今回は久々の土曜投稿になります!早めに出せたのはいいけど結構長めになっちゃた…
今回の話は結構シリアス多め?だと思います!
「そう言えば提督」
ふと、思い出したかの様に言い始める大淀。そして返事を待たずして話し出す。
「昨日言っていた件、覚えていますでしょうか?」
すっかり坂元との話で抜けていたようだ。しかし、ここで話を振るという事は進展があったのだろう。そう結論付け、回答を出す。
「空母の件か?」
「はい、それで少々問題がありまして...」
「問題?」
「それが――」
どうやら俺と会うことを拒否しているらしい。まだ一度も対面していないと言うのに早々に過ぎないか?と言いたい所だ。しかし、話を聞いていくとその理由がわかっていった。
水と油が混じり合う事はあるのだろうか。童心に駆け巡っていた単なる疑問。それは今では無理だとわかっている。しかし、もし交わったとしたら?全く性質の違うもの同士が交わるとしたら?互いを理解出来るのなら?そんな理想、空想がぽつぽつと出てくる。
人は人種によって区別した。それはまるで水と油のように。ある者は人ではなく、またある者は神に等しい存在に。肌や文化が違うだけで人は憎み、争った。蟠りがなくなる――そんなことある筈なかった。人は艦娘も同列に扱う?――まかさそんなことはない。人間と言うものは社会性を求める中で他人を信用しない。矛盾しているのではと思うが、心の底から信頼などしない。みんな何処か言えないものがある。理由は至って単純。信用しきれない、信じれない。その恐怖の予想が人を作る。
彼女ら二人はどのような思いか。どんな気持ちが交差し、渦巻いているのか。もし、艦娘も人と同じように信用しきれないのだとするのなら、本当の気持ちなどこの俺には到底理解出来ない。
「――と言うことです」
そして話は切り上げられる。話をまとめるとするなら翔鶴、瑞鶴共に顔合わせをしたくないと言うことだろう。大淀から聞いていてもあまりいい話でもない。理由も理由だ。ともかく戦線に復帰するかが知りたい。俺はその事を大淀に聞く。勿論、返ってきた解答は予想できることだ。
「難しいかと思われます...」
「戦線復帰を命令したとしてもやってくれるかどうか...」
「――そうだとするならこの国は滅亡しろと言うことだ」
所詮その程度の国と言うこと。守れる者がいなくては守る者はただの戦争犯罪者と変わりない。互いに引き金を引くのならまだしも、その引き金を止めようとする。それでどうなる?先の国々はそれで平和を掴めたか?――馬鹿馬鹿しい。どちらかが引き金を引けば止まるわけがない。殺して、憎まれるのを繰り返す。それをこの国は内部で行っているようなものだ。
ならこの国が心底憎いなら戦わなければいい。戦わなければ蹂躙され虐殺される。あの憎たらしい奴や嫌いな奴が死んでいくんだ。無能な政治家や腐りきった軍部は周章狼狽し、絶望に堕ちる。その恐怖と狂気が堪らなく心地よいのだろう。
「提督...ではどうするおつもりで?」
「このままでは戦力が――」
「その前に一つ聞きたい」
改まって大淀を問いただす。空気は次第に息が苦しくなるほど重く、重苦しくなっていた。
そして俺が問う。
「君達艦娘はなんとために戦う?なんのためにその心臓を捧げる?」
部屋中に漂う静寂。ここまで静かだと心臓の鼓動が聞こえてくるのではないかと思うくらいに。沈黙は数十秒程続いていた。
「この国と国民を守るためです」
以下にもな答えだ。平凡と言っていい程まともな解答。しかし、その答えは見栄えだけを考慮した偽り。
「本当の所はどうなんだ?」
「それは...」
「この国に守れる国民がいると思うか?」
「この国を本当に守りたいと思うか?」
どんな国民だとしても守るのが軍人としての務め。それはわかっている。だが、今はどうだ?国民は鼻から蔑み、我々は国民に必要性を感じていない。更に言うなら国民は艦娘についてどう思っているのか?所詮、人の皮を被った兵器だとか人間もどき程度にしか思っていない。そんな人間を艦娘が守る必要があるのかと。
この国自体が戦争で可笑しくなった。憲法を改正して無駄に軍が力を持つ結果になってからこの国と言うものは昔に戻った。人的資源を浪費し、無謀な作戦だとしても強行し、終いには守る国民から物資を徴収する。互いに憎み合い反発し合う人間。――反吐が出る。深海棲艦よりもこの国の方がよっぽど人道に外れた事をしてると言っていい。それでも信じると言うことなのか。
視線をこちらに合わせる大淀。彼女の目にはもう覚悟が出来ていた。そして彼女は言う。
「それでも私は戦いたいんです」
「提督の元で最後まで...」
偽りもない正直な言葉。彼女が考える戦いの意味。その全てがその言葉に詰まっていた。
それが全員の総意と言う訳ではない。しかし、大淀自身は守る者のために戦うことを決めている。それを俺が止める義理はない。
何かが近づく足音。それはこの部屋へと近づいて来ている。その音は俺に違和感を抱かせた。言うならば何処かで聞いたことがある様な歩き方。潜在意識に残り続ける幽霊。枕元で虎視眈々とその機会を覗っていた幽霊。その怨念はここに来る前から鬱々と溜まりに溜まったもの。ついにその手に持ち、行動に移した。次第に歩幅は広くなっていた。その音に気づいたのか大淀は執務室の扉に視線を向ける。体はそこにいてはいけないと警鐘を鳴らす。違和感が確信に変わった。
扉の前に誰かが立っている。ノックもなしにゆっくりとドアノブが回る。いや――正確にはゆっくりではなかった。恐らくはもっと早く動いていたのだと思う。しかし、それは走馬灯のように全ての動きが遅く感じられた。手の動きや心臓の鼓動。顔から出る汗の感覚。そしてその周りにいる全てのものが時間が逆行しているのではと錯覚した。これ自体が走馬灯だったのかもしれない。そんな思考を考える間もあるにはあったが答えは無だった。
扉が開かれる。そこにはSFP9を持った巫女装束風の色合いの弓道着を身に着けた少女がいた。SFP9を俺の方に向け、構えている少女。その目はこちらを真っ直ぐ見つめ、捉えている。それはまるで獲物を見定める狩人のように真っ直ぐな目をしていた。
空気を劈く音。段々とその気圧が俺に向かっくる。衝撃波が体全身に駆け巡る。深海棲艦との戦闘でも幾度か同じことはあった。同じ経験をしていてもこの瞬間だけは忘れられない。衝撃波が体中に余韻を残すからだ。撃たれたと言う感触が残り続ける。忘れることは出来ない。
クルクルとそれは回転し、俺の左前腕部を掠めていった。壁に当たって砕け散る。恐らく壁は凹み黒く変色していることだたろう。それと同時に空薬莢が情けない音を奏でる。
辺りは静まり返る。全てがその音に持っていかれたからだ。前に立つ少女は俺を見ている。胸の奥から憎悪が湧き上がり、言葉では言い表せない程の嫌悪感を体中に漂わせていた。
「あなたが提督ね」
少女はこう言ってくる。一言がまるで刃物のように鋭く尖っていた。
「――なんであなたが...」
大淀はそれが誰かを知っているようだ。目の焦点が定まらず小刻みに動いている。何故ここにいるのかが分からないと体で表していた。
「あら、大淀じゃない」
「久しぶりね」
馴れ馴れしく話す少女。銃を下ろすことなく大淀を見つめている。
「ず、瑞鶴さん...」
目の前にいる少女の名前がわかる。瑞鶴――なるほどそう言うことか。徐々に何かに気づき始めた。そしてこれが初めての対面であると言うことを。
「なんで...こんなことを」
「なんでって――当たり前でしょ?」
「
まさかここに来て連続で銃を向けられるとは思いもしなかった。心の中で乾いた笑い声が出てくる。この殺意は本物だ。それもあの一発は故意に急所を外していることだろう。この状況を楽しんでいる。瑞鶴はあの拳銃の一撃だけで俺が死ぬのを分かりきっている。だからあれほどの余裕がある。だから瑞鶴は笑っている。
「さてと、次で最後にしましょう」
再度こちらに視線を合わせて銃を構える。発言権は彼女が持っている。この場の誰も彼女に逆らえることは出来ない。
「その前に私から一つ慈悲を上げるわ」
「もし、あなたが腰抜けならここから逃げても撃たないわ」
取引と言う訳か。
「見返りは?」
「この鎮守府の支配権を艦娘に移譲させる」
「ね、簡単でしょ?」
彼女は笑みを浮べ口角が上がる。逃げても撃たないと言う保証はない。結果的には後から撃つ魂胆だろう。
「それでそこからどうする?」
「何をするかって?」
「何もしないわよ」
高々にそう宣言する瑞鶴。そう、ただ何もしない。何をしなくても人類は滅びる。それを高みから見ていたい。石を投げて来たものが大岩を投げられてぐちゃぐちゃに潰れる様を見ていたい。この狂気を生み出したのも人の業か。呆れる余地もない。
「なるほど...」
「それでどうなの?取引に応じる訳?」
話の主導権は瑞鶴になっている。どちみち応じても応じなくてもこの話を持ち掛けられる時点で俺の負けだ。番狂わせがない限り、死ぬことは確実。まるで昔に戻ったような感覚だ。絶対に死ぬと言われた戦場で生き残り続け、仲間の血を啜って生き残って来たあの時のように。
勿論、答えなど端から決まっていた。俺は椅子から立ち上がりこう言ってやった。
「応えは否だ」
「そう、じゃあ死ねば」
そしてその黒いものに指が掛けられる。もしここで引き金が引かれれば脳天に一発当たることは間違いない。しかし、それを防ぐように立ち塞がる者が一人。
「大淀どいて!そいつ殺せない」
「どきません」
銃の射線に入って妨害する大淀。音に気づいたのか次第に執務室前に人集りが出来ていた。傍観している彼等はどう思っているのだろうか。あの冷たい目の先に何が映っている。無遠慮な同情、珍しい物見たさ、いい気味だとでも思っているだろう。だが、その視線がこの状況を作り出した。傍観者が人を狂気に走らせる。
「だってコイツがいるからみんな可笑しくなったんじゃない!」
「そんなことありません!」
「提督が来ていなかったらもっとたくさんの命が犠牲になっていました!」
「......死ねばよかったのよ」
「生きたくて生きてる訳じゃないの――」
次の瞬間、鋭い音と共に瑞鶴の頬に当たった。大淀の手が振り上げられたのだ。一瞬の衝撃に、時間が止まったかのように感じれる。大淀の瞳には冷たい怒りが宿っていた。命を軽々と見ていることに腹を立てたのだろうか。大淀は何時もの落ち着いた態度は感じれない。空気は張り詰め、その場全てに重い沈黙が落ちた。
「痛っ!何様のつもり?」
「死にたくなくて死んだ人達の気持ちを考えてみたらどうですか?」
「今はそんなことどうでもいいじゃない!」
「答えてください!」
「知らないわよ!いいからどいて!」
こちらに射線を通すために近づこうとする。無理矢理にでも行こうとするがそれを封じる大淀。しかし、銃口は段々と近づいてくる。そして銃口が約七メートル程になった頃だった。人集りが騒がしくなる。何を今更と思う束の間、人集りから瑞鶴と同じ服装をした女性が現れた。しかし、そこにいる二人は気づいていなさそうだ。
ほんの少しした油断だった。瑞鶴の力が勝り、こちらに狙いを付ける時間が出来た。たったほんの数秒だ。それでも彼女なら当てることが出来る。確信が持てる何かがあった。
放たれた一発の弾丸。それは確実に俺の頭に向かい、直進していた。次こそは避けることは出来ない。久しぶりに感じた死と言う感情。これほど近くにあったと言う驚きは今までの記憶を一蹴した。
何も出来ずにただ立っている男。非力で役立たずな男。恐怖からなのか動けずにいる男。弾丸は目の前にやってくる。しかし、何故だろうか。体が少しずつ横にズレて行っている。それに気づくのに時間は掛からなかった。間一髪でその弾丸が左耳を掠めた。一コンマでも遅れていたら耳は何処かに消えていただろう。そして床に倒れ込む。その場にいる誰もが息を呑んだ。どうやって間一髪で避けれたのか。以下にも簡単なことだった。
「しょ、翔鶴姉!?」
俺を押し倒したのは瑞鶴の姉、翔鶴だった。瑞鶴は瞳を大きく見開いたまま、その場に凍りついた。
「嘘――なんで...」
全身から冷たい汗が滲み出し、頭の中が真っ白になる瑞鶴。何をしようにも手足は鉛のように重く、持っていたSFP9が手から落ちる。瑞鶴には無気力感が襲い始めた。
何とか手足を奮わせて動かしてこちらに近づいてくる。俺は倒れた翔鶴に目線を向ける。窶れ細った少女の姿が目の前に現れた。頬は痩せこけ、目の下にはクマが刻まれている。何かを言っているようだが掠れた声しか聞こえては来なかった。翔鶴が過ごしてきた日々の辛苦が、その体に如実に刻まれていた。俺は彼女の口に耳を傾ける。
「ごめんなさい」
本当に小さく掠れた声だったがはっきり聞こえた。翔鶴は体を起こす。掠れながらも再度、さっきよりも聞こえる声でこう言う。
「ごめんなさい――どうか瑞鶴を許して下さい...」
近づく瑞鶴の足が止まる。足は震え、先程の負けん気は消えていた。そこにいるのは痩せ細った少女と怯えた表情をした少女が二人いた。
「そんな!翔鶴姉は悪くない...これは私が...」
一筋の涙を零し、崩れ落ちる瑞鶴。そして翔鶴は瑞鶴の下へと近づく。翔鶴は優しく瑞鶴を包み込む。それは姉妹にしか成せない力があった。
「どうかこの子だけは許してはくれませんか?」
「対価はこの体でも命でも差し上げますので...どうか――」
翔鶴はそう言って土下座した。その痩せ細った身体で何度も土下座を繰り返そうとした。体や命までも犠牲にする必要などある訳がない。もし、この二人を助けることが出きるのなら何が出来る。様々なことを思案する。
瑞鶴の行ったことは間違いなく反乱行為だ。処罰の処遇は死罪。間違いなくこのままだと助けることなど不可能だ。助けるにしてもどちらか一人は――考えたくもない。これ以上の犠牲は見たくない。この二人が悪いわけじゃないのはわかっている。しかし、この腐った社会は許してはくれない。どう見ても二人は被害者であることは明白だ。考えろ――考えを巡らせろ。心の中で何度も唱えた。
そして一つの手段を思いついた。正しくはこれ以外に手段がなかった。法律を曲げることは出来ない。なら前任の提督が使った手段を上手く流用すれば...
そうして俺は判決を下す。目の前にいる二人の少女に。
「覚悟は出来ているな?」
「はい、瑞鶴が助かるのなら...」
喉の奥で言葉が引っかかるのを感じた。自分の責任を果たすために重い沈黙を破るように言った。
「処遇は死罪」
「...はい」
「しかし、二人共だ」
「えっ...」
場が一瞬にして凍りつく。それを聞くと顔が俯き、体が震えだしている翔鶴。瑞鶴は生に無頓着のように思えたが、その発言が射抜いたのか涙を零し始めた。
「話はまだ終わっていないぞ」
「確かに二人共に死罪は下す」
「しかし、今じゃない」
これが一番の最善。どうにか二人を守るにはこれしかない。そう心の中で言い聞かせた。
「今日を持って懲罰部隊を編成する」
「編成は翔鶴型航空母艦一番艦翔鶴、続いて二番艦、瑞鶴」
「以上だ」
懲罰部隊。ここに来た時の書類の中に残っていた。内容は酷いの一言だろう。ただ死ににいくものと同じなのだから。しかし、懲罰部隊と書いてあるだけで内容は曖昧だ。もし、これを上手く利用すれば助ける手立てになる。最悪それで時間稼ぎには出来る。この他に手がなかった。
理に適っているのかもしれない。ふと、そんな考えが降りてきた。とんだクソ野郎だ。これで戦わせる理由が出来たんだ。やっていることは前の提督と変わりない。あの屑と同じ奴に落ちぶれたくないと思っていた。しかし、俺は嘘を着いた。自分自身に嘘を着いたんだ。
「二人には後日任務が与えられる」
「それまで心身を休め、戦いに備えろ」
「後、待遇については他の艦娘と変わりないものとする」
「判決は以上だ」
本当に正しかっただろうか?もっと言い処遇があったのではないか?頭を抱えたくなるほどに思考が巡る。これで言い訳がない。
「大淀、二人を部屋に戻してやってくれ」
「了解しました」
「では、こちらに」
倒れ込む二人の手を取り立たせる。瑞鶴は翔鶴に肩を貸してゆっくり歩き始める。その二人の背中には悲壮感が漂っていた。翔鶴は妹の瑞鶴を安心させようと大丈夫、大丈夫と何度も唱えていた。執務室から二人が出る時、瑞鶴と目が合った。彼女の目は真っ直ぐこっちを見ていた。その時、瑞鶴がどのような感情を抱いていたのだろう。さらなる憎悪か。だが、少し救われたようにも見えた。いや――俺がそうであって欲しいと勝手に思っていただけだろう。そして二人は人集りの中に消えていった。
出来事が終わると人集りは何もなかったかのように消えていった。まるで何もなかったかのように。それがただ、恐ろしかった。
人の行う業の数々。そのほんの一部分に過ぎない。俺がやった業も見ていた奴らの業も全て業一つ。あの二人をここまでしたのも人の業深さによるものだ。
俺は執務室から海を見る。透き通るような暁の水平線。もうこの場所は暗くなってしまうのだろうか。乾いた笑いが出てくる。俺はあの屑共と変わりないのか。
手を見ると少し黒ずんで汚れていた。
見て頂きありがとうございました!いやはや、結構疲れましたよ。次回はこの話の前日談になる瑞鶴視点のお話になります!次回は結構胸糞展開キツイのでお覚悟ください()
そしてここからが問題なんですが現在、リアルがクソ忙しくなっています。正直な言うと書いている場合じゃないんですよね。とりあえず次上がるのが8月の終わりになるかもしれないです…出来るだけ頑張って出すと思うので待っていてください。(´・ω・`)
もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?
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大丈夫だ、問題ない
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いやです!これ以上艦娘をいじめないで!