生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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こんにちは〜!HAKUSUNAです!
今回は二十八話!その前になんかハーメルンがサイバー攻撃?を受けたらしいので心配しています。pixivでも同じ内容を上げているけどデータとか消えちゃったら流石に萎えちゃうぞ…ってことでした。終わりです!では是非読んでいってください!


第二十八話 整頓〜提督〜

 

 人はなんの為に生きるのか。人のため、世のため、自分自身のために生きているだろう。かく言う俺も約束の為に生きている。人生に何かを見出さなければやっていけないんだ。

 

 人は弱い。身体的にも精神的にも他の生き物と比べるのならか弱いと言ってもいい。野生の本能を捨て、社会性を身に付けた人にとって孤独は何よりも恐ろしい。例えば途端、孤独になったとしよう。誰からにも頼られず、誰かに助けを求めることも出来ない。そんな時を長く続けられるだろうか――俺はそうは思わない。他者が人にすり替わることは出来ない。いずれは何処かで帳尻合わせが起こる。だからこそ、人は人であるために人を求める。それが「艦娘」であろうと変わらないのだろうか。

 

 俺にはまだ、その答えが見つからない。

 

 執務室に戻る。残っていた書類の山はかなり減ってきている。この調子ならあっという間に終わることだろう。そうして席につく。

 

 少し手足を伸ばす。静けさが辺りを一周する。どうやら大淀は帰ってきていないようだ。多少でも彼女の負担を減らす為、俺は机の片隅にあるペンと山から書類を取る。また、紙とのにらめっこが始まった。

 

 静かな部屋にペンと紙が擦れる音が響く。代わり映えのない偏屈とした時間。手に余る程の紙の数々を見つめる。丁度その時、コンコンと扉が叩かれる。

 

「入れ」

 

 入ってきたのは大淀だった。そそくさと自分の席に着き、書類を手に取った。

 

 視線に気づいたのか、大淀は無愛想ながらも作り笑いをする。

 

「そう言えば提督」

 

 彼女は空気を入れ替えるように話題を振り始める。

 

「もうお聞きになられたかもしれませんが昼間、食堂で大きな揉め事があったそうです」

 

 その話題は先程までいた食堂に関することだった。

 

「一応、事態は終息はしたらしいとのことでした」

 

「ああ、把握している」

 

「私もそこにいたからな」

 

 彼女は少し驚いてはいたが、やがて落ち着いた態度を取り戻す。

 

「そうでしたか...お怪我は?」

 

「大丈夫だ、私はただ見ていただけだ」

 

 そうだ、ただ見ていただけ。俺は大勢の中の傍観者に過ぎなかった。何も助ける事が出来なかった。不意に拳を握る。後悔の念が俺を覆い尽くす。

 

「それよりも、この溜まった書類の山をどうにかしよう」

 

 俺はなんとか話を変えようと目の前にある書類に注目する。この思いも執務と言う仕事で洗い流そうと考えていた。

 

「そうですね、お手伝いさせていただきます」

 

 大淀は明るく溌剌とした声で答えてくれた。流れに乗るように俺は再度紙を取り、心中を洗い流す。

 

 薄汚れた執務室。俺と彼女はその中で執務を行う。この部屋にも大分慣れてはきたが、薄汚れたシミが過去を思い出させる。過去は傷跡になって必ず残り続ける。人の過ちはそうやって受け継がれてのだ。

 

 この紙の一枚一枚になんの意味があるのだろうか。俺がこの印を押すだけでどれだけの人、艦娘が犠牲になるのか。紙というものだけで人の運命さえ決めること出来てしまう。故に力を持つと言うことは相応の責任が発生する。それがわかっていない者が力を持つとどうなるのか。今の軍部の肥溜め者が生まれる。それがこの日本と言う国だ。

 

 肥溜め者と言う膿を出し切るには正当な時間が必要になる。所詮、国家と言っても人、特に民族の集まりだ。民族がある所に集結し、生き抜くために国家と言う媒体を生み出した。人は協力し、自分達で考え、知恵や技術を育みあった。それを次の世代に繋ぐ。それが国家や人々が求めた理想だった。しかし、それが続くことはなかった。歴史が進むほど国家の形骸化が始まった。幾数の国家が滅んだのだろうか。

 

 別にこの国に愛着があるわけでもない。愛国心が強いわけでもない。俺はただ目的のためにこの国に使えているだけなんだ。そうだ――俺は目的、約束のために。

 

 自分自身に言い聞かせるように俺は心に唱えた。そうじゃないとやっていけない。そんな気がした。

 

 数刻と時が過ぎる。あれほどあった書類は殆ど終わってしまった。太陽は大分、西に沈んでいる。

 

「よし、そろそろこれも終わりそうだな」

 

 少し肩を落として呟いた。大淀も疲れているのか瞼を擦っている。

 

「今日の仕事はこれで終わりだ」

 

「お疲れ様、大淀」

 

「ありがとうございます提督」

 

 彼女は口角を上げて微笑む。太陽の温かさが薄暗い部屋に光を齎す。

 

「今日はもう休め」

 

「明日からは次の作戦に向けた準備を行う」

 

「なるほど...作戦の概要はどのように考えているのでしょうか?」

 

 彼女は眼鏡のブリッジを人差し指で軽く押し上げた。その仕草には多少の自信がある様にも伺える。

 

「そうだな、概要としては...」

 

 俺は彼女に次の作戦概要を伝えた。

 

 この状況を打破するには――グアムを叩くしかない。奴等にとってもグアムは重要拠点だ。グアムはハワイ諸島を繋ぐ連絡網。ここを叩ければ、いずれ来るハワイ攻略の足がかりになるかもしれない。しかし、距離が離れすぎている。この距離の不利を解決するためにはあるものが必要になる。航空戦力だ。

 

 航空戦力によってグアム島を叩く。そのためには航空母艦が必要となってくる。幸いにもここの鎮守府には母艦となる艦娘がいる。問題はその艦娘達にやり遂げる意思があるかどうかだ。書面ではわかりきれないものが多過ぎる。面と向かって話し合う必要があるだろう。

 

「と、言った所だろうか」

 

「なるほど...」

 

 ゆっくりと顎に手を当て、大淀は考え込んでいる。

 

「現在、この鎮守府で空母型の艦娘は2人しかいません」

 

「――翔鶴型の翔鶴、二番艦の瑞鶴です」

 

 翔鶴型の姉妹か。先の大戦でも大きく活躍していた二人がいる。それだけでも戦力としては十分な程だろう。

 

「すまないが明日、二人に呼集を掛けてはくれないか?」

 

「日時は追って言う」

 

「了解しました」

 

「話が長くなったな...話は以上だ、下っていいぞ」

 

「では、失礼します」

 

 そう言い残して彼女は執務室を後にした。

 

 さて、何をしようか。消灯までは時間がある。そうだ、私室を掃除しようではないか。まだ前提督の遺品が残っていたな。そして俺は私室に入る。中には悍ましい物品が連なっていた。寝床以外はほぼそのままの状態の私室。あまり居心地のよいものでない。

 

 私室の窓を開け、早速ゴミ袋を用意して要らない物の選別を始めた。殆どは拷問に使うような器具ばかりだった。

 

 選別を始めて三十分経つのだろうか?かなり片付いてきた。拷問器具を袋に入れていくとある棚が目に入った。それはよくある単なる戸棚。言い方を変えれば戸棚の上にあるものに俺は目を奪われた。丁度ハガキが入る程の大きさをした額縁だった。

 

 近づきその額縁を手に取る。かなり古いのか中にある写真は黄ばみやシワでぐちゃぐちゃになっていた。目を凝らしてよく見るとある男がいることがわかる。白い軍服に軍帽を被った俺と同年代ぐらいの顔立ちをした男だった。彼は歯を見せる程の笑顔を見せていた。その隣にも誰かいるようだが特に黄ばみやシミが多く、顔の判断すらつかなかった。――一体この男の隣に写っている人物は誰なのだろうか?俺は額縁からその写真を取り出し裏を見る。

 

 『二○二六年 四月二二日』と、書かれているのがわかった。この写真は俺が来る随分前に撮られていた事がわかる。それもまだ戦況が優勢だった頃の写真だ。

 

 何故写真がこんな所に置かれていたのか。まるで過去の記憶を隠すかのようにひっそりと置かれていた額縁。写真に写っているもう一人の人物。前提督がどのような人物だったのか、予想が付かなくなってきた。俺は写真を額縁の中に入れ直し、額縁を倒して戸棚の中にしまった。

 

 掃除を始めて数時間、部屋はかなり綺麗にまとまった。ゴミ袋は二袋目に到達はしたが今日はこれでいいだろう。ゴミ袋を隅に追いやり、窓を閉めた。改めて部屋をよく見回す。意外にも六畳程のスペースがそこにはあった。これで俺の持ってきた荷物が置けると言う訳だ。

 

 俺は持ってきた段ボールを開ける。中には替えの軍服と下着が数着。それ以外は持ってこなかった。いや、持ちたくなかった。これ以上、失うのが怖かったからだ。

 

 段ボールから服を取り出す。流石に今の軍服は洗濯に掛けよう。段ボールから服を取り出しが終わり、段ボールを畳もうとする。すると、段ボールから何が落ちる。落ちたものをまじまじと見る。それは銀色に輝くロケットだった。なんでこんなものが段ボールなんかに...入れた覚えはなかった。俺は手に取ってロケットを開ける。

 

 中にあったのは小さな写真。子供頃の俺と妹、両親が写った写真。あの頃の懐かしさが蘇ってくる。ただ、笑って幸せだった頃の記憶。戦争のない平和な日常。空襲に怯えることもなく、人生を謳歌していたあの頃。俺はそっとロケットを閉じる。

 

 もう過ぎ去った話だ。現実を見ろ。世界は深海棲艦との戦いで荒廃し、人類の半分が死んだ。家族を殺され露頭に迷い、許せないこの想いをどれ程噛みしめたのか。

 

 考えれば考える程、恨み辛みがじわじわと現れる。

 

 その時だった。聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「ていとくをはっけん!」

 

「とつにゅう〜!」

 

「もうにがさないぞ!」

 

 あの妖精三人組だ。何処からともなく現れた妖精は足元に近づいてよじ登ってくる。何処となく愛らしいのがこれまたむかつく。

 

「やった!いちばんのり!」

 

「まけたのです...」

 

「ちくしょう!」

 

「俺の体でかけっこをするな」

 

「所で君達は何をしにきたんだ?」

 

 当たり前の質問を問いかける。妖精達は俺の肩に乗って一息ついてから話し始めた。

 

「ていとくをごえいしにきた!」

 

「そう!ごえいにんむ!」

 

「まもるのです!えっへん!」

 

「守ると言っても一体何から守るんだ?」

 

 妖精達は三人で集まりコソコソと相談を始めた。聞き耳を立てるが、声が小さくて何を言っているのかがわからない。そして真ん中にいた妖精が言い始める。

 

「いわなーい!」

 

「何故言わないのだ?」

 

「ないしょ〜」

 

 そう言いながらクスクスと笑い始める妖精達。勝手に部屋に入られ、理由も説明せずに居座ろうとする妖精達。

 

「いいから君達は元いた場所に帰りなさい」

 

『やだ!』

 

 こう言うときに限って息はピッタリのようだ。言い争いをしていると消灯の時間がやってくる。消灯ラッパが鎮守府全体に流れる。これを待っていたのかと妖精達は言い始める。

 

「あ~しょうとうだ!」

 

「へやからでられないね!」

 

「こまったな〜よし!ここにとまろう!」

 

 とりあえず俺は妖精を無視して寝間着に着替える。今日はもうやることはない。早く寝て明日に備えないといけない。俺は部屋の電気を消し、寝床に入る。部屋は海に反射した月明かりで照らされる。

 

「おそときれい!」

 

「おつきさま、みえるかなぁ?」

 

 そんな戯言は無視して俺は眠りにつく。

 

 最近は悪夢を見なくなった。こいつらと関係があるのかはわからないが今はどうでもいい。

 

 もし、妖精達みたいに笑って暮らせるとしたならばどれだけ楽しいことか。結局、俺も過去を捨てきれずにいる。

 

 人は弱い。それが人間に生まれた罪なのだろう。

 




 今回のはどうでしたかぁー?余談ですけど写真の年数と日にちには伏線が隠れています〜もしわかったらコメントでもしてください!
最近、リアルが超忙しくてまともに書ける状況が作れない事態になっています。もしかしたら不定期になるかもしれませんがそれでも見てくれる方がいれば書きます!

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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