生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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 どうも~HAKUSUNAです!
今回かなり早めに出来上がったのでこんな時間に投稿してます。最近ブルアカの短編もの書いて以外に好評だったのでびっくりしてますw



第二十五話 疑心〜提督〜

 世界は今、窮地に立たされている。圧倒的な戦力を持つ深海棲艦。現代兵器では到底役に立つ事はほぼないと言っていい程だ。それにヨーロッパ、アメリカなどの主要国ですら交信が危うくなってきている。

 

 人は真の敵である深海棲艦を置いて人との争いに走った。前々から人はそうだった。きっかけなんて作れば一瞬にして崩れさる。友情も愛情も。人の持つあらゆるものはそのうち消え去ってしまう。人とともに。

 

 人類はもう限りある生命になってしまった。栄枯盛衰とは正にこのことだろう。この国もそのうち草木に生い茂る島になるかもしれない。いや、ないか。その種を我々は潰してしまったんだ。

 

 俺は溜まっていた仕事に手を付ける。昨日は殆ど手を付けられなかった。俺の机には重なって出来た紙の壁が立ちはだがっている。さて、この量を終わらせるのにどれ程掛かるのだろうか。秘書艦と分担すると言えど相当の時間は掛かる。軽く溜息を吐きながらも手を動かした。様々な書類を目にする。残りの食料や前回調達した燃料の総トン数、施設の修繕工事の日時など様々な書類がある。ある書類には宿舎の修理は予定も書いてあった。

 

 ここにある紙がこの鎮守府の状況を物語っている。強いてはこの国までの状態をも表す。

 

「燃料の在庫は何時まで持ちそうだ?」

 

「そうですね――この量を使い切るには...」

 

 大淀は机にあった電卓を使って計算する。そして弾き出された答えは妥当なものだった。

 

「機動部隊の運用を踏まえると約六◯日になるかと思われます」

 

 この国は大量の水によって囲まれている。長年に渡り、この国土を守ってきたのもこの海があるからだ。もし、海がなければこの国は存在しなかっただろう。その恩恵に預かり続けた。しかし致命的な弱点があった。それは資源が乏しいことにある。豊富な資源がなければ輸入に頼る他ない。そうやってこの国は輸入に依存して行った。石油もそうだ。殆どが中東からの輸入で頼っていた。それも戦況の悪化に伴い、タンカーは次々と海中に没していく。

 

 言うならば、石油は血液だ。経済を動かすにはオイルと言う血液が必要になる。その血液が足りなくなり貧血症状を起こしているのがこの日本と言う国だ。結局はかの戦争と変わらない道を辿っている。この国は何も変わってはいない。時計は錆付き秒針は止まっているんだ。

 

 今は愚直に足掻くしかない。どうやって生き残るかを考えないといけない。錆びて動かなくなってしまったなら部品を取り替えればいい。まだ終わってはいない。たとえ、虫の息だとしても俺は足掻き続ける。生きてやらねばいけないんだ。

 

「ここからの勝算はどう思う?」

 

「正直言って、とても厳しいのは確かです」

 

 重い表情を浮かべながら答える大淀。先の見えない道には誰でも不安を浮かべるに間違いない。人間や艦娘と言って壁を作っても彼女達は立派な少女だ。

 

 そのな時俺はある作戦を考えた出した。もしこれが成功すれば戦況を大きく変えられる兆しになるかもしれない。俺は大淀を背にある物を取り出す。

 

「提督、それは?」

 

 疑問を浮かべ言ってくる大淀。そのある物と言うのは世界地図と方位磁針だ。

 

「そう言えば敵は何処でレーダーに映った?」

 

「えっーと...南南東微南、約四◯キロだった筈です」

 

 敵の現れた地点と地図の大凡の位置を決める。俺は横須賀から奴等が現れたい場所まで指をズラしていく。するとある場所と繋がった。南南東微南の先、そこには北マリアナ諸島がある。大淀はそれをみてピンと来てない様子だ。

 

「ここを見ろ」

 

 俺は奴等の拠点になり得る場所を示す。

 

「グアムですか...」

 

「そうだ、恐らくここの可能性が高い」

 

 戦略衛生が生きていたならと淡い理想を描いてしまう。

 

 戦争の影響でほとんどの衛生は軍事転用され、民間人は情報から隔絶された。情報はマスメディアなどの一部が握り、民間人は戦争の真実を認識出来なくなった。それはスマートフォンと言う機種の終わりを告げた。次第に悪化していく戦況。ハワイは陥落し、奴等の主要拠点になった。現在、ハワイは難攻不落の要塞として、我々人類に立ちはだかっている。

 

 どう打ち崩すべきか。将棋や囲碁のように一手一手先を読まなければ勝利はない。奴等がこの島から出撃したと推理する。憶測の域だがこの島はハワイとの中継地点だ。奴らはここを経由してハワイまで向かう。奴等もハワイ単体を維持するには資源がいる筈だ。安全な海域を使うならグアムを経由したこの海域が最適解。叩ければハワイの防御力を一時的に弱体化できるやもしれない。

 

 俺はこの事を大淀に伝えた。大淀から返ってくる言葉は至極真っ当な答えだった。

 

「――失礼ながら聞たい事があります」

 

「戦力はどうするおつもりで?」

 

 この作戦の最大の弱点。それは戦力が不足している事だ。防戦一方でなんとか戦力を維持できている現在、反攻作戦は難しい。なら各国と多国籍軍を組んでみればいいと言うものでもない。安保理を勝手に解消した米国と行動の読めない中国やロシア。銃口を向けられるのは深海棲艦だけではないことが知れる。

 

「問題はそこだ」

 

「この国だけでは戦力が不足している」

 

「かと言って他国を宛に出来る訳でもない」

 

「難しい所だ...」

 

 再度現状を見つめて勝てる見込みがない。ちんけな妄想でしか過ぎない。みんな自分の事で精一杯。他人に手をやる暇なんてない。――いやそもそもこの国は昔からそうだったか。

 

 呆れた笑いが込み上げる。俺は復讐の為に軍に入った。辿れば、自分の為に部下を使って来た。一人、また一人と俺の復讐の為に死んでいったんだ。もう山の数ほどの死体が積み上がっていると言うのに――俺は飛んだ阿呆だ。

 

 手を見つめる。黒い煤が入ったように濁った手。悲観して馬鹿馬鹿しいと自分に対してそう思う。

 

「――提督」

 

「もし他国が信用出来るとするならばどうでしょうか?」

 

 馬鹿げた事かもしれない。しかし、大淀は至って真剣に伝える。みんな疑心暗鬼に陥っている。心からの信用なんて出来る訳がないと。人間は冷酷で残酷な生き物と教えられて来たからだ。他人を蔑み合って、馬鹿にして嘲笑する。そんな奴等が繁栄を続けられる事は出来ない。

 

 所が彼女達はどうだろうか?この国を根本から変えてくれるかもしれない。他人任せになるが、この人間という種族が生き残るためには耳を傾けない限り先はない。

 

「他国を信じるか...」

 

「そうです」

 

「――信じては見ませんか?」

 

 信じろと言ってくれる大淀。そうだな――信じてみようじゃないか。

 

「よし、なら張り切っていかないとな」

 

「ですね!提督」

 

 そう言い残し、俺達は執務に戻った。数時間経ったのか。その時には昼を告げるブザーが鳴る。

 

「もう昼か...大淀そろそろ休もう」

 

「了解しました」

 

「――そう言えば提督」

 

 ペンを置いて少しリラックスしながら彼女は言う。

 

「先ほど届いたのですが...」

 

 大淀はそう言って説明してくれた。どうやら後日、新しい軍医が来るらしい。大本営から来るとの事だがどう見ても左遷にしか見えない。覚悟を決めておかないとな。

 

「わかった」

 

「それでは一旦、昼食にしようか」

 

 久しぶりに向かう食堂。もうあの日から数日も経つのか。

 

 あれから艦娘にも食料が行き渡るようになった。と言っても不味い飯には変わりない。そもそもこの国に食料と言う食料が枯渇し続けている。幸いにも、鎮守府には食料の在庫はある。まあ無くなるのも時間の問題だか...

 

 恐らく内地の方よりはマシだろう。この荒廃した国土では育つものも育たない。地下に農業を移したと噂で聞いたが真実かどうか。どちみち食料については考えなければならない。深海棲艦に滅ぼされるか、餓死で滅ぶのか。

 

 そうして俺は食堂に着く。匂いだけはそれ相応のものだ。いくつもの天井扇が周り、少し薄暗い食堂。ずらりと長椅子とテーブルが並べられている。テーブルに座っている人々は、更に盛り付けられたペースト状の物体を食べている。また、飯に有り付こうと何十人と言う列が出来ている。まるで餌を待つツバメの雛かのように目を血走らせている。最後尾には数人の艦娘が見える。そこには見覚えのある艦娘もいた。

 

 あの子は――確か三日月か。他人の目を伺っているのかおどおどしている。それは他の子達にも言えた。彼女達を見る視線も何処か冷たく見える。やっぱりそう簡単にはわかり合えないのか。

 

 俺は更に食堂の奥へと入っていく。少しの汗臭さと甘い匂いが合わさっていい感じはしない。換気していると言ってもこれほど臭うのか。俺のいた駐屯地とはかけ離れていた。そして俺も配給を待つ列へと足を進める。すると俺に気づいく三日月達。慌てて敬礼する姿を見て心が重い。

 

「休んでくれ」

 

「そこまで気を張り詰めなくてもいいんだぞ」

 

 諭すように俺は説明する。

 

「で、ですが...」

 

 重い空気が流れる。流石に部下と同じ食卓で食べるには気が休まらないか...軍の階級社会に嫌気が指した。

 

「迷惑を掛けていたらすまない」

 

「いえいえ!そんなことありません!」

 

「ただ提督が――」

 

 もごもごと口を動かしている。年頃の女の子なら言えないことはぐらいはあるだろう。やはり俺はここにいてはいけないか。昼食を貰ったらすぐに戻ろう。図々しくも俺は残ることにした。昼食を抜かす訳にはいかないからな。俺だって腹は減る。

 

 列は次第に進んで行く。前のやつが次々と配膳台から鉄製の盆を取っていく。三日月達も盆を持っていき俺の番が来る。少し凹みはあるものの使えなくはない。そうして等々三日月達の番がやって来た。しかし、三日月達が来てからか如何にも態度が悪くなっている料理人。そうして奴も現れた。

 

 しかし、何時もの馬鹿にした態度とは違い三日月に対して真剣な眼差しで見つめている。そうして何かに肩を押されたかのように奴は厨房から出て三日月の前に立ちはだかった。

 

「おい、お前」

 

 威圧感のある声を轟かせる。それに勿論三日月は動揺した。例えれば、何故私なのかと怯える感じが正確かもしれない。

 

 俺は嫌な予感がする。憶測に頼り切るのは嫌いだがこの先奴はどんな行動をするのかと思うと胸騒ぎが止まらない。

 

 ある意味正しかった。奴は闇を抱えている。

 

 失ったものが大きい程、人はなんでもやれる。

 

 それは俺が一番知っているのだから。

 




 そろそろ1章も後編に入りますねぇ…ネタバレはあまりしない方がいいかな?一応また新しい艦娘出るので楽しみにしていて欲しい。あっ、ちゃんと胸糞にするので安心してくれ()

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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