もう新年も明けて一月経ちそうですが遅くなりすいません…
やっぱ新年だから色々忙しくて書く時間がありませんでした(言い訳)
そんな事はさておき今年最初の小説となります!出来れば楽しんで行って下さい!!
俺の前に立つ一人の少女。
彼女は片方の腕を背に隠して見ている。
「はは、君は本当に面白いね」
「そうか...」
「ふふっ本当だよ」
つくり笑いをしているのが分かる。
「提督」
「少しお願いを聞いてくれないかな?」
「私に出来ることなら許そう」
あちらこちらに物が散乱した部屋で俺と彼女一人。様々な医薬品が散らかりこれらは二度と使うことは出来ない事が分かる。
「やっぱり...もう一度会いたいなーって」
「――夕立と白露に」
「...」
二人の間に沈黙が流れる。
もう一度彼女らに会う。
それは、
「薬か...」
「やっぱり皆に会えないのは寂しい」
「けどあれは僕に会わせてくれる」
「皆にね」
「...だから...ね」
「あの薬を僕にくれないかな?」
ここで渡すか、渡さないか。
もしここで渡してしまえばしまえば以前と変わりない生活に戻ってしまうだろう。
「それは無理だ」
「あの薬に依存したとしても君の思う彼女らは戻ってはこない」
「本物にすり変わることが出来ないのは時雨、君が一番分かっている筈だ」
「それにあの薬は副作用が強い」
「これ以上は君の体が持たなくなるぞ」
「...だよね」
「提督ならそう言うと思った」
「あの人なら何も言わずにくれたのにね」
彼女は乾いた笑いをし、そう言った。
その目は薬物の依存によるものか酷く澱んでいるように見える。
彼女から呟かれた
そして彼女は自ら倒した薬品棚へと向かい、腰を下ろす。
「何をしている?」
「探してるんだよ」
「薬を」
彼女は倒れた棚を漁り始める。
「――時雨」
「君は知っていて尚君はあれを使うのか?」
「そうだよ」
「自分で死ぬのは怖いし、このまま生きていても辛い事だらけ」
「私はあの薬に縋りたいんだよ」
「皆、何かに縋りたくて縋られたいんだよ」
「提督だってそうでしょ?」
皆何かに縋りたくて縋られたいか...俺は深く考える。
俺は仲間、家族を殺した深海棲艦を許さない。そう考え生き続けた。奴等をどうやって地獄に葬るのかをただ必死に考えていた。許せない、許さない。その憎しみと憎悪で俺は俺自身を保っていた。
俺も目の前にいる彼女と同じく、深海棲艦を地獄のそこに突き落とすと言うものに縋っていたと言う訳か。
「嗚呼、そうだ」
「私も何かに縋り生きている」
「ある目的の為に私はここにいる」
「しかしその目的は私一人では出来なくなってしまった」
「私は君の力が借りたい」
「...ふーん」
「それで僕に良いことはあるの?」
「この薬以上に」
彼女の手にあるのは白に黄色がかった物が入っている透明な袋。恐らくあの薬なのは即座に分かる。
「何故ここにある?」
「んーまあ色々ね」
「僕はこの薬を今すぐにでも使いたい」
「けど提督は使わせたくない」
「提督はどうするの?」
「...」
「薬に縋るぐらいなら私に縋れ」
「その代わりと言ってはなんだが私は出来る限り君を手助けする」
かなり強引な手ではあるが今はこれしかない。時雨にあの薬を飲ませない。それが今俺に出来る唯一の手段。
「ふふっ」
「あはは」
彼女は笑う、ただ純粋に。そこには以前の面影があるように思えた気がする。
「提督は縋るじゃなくて縋られたいんだね」
「嗚呼、そうなのかもしれない」
「ふふっ、君は本当に不思議な人だね」
そう言う彼女は何処にでもいるそこら辺の少女であるように思えた。
「けど、分からないなあ」
「分からない?」
「うん」
「なんでさっきまで死にたくて堪らなかったのに今は死ぬのが怖くなって来ちゃった」
「死なずにこの薬を飲みながら一生を過ごす事も出来る」
「提督の下に就いて新しい一歩を踏むことも出来る」
選択。彼女はそれに悩み兼ねている。しかし、最初会ったときとは大きく変わって来ている。俺はそれに安堵しながらも時雨が希望を持つ事が出来る様にしなければいけない。
「...僕ね、昔の事を思い出したんだ」
「嫌でもあの時の
「今、僕の心に訴えているんだ」
約束、そう彼女が言う。仲間との約束。もうこの世にはいない人達との約束。
正に呪い。呪言と言うべきか。生者は死者の言葉に囚われ、生涯その事を忘れようとも思い出す。脳裏に刻まれた記憶は中々離れようとはしない。それが心身とともに疲労し頓てはその呪いに呑み込まれるだろう。
俺はそんな奴の一人だ。呪い、呪われようとも関係ない。ただ、かの昔に約束した事を果たすまで死んではいられない。
「それでね...提督」
「やっぱりね私はこの薬を使いたい」
「使いたいけど本当はやめたい」
「気持ちが抑えられないの」
「幸せだった時のあの記憶が忘れられない」
「喜んで、笑って、哀しんで、楽しんで」
「同じ事をまた出来るのかなってなると一歩先を踏めない」
「――提督」
「僕、提督に縋ってもいいかな?」
俺は彼女の目をはっきりと見てこう答える。
「嗚呼、いいとも」
「二人の」
「約束だ」
「...ありがとう」
「提督」
彼女はニコリと笑いを見せた。もうあの様な乾いた笑いではない。
そう答えるだけで彼女は気持ちが幾分良くなったように思えた。
「提督」
「僕ね、考えたんだ」
「ここで提督と会うのは必然だったんじゃ無いかって」
「偶然じゃ無かったって思いたい」
「私もそう思うよ」
「君達艦娘とは会うべくして生れたのではないかと」
「やっぱ僕達って似た者同士なんだね」
「そうだな」
そうして俺達の話が終わると同時に廊下の奥から数人の足音が迫っていることに気づく。
やっとお出ましか。何人かの小銃を持った兵士と共に中沼中尉と大淀が現れる。
「提督!!」
そう第一声を発するのは大淀だった。
「ご無事で!?」
「勝手に行かれると困りますよ」
そう中沼中尉も言う。
「急に飛び出してすまなかった」
「しかしこの惨状は...一体何があったんですか?」
「まあこの娘と色々あってだな」
「それでこの惨状と...」
「修理出来る資材すら滞っているのに...」
中沼中尉はため息を零すように言った。
「申し訳ない...」
「ご、ごめんなさい」
時雨も何故か俺と一緒に謝る。
「それよりも提督」
「どうした大淀?」
「水雷戦隊への通信の確立なんですが...」
「やはり駄目でした」
「誰かが通信機を届けない限り水雷戦隊との交信は難しいでしょう...」
「やはりか...」
現在、水雷戦隊は敵の大艦隊のすぐそこまで接近しているだろう。
しかし、誰かが通信機を届けない限りは水雷戦隊との通信は不可能に近い。どうするべきか...
俺が策に行き詰まっているのを見てかある一人の少女がこんな事を言った。
「僕が行きます」
「提督」
「僕が水雷戦隊に通信機を届けに行くよ」
そう時雨は言うが彼女単独では厳しいのは確かだ。
「無謀過ぎる」
「けど提督は仲間を見捨てろって言うの?」
「いや、そう言う訳では...」
「なら僕が――」
「私も一緒に行きます」
「単独の行動が危険なのは分かっています」
「なら私も一緒に行けば幾分か戦力になります」
「私も一緒に行かせてください」
大淀もそう言った。そう二人が答え、俺もそれに答えなければいけない。
「...分かった」
「すまないが君達は水雷戦隊に新たな通信機を渡しに行って欲しい」
「重大な任務だ」
「水雷戦隊、そして君達二人を生きてここに帰してくれ」
「任務は以上」
『了解しました!!』
「それでは出撃ドックに向かってくれ」
「後、そこにいる君達はすまないがこの部屋を掃除してもらいたい」
「了解」
「中沼中尉は私と一緒に来い」
「了解しました」
「それでは諸君」
「また会おう」
俺はそう言い残し彼女達と別れた。
そして俺と中沼中尉は急いで司令室へと向かい、足を進めた。
「敵との状況は?」
「依然水雷戦隊は陽動部隊を追い続けています」
「このままだと敵の思惑通りに水雷戦隊は壊滅します」
「大淀達がここを出てどれぐらいで水雷戦隊に追いつける?」
「恐らくは最大戦速で四○分かと...」
「駄目だ、それでは間に合わん」
「で、では」
「ロケット推進機を使う」
「本当に使うんですか?」
「嗚呼」
「人が使えば間違いなく死ぬか廃人になる」
「だが、彼女達は私達人間よりも頑丈に出来ている」
「わ、分かりましたではその通りに進めます」
「ロケット推進による速度増加により最速で二○分です」
「大丈夫だ」
「それなら間に合う」
「分かりました」
「後、対艦ミサイルはあるか?」
「何発かは残っていますが...一体何に使うおつもりで?」
「敵には戦艦ル級、ネ級がいる」
「対艦ミサイルなら決定打にはならずとも損害は与えられる筈だ」
「特にネ級は厄介だ」
「恐らくは敵の旗艦はネ級である可能性が高い」
「奴を叩けば勝算はある」
「り、了解しまた」
「パープーン及び12式地対艦誘導弾一台を用意します」
「頼んだ」
足を進み続け司令室へと戻る。
「提督戻ります!」
中沼中尉が前に立ち、重そうに扉を開ける。
「挨拶は省く」
「席を外してすまなかった」
「今水雷戦隊を救出する部隊を向かわせた」
「二○分で付く予定だ」
俺は司令室にいる下士官へとそう言った。
「提督」
「艦娘の出撃準備整いました」
「分かった出撃させてくれ」
「了解!」
そして二人は出撃していった。
「大淀達と音声通信を開いてくれ」
「分かりました」
俺は大淀達救出部隊との通信を開く。
「聞こえるか?」
「はい、はっきり聞こえています」
「大淀」
「すまないが手短に話す」
「一つ目にここからは通信を一切行わない」
「敵に見つかるリスクを抑えるためだ」
「二つ目、君達と水雷戦隊ではかなりの距離がある」
「そのため君達の艤装にロケット推進機を搭載した」
「ロケット推進時はかなりの重力加速度、つまりはGが掛かってくる」
「すまないが水雷戦隊を救う為に君達を傷つけてしまうかもしれない」
「大丈夫です、提督」
「提督の判断は何も間違ってなんかいません」
「提督の命であれば行くのみです」
「分かった...ありがとう」
「生きて帰ってくれ」
そうして俺は通信を切った。
「提督」
「艦娘のロケット推進機をオンにしますよろしいですか?」
「ロケット推進機を許可する」
「了解!」
「ロケット推進機起動!」
俺はまた彼女達を戦場に使わせてしまった。
時雨の言った皆、誰かに縋りたくて縋られたい。
その言葉が俺の中で回り続ける。
強いて言えば俺は艦娘に縋り、艦娘に縋られたいのだろう。
そんな事を思いながら俺は彼女達とまた会うために必死に縋るのだ。
縋り、縋られ。
お読み頂きありがとうございます!
何時もながら投稿ペースオワコンで文書力皆無なわいではありますが見てくれる方がいるとやっぱり嬉しいですね!
出来ればもっと感想が聞きたいけどなぁって思ってます!批判でも指摘でも自分は嬉しいのでどんどんコメントして頂けると励みになります!!
それでは次こそは早く出せるように頑張ります
もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?
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大丈夫だ、問題ない
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いやです!これ以上艦娘をいじめないで!