生きとし生けるものへ   作:ハクスナ

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 こんにちは〜こんばんわ〜HAKUSUNAです!
約一ヶ月ぶりの更新となり本当に申し訳ない…リアルが忙しくて体調壊してたりが重なって小説書ける場合じゃありませんでした…ともあれ今回は完成したので嬉しい限りです!!では今回も見て頂けると幸いです!


第三十八話 崩壊〜提督〜

 

「よかった無事だったか…」

 

 鎮守府から離れ約八時間。死線を超え、我々は大本営へと辿り着いた。地中深く沈むそこは薄暗い照明に照らされ、日夜暴動が繰り広げられる戦場となっている。深海棲艦とは違うまた別の敵が国という内部から侵食していく。外部、内部問わず、この国は攻め続けられていることを教えてくれた。

 俺はこれを止めなくてはならない。腐敗した政府と軍部を正さない限り、この国に未来はない。俺は進み続けた。それは自分の目的のために、ただ真っすぐと進み続ける行為だった。

 大本営は思ったよりもこじんまりとした建物だった。中に入るとフロントで頭を抱え、徘徊する中年の男がいた。その男は我々を見るとその足を止め、安堵の表情を浮かべた。

 

「定期連絡が途絶えていた間に奇襲を受けていたと聞いてヒヤヒヤしたよ。まぁともかく、大本営に向かうとしよう」

 

 それが奴との出会いだった。この軍部の頂点にして、国家としての顔でもある政治家。それが彼だった。俺達は彼の後ろをついて行く。ネズミ色の壁が続いていくと警戒色のテープが貼られた廊下が見えてきた。

 

「あーそこは通行止めだよ。前回の空襲でその先一帯が崩れたらしくてね……地中貫通爆弾に酷似した爆弾がこの松代一帯に落とされたのだよ。――ここもとうとう潮時なのだろうね」

 

 彼は壁をコツコツと叩き、呟いた。以前、取り逃がした編隊が残した傷跡。どうやら二人も責任を感じているのか憂鬱な表情をしている。しかし、当時の戦力で数百機の爆撃機を撃墜するのは不可能だった。だから俺は大本営直属の迎撃機を信じた。その結果、大勢の国民や将兵の命を見殺しにしたのだ。それを判断した俺が一番責任を感じなければいけないはずなのだが、如何せん、その気持ちが表に現れない。その心は国民、将兵の命をリソースだと考えているのは明白だった。それは腐敗した軍部、政府と同じ輩になると言うことだ。それだけはあってはならない。俺の信念がそれを許してはくれないのだから。

 

 そうして歩いて行くと、鉄のレールが引かれた線路が見えてきた。コンクリート製の大きな建物は線路を制御するためのものなのだろう。約五十メートルにも広がるその場所には地下へと繋がる線路がずらりと並んでいる。そして急な傾斜に引かれたレールには一両の車両が静かに停まっていた。

 

「それではこの車両に乗って貰うとしよう」

 

 斜行列車と言うものだろうか。言われた通り、車両の中へと入るとドアが閉まる。ガチャンという金属音が聞こえると車両は動き出した。薄暗い斜面をゆっくりと降りていく。二人は座席に座り真っ黒な外を眺めていた。三分ほどが経つと下から眩しい光が見えてくる。どうやら終点のようだ。

 

「ようこそ『松代大本営』へ」

 

 車両を降りると共に現れるのは大勢の人と、明るい光だった。そして彼は手招きをするように手首を動かした。

 

「では、執務室に来てはくれないかね?重要な話がある」

 

「了解しました」

 

「そう言えばちゃんと艦娘も連れてきているようだね。それじゃあ、執務室前の椅子にでも座らせて置くとしよう」

 

「……」

 

「後は部屋に要望はあるかな?何かあれば下の者に通して貰うよ」

 

「二部屋用意してくれれば問題ありません」

 

「承知した」

 

 そして彼の執務室が見えてきた。廊下には木製で出来た粗雑な椅子が二脚置かれていた。彼は扉を開け、笑顔を見せている。

 

「すまないが二人はここで待っていくれ」

 

「了解!」

 

「はぁ……はいはい」

 

 扉は固く閉じられた。部屋の中は表向きは整頓されているが所々粗が見えている。彼は戸棚を漁り一つの本を取り出した。そしてその本のページを数枚巡っていく。まるで人がいないかのようにその本に見入っていた。無言の時間が無限に感じられるような長さだった。その沈黙は数分続き、ようやく彼は話し出す。

 

「単刀直入に言うよ。滝沢君を大佐に昇進させる」

 

「まぁまぁ、話はこれからだ。落ち着いて、ゆっくり話そうではないか…」

 

「『本』と言うものは大昔からの記録媒体だった。しかし、時代が経つに連れ本は陳腐化していった。そして新たに現れたのはコンピュータという機械が本の代わりになった。しかし、コンピュータも次第に陳腐化しつつある。そして今日では人工知能が記録を保存するようになった。滝沢君はこれについてどう感じるかな?」

 

「進化でしょうか?」

 

「そう言う考え方も出来る確かに出来る。しかし、本を一個体として見るとどうなる?新たな技術に追い抜かれる癖に自分は何も変わろうとしない。これはまるで今の日本だとは思わないかい?」

 

「国家は数百年もすれば形骸化する」

 

「始まりが希望に満ち溢れていたとしても時間が経てば絶望に打ち拉がれる時代がやってくる。そんな組織を国家として存続させる意味あると思うかい?」

 

「私はただの一軍人です。軍人は国家を守る矛であり、盾であります」

 

 

「――そうか、滝沢君はそういう人間なのか……いや問題はないが……うん、そうだな…話を変えよう」

 

「見ての通りこの国はもう生い先短い運命なのは知っているだろう」

 

「死肉を貪り、金品を金に立替える。そんな未来が来ると子どもの時に思ったかい?」

 

「い…いえ、思いませんでした」

 

「そうかそうか……やはり君も思う所があるみたいだね」

 

 

「すまないが滝沢君の素姓を調べさせてもらったよ。家族の死、仲間の死を超え君はここに立っている。それだけでも『奇跡』と呼ばれる存在なのだよ、君は」

 

「まぁまぁ、理由はわかる。ここは平和的に解決しようじゃないか」

 

「滝沢君の階級を大佐まで上げよう。もちろん見返りは要らないさ。『英雄』には相応の対価を支払わないといけないからね」

 

「――我々は幾億の死体の山の上に立つ生者だ。生者は死者の事を想いそれを語り継いでいくのが使命だった。しかし、その死者が生者を超えればそんなもの意味がなくなる。戦争が始まる前までは死が間近にある世界ではなかったかい?笑って過ごす中でその責任は全て誰かに押し付けてはいなかったかな?君の家族も友達も仲間も誰かに責任を押し付けていたのではないのかい?ここに立っている君も私もね」

 

「……」

 

「履き違えてはいけないのだよ。戦争がなくても、この世界は本質的に残酷なことをね」

 

「自業自得の結果がこれなのだよ。人が人を襲い、人が人を殺す。そんな社会を作ってしまった政治家は天下り先を探し、保身を求め大陸へと逃げていく。残りの無能な政治家はただ瓦礫の下敷きになって絶命していった…」

 

「マスコミは真偽も不確かな情報を流布し、艦娘というものを排斥の対象として見るように誘導した。誤報を訂正しないまま問題ともせず、人権侵害を行い続けるマスメディア。背景に何があるのかすら裏付けもせず、世間という大海にゴミを放り捨てる責任感のなさは目に程にも余る」

 

「国民はパンと娯楽を与えられ、それが当然であると考えた。マスコミから与えられた情報を鵜呑みにして艦娘という生物を恨んだ。石を投げ、礼儀などを忘れただ、()()()()()()として嫌った。強いては政治、権力者に対して従順に従う始末…」

 

「さぁ、滝沢君はこの国をどうしたいかな?」 

 

「本当にこの国は()()だと思うかね?」

 

「あの二体の艦娘達に人の()があると思うかね?」 

 

 彼は背中を見せながら、内なる葛藤を押し殺すように佇んでいた。表面上の冷徹さの下には、無数の感情が渦を巻いている。権力者としての矜持と、微かに揺らぐ良心の狭間で、彼の肩は硬直していた。彼の内側では激しい感情の嵐が吹き荒れているかのようだった。権力の重みと、自らが作り上げたこの腐敗した組織への、控えめな、されど確かな罪悪感が彼の背中に目に見えない重みを与えていた。

 

「君を昇進させる理由はそこにある。滝沢君がどのようにこの陳腐化した日本を変えていくのか、その世界が気になるのだよ」

 

「――その答えが出るまでの間、この腐りきった世界でゆっくりしていってくれ」

 

「滝沢大佐殿」

 

「……」

 

「では、遅くはなったが夕食にしよう。悪かったね、今回の話はこのおっさんの説法だと思ってくれて構わないよ」

 

「あの二体の艦娘も呼んでくれないかな?広間に案内するよ」

 

「了解しました」

 

 彼の指示に従い、我々は彼の言う広間へと足を運んだ。歩いて数分、その広間が見えてくると食べ物のいい香りがしてくるようになった。広間とは言うものの八畳ほどの広さしかなかった。彼と俺は長テーブルの対極に座るように、二人はその両端に座ることになった。そして机には今までに見たことない肉のステーキが用意されていた。

 

「さぁ、頂くとしよう」

 

 彼は手を合わせ目を瞑る。何気もない食前の仕草がどこか仮面を被っているように思えた。

 

「近頃は()()()()が入荷されるようになって良かったよ。今までは不味い代替肉しか食べられて来なかったからね…」

 

「国民にも同じものを与えるつもりで?」

 

「そりゃあ勿論さ、お陰で食糧問題は解決の方向に向かっているよ。そのうち最前線にいる君達にもこの肉は届くはずだ。――さぁさぁ、君も食べたまえ。一口入れるだけで口の中でとろける味だよ」

 

「で、では……」

 

 肉は確かに舌を魅力するような味わいだった。牛肉のような匂いと共に赤身は牛肉とラム肉の風味が効いており、味は悪くない。食感は少し筋が多いが噛み応えがあり、噛むごとに肉汁が口いっぱいに広がっていった。

 

「食べないのかい?」

 

 大臣の声は、まるで選択肢の余地のない命令のように二人の少女へと向けられた。俺は彼女達を見つめた。朝潮の瞳には、微かな恐怖と屈辱の光が宿っていた。手付かずの器は、彼女達への無言の挑戦状のように静かに佇んでいる。

 

「お気に召されなかったかな?」

 

「い、いえ…そんなことは……」

 

「……」

 

 朝潮は反論をしようとしたが次第に二人は黙り込んだ。それは拒否反応や恐怖心を表しているようだった。

 

「では、食べるのかい?」

 

 その声から数秒後、朝潮は皿の上に鎮座するその物体を前に、まるで処刑台に立たされた囚人のような表情をしていた。フォークを手に取り、指でその一片を刺す。ナイフを使いブロック状になったそれを見つめていた。奥にいる奴の笑顔が、無言の圧力となって彼女を縛りつけている。

 

「朝潮、無理はしなくていい。誰にだって嫌いなものはある」

 

「それは駄目だよ、滝沢君。嫌いなものはあってはならない、いずれはそれを克服しなければいけないからね」

 

 大臣の声は氷のように冷たく、それはペットを躾けだと言わんばかりな態度を取った。朝潮は内なる恐怖との真っ只中にいた。忠誠心、自己保存本能、屈辱への抵抗。これら全てが彼女の中で激しく衝突していた。

 

「しかし――」

 

「提督…私は大丈夫です。失礼な真似をして申し訳御座いません。私の好き嫌いで提督の立場を危うくさせる訳には……」

 

 彼女の声は、自分を奮い立たせるための必死の叫びのようだった。喉の奥で息を詰まらせながらも口元へ運ぶ。口に入れて噛み砕き胃の中へと入っていく。その動作の間、嫌悪、恐怖、屈辱が入り混じった表情は、まるで魂そのものが引き裂かれているかのようだった。

 

「うっ……」

 

 思わず吐き出すような呻き声を上げると、次の瞬間、口を押さえて席を飛び出した。騒然とする我々を置いて彼女は急いで洗面所へと駆け込んだ。

 

「やはり…駄目だったか」

 

 奴は小声で静かにそう言った。やるせない面持ちをした奴は我々を見つめている。どうやら多少の罪悪感はあるように思えた。

 この国の中心が腐敗しているのは知っていた。長引く戦争が国民と軍属に壁を生んだ。大量の資源を浪費する軍部に国民は怒り、軍部は国民に寄り添わないまま、弾圧する。そして政府はそれを傍観しているだけだった。奴は「本当にこの国は必要なのか?」と俺に聞いた。その答えを俺はまだ知らない。それでも俺はこの国、艦娘を守らなければいけない。

 

「会食はここまでとしましょう、大臣」

 

「えぇ、あぁ……わかった」

 

 席を立ち、俺は霞を連れて部屋を出る用意を始めた。依然、霞は彼に憎悪の目を向けていた。俺は宥めるように彼女の頭を優しく撫でる。しかし、何時もの彼女ならその手を噛みちぎるの如く怒りを露わにするが、彼女は何も言わずただそれを受け入れた。そうして身支度が終わり、部屋を後にする。しかし、去り際に奴は俺の名前を呼ぶ。

 

「――滝沢君」

 

「何でしょうか?」

 

「すまなかったね……」

 

「……」

 

 俺は何も言わずに退出した。一軍人としては最低な礼儀だが、それでいいと思えた。

 そして洗面所に駆け込んだ朝潮を連れ戻しに俺は洗面所に向う。ネズミ色の壁の先にある薄い鉄板の扉。その先からは啜り泣く少女の声が聞こえてきた。

 

「朝潮、夕食は終わった」

 

 数十秒後、閉ざされた扉は開く。彼女は肩で荒い息をしながら涙の滲んだ目で見つめている。顔色は青白く、唇は微かに震えていた。

 

「もうしわけ……ございません…………」

 

 掠れた声で呟く。罪悪感と恐怖が入り混じり、魂を削られるような表情は見ていて心が苦しくなる。

 

「私のせいで提督が……提督が…」

 

「朝潮が謝ることはない。謝るのはこちらの方だ…」

 

「ほら、ちゃんと立って。早く部屋に行くわよ」

 

 霞は彼女に手を伸ばす。青白くなった手を霞は引っ張り、廊下へと引きずり出した。顔を伏せた彼女は霞に引っ張れるがまま廊下を歩くしかなかった。

 

「……ありがとう、霞」

 

「…いいのよ」

 

 用意された部屋まで行く。二人は手をつなぎ後ろを着いてくる。部屋に到着するとスチール製の変哲もないドアがあった。

 

「今日は大変な一日にだった。しかし、明日は式典があるらしい。それまで二人はゆっくり休んでくれ」

 

「まったくよ!ほんとに忙しい日だったわ」

 

「了解………提督、ありがとうございます」

 

「また何かあれば教えてくれ」

 

 時間を見れば後少しで日にちが変わるタイミングだった。俺は服を脱ぎ改めて今日の一日を振り返る。薄汚れた軍服は怒涛の一日を表していた。疲れからか肩の荷が一気に落ちるように感じだ。俺はそのまま寝床へと横になり、ゆっくりと、目を閉じた。

 

 ………………

 

 手札は全て乱れ始める。それは誰が敵なのか分からず、疑心暗鬼になるしかなかった。

 

 大本営二日目を迎えた。昨日の疲れはまだ残ってはいるが、休んでいる時間はない。服を着替え、俺は二人の様子を見に行くことにした。扉をノックするが中からは何も返って来ない。まだ寝ているのだろうか?ふと、ドアノブを回すと扉が開く。何か嫌な予感が頭を過る。

 

「入るぞ?」

 

 その声も虚しく、音は反響する。中に入るとそこには何もいなかったかのように痕跡が綺麗さっぱり消えていた。部屋の中を探索するがどこにも二人の痕跡は見当たらなかった。

 部屋は間違ってはいない。間違いなく、二人はこの部屋で過ごしていたはずだ。痕跡がないか隅々まで探す。部屋中の隅々まで調べると、ベッド周辺の地面に目新しい水痕が出来ていた。数滴ほどではあるがここで何があったことは確実になった。俺は部屋の中を物色していると外から二人の下士官が現れた。

 

「滝沢少佐――いえ、滝沢大佐でよろしいでしょうか?」

 

「そうだ、それで君達は一体何用だ?」

 

「別に我々は怪しい者ではありません」 

 

「滝沢大佐殿、我々とのご同行願います」

 




 皆さんも子供の頃嫌いな食べ物ってありましたか?自分は何でも食べてたからあまりなかったけど嫌いな食べ物食べる時ってこんな感じ何かなぁ〜って考えながら書きました!そして今回は伏線のオンパレードなので忘れないようにしたいところ…
 取り敢えずまた再来週には出すように努力はしますが、リアルが今年一番忙しくなるかもなので上げれるかは未定です…(申し訳ない)けど、更新はちゃんと続けます!では、また今度!

もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?

  • 大丈夫だ、問題ない
  • いやです!これ以上艦娘をいじめないで!
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