるから、気が向いたら作ってみるといいよ。
これも一応、簡単な調理の部類だろうからねぇ?」
「…なるほど、これを作ってから出直せと。
乾坤一擲、うまく作ってみせましょう」
切り分けたオートミールバーを袋に詰めて、メモにレシピを書いて入れておく。
俺としては上手く作れるようになって携帯してくれたり、そもそもご飯を食べ損ねたりしないでくれればいいんだけど。
「にしても、エアグルーヴちゃんも人の仕事奪ってるし大丈夫なの?
あの子から、ルドルフちゃんが仕事ばかりしてて心配って相談された事あるけどあの子も相当だよね?」
「エアグルーヴには基本的に学園内の事をお願いしています。
ブライアンにもお願いしているので問題はないかと」
「ブライアンちゃん、よくサボってるイメージあるけど…?」
「必要な時には必ず動いてますよ、ブライアンは。
それこそエアグルーヴが気が付いていないような問題など、先んじて解決している事もありますし」
…言われてみればたしかに?
タイキちゃんの未許可バーベキューだったり、ゴルシちゃんの奇行とかによく居合わせてるイメージがある。
いや、待てよ?
どっちも食べ物、なんなら肉が関係してる時だなこれ。
先んじてというか本能の赴くまま立ち寄ってるだけじゃない?
ブライアンちゃんのためにも、言わぬが花かな。
「そういえば、デジタル君がキングヘイローと併走したのは知っていますか?」
「いや、初耳だね。
デジたん出張サービスでもあんまり併走はしないんだよね、たしか」
「しかしどうやら聞くところによれば、デジタル君から言ったようで。
…デジタル君の観察眼まで手に入れれたら、キングヘイローは伸びるでしょうね」
俺から始まって、生徒会役員にデジたん。
自分で言うのも何だけど、既に過剰戦力では?
キングちゃんをどこまで行かせるつもりだい?
にしてもデジたんが自分から併走の誘いをね…。
成長したなぁ…先生、嬉しいよ。
ではなく、多分俺らと併走したことに気がついたんだろうね。
これは、近々確認の連絡が来るかな。
「ま、有マ記念が楽しみだよね。
シニア級はもちろんクラシック級からも参戦してくるし、なかなかに強者が揃って一筋縄ではいかないだろうね」
「ふむ…個人的にはキングヘイローと同期のグラスワンダーがなかなか見どころがありそうかなと。
ジャパンカップでのスペシャルウィークを見てからと言うもの、トレーニングに励む気迫が違いましたね」
「グラスちゃんか。
去年の有マを勝ってるし、なんならグランプリ制覇してるし有力だよね」
あのスペちゃんの挑戦状をみて、誰か忘れてないかと火がついちゃったんだろうなぁ。
人気投票もキングちゃん、スペちゃんに続いての3位だし、不服なんだろう。
「ま、それでも俺はキングちゃんに頑張ってもらいたいかな。
ルドルフちゃんは…立場的に応援は難しいよな」
「そうですね。
とは言っても、グラスワンダーに少しばかり併走を頼まれまして」
「…なるほどね。
あの子も差しを得意としてるし、何か吸収してるかもと」
生徒会長で最強とも呼ばれてるルドルフちゃんに併走を頼むとは、覚悟が決まってるなこれは。
何がなんでも勝つと言う強い意志を感じるし、怖いね。
は?マイルならウチのデジたんが最強だが?
「というか今回出走する黄金世代の3人、揃って差しだね。
前次第…いや、多分最終直線勝負になるかな、コレ」
「全員揃って末脚自慢ですし、おそらくは。
同期のトリックスターは回避してますし、根性次第でしょう」
「あと、クラシック級のオペラオーちゃんがなんか怖いんだよね。
こう…まだ本格化前というか、これから化ける気がして」
「テイエムオペラオー、ですか?
ふむ…そのような予兆はまったく…」
「いやなんとなくそんな気がするだけだから、気にしないでね」
きっと、ドトウちゃんが尊敬してるんですと力説してくれたからだろう。
菊花賞は惜しくも2着だったものの適性はあるし可能性としてはなくもない、か?
うーん、わからん。
「とりあえず有マ記念が楽しみだね。
当日は現地で見てるんだっけ?」
「えぇ、呼ばれていますので」
「いいねぇ。
俺も店閉めて行っちゃおうかな」
「…会場が混乱するのでご遠慮いただければ。
その、どうしても来るというのであれば連絡してもらえると非常に助かります。
VIP席を取らせてもらうので」
「冗談、本気にしないでいいよ。
俺みたいなロートルが行ったところで何にもないんだけどなぁ」
現役時代にレースを荒らし回った結果、今現在レース場を実質出禁になってる
ウマ娘がいるらしい。
悲しいかな、俺だわ。
デジたんの面倒見てた時以来、レース場に行ってないなぁ。
レース場のご飯が美味しかった印象があるから、それだけでも食べに行きたいんだけど。
「ご自身の影響力を考えていただければ」
「わかってるって。
変に記事にされても誰も得しないからね」
「えぇ、仕事が増えてエアグルーヴに睨まれるのは結構なので。
…それでは、今日はこのぐらいで失礼します」
「ん、そうかい。
仕事頑張りすぎてご飯を食べ損ねないようにね」
苦笑いして去っていくルドルフちゃんを見送り、すでに冷めてしまったコーヒーを啜る。
1人になって思い返すのはさっきの資料。
「…講師、ねぇ」
別に条件も悪くはないんだけど。
強いて言えば自由じゃないんだよなぁと。
社会人としてはどうなのかと言う問題だけど、教師になると今みたいに好き勝手やれないのがなぁ…。
「ま、来年考えるかな。
…さて、ルドルフちゃんも帰ったし開店しますかね」
本日の営業はまだまだ続く。