生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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こんちは、こんばんはどうもHAKUSUNAです。
今年も最後ですが最後に何とか書き終えれたので出したいと思います。かなりの時間が空きましたが申し訳ないです…
もう2023年が終わるなんて思いもしませんでした(笑)取り敢えず今回は会話多めに書いたと思うので期待してて下さい。多分


第十七話 油断 〜提督〜

 

 やられた。

 

 油断していた。

 

 何故だ…何故俺は気付けなかった。奴等がここまで単純な侵攻ルートでくる筈がない。俺がそれを一番分かっていた筈だ。

 

 現れた敵艦隊は十隻の大艦隊。到底太刀打ち出来る訳無いのは確実だ。

 

 しかし、支援は見込めない。

 

 国家存亡の危機と言うのに人はこんな時まで争い合う。俺も奴等と同じだ。

 

 自分の主張を通す為に対立し、人々を巻き込む。あの准将()に従っていればある程度の支援はしてくれたのかもしれない。

 

 だが、人や艦娘の事を道具としか思っていない奴に従うよりもこの絶望的な状況の方がマシだ。

 

「敵艦の艦種はわかるか?」

 

「今特定中です!」

 

「...判明しました!」

 

「大型艦三、小型艦七隻」

 

「大型艦、ル級elite二、リ級elite一隻」

 

「小型艦、イ級後期四、ホ級一、チ級elite二隻!」

 

「水雷戦隊に通達、撤退命令!」

 

「了解!」

 

 一度帰還させるしかない。燃料弾薬も敵の囮部隊に殆どを使ってしまった。奴等に勝てる手段を今から考えるしか...

 

 でも、どうやって奴等に勝つ?こっちは川内達の水雷戦隊だけで限界に近い。敵の爆撃機も発電所に接近している。あの爆撃機を撃墜出来る戦力はこの鎮守府にはない。大本営直属の飛行場からスクランブルを出したとしても間に合うかわからない。

 

 それに水雷戦隊を再度敵艦隊に向かわせたとしても奴等の方が断然戦力は上だ。

 

 他の鎮守府から支援を貰えるのも不可能に近い。

 

 駄目だ...一体どうすれば...

 

 ふと頭に浮ぶ。

 

 それは至って簡単なこと。

 

 ...

 

 見捨てればいい、彼女達を。

 

 彼女達を時間稼ぎに新たに作戦を立てれば良いと。

 

 そんな事を思ってしまう程、戦況は急を要する。

 

 いや絶対に駄目だ。それでは他の奴と同じ艦娘のことを道具としか思っていないのと同じだ。

 

 こんな事を考えてはいけない。もっと別にいい策がある筈だ。

 

 考えろ、考えるんだ。

 

「提督...」

 

「どうした?大淀」

 

「敵、爆撃機隊が発電所まで約十キロまでに接近しています」

 

「輸送部隊の撤退作業はまだなのか?」

 

「それなんですが...」

 

 大淀がそう言いながら机にある機具を使う。すると正面のモニターに発電所、その周辺が映された。

 

「ご覧頂く通り、最後尾の部隊が未だ撤退出来ていないようです...」

 

「分かった、少尉に繋げてくれ」

 

「了解しました」 

 

「...通信開きます」

 

 通信が開く。少し雑音混じりで彼の声が聞こえた。

 

「こちら斎藤少尉です」

 

「提督だ」

 

「敵の爆撃機が約十キロまで接近している」

 

「いいか、今すぐそこから撤収しろ」

 

「ええ、分かっています」

 

「しかし道が想像以上に道路の状態が―『敵レーダーで捉えました!』」

 

 無線から聞き覚えがある声が聞こえてくる。この声は以前会った山口上等兵か。恐らく短距離レーダーにも見える距離までに近づいていると言うことだ。

 

「『少尉!一一式短距離地対空誘導弾の発射許可を!』駄目だ!ここで撃つと敵に発見されるぞ!」

 

 少尉はそのように言う。確かにここで撃てば敵に発見される。

 

 俺は少尉の言葉に乗るようにして知っている情報を渡す。

 

「敵の攻撃目標は恐らく大本営だ」

 

「こちら側から攻撃をしなければ大丈夫な筈だ」

 

「提督の言った通り、この部隊を攻撃するよりも相手は大本営を空襲するのが打倒だろう」

 

「『しかし大本営が空襲されると言うことは国防の危機じゃないですか!?なら俺達が守らないといけない筈です!』いいか今は提督から与えられた任務が最優先だ!」

 

「『敵爆撃機此方まで約7キロ!どんどん近づいてきます!』いいか!落ち着くんだ!」

 

「『このままだと俺達死ぬかも知れないんですよ!』」

 

「『それならいっその事人思いにやりましょうよ!』まだ死ぬと決まった訳ではないだろ!?」

 

 無線の向こう側では言い合いをしている。冷静な判断が出来ればいいのだが今は非常時だ。まともな戦闘訓練を受けていない整備士は精神的に追い込まれる状況に対して対応出来ていない。

 

 整備士と言ってもそこら辺の一般人と変わりない。死をこれ以上もない身近で感じると言うストレスが尚更苦しめている。

 

「新たなレーダー反応!」

 

「敵か?」

 

「いえ、味方です」

 

「長野からスクランブル発進したF-15j六機、F-35A十二機が迎撃に上がったようです」

 

 大本営直属の部隊か。流石に大本営が攻撃目標だと迎撃機を出すだろう。しかし敵深海棲艦に対して何処まで現代兵器で効くものか。

 

 しかしこの好機を逃してはいけない。今のうちに輸送部隊を撤収させなければいけない。

 

「いいか、よく聞け」

 

「現在長野からスクランブル発進した迎撃機が向っている」

 

「この奇跡は二度とない」

 

「今すぐそこから撤収しろ」

 

「了解しました!『...』」 

 

 奴等には現代兵器では殆ど有効打を与えられない。F15jに搭載されているAAM-5(04式空対空誘導弾)又はAIM-9X(サイドワインダー)を数発当てない限りは落とせないだろう。それでも時間稼ぎにはなる。

 

「味方機交戦距離に入りました!」

 

「F-35及びF-15、AAM-5第一波攻撃を発射」

 

「命中まで凡そ二分」

 

「続いてAAM-5第二波攻撃を発射しました」

 

「命中弾六、二機の敵艦載機の撃墜を確認」

 

「続いて命中弾八、三機の敵艦載機の撃墜を確認」

 

「敵爆撃機未だ現在」

 

「敵の直掩機が味方機三機と交戦!」

 

「味方機AIM-9Xを発射...命中せず」

 

「味方F-15j三機が撃墜されました...」

 

「味方機、再度攻撃に入りました」

 

 何故そのまま離脱しないのか。大凡想像がつく。准将()の仕業だろう。深海棲艦の艦載機相手に空中戦は奴等に軍配が上がる。それに一撃離脱が基本となるが奴は知って言ってなお、戦力を浪費している。本当に心底腐った奴だ。

 

「AIM-9Xを発射」

 

「命中、一機の敵艦載機の撃墜を確認」

 

「敵艦載機が味方機の後ろ取りました...」

 

「味方機...F-35、五機の撃墜を確認」

 

「他の機体も殆どが損傷しています」

 

「―これ以上は見ていられん」

 

「彼等を横田基地に着陸させるように指示してくれ」

 

「しかし横田基地は以前に放棄されてますよ?」

 

「いやいいんだ、まだ滑走路が生きている」

 

「こちらで保護する」

 

「分かりました、そう伝えます...」

 

 これでいいんだ。少しでも救える奴は救う。

 

 昔の俺は捨てたと思っていたが人間の根本と言うものは変わらないのかも知れない。

 

「迎撃機横田基地に向けて引きました」

 

「輸送部隊も離脱に成功」

 

「鎮守府への帰路に着きましまた」

 

「これでやっと正面の敵に集中出来るな」

 

 大本営への空襲は避けられない。しかし大本営周囲は横須賀以上に防空網が整えられている。大本営は地下深くに作られてはいるが奴等深海棲艦がそんな馬鹿では無いことは知っている。だか何を考えているのか全く予想が着かない。

 

 それに敵の陽動部隊でまんまと引きずり出されてしまった。敵の大艦隊、それも戦艦級とネ級までいやがる。今は水雷戦隊を撤退させるしかない。

 

「水雷戦隊はどうなっている?」 

 

「水雷戦隊撤退命令に応答していません...」

 

「敵の陽動部隊を追っている様です」

 

「どういうことだ?」

 

「撤退命令は出した筈だぞ!?」

 

「その筈なんですが...全く応答がありません!」

 

「再度撤退命令を送れ!」

 

「了解しました」

 

 どうなっている?確かにこちらから送った筈だ。なら何故撤退しない?

 

「撤退命令、再度通達」

 

「...反応ありません」

 

「何か分かるか中沼中尉」

 

「恐らくは通信機の故障がありえます」

 

「従来の通信機ではある程度の耐久度がありまたが戦況悪化に伴い、軽量化もとい劣化版になってしまいました」

 

「では、どうしたらいい?」

 

「このままでは水雷戦隊が敵の艦隊と戦う事になるぞ」

 

「残念ながらどうにも...」

 

「誰かが新しい通信機を持って行くしか...」

 

「流石にそれは無責任過ぎ―」

 

「た、た大変です!」

 

「扉を開け下さい!」

 

 俺が言うのを妨げるかのようにある一人の男が扉を叩く。

 

「扉を開けろ」

 

 俺はそのように中沼中尉に指示する。

 

「なんだ?」

 

 彼は息が絶え絶えになりながら、

 

「――か、艦娘が急に暴れ出して...」

 

 俺は渡された通信機について思い出す。しかし通信機からは何も発せられていなかった。

 

「その艦娘は何処だ?」

 

「まだ医務室だと思います急に暴れ出して...」

 

「軍医はいないのか?」

 

「――それが全く見当たらなくて」

 

 はやりあの時か。軍医は何をしていたかは分からない。武器庫周辺にいたのは知ってはいるが...

 

「分かった、今すぐ向かおう」

 

「提督、水雷戦隊はどうするんですか?」

 

「とにかく水雷戦隊との通信が出来るか試してくれ」

 

「もしかしたら繋がるかもしれない」

 

「とにかく今は時雨を止めなければいけない」

 

 俺はそう言捨てて急いで向かう事にした。

 

 走りながら頭を回られせた。何故軍医がいないのか、何故通信機が繋がらないのかと。

 

 ようやく医務のある通りの近くまで来た。

 

 近く程物音が大きくなり、俺はドアの前まで来た。

 

 艦娘は人よりも力がある。力任せで掛かって来られたら完全に負ける。最悪悪ければ死ぬ。

 

 気をつけて言葉を選ばなければいけない。

 

 そうして俺は扉を開け中に入る。

 

「時雨!」

 

 中に入る。しかしそこには居なかった。いや正確にはいるのだろうが。

 

 医務室は荒れに荒れ、薬品棚が倒されている。見つけるには手こずりそうだ。俺は足を踏み入れる。

 

「この違和感――ッうしろか!」

 

 油断した合間に懐まで近づかれてしまった。完全に気配が消えていた。

 

 俺は直ぐ様受け身を取るが彼女の力に圧倒され吹き飛ばされる。

 

 壁に打つかり何とか事なきを得たが非常に不味い。

 

「ッ――時雨話を聞いてくれ」

 

 そう促すが聞いていないかのように直ぐ様攻撃を入れてくる。

 

 今度は完全な受け身を取れた。俺はそこから彼女の動きを封じる為の体制を取る。

 

「離せ!!」

 

 蹴りや殴りを入れてくるが気にせず、

 

「頼む時雨、話を聞いてくれ」

 

「夕立と白露を何処にやった?」

 

 彼女が罵り混じらせた声で言い放つ。

 

「正直に答える」

 

「彼女達はもういない」

 

 少し力が弱まる。この言葉はまだ重すぎたか...

 

「嘘だ!そんなの!!」

 

「嘘じゃない、本当だ」

 

「だってさっきまでいたんだよ!!」

 

「いいか、それは薬による幻覚作用によるものだ」

 

「嘘をつくな!!」

 

 力が弱まる。

 

「彼女達はもういないんだよ」

 

「それはもう君の中でも分かっている筈だ」

 

 力が弱まる。

 

「そんな事を無い!だって――」

 

 嗚咽が混ざり始め、瞳からは一筋の線が流れる。

 

「あ、あれ?なんで...」

 

「おっかしいなぁ、なんで泣いて...」

 

 力が更に弱まる。

 

「――私達には何も出来なかった」

 

「こんな事を今更になるが申し訳ない」

 

「――私達の責任だ」

 

「俺をここで絞め殺してくれて構わない」

 

 俺は力を抜き身を委ねる。

 

「君は十分に苦しんだ」

 

「せめて最後くらいは仲間の仇をとって欲しい」

 

「くうっ…うう、ツッッ!」

 

 力が弱まる。

 

 俺の胸元を掴んでいた手を離した。

 

「もういいよ...」

 

「何もかも全部」

 

「どうでもいいや」

 

 俺から離れ、扉へと向かう。

 

「待て!」

 

「何処に行く気だ?」

 

「――君は誰?」

 

「俺新しくここに来た提督だ」

 

「そっか...前の提督は?」

 

「殉職した」

 

「なーんだ死んだのか」

 

 そう言って彼女は微笑む。

 

「...」

 

「僕は――もう行くよ」

 

「おい!何処に行くんだ?」

 

「何処か遠くへ」

 

「強いて言うならみんなに会える場所かな?」

 

 微笑む。

 

「ここにいる仲間はどうするんだ?」

 

「...」

 

「君の仲間は今でも私達、人の為に戦ってくれている」 

 

「...それで」

 

「戦いには勝ったの?」

 

「――まだだ」

 

「戦況は悪化し続けている」

 

「この国も一年もすれば無くなる」

 

「じゃなんで戦ってるの?」

 

「負けると決まってるのに」

 

「――俺はまだ希望を捨てていない」

 

「君の仲間も希望を捨てずに必死に戦っている子もいる」

 

「俺は彼女達が希望を捨てるまでは諦めないよ」

 

「ふーん」

 

「凄いね君は」

 

 微笑む。

 

「僕とは大違いだね」

 

「それは違うな」

 

「私と君は同じだよ」

 

「なんでかな?」

 

「これから見ていたら分かる筈だ」

 

「なにそれ」

 

 微笑む。

 

「勿体振りも大概だよ」

 

「――そんなの気になるに決まってるじゃん」

 

 まだ希望は捨ててはいけない。この国家が終わりに近づいたとしても諦めはしない。まだ仲間(艦娘)が共にいるのだから。




今年最後の小説見て頂いてありがとうございます。来年からは出来るだけ投稿ペースを以前と同じ様に戻したいと思ってます。Twitter(X)でも色々言っているのでもし良ければフォローしていただくとモチベが上がります!
では皆さん良いお年を!!2024年もよろしくお願いします!

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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