生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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はーい引き続きHAKUSUNAです!
 さて、多分時雨パートに告ぐ問題作になりそうな予感がしますね。読む前に一応閲覧注意です。描写としては軽いR18要素、グロい描写が度々、胸糞表現の3本になりまーす!
それでは覚悟がある方からみてください…


第三十一話 堕胎〜瑞鶴〜後編

 それは前触れもなく、突然訪れた。

 

 ある日のことだった。敵によって南方の戦線が突破された言う噂話が広がった。そんな筈がない、深海棲艦はもう虫の息と言っていいほどに戦線が後退し、人類の勝利は確実。そんな奴らに戦線を押し戻すほどの力はない。そうやって全員で高を括り、油断していた。

 

 しかし、その噂話は現実のものとなった。南方の戦線は崩壊、敵に橋頭保を築かれる結果になる。まあ、このぐらいなら簡単に撃退出来るだろう。こんな浅はかな考えは通るわけがなかった。奴らは的確に私達の通信網を破壊、または妨害して情報の錯乱を行った。勿論、私達はまんまとその罠に掛かって被害を増やしていく。それに連れて世間の目も厳しくなる。艦娘は必要ない、我々だけでも深海棲艦に勝てると言うような思想は少なくなかった。そして、ついに私達を確実に追いやる事件が起こった。

 

 多分どっかのマスメディアが流した情報だろう。艦娘が人を無惨に殺し街に火を放っている。そんな突拍子もないものに世間は目を光らせていた。そんなことを私達がする筈がない。実際、その情報は間違いない裏付けがされているわけでもなく、結局は深海棲艦による攻撃であることがわかった。しかし、それはまるで一滴の血によって狂い始めるピラニア。餌を与えられた人間は早速私達への批判を進めた。笑えるでしょ?人間ってこんな一つの情報だけで信じ込めるなんてね。政府も否定はしているが確たる証拠も提示しない。次第に否定いた政府までもが艦娘に対して不信感を抱く始末。間違いなく、そんなことはしていないのは明白なのに世論に押された政府は弱腰にしかなれなかった。私達の鎮守府にも大勢の人々が集り、私達は存在を否定された。

 

「瑞鶴、大丈夫?」

 

「最近、元気がなさそうに見えるし...」

 

 翔鶴姉は優しいな。本当に優し過ぎるぐらいに。私はみんなに認められると思っていた。英雄になれると勘違いをしていた。所詮は絵本の中に書いてあるだけの戯言に過ぎない。私は悟られぬように笑顔を作る。上手く笑えているかな、と心配になる。

 

「大丈夫だよ!ぜーんぜん元気だよ」

 

「そう...ならいいのだけど」 

 

 ......

 

 戦況は悪化の一途だった。

 

 世界は無秩序に変化していった。深海棲艦による情報戦に私達は手も足もでない。そんな中、ある一つの作戦が知らされる。敵の中枢である深海棲艦が突出して進撃をしている。チャンスだと軍令部は思ったのだろう、私達、五航戦と一航戦に招集が掛かった。そして提督のいる執務室へと私達は向かった。

 

「と、言うことらしい」

 

「今回は一航戦の赤城、加賀、五航戦の翔鶴、瑞鶴が主軸となって敵の中枢の撃破を狙う」

 

「みんな気をつけてくれ、これは相手の陽動の可能性がかなり高い」

 

「もし、危険があればすぐに撤退してくれ」

 

『了解しました!』

 

 そうして私達一行は抜錨する。他にも私達を護衛する艦娘と共に目標海域に急行した。

 

 広がるのは青く透き通った海。未だ偵察機からの情報はない。

 

「翔鶴姉、これ本当に敵の陽動なのかな?」

 

「もう敵さん逃げちゃったりしてないよねぇ」

 

「まだわからないわ、どこから攻撃がくるさえわからないのに......」

 

「二人とも、減らず口を叩いてないでちゃんと索敵をして」

 

「あらあら、いいじゃないですか加賀さん」

 

「駄目です、赤城さんそうやって甘やかす所があります」

 

「ここは戦場ですよ?」

 

「私達なんていつ死ぬかわからないのに思い残して死ねる訳ないじゃない!」

 

「貴方は黙ってて」

 

 加賀さんは私にそう言って赤城さんと議論を進める。私と翔鶴姉は完全に蚊帳の外みたい。二人はどうでいい話に花を咲かせている。

 

「いいですか赤城さん、あなたには帰る場所と人が待っているんです」

 

「ですから――待ってください......偵察機からの入電、『我、敵艦発見ス』艦隊編成から目標の敵中枢艦隊と断定」

 

「ここから約五〇キロ、北東に向けて三〇ノットで航行中」

 

「ついに現れましたね」

 

 等々敵が姿を現した。それに相手には空母がいる。油断したら返り討ちあってしまうから気をつけないと。私は背中に背負った矢筒から矢を取り出し弓を構える。指先で弦の感触を確かめるように、僅かに引き絞る。瞳は鋭く細められ、世界は一点に凝縮されていった。そして今か今かと放たれる瞬間を待っていた。

 

「第一次攻撃隊、発艦始め!」

 

 次々と敵に向け攻撃機が発艦していく。そのうち空を覆い尽くす程の編隊が敵に向けて飛び立っていった。後は攻撃隊の腕と練度に試される。

 

「頑張ってよ、みんな」

 

「目標到着まで凡そ十五分と言った所ね」

 

「加賀さん、念の為に護衛に零戦も飛ばしましょう」

 

「わかったわ」

 

 遅れて攻撃機に続くように零戦が飛ばされた。けど、本当にいいのかな?これ以上零戦を攻撃隊の護衛に回すと艦隊の防空力が著しく下がると思うんだけど。そう考えるだけで胸騒ぎがしてきて心配でならない。

 

「本当に攻撃隊に零戦を回すの?」

 

「大丈夫よ、まだ敵にはバレてはいないから」

 

「おっと加賀さん、慢心はいけませんよ」

 

「わかっていますよ、赤城さん」

 

「そのために何本か残しているのでしょう?」

 

「流石、加賀さんならわかってくれると思ってました〜」

 

「ふん、当然です」

 

 まあ、一航戦のお二人方が言っているんだし間違いはないのかな?うん、そうだよね!敵はまだこっちの動きには気づいていない。なら、この胸騒ぎは何かの間違いだよね。

 

 軽薄だった。甘かったんだ。心底私は油断していた。人間と同じように敵に基準を定めていた。そんなもの奴らに通用する筈がないのに。本当に馬鹿だ、大馬鹿者だ。奴らは何もかもを破壊する。言葉通り何もかもを壊していくんだ。

 

「電探に感あり!」

 

 それを聞いたとき言葉を疑った。そんな筈はない、だって見つかっていない筈だった。しかし、深海棲艦という奴らはどこまでも意地汚らしい。私達はまんまと釣られてしまった情けない稚魚だった。

 

「敵、艦載機そんな......約一〇〇機以上!」

 

「一体そんな数どこら...」

 

 その時、私が飛ばしていた偵察機から新たな情報がもたらされる。『敵の空母機動部隊を発見、空母五、軽空母三、他、多数の駆逐艦あり』

 

 戦力でも明らかに劣っていた。何故、軍令部はこの敵に気付けなかった?こんなこともっと早くに気づけたはずなのに。頭の中に出てくるのは後悔の念、もっと自分の気持ちに正直になっていればよかった。もっとこうすれば何かわかっていたかもしれない。

 

「翔鶴姉、どうしよう...」

 

「このままじゃ、私達――」

 

「大丈夫、きっと何かいい解決策があるわ」

 

 嘘だ、そんなことはない。こんな数を相手にすれば到底、帰ることは出来ない。艦隊に動揺が走った。ここから挽回出来る手立てなんて...何もできずに唖然としていると一人声を張る者がいた。

 

「みんな落ち着いて!」

 

「大丈夫よ、まだ零戦は何機か残ってる」

 

「迎撃機を全て発艦させて!」

 

 赤城さんはこんな状況でも希望を捨ててはいなかった。それは加賀さんも同じだった。二人は矢筒から残りの矢を全て放ち、敵と立ち向かおうとしている。それに感化されたのか翔鶴姉も弓を引く。みんな希望を捨ててはいなかった。

 

「攻撃機、射程圏内に入ります!」

 

「対空砲斉射始めっ!」

 

 しかし、十機落とそうとも二十機、三十機とハエのようにワラワラと集ってくる。零戦の機銃だけではいずれ弾が切れてしまう。そして奴らの急降下爆撃機が頭上を取った。

 

「敵機直上!急降下!」

 

 誰がそう言ったがもはや意味をなしてはいなかった。奴らの急降下爆撃の音が耳から離れられなかった。後悔してくると共に怨念が詰まったような恨みが私達を襲ってくる。私は取舵で回避を図る。奇跡的に回避には成功したが、近くで聞こえる爆弾の着水音が足を竦ませた。そして一際大きな音が鳴り響く。それは誰かに爆弾が当たったことを示していた。

 

「翔鶴姉!?大丈夫?」

 

「大丈夫、私は当たっていないわ...」

 

「よかった...じゃあ誰に――」

 

 辺りを見回す。爆煙は私からみて右手に上っていた。次第に視界が晴れ、被害者が見つかる。私達の護衛で付いてきていた艦娘の一人に当っていたのだ。幸いにもまだ意識はあったが、彼女は肌が焼け爛れ、服は溶けて体の皮膚に食い込んでいた。擬装は海上にあちこちに散乱し、一部には黒焦げになった皮膚が漂っていた。吐き気を催す、そんな有意義な時間は与えられなかった。

 

 爆撃が終わり次は雷撃がやってくる。右舷から敵機は魚雷を投下する態勢に入る。軽く数えても一隻に二十機ほど雷撃機が侵入しているのがわかる。私は爆撃を受けた艦娘を助けるべく向かう。しかし雷撃を受けながら向かうことは難しく避けるだけで精一杯だった。そして海上からは大きな水柱が立ち上る。今回も運良くすり抜けることは出来たがもし、次の攻撃があれば被弾するに違いないだろう。私が向かおうとした方向にも大きく何本もの水柱が立ち上るのがわかる。

 

 それはまるで悲鳴を上げるように空高くに噴き上げていた。水柱が収まるともうそこには誰もいなかった。残っていたのは擬装の破片と海に膜を張るように出ていた油と血液だけだった。跡形もなく私の仲間は海中へと消えてしまった。それはこれまで戦ってきた敵とは違うと断言できる。

 

 爆撃と雷撃が収まり、一時の静寂が訪れる。それは第一次攻撃が終わりを告げたと言うことだ。私は再度、翔鶴姉の元へ戻る。

 

「翔鶴姉無事!?」

 

「だ、大丈夫よ...それよりも瑞鶴は無事?」

 

「大丈夫、私は無傷」

 

「よかった...なら私のことよりも赤城さんと加賀さんを心配してあげて...」

 

 どう見ても中破なのに翔鶴姉は他の人を優先する。馬鹿だよ...自分の体くらいちゃんと気遣ってよ。私は安藤からなのか、怒りからなのか涙を流していた。涙を腕で拭き、言われた通りに一航戦の二人の方へと舵を切る。

 

 一航戦の二人なら大丈夫。だってあんなに冷静で強いのに負ける筈がない。そんな淡い気持ちが私の中にあった。しかし、そんな希望は打ち砕かれた。二人のそばに近づく、加賀さんからは黒煙が上がっていた。

 

「二人とも大丈夫ですか!?」

 

 どう見ても大丈夫には見えないけど私にはその言葉しか出すほかなかった。私は赤城さんに近づく。

 

「加賀さんは無事なの?」

 

「被弾してますが大丈夫です...それよりも赤城さん――」

 

 見た目からはほぼ無傷と言ってもいい状態、しかし、足を見ると両方のスクリューを両方共破損し、動くことは出来ない。そして少しずつ左に沈降していってるのがわかる。

 

「被弾してしまいましたか...」

 

「私が鎮守府まで曳航します!フックを繋げてください!」

 

 しかし、その言葉に応じることはなかった。

 

「早くしないと次の攻撃が――」

 

「手遅れよ」

 

「...え?」

 

「私を置いて逃げなさい」

 

「赤城さん、何を言っているの?」

 

 後から聞こえる声。それは何時ものクールな印象とは違い、声は震え、怯えていた。

 

「このまま全員が敵にやられてしまうわ」

 

「もう私は動くことは出来ない、でも加賀さんは違う」

 

「何を言っているんですか!?帰る場所があるんでしょ!貴方には提督がっ...」

 

「ふふ、加賀さんそんな怒って泣いてる所初めて見ました」

 

「そうですね...提督に怒られてしまいますね」

 

「電探に感あり!第二次攻撃です!数は...三〇〇機!?」

 

「今更曳航しても間に合いません、さあ!行ってください!」

 

 そんなのあんまりだよ。まだ何か打開できる作戦が...

 

「貴方を置いて私はいけません」

 

「一航戦の誇り、示してください」

 

「私も最後まで戦います」

 

「そんな!駄目ですこれは――」

 

「これは赤城さんだけの戦いじゃない!!」

 

 加賀さんは弓を持ち、戦う意思をみせている。

 

「瑞鶴、貴方は翔鶴と護衛と一緒に退避しなさい」

 

「殿は私と赤城さんで努めるから」

 

「そんな!でも!」

 

「貴方は私よりも強い、だからきっと大丈夫」

 

「五航戦のこと――嫌いじゃなかったわ」

 

 いやだ...そんなの駄目だよ。そんなお別れみたいに...

 

「瑞鶴さん...最後に一つお願いをしていいですか?」

 

 片足が沈み続ける中、彼女は一筋の涙を零し願いを言う。それはどこか明る下に、また少し寂し下な気持ちが伝わってくる。

 

「どうか提督にこの手紙とこれを持っていってはくれませんか?」

 

 手渡されたのは少し薄汚れた封筒と指輪だった。指輪は銀色に輝き、光を照らす。それは今までの温かい記憶をものがっているように。

 

「どうか提督にそれを渡してください」

 

「さあ!行きなさい瑞鶴!」

 

「ここは私達一航戦が守り抜く!」

 

 反転一八〇度、舵を鎮守府に向けた。私は翔鶴姉と護衛と共に鎮守府へと退避した。道中で第一次攻撃隊を妖精さんを回収して私達は帰った。報告書はいつも赤城さんや加賀さんがやってくれていた。でも、もう二人はいない。震える手で作り上げることが出来た書類を執務室へと持っていく。

 

「今回の戦闘で敵艦三隻を撃沈、五隻を大破または中破に追いやりました」

 

「そしてこちら側の損害、航空母艦赤城、加賀、駆逐艦一隻を喪失......」

 

「以上に...なります」

 

「......」

 

 駄目だ...泣いちゃ駄目なのに。体は震え耐えようとしても嗚咽は止まらなかった。足は砕けそうなほどにガクガクと震えた。一番辛いのは提督なのに私は目の前で泣いてしまった。

 

「ごめんなさい...もう逃げようとした時には遅くてっ...」

 

「――大丈夫、瑞鶴が悪いわけじゃない」

 

「すいません...ごめんなさい」

 

 私はそのまま床に突っ伏した。そしてダムが決壊するように涙が溢れ出てきた。提督は何も言わずにただ報告書を見ている。彼自身が一番辛いのに耐えていた。今までの楽しい記憶が苦痛をもたらす。一呼吸するだけでも肺が押し潰される痛み。もう叱る人はいない、もう相談をしてくる人もいない。全てが生き地獄のように感じた。

 

 泣きつかれて少しは落ち着いた気がする。彼は何言わずにただ、海を見つめていた。私は最後に渡されたものを机において執務室の扉を閉めた。最後に渡された封筒と指輪。私が部屋に戻ろうとすると静かに寡夫が一人寂しく泣いていた。

 

 ......

 

 数日経った。未だに傷は癒えていない。塞ぎ込む私を見たからか、翔鶴姉は私の分まで色々してくれた。翔鶴姉だって辛いのに私は...やっぱり弱かった。加賀さん...ごめんなさい。やっぱり私は情けない女だよ。

 

 喉が乾いたので飲み物を探すことにした。薄暗い廊下を歩き、気づけば執務室前の廊下を歩いていた。執務室の扉は固く閉まっており、あれから開いていないことがわかる。ふと、耳を澄ませると中から怒鳴り声に近い何かが聞こえてくる。

 

「どうしてですか!?」

 

「どうにか説得はできないんですか?」

 

「もうした?何度もしてくださいよ!」

 

「もしここで第七艦隊がいなくなったらどう戦力を維持するですか!?」

 

「それに日米安保の破棄なんてあまりにも一方的じゃないですか!ふざけないでください!!私達が今やってるのは戦争なんですよ!」

 

「――クソっ!切りやがった」

 

「クソ、クソクソクソ」

 

 ドンドンと壁が振動しているのがわかった。けど、私は何も出来なかった。

 

 またそれから数日が経った。また執務室の廊下を歩いているとあの声が聞こえる。

 

「ハワイが陥落したってどういうことですか!?」

 

「はい?こっちの責任?うるせぇよ!知るかそんなもん!」

 

「お前らが勝手にやって負けたんだろうが!!こっちも低一杯なんだよ!ボケ!」

 

「......なんでいつもこんな目に...あぁ!」

 

 そしてまた数日経った。悪化する戦況、淀む空気。次第に鎮守府もおかしくなっていった。行き届いていた食事は段々と少なく、不味いものに置き換わっていった。それに加え、軍からも私達は白い目で見られるようになった。時には陰口を叩かれ、食事には虫が混入していた。

 

 一ヶ月経った。最近はもっと酷い。食事は一日一回、風呂は水の無駄と言われて入れていない。渋々水道から出した冷水を使って体を拭いている。翔鶴姉は私のために色々としてくれている。流石に飯は食べて欲しい。

 

 何ヶ月かな?日にちはもうどうでもいい。最近は鎮守府に怪しい奴が入り浸って来ている。どう見てもあれは提督からの命令で動いていた。提督が辛いのはわかる。けど、こんなことになるなんて思ってもなかった。翔鶴姉は最近痩せてきている。それは食事がほとんど与えられていないと言う証拠だ。勿論、私も肋骨が見えている。

 

 ある日、私は見てしまった。それは私が廊下を歩いていた時だった。

 

「提督!?ちょっとやめてくださいっ...」

 

 その声を聞いた私は声の主を探す。まあ、探すほどでもなく簡単にそれは見つかった。翔鶴姉と提督が二人廊下にいる。提督は翔鶴姉と壁に押さえつけ逃げ場を失っていた。

 

「もう耐えられなんだ...許してくれ」

 

 彼がそう言うと彼の唇が翔鶴の唇に触れた瞬間、全身に嫌悪感が走った。早くこの瞬間が過ぎ去って欲しいと祈るばかりで助けることが出来なかった。

 

「提督、本当にやめてください!」

 

「いいだろ、別に減るもんじゃないんだし」

 

 彼は翔鶴の尻を触り、熱いキスをする。しかし、翔鶴は満更でもなく、あるがままのようだった。

 

 二人は熱いキスの後、隣の部屋に入っていった。最後に聞こえたのは二人の吐息と喜悦の声だった。

 

 それから翔鶴は度々夜に部屋を出ていった。私でもそれぐらいは予想出来た。そう言えば最近気になることがある。翔鶴と一緒に冷水で体を洗っていた時だった。お腹が異様に膨らんでいる。最初は気にしない程の大きさだったのだが、段々と大きくなっている気がした。

 

 私は等々その理由を知ることになった。

 

「あいつ子供を孕みやがった」

 

「クソが!おい軍医中絶薬とかはないのか?」

 

「えっーとですね...艦娘に効く程の薬があるかどうか...」

 

「この際なんでもいい、とにかくお腹にいる子供を降ろさせろ」

 

「しかし、お腹の子も大分成長しています...ですから本当に――」

 

「構わん、さっさとやれ」

 

 私は提督と言う男に憎しみを覚えた。彼はこんなにも変わってしまったのだろうか。人がまるで変わったかのように思えた。そう思えば思うほど憎しみは強くなりそれはやがて殺意へと変わった。

 

 私は部屋に戻り、翔鶴姉に今のことを話す。しかし、翔鶴はそのことよりも子供がいることに喜びを感じていた。

 

「大丈夫、きっと提督なら私から言えば説得できるから」

 

 お腹を擦り笑顔を絶やさない翔鶴。翔鶴姉は立ち上って執務室へと向かおうとした。私は必死に止めて宥めた。それでも止まってはくれずに隙をつかれてあのクソ野郎の元へと行ってしまった。

 

 私も後を追いかけたけど着いた時には遅かった。執務室、そこには血溜まりが出来ていた。隅には新しい生命だったものが乱雑に捨てられていた。

 

「貴方は本当にこれをしたかったんですか!?」

 

「子供なんて邪魔だろ?当たり前だよ」

 

 彼の下に横たわっていた一人の少女。私は一目散に駆けつける。よかった...生きてる。私は翔鶴姉を抱きかかえクソ野郎を睨みつけた。

 

「久しぶりな瑞鶴」

 

 彼は昔のように明るく接してくる。許せない、殺してやる。

 

「さっさとそのお姉さんを持って帰ってくれよ」

 

「あなたって本当に最低な男ね」

 

「最初会った時の言葉覚えてる?『仲間』って言ったよね」

 

「懐かしいな、仲間か...仲間なんてものはもう消えたさ」

 

「そんなものはどうでもいいさっさと行け!」

 

 死ねばいいのに。なんで私はこんな奴なんかを慕ってたんだろう。馬鹿みたい。本当に殺してやりたい。

 

 しかし、私の手を加えずとも彼は死んだ。敵の爆撃が見事に当って死んだらしい。私はそれを聞いた時、笑っていた。それはもう嬉しかった。今までの苦しみが一気に消える思いを味わえた。ざまぁみろ、地獄で一生苦しめばいい、あんな奴。なのに何故だろうか、涙が出てくる。おかしいな、あんな屑好きじゃなかったのに...なんで?

 

 幸せな記憶が今を苦しめる。幸せなんてものはいずれ苦痛になって帰ってくる。楽しい記憶も嬉しい記憶も全部が私の心を抉っていく。これも全て私が弱いからこうなったんだ。だから当然の報いなんだよね?提督。

 

 そして彼が死んでから一日が経った。翔鶴姉はあれから部屋を出なくなれなった。全部奴のせいだ、体調不良が続き酷い時にはトイレを赤く染めた。いつの間にか世話をさせるのではなく、世話をしていたんだ。でも私は翔鶴姉を守りたい。

 

 そんな時に新しく提督が着任する知らせが届く。それは平穏が終わりを告げる合図に思えた。殺さないと私達が殺される。私はくすねた拳銃で殺すことを決めた。作戦当日、まだ早朝と言ってもいい時間帯に私は起きた。もしここで奴を殺せば何かが変わるかもしれない。淡い妄想が私の心を支配していた。ドアノブを回して扉を開ける。

 

「瑞鶴?どこに行くの?」

 

「ちょっと大切な用事があるの」

 

「そう...気をつけてね」

 

 私は翔鶴姉を壊した人間を許さない。今でもこの優しいお姉ちゃんがいることが救いなんだ。だからもう傷つけられる翔鶴姉を見たくない。

 

 人間なんて全員死んでしまえばいい。深海棲艦に無惨に殺されればいい。

 

 私はそれまで翔鶴姉と二人でいれるだけでいいんだから。

 




 うん、先に言いたいことがある裸でジャンピング土下座するので命だけはゆるしてくだちぃ…正直これでもかなりエグい表現を削った方なんです!本当です!!元々は完全にR18Gになる予定だったので頑張って直したんです!!
 言い訳はさて置き俺は逃げます。多分赤城さんやの翔鶴さんを推している皆さんからの視線が怖いので……

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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