生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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 どうも~こんばんわ、こんにちはHAKUSUNAでございます!
さぁとうとうこの小説も第二章へと入ることが出来ました!と言っても基本は重い話に政治色が強くなるって感じになりそうですね…ではまたよければ見ていって下さい!!


第二章 松代大本営
第三十六話 怨恨〜提督〜


 

 もし、「人間に似た生き物がいるのなら」と考えたことがある。宇宙人でも人間でもない生物がいたのなら世界はどうなるのだろうか。母なる海から生まれた人類と似た知的生物がどう世界を変化させるのか。――そんな空想が現実になるとはあの時は思わなかった。

 

 空に一直線に掛かる雲。

 

 透き通るような青空にそれはいた。

 

 それらが頭上を通り過ぎる。

 

 何百もの火の玉が空から降ってくる。

 

 空から落とされた落し子は大地を抉り、燃やす。

 

 地上にいる者たちは叫び狂い、走り出す。

 

 あの時見た光景はまさに『地獄』の再現だった。皮膚が焦げる臭いや枯れるまで聞こえる叫び声が未だに頭から離れられない。肌がむき出しになり、目や口が腫れ上がった人間が路上を歩き回っていた。火傷で爪のところから皮膚が裏返り、垂れ下がっている者や「カシャ…カシャ」と、踵から音を鳴らす者が大勢いた。そうして、地面には焦げ落ちた皮膚が散乱し、山のような屍が築かれた。数時間前まで隣で笑っていた友達は墨のように黒焦げに焼かれていた。

 人間の焦げた臭いと言うものは特に気味が悪い。動物性タンパク質特有の悪臭と、髪や皮膚が溶けることで発生する焦げた油臭いも混じっていた。その臭いがなんとも不快で鮮明に今でも残っている。

 しかし、俺はそれをただ見ていることしか出来なかった。自分の無力さに嫌気がした。「どうして俺は何も出来ないのだろうか」、「何故、俺の家族や友達を奪ったのか」と考える日々が続いた。妹を残して全てを奪い去った奴等に俺は憎んだ。幸せな空間をことごとく潰し続ける奴等。もし、いなければ平凡な毎日を送り、平凡な暮らしが当たり前に訪れる筈だった。しかし、そんな理想は叶わない。――そう奴等が教えてくれた。

 全てを焼き尽くす程に肥大した憎悪が彼を動かした。彼にとって生きる糧となるものはただ奴等を沈めること。生き残ってしまった罪を償うために彼は復讐を誓った。

 

 深海棲艦と仇を討つまで彼は生き続ける。

 

 その憎悪と憎しみは癒されることがあるのだろうか。

 

 それは未だ、わからない。

 

…………………………

 

 あの戦いから二日が経った。作戦は成功し、全員無事に帰投した。劣勢な戦況の中、唯一掴めた希望。この希望を途絶えさせてはならない。

 

「提督?」

 

 首を傾げ、不思議そうな顔をして近づいてくる彼女の両手には数枚の書類が握れていた。俺は過去の話を後回しにして、今やるべきことに目を向ける。

 

「そう言えば、先ほど大本営から提督宛に通信が届きました」

 

「わかった、確認しよう」

 

 彼女に言われた通り、無線機の電源を入れて音声を確認する。モニターには一件の録音された音声が残されていた。ボタンを押して音声の確認を始める。

 

《大本営から横須賀鎮守府、こちらは国防大臣の黒崎だ。君の活躍は部下から聞いているよ。戦時昇進の叩き上げで深海棲艦を何度も撃破してる(つわもの)と言っていい。正に英雄、この国の救世主だ。――すまんな、本題に戻ろう。この通信を送ったのは君を大本営に招集するためでね、この戦況下の中、戦果を上げ続ける君から是非知見を頂きたくてね。この通信が届いている頃にはそちらに部隊を移動させているよ。まぁ、強引であることは申し訳ないが理解してもらえるとありがたい。後は……そうだな、艦娘を二体連れてきてくれるかな。少し…………お話をしたいからね。通信は以上、会える日を楽しみにしているよ。》

 

 五十、六十といった所だろうか。録音から聞こえた声は低く、どこか冷静で冷酷な声色だった。にしても少々強引なお方のようだ。確かに深海棲艦の侵攻は落ち着いている。しかし、前線から指揮官が抜けるという致命的な判断だ。国防大臣の言葉を反故にしてでも断りたい所だか……なかなか難しいそうだ。

 

「大淀、中沼と斎藤を呼んでくれ」

 

「了解しました」

 

 今後の舵取りが重要になる。もし、俺がここにいなくても彼女達が十分に戦える環境を維持しなくてはいけない。また、艦娘二人を戦線から離脱させることになる。明らかに戦力が不足している今、それは難しい。何か打てる手はないのだろうか……

 二人を呼びに大淀は部屋を後にした。部屋に一人寂しく残されていた俺はこの状況を打開すべく頭を回す。その時だった。開いたままの無線機から音声通信が開かれる。

 

「あーあー、聞こえるかね?」

 

 その声が脳髄を駆け巡ると同時に悪寒が広がる。ゴミを集めたような悪臭と嫌悪感が画面越しからでも伝わってくる。――(准将)が一体なんの用なのだろうか。

 

「一体……なんの用ですか?」

 

「話は聞いたぞ、どうやら国防大臣に招集されたそうではないか」

 

「上官として鼻が高いよ」

 

 微笑して笑う姿はニュウドウカジカのように醜い姿をしていた。屑が話す一言一言に不快感を感じた。そして屑は言葉を紡ぐ。

 

「どうやら艦娘を引き連れてくるらしいではないか」

 

「どうだ?少し取引でもしてみないか?」

 

 屑の話に乗るわけがない。拒否という二文字を突きつけてやった。そうすると彼は眉毛を歪ませ、怒りを隠しきれずにいた。 

 

「お前は将棋でいうところの飛車だ」

 

「王将のために敵をかき乱す、それが飛車である君の天命なのだよ」

 

「お前は俺の庇護下で従っていればいい」

 

「しかし、お前は自分に指揮権があるように思っているようだな?」

 

「前回の空襲時、お前は私の飛行隊に泥を塗った」

 

「もちろん、生き残ったパイロットはこちらで処分した。元々死ぬために生まれてきた者に死に場所をあげないとは……随分と酷なことをする指揮官なことだ」

 

 憎たらしい発言を続ける屑。戦場を目の当たりにしたことない奴だからこそ言えることなのだろう。目の前で人が吹き飛ばされ、黒焦げになる姿すら見たことすらないお坊ちゃんごときが人の命を語るな。

 そんな屑にやるものなどこの鎮守府には一切ない。戦争を間近で見たことのない者に与えるものは存在しない。奴から染み出る気持ち悪い汗が不快感を際立たせた。

 

「そうか……まぁいいだろう」

 

「お前がそうするなら然るべき対処をしよう」

 

「――また会えることを願っているよ」

 

 不敵な笑みを屑は通信を切る。やけに引き際の早いことだ。しかし、奴が最後に微笑した笑みが頭から離れない。あの屑のことだ、何か企みでもあるのだろう。奴の微笑みが艦娘に向かないことを祈ろう。

 

…………………………

 

 数十分後、二人を連れて大淀が帰ってきた。二人は前に立つと敬礼し、俺もまた敬礼を返す。

 

「仕事中にすまないな」

 

「いえ、問題ありません」

 

「同じく問題ないです」

 

 二人はこの鎮守府の中でも信用が置ける人物だ。この戦況下、いつ何時深海棲艦が攻めてくるかわからない。空襲の頻度も油断ならない。その中、この鎮守府を任せられるのは二人の他に存在しない。

 

「では、本題に移ろう」

 

「二人には鎮守府の指揮を任せたい」

 

「……と言いますと?」

 

「国防大臣からの命令で大本営に向かうことになった」

 

「……なるほど、そこで出番と言うことですか」

 

「そうだ」

 

 俺は大本営へ行くことを決意した。

 

 今のままでは円滑に軍を動かすことすらままならない。理由は至って簡単なことだ。俺にはその権力がない。大本営とのパイプが繋がっていないのだ。

 軍という組織は、今も昔も縦社会で成り立っている。当然、それはこの国も同じだ。昇進するためには実戦での戦果、次いで周りとの関係だ。生憎、准将とは分かり合えない仲だ。しかし、この腐りきった軍部にまともな人間が残っているのならば?敵との戦いを真正面から見る覚悟のある人間が残っているのならば?淡い希望だとしても賭ける価値はある。軍で生き残るには仲間が必要なのだから。

 

 一通り話し終え、二人の了解を貰う事が出来た。もちろん通信越しとはいえ支援はする。鎮守府を守り抜くための力。それを俺は手にするのだ。

 

「後のことは二人に任せる」

 

『了解ッ!』

 

 そうして二人は執務室を後にした。大臣から指示された艦娘の同行。しかし、主力である空母、軽巡を連れ出すには難しい。最終的に俺は二人の少女を連れて行くことを決めた。

 

「大淀、朝潮と霞を呼んでくれ」

 

「了解です」

 

…………………………

 

 

 

「はぁ?そんなの行く訳ないじゃない」

 

「ちょっと霞…」

 

 相変わらず何事もにも噛みつくものだ。確かに彼女にとって、大本営は屑の溜まり場にしか思えないのだろう。それについては一理認める。ここは彼女の意思を優先させよう。

 

「行きたくないのであれば構わない」

 

「し、しかし提督…」

 

「私は霞一人残して行くような真似は出来ません」

 

「今回は残念ながら……」

 

「はぁ………わかったわよ――行けばいいんでしょ」

 

 毒を吐きながらも義理堅いようだ。流石姉妹艦といった所だろうか。そうして彼女は嫌味を言いながらも姉を引っ張り部屋を出ていく。

 

「朝潮、さっさと用意するわよ」

 

「じゃあ失礼するわ」

 

 朝潮は頭を何度も下げ、申し訳無さそうに部屋を出ていった。世話の掛かる妹と言うものは艦娘でも人間でも同じなようだ。朝潮にはもうひと頑張りしてもらうことになりそうだ。

 

…………………………

 

 あの通信から四時間、八台になる車列が鎮守府へとやって来る。車列は一つを除いて軽装甲機動車(LAV)が占めていた。LAVの車体上面のハッチには機関銃を装備するという重武装。なかなか大臣は良いものを寄越してくれたみたいだ。車列の中で一際目立つ黒いクラウンの扉が開く。すると迷彩柄をした兵士が一人降りてくる。

 

「こちら大本営直属、第13普通科連隊の者です」

 

「提督でよろしいでしょうか?」

 

 降りてきたのはまだ若い兵士だった。それも成人して間もないの歳だ。よく見ると、隊員の殆どが若い兵と、退役間近の老兵で構成されていた。どうやら大本営も人が足りていないらしい。

 俺は二人を連れてクラウンへと向かう。ふと、後ろを振り返り、鎮守府を眺める。ここに来て約二週間か三週間といった所だろうか。今も鎮守府はボロボロのままだ。しかし、明らかに前とは違う何かがそこにはあった。

 ここに来た時、彼女の顔は深く沈んでいた。だが、今は違う。厳しい戦況なれど、彼女は少しの笑顔を見せてくれている。俺が何かを変えたのかは知らない。それでも着々と目標には近づきつつある。

 

「大淀には二人の補佐をして欲しい」

 

「頼めるか?」

 

「問題ありません」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

 大本営までの道のりは遠い。この先、鎮守府いや――この国を守り抜くためにも仲間が必要だ。どれだけ苦しい道のりだとしても突き進もう。

 

「では提督殿、こちらへ」

 

「お二人方もこちらでよろしいですか?」

 

「同伴の者だ、よろしく頼む」

 

「了解」

 

 俺は車の右端に座り、曇りガラスの奥から大淀と鎮守府を眺める。あの時とは違う、俺はまた暗い道の先を進む。

 

「こちらVIP1、要人三人を車に乗せた。送れ」

 

「……了解、では大本営まで向かいます」

 

 その場所は腐敗し、腐りきったこの日本という国を作り上げたゴミ溜めの集まりだ。

 

 そして新たな物語が始まる。それはまだ序章に過ぎない。

 

 深く暗い世界はようやく訪れるのだ。

 

 ――さあ、向かうとしよう。

 

 ()()()()()()




 どうでしたでしょうか〜?新しい章に入ったので文章なども一新して書くことにしてみました!まぁ色々試行錯誤しながら書いていこうと思います!まぁ物語的には艦娘と言うよりはもっとマクロの話になっていくと思うと分かりやすいかも?また何かあればコメントくれると嬉しいです!
ではまた!!

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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