生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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 こんばんわ〜こんにちは〜HAKUSUNAです!
今回も全話に続き艦娘パートになります!今回は川内!!みなさんは物語にHAPPY ENDを求めると聞いたので出来るだけそっちによせました!さて、一体川内は何を考えていたんでしょうか。

では長話は置いておいて、よければまた読んで行ってください!


第三十五話 哀戦〜川内〜

 希望は絶望に変わる。

 

 救いを求めて彷徨い、一つの光へと辿り着く。鈍く光るそれは温かみと平穏を与えてくれた。この暗闇に一つ輝く光は海の冷たさを忘れさせてくれる。けど、それよりも大切なものは拾い上げてはくれない。それは、自分で拾い上げなければいけないから。

 

 また会えるって信じている。生きていれば必ず会えるんだって信じたい。三人揃ってこその姉妹なんだからね。

 

 私は一歩を踏み出した。一度止まった足を踏み出した。もう彼は手を引っ張ってはくれない。ここからは私自身の問題。だから手出しは必要ない。

 

 海の香りが近づく。ここに来るのは二日ぶりかな。足が緊張で少し震える。夜風の当たらない地下深く。ここは湿気や生暖かい熱で気持ち悪い。それに加えて錆びた鉄と油の匂いが漂っている。

 

 乾ドックに向かうとたくさんの人が私達のために齷齪(あくせく)と働いていた。その人々を尻目に指定された乾ドックに足を固定する。下を覗くと二、三メートルほどの空間がある。それを六十センチほどしかない機械で固定されていると少し不安に思う。次第に下から現れてくる妖精さん達が肩まで登ってくる。

 

「やぁ、じょうちゃん。ひさしぶりだな」

 

「げんきとりもどした〜?」

 

「てき、つぶす」

 

 相変わらず物騒な妖精さんが紛れているけれど実力は本物だからね。妖精さんが来ると同時に整備の終わった艤装がクレーンで吊るされ、やって来る。艤装が降りてくるとその粗雑さが伺えた。継ぎ接ぎされたような装甲板。更には溶接部のビードが蛇行していた。

 

「こりゃあひどいな...」

 

「へたくそ、つかえない」

 

「てつのかんおけだな」

 

 いけしゃあしゃあと物を言う妖精さん達は少し怖い顔をしていた。でも、言っていることは正しいと思う。私は艤装の装甲板を軽く叩く。コンコンとアルミのような軽い音がなった。これじゃあ、帰ってこれるかも怪しい所だよ。

 

 しかし、現実は状況を物語っていた。まともな装甲板なんてとっくの昔に底が着いていたんだ。彼が来るとっくの前に。理由は至って簡単だった。――資源不足、もうそんなものを作る暇なんて与えられていなかったんだ。有り合わせでしかもう戦うことは出来ない。それは私達艦娘も同じなんだと思う。

 

 背中に視線を感じた。視線に振り返ると、そこには一人の男が立っていた。男の唇は僅かに持ち上がり、目には冷たく、得体の知れない恐ろしさが宿っている。ただ、その笑顔がまるで氷のように冷たくて、空気させも歪みさせていた。

 

「なんだあのおとこ」

 

「きもちわるっ!」

 

「どうする?しょす?しょす?」

 

 どうせこの溶接もあの男がやったんだろう。こっちが振り向くと何もなかったかのように人混みに消えて行った。

 

「いや、いいよ」

 

「そういう人もいるんだよ、人間にはね」

 

 いい人もいれば悪い人もいる。それよりも今は戦いに備えなくちゃいけないしね。もう五分もすれば扉が開いて海水が流れ込んでくる。

 

「HQ、こちら川内」

 

「抜錨前艤装点検完了、注水許可を」

 

「――こちらHQ、了解」

 

「注水を開始します」

 

 数か所から大量の海水が流れ込んで来る。勢いよく出る海水は次第に乾ドックを沈めていく。一分半ほど待っていれば乾ドックの底は見えなくなった。そして閉じられた扉が青く発光する。

 

「こちらHQ、ご武運を」

 

「了解!川内、出撃します!」

 

 限りなく小さな可能性でも信じれば大丈夫。そう教えてくれた少女が私の支えになっているから。だから私は戦える。どれだけ残酷な事実が待っていようともう足踏みはしない。

 

 平和で静かな海。どこまでも透き通るような青色が広がっている。戦争さえなければ見ていられるのにね。でもそれは無理な話。この先を越えれば赤く広がる海が私達を待っている。どこまでも冷たく、どこまでも赤く広がる海。その先に二人は待っている。ソワソワして体が落ち着かない。胸騒ぎと言うかそれよりも緊張してるのかも。二人に会えるのならそれでいい、欲を言うなら出来るのならまた三人で一緒に海を見たい...な。

 

 増速し、目的地に向かう。雲が赤黒く棚引くのが見えてくる。太陽の陽光が通らないほどの大きな雲がその先を覆っていた。

 

「私達――本当にあの先へ行くの...?」

 

 言葉を詰まらせながら話す霞は怯えていた。そんなのみんな怖いに決まっている。戦場へと(おもむ)くこの異様な空気が怖いことなんて――それでも......

 

「行かなくちゃ...いけない」

 

「限りなく小さな希望を捨てちゃいけない!」

 

 諦めちゃったらそこで終わり。でも愚直に抗えばきっと何かが変わるんだ。

 

「まあ、貴方が旗艦だし死ぬ以外の命令には従うわ」

 

「じゃあちゃんと着いてきてよね!」

 

「それと、死なせるつもりは毛頭ないんだからね!」

 

 しかし、赤い海が近づく。私達その境界線の側まで近づいてきた。それはまるで水と油のように混ざり合わない性質を持つ液体。私達はその先に向かうんだ。そして、境界線を越えようとしたその時、司令部から通信が入った。

 

「HQ、から川内」

 

「この通信をもって以降、HQとの無線封止。無線封止解除は目標海域現着以降とする。以上」

 

 電文で送られてきたものはそう書いてあった。私は送られてきた電文をみんなに共有することにした。

 

「とりあえず、つかわないものはぜんぶきったぞ!」

 

「ありがとう!妖精さん」

 

「いいってことよ!」

 

 そうして私達は赤い海を進んだ、進み続けた。生き物すらいないこの海は孤独だ。ただ、生きているのは私達艦娘と深海棲艦だけ。そんな孤独な戦い。

 

 数時間経ったかな。この座標だと目的地まであと少し。最優先は任務――だけど私は諦めない。提督から貰えた貴重な時間......必ず会って見せるんだから。そんな時、無線機に一報が知らされる。

 

「無線封止解消!目標海域到着。発艦準備!」

 

 とうとう始まるんだ。空母のお二人方は攻撃隊を発艦させている。まるでそれが無数の鳥達が羽ばたくように飛んでいく。赤黒く、淀んだ大空へと。

 

 攻撃隊が発艦して数十分、赤く広がる波紋を眺めながら吉報を待っていた。大丈夫、この戦いは絶対に勝てる。そう、信じさせてくれる人達がいる。 

 

「瑞鶴から艦隊へ、攻撃は成功よ」

 

「それと敵艦隊を発見したわ」

 

 その言葉と同時に司令部からも同じ情報が入って来る。......感じる、二人を感じる。私には分かるんだ。二人は間違いなくあそこにいる。行かなくちゃダメなんだ。

 

「流石にこの数は不味いんじゃない?......撤退した方が...」

 

「駄目です!ここで諦めたら!――みんなを信じてください!瑞鶴さん!」

 

 ここで諦められる訳がない。私は二人を信じている。これは止めようのない運命なんだから。

 

「ありがとう、雪風!」

 

「みんな!陣形を単縦陣にっ!一気に行くよ!」

 

 待っててね、二人とも。二人を助けに行くから。また笑いあえる日々があるんだから...私は諦めない。

 

 しかし、敵はそれを許さなかった。沢山の砲弾が私達を襲う。幸いにも今のところは誰も被弾してない。けど、時間の問題だと思う。敵の精度も上がってきてる。こんな私の身勝手にみんなを付き合わせる訳にはいかないよね。

 

「みんな、聞いて」

 

「これ以上は艦隊が危ない、だからみんなは撤退して」

 

「私はこのまま進むから」

 

「は?どいうことよ!」

 

 これ以上は付き合わせられない。私は単独で速度を上げ、二人の所へ向かった。そのおかけか砲弾もこっちに集中する様になった。これでみんなの安全は確保された訳だし、存分に戦える。

 

 水柱が立つと、赤い液体が飛び散る。錆びた鉄のような匂いが艤装にこびり着く。それに加えて装甲板のネジが緩み始めていた。

 

 そして私は見つけたんだ。二隻のチ級がそこにいた。例え深海棲艦になったとしても二人を忘れることは出来ない。

 

「神通!那珂!」

 

 私は二人に向かって叫ぶと二人の顔がこちらに向く。冷たく、昏々とした顔が映された。それは意識を失うように、自我のない奴隷のようにただ、敵を討ち滅ぼすことを考える兵器へと変わっていた。二人から返される応えは砲身を私に向けるということ。その砲弾を私は避けることは出来なかった。

 

「なんで...私だよ――川内だよ...」

 

「もう......忘れちゃったの...?」

 

 装甲板に当たった砲弾によって体を圧迫される。痛くて苦しい...でもまだ諦めた訳じゃない。訴え続ければきっと分かり合える。

 

「ねぇ、答えてよ!神通ッ!!」

 

「なんで私を撃つの?那珂ッ!」

 

「川内だよ!貴方達のお姉ちゃんだよ!」

 

 虚空に問いかけても反応は返ってこない。返ってくるのは憎悪と砲弾だけ。体はどんどんと傷が増えていく。艤装もほとんどがボロボロになってしまった。

 

「おい!これいじょうはまずいぞ!!」

 

「いったんにげよう...」

 

「ぎそうがもたない......」

 

 妖精さんはそう弱気を吐いて撤退を促す。でも、ここで二人を見捨てたら二度と会えない気がするんだ。どんな姿になっても二人だけは救って見せる。

 

「お願い...話を聞いて...」

 

「二人を――」

 

「おい!てきだんくるぞ!」

 

「さけろッ!」

 

 その時だった。遠くから聞こえる砲弾の音。そうだだった、二人の他にも深海棲艦がいたんだった。私は取舵を取り回避を取ろうとする。

 

「うそ...なんで......」

 

 何度も動かしても曲がることはなかった。音はもうすぐそこまで来ていた。

 

「そんな...動いてよ!」

 

 声は無情にも響くだけ。どう足掻いても無駄足だった。

 

「...私――死ぬの......?」

 

 体から力が抜けると、今までの思い出が回想されるように蘇ってくる。幸せで幸福な記憶が頭の中に溢れ出てくる。妖精さん達が何か言ってる見たいだけどよく聞こえない。

 

 

 

 

 そうだ――私、死ぬんだ。

 

 

 

 

 嫌だな...死にたくないよ。

 

 

 

 

 死にたくない。

 

 

 

 

 もっとみんなと笑って話し合いたい。

 

 

 

 

 二人を助けたかった。

 

 

 

 

 提督に認められたかった。

 

 

 

 

 死にたくない...死ぬのが怖い。

 

 

 

 

 あれだけ死にたかったのに...死ぬのが怖い。

 

 

 

 

 

 私も深海棲艦になっちゃうのかな...嫌だな......せっかくまた仲良くなれると思ったのに。

 

 

 

 

 誰か助けてよ...

 

 

 

 みんな――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

  

「......さん?」

 

 誰の声だろう...わからない。もっと近くに寄ってほしい。

 

「姉......?」

 

「姉さん?」

 

 聞きづらかった声が少しずつ聞こえてくる。どこか昔に聞いた声。それもとても大切な人の声。

 

「大丈夫そう?」

 

 二人いるのかな。声でしかわからないけど、どっちも変えようのない大切な人。

 

「はぁ...単騎で突撃なんて遊びじゃないんですよ!...全く」

 

「まぁ、それが()()()姉ちゃんだからね♪」

 

「世話の焼ける姉さんの間違いでは...?」

 

 結構辛辣だなぁ〜今までそんな風に思われていたのかな?

 

「――流石にもう立てますよね?」

 

「立って貰わないと困っちゃうな〜」

 

 大丈夫、これ以上は迷惑を掛けれないからね。ありがとう、二人とも。

 

「ちゃんと歩いていけますか?」

 

「もう、止まっちゃったりしないよね?」

 

 大丈夫、もう止まったりなんかしない。ちゃんと前を向いて歩くよ。

 

「それならいいんですが...」

 

 そう言えば二人とも...昔に買ったあれはちゃんと持ってる?

 

「はい、それは勿論」

 

「肌身離さず持ち歩いてるよ♪」

 

 よかった...ちゃんと覚えてくれてたんだね。この際だし、私が一括で管理していいかな?

 

「ね、姉さんが貴重品の管理を...」

 

「おお!成長したねー」

 

「これもあの方のお陰ですかね?」

 

 あの人にはとっても助けられたな...後で目いっぱいのお礼をしなくちゃね。

 

「そうですね」

 

 久しぶり笑ってる所を見れたかも。やっぱり笑ってる方が一番だよ。

 

「それじゃあ、姉さん」

 

「残念だけどそろそろお別れの時間です♪」

 

 もう、行っちゃうの?

 

「私達も長居は出来ませんので...」

 

 そっか...また――きっと会えるよね。

 

「はい、きっと必ず」

 

「それと、姉さんに二つお願いがあります」

 

 え、えっと...何かな?

 

「一つ目は、どうか彼を救って上げて下さい」

 

「二つ目は、もしまだ私達が生きているのなら――

 

 

 

 

 沈めてください」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 頭が重い。

 

 身体中が痛い。

 

 体が焼けるように暑い。

 

 何も見えない。

 

 一体ここはどこだろう。暗くて何も見えない。でも、どこからか砲撃音が聞こえる。誰かが近づいてくる。深海棲艦だったらどうしよう。 

 

「......ください!こんなところで.........!」

 

「............バカっ!」

 

 うるさいなぁ。もう少し優しく起こしてよ。重い体に力を入れて目を開ける。そこにいたのは雪風だった。

 

「なんで...みんながここ、に...?」

 

「助けに...来たの...?」

 

「川内さんのためにみんなが頑張っています!」

 

「私達五航戦が肩を貸します!撤退しましょう」

 

「ま、まって!まだ二人が...」

 

 体を起こして二人を見る。私のためにまた、身代わりになってくれたんだね。最後まで私何かのために。本当にバカ正直な妹達なことね。

 

 私は二人へと近づき、抱きしめる。体は冷たいけど心は誰よりも温かい。私は二人を知っているから。こんな体になっても二人は私の大切な妹達だから。でも――

 

「雪風お願いがあるの」

 

「二人を沈めてはくれないかな...?」

 

「そんなの......雪風には...出来ません」

 

「そっか...そうだよね」

 

 責任は自分で負わないとダメだよね。私自身で二人を終わらせるしかないんだよね。奇跡的一門だけ動く主砲は動く。私は砲弾を装填し、二人に向ける。

 

「神通、那珂......今までありがとう」

 

 

 

 そして、さようなら。

 

 また、きっといつか会おうね。

 

 大好きだったよ。

 

…………

 

  戦闘は終わった。敵基地は致命的な損傷を受けた。当分は補給に支障が出ると思う。そして二人は自由になった。空に飛ぶ水鳥のように自由な空に旅立った。

 

 鎮守府に着くと提督が迎え入れてくれた。数十人程のの整備員も喜んでくれて嬉しかった。私は今日の戦果を提督に報告した。これなら大本営も喜んでくれるし、提督のためにもなる。けど、提督は私達に向けて頭を下げた。提督が謝ることなんかじゃない。私は提督に向けて意思を伝える。

 

「私はあれでよかったんだと思う」

 

「二人はあれで自由になれたんだって...」

 

「私にそう思わせてください、提督」

 

「......わかった」

 

 やっぱり提督は優しいな。こんなに優しくされるのはあの提督以来だからね。

 

 そうだ、提督にお礼を伝え――あれ?可笑しいな......なんで私、泣いているんだろう。涙拭かないと...ダメ止まらなくなる...

 

 提督はなんで私なんかのために背中を擦ってくれるの...でも温かいな、提督の体は。私の傷を癒し続けてくれなくてもいいのに。私より酷い環境にいる子がまだたくさんいて...

 

「気は済んだか?」

 

 気づけば私と彼以外は解散していた。提督は私のためにずっと傍にいてくれたんだね。よく見ると涙と鼻水で彼の服をぐちゃぐちゃにしていた。

 

「提督...ごめんなさい」

 

「これぐらい洗えば済むことだ、気にするな」

 

「えへへ、提督ってば優しいんだから」

 

「いや、ただ私は......」

 

 大丈夫、私が着いてるから。提督だけは守りきって見せる。どんな世界でも提督は私達艦娘を守ってくれる。私を絶望の淵から拾い上げてくれた人、私の大切な人。

 

…………

 

「川内さん、提督に呼ばれていますよ!」

 

「はーい、ありがとうね!朝潮」

 

「いえ、そんなことは...それよりこれは何ですか?」

 

 私の机に飾ってあるものに朝潮は目を向けていた。私は自慢げにその代物を語る。

 

「これはね!私達『華の二水戦』のために作られた...」

 

「そ、その話は後にしましょう...とりあえず提督に呼ばれてますから」

 

「はいはい」

 

 それは私を見送るように光を反射させる。

 

 安心して、提督は必ず私が救って見せる。

 

 見ていてよ、二人とも。

 




 いやぁ、立ち直ってよかったですね~
俺も涙が出そうやね(←元凶こいつのせい)!まぁさて置き、これで第一章は完結となります。再来週からは第二章へと映るので乞うご期待!なんちゃって…
まぁ基本第二章は政治描写多くなっていくと考えてくれれば嬉しいかな?そして話も大分重くなると思いますね。まぁネタバレはこれだけにしときます。では再来週には上げれるように頑張りますぞ!!

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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