生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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 こんばんわ〜HAKUSUNAです!
今週はなんとか上げれたので良かったです…んで今回は三日月の話になります。



第二十七話 堕罪〜三日月〜

 

 誰かを助けたい、役に立ちたい。

 

 ――最初はそう考えていた。なんでも出来るって思っていた。敵でも味方でも――大切な命。どっちも平等な生命。だから...少しでも多くの命を助けたかった。

 

 横須賀に配属される少し前。戦局がまだ優勢の頃、私、三日月は佐世保所属の艦娘だった。主な任務は近海の哨戒任務や治安維持などの後方任務。そのおかげで、私は人と関わる機会が多かったと思う。

 

 非番の日はよく営外に出かけていた。営舎から見ている町と実際に見る街。似たようで全く違っていた。

 

 穏やかな街並みに連なる山々。私はこの街が好きだったんだと思う。だから守りたかった。

 

 たまに仲の良い子達とも外に出ていた。みんな楽しそうにしてて本当に嬉しかったんだ。けど、次第に戦争も激化の一途を辿ってそんな余裕はなくなっていった。みんな何かに追われるみたいで怖かった。私はこんな時だからこそ協力して行こうとみんなに伝えた。最初はみんなもその意見に賛同してくれた。でも、それが続くことはなかった。力を強めていく敵に私達は負け続けた。負ければ負けるほど関係に亀裂が出始めてくる。そのうち、私達は戦争を引き起こす煩わしい者として蔑まれた。

 

『出ていけ、消えてしまえ』

 

『お前らは必要ない』

 

 そんな言葉を投げかけられた。それでも私は戦った。みんなの役に立つために。少しでもみんなに笑顔を届けるために。そう思って戦って戦い続けた。辛くても耐え続けた。またあの頃ような日常が帰ってくると信じて。

 

 ある日の夜だった。その夜はとても静かで懐かしさが蘇ってくる。夜空に大きな月が一つ、矢形の細い月。あれからもう二年、三年も経つなんて考えもしなかった。

 

 でも、そんなことはもういい。

 

「――きれい」

 

 ただ、そう口ずさむしかなかったんだ。

 

 もう仲の良かった姉妹もいない。あの日常も過去のもの。唯一、私を見守り続けていたのは夜空に輝いているお星さま。手では届かない所にいるけれど、何時も私を空の上で見守ってくれていたお星さま。辛い時や哀しい時、寂寥感が溢れて崩れてしまいそうな時。あなたは何も言わずに見守ってくれていた。何も言われない――それが堪らなく嬉しかっんだ。

 

 敵の侵攻は止まらなかった。各地の島々を攻略されてく程、私達の居場所はなくなっていった。しかし、居場所がなくなったのは私達だけじゃなかった。戦争によって追われてきた大勢の人々が私達の国にやって来た。私達はその人々を喜んで歓迎した。様々な支援を欠かさずしていたと思う。けど、国も違えば文化も違う。

 

 最初は些細なことだった。けど、みんなはそれを許さなかった。もし、あの時ならみんなも許していたと思う。でも、許せるほどの余裕なんてもうなかったんだ。みんな何かに追われて怖かった。たったそれだけでの思いで壊れていった。それでも戦うしかなかった。

 

 とある日、最前線の防衛線が突破されたと情報が入った。突破された近くには大勢の人々がいる島があった。そこで私達艦娘が島民の避難を護衛し、輸送船を佐世保まで帰投させると言う作戦が知らされた。もちろん、私は張り切っていた。また、人助けができる。みんなの役に立てる。それだけでも嬉しかった。

 

 しかし、その理想は簡単に崩壊した。

 

 私を合わせて五人の艦娘が招集された。とにかく大急ぎで編成されたからか、何もかもが不足していた。弾薬に燃料、強いては輸送船までもが不足していたんだ。なんとか集めることが出来た輸送船でさえ、装甲すらない旅客船が代用となった。こんな状態で助けに行っても到底全員を助けるなんて――それでも待っている人達がいるんだ。私は首を振って疑念を振り払った。大丈夫、必ず全員を助ける。そう決意して私達は佐世保を出港した。

 

 佐世保を出て数時間。次第に海が荒れ始めて来た。波は龍みたいに荒々しく怒りを露わにする。船は上下に行ったり来たりしていた。それに加えて、雲もだんだんと灰色掛かってきている。このままだと間に合うかわからない。急がないといけないのに――。

 

 私はそう思っていた。助け合いがあまりに焦っていたんだと思う。そうじゃないと自分の存在意義がない気がしていたんだ。生きていちゃいけない。そう言われ続けて私もどこか可笑しくなってきてたんじゃないかな。もうこれ以上言われたくない。そのために私は前に進むしかなかった。

 

 島まで一海里まで近づいてきた。幸いにも黒煙は見えていない。けど、空は大部暗くなってきていて日没も近い。船も航海灯を照らしている。そんなことを考えてる内に港の防波堤が見えてくる。波が打ち付ける防波堤を抜け波が落ち着く。そうして辺りを見回す。港を覆い尽くす程の人が待っていた。迅速に輸送船を接岸させてタラップを降ろす。虎視眈々とそれを待っていたかのように我先にと歩を進めている。

 

「焦らずに落ち着いて前に進んで下さい!」

 

 その言葉に耳を傾ける人はいなかった。誰もが必死に身の安全を求めてタラップにへと集まってくる。

 

「もっと速く行けよ!」

 

「邪魔だ!どけっ!!」

 

 タラップを待つ列は恐怖からか乱れ始める。他の人を押し倒してでも前に進もうとする人。焦りを隠せない人。混乱して何もできない人。なんで人はこんなにも利己的なんだ。なんで助けないといけないんだ。嫌だ、考えたくない。役に立ちたいのになんでそんなこと考えちゃうの――私。

 

 引き金を引く手が震えだす。あんなに私達を罵っていた人達を助けないといけないの?わからないよ。わからなくなっちゃった。

 

 その瞬間だった。それが全てを変えてしまっんだ。

 

「偵察機からの入電!」

 

「我、敵深海棲艦発見ス!距離二○海里」

 

「数、戦艦一、重巡三、駆逐三!」

 

「我々の方向に向け三○ノットで航行中...」

 

 敵は我々に気づいたのか。それとも運悪くたまたまこっちに来ているのか。どっちにしても早く出港しないと全員死んでしまう。

 

「作戦の指示を乞う」

 

 誰かがそう言うと輸送船の艦橋から艦長が現れた。

 

「そんなもん決まってるだろ!タラップを上げろ!!今すぐ!」

 

 酷い、あまりにも酷すぎる。だってまだこんなに人が――私は艦長を問いただした。

 

「まだ人がいるじゃないですか!見捨てていくんですか!?」

 

「そんなもん知るかよ!」

 

「少数の命より多数の命だろうが!――さっさと撤収するぞ!」

 

 そんなのあんまりだよ...可笑しいよ。多数の為に少数が犠牲にならないといけないの?平等な命じゃないの?確かに悪い人もいる。けど、それでも助けないといけない命には変わりないはずじゃないの?そう教えてくれたのはあなた達でしょ?なら――なんで。

 

 その命令の下、船のタラップは上がり始める。それに気づいたのか辺りは一層に騒ぎが大きくなる。

 

「おい!どう言うことだ!」

 

「待て!まだ残っているんだぞ!見捨てる気かよ!!」

 

「おい!トラップを掴め!」

 

 一人の男が上がり始めるタラップを掴む。続々とタラップが掴まれ始める。三分の一程度上がった所で止まってしまった。

 

「今だ!乗り込め!」

 

 その合図の元、人々は中途半端に止まったタラップをよじ登り始めた。違和感に気づいたのか再び船長が顔を出す。その光景を見て彼は怒りを示した。

 

「何をやっている!今すぐあれを止めろ!」

 

「――撃ち殺しても構わない!殺せ!」

 

 そこにいる全員が狼狽していた。守るべき人達に引き金なんて向けれる訳が無い。私達艦娘は人殺しがしたくて来ているわけじゃない。守りたい人達がいるから来ているんだ。

 

「う、撃てません...」

 

「そうか」

 

 そう言うと、彼は足首に着けていたホルスターからあるモノを取り出した。あるモノをタラップに向けて放つ。その場にいた誰もが音に気づく。あれほど騒いでいた声ですら聞こえない。そうして彼は船室に戻り舵を取った。

 

 少しの静寂の後一つの悲鳴が聞こえる。単なる悲鳴、それがとても怖かった。また、先程のように騒ぎ立てるも次は違った。船は岸壁から少しづつではあるが離れて行っている。それは後何百という命を生贄に二〇〇人近い人を救うということだ。

 

「――飛び乗るしかない」

 

 誰かがそう言うと離れていく船に飛び込もうとする人が次から次えと現れた。確かに何人かは飛び乗ることに成功した。けど、ほとんどは海中へと落ちていった。もう日も落ちてあるのは航海灯と少しの明かりだけ。その内に飛び込んだ人は見えなくなってしまった。それでも飛び込む人は減らなかった。

 

 すると足に感触が伝わる。何かに掴まれているような感触。感触のある足を見る。そこには私の足を掴んでいる男がいた。

 

「頼む...連れて行ってくれ」

 

「死にたくない――死にたくねぇんだよ」

 

 男は私の両足を掴み這い上がろうとする。

 

「やめて下さい!」

 

「お願いです!」

 

「次の船が来ますから」

 

 そんなはずなかった。次の船なんて来ない。ここにいる人達は全員――

 

 握る手が強くなっていった。まるで私を引きずって連れて行こうとするみたいに。とっさに体が動いた。なんでその時体が動いたのかは分からない。その代わりに触れていた感触がなくなった。

 

 すると一メートル先から何が浮いてくる。海に滲む赤い何か。それは簡単に予想が出来るものだった。

 

「――そんな」

 

「うそだ...」

 

 あの時私は人を殺しました。引き金を引いてしまった。守るべき人達に。全部私のせいです。あの時無理矢理にでも振り払わなければ助かっていたと思います。なのに――私は

 

 呆然としていたと思います。何も考えれずにその場に突っ伏していた。他の艦娘に言われるまで気づきませんでした。船はもう大分先にいました。仲間の肩を借りてそこを後にしました。後ろではまだ何人かが私達を見つめていたと思います。

 

 船に近づくと私を睨みつける一人の男が目に入ったんです。彼の目はとても恐ろしくて目を逸らすしかありませんでした。その後、なんとか佐世保に帰投し、任務を終えました。

 

 下船する人達を私は見れませんでした。怖かったんです。結局、何も出来ない未熟者で理想論しか語れないお馬鹿さん。それが私、三日月と言う艦娘なんです。

 

 それから私はボロ雑巾よりも役に立たないと言われていました。当たり前だと私でも思います。他の艦娘よりも旧式で装備も弱ければ任務すら与えられませんでした。本当の役立たず。まさにその言葉が的中するのが三日月でした。

 

 その後私は横須賀に転属されました。人の役にも立てない物。提督はそう言ってくれました。他には――

 

「ゴミはゴミらしくゴミ箱に入っておけ」

 

 そう言われて私は牢屋のような部屋が渡されました。当然の仕打ちだと思います。私は人を殺してしまった。あれだけ高々と協調の意志を見せて犯してしまったんです。もうお星さまは見てくれません。見捨てられたんです。当たり前でした。

 

 自分が嫌いだったんです。醜い三日月が嫌いだったんです。私は何度も自分に刃を向けました。そうじゃないと償えなかったんです。

 

 そんな時でした。新たに提督が着任しました。最初はどうでもよかったんです。けど、その提督が着任して何かが変わり始めました。彼が着任して数日経つと私は呼集されました。こんな役立たずを何に使うのか最初は戸惑っていたんです。

 

「睦月型駆逐艦...十番艦三日月...です」

 

 久しぶりに自分の名前を言った気がしました。でも提督はこんな私にでも挽回の機会を与えてくれたんです。確かに提督はあの時の男と同じ目をしていました。けどそれよりも嬉しかったんです。

 

 また戦えることが。それが役に立っていいって言っている気がしたんだ。私はまだ戦える。だから――

 

 あの海で。いつか見た空の下で。平和な海を守るため、私は戦いたい。

 

 私はその為に抜錨するんだ。

 

 




 今回の話ちょっと読みづらいので補足いれると、三日月が横須賀に来る前まで佐世保にいて〜とりあえず助けに行ったら間違えて殺っちまってさぁ大変。悲しいねぇ悲しいねぇしてたら提督が来て色々して復活した!って感じだと思います、はい。
 長くなりましたが、今月超忙しくてまともに上げれるのが今週だけだと思ってます。出来るだけ次のは早く上げる気ではありますが遅くなるかも知れません………すまんご

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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