今年最後の小説投稿となりました。今年もいろいろありましたがなんとか無事に年を越えれそうです!
まあともあれ今年最後ですが年末の暇つぶし程度に見てくれたら嬉しいなぁと思います。基本は提督で見てきたことの霞パートになります!
あれから二日。長い戦闘が終わり、私達には少しの休息が与えられた。しかし、何もやることなく、ただボーっと過ごしているだけの退屈な時間だった。それは私達、艦娘がただの兵器だと言うように。
「霞、提督を信じて見てみない?」
「何よ急に」
「私ね、提督のことを信頼してる。あの人は私達を傷つけたりはしない。だから――霞も信頼して欲しいの」
何であの屑なんかを信頼しなきゃいけないのよ。そう言って私達を傷つけて来たのはあっちじゃない。信用出来るわけがない、あの屑もこの鎮守府の人間も。
「人間なんて信用出来るわけがないじゃない…」
「私達がどんなことをされたのか知っていてそんなこと言えるの?」
彼女は私に近づき手を握る。その手は温かく、私の冷え切った手を優しく温めていた。手と手が触れ合い、熱は次第に二人へと広がっていく。私の姉が何が言いたいのか、その手が物語っていた。
「……温かいでしょ?」
「……」
「ねぇ、霞」
「あの人ならきっと…私達を――「駆逐艦朝潮、霞。至急執務室へ」」
壁に付けられたスピーカーから出る声によって朝潮の声は掻き消された。喉につっかえるものを感じながら私達は執務室に向かった。
「大本営まで同行して欲しい」
呼ばれたかと思えば苦役を押し付けられる。それも特大の苦役。こんな人間と一緒に行く訳がないでしょ?それに、大本営なんて屑の溜まり場何かに行きたいわけがない。あの屑どもは私達を道具としてしか見ていない。
「私は霞一人残して行くような真似は出来ません」
そしてあの温かい手が私を握る。温良篤厚な私の姉は人間を疑うというものを知らない。
「はぁ………わかったわよ――行けばいいんでしょ」
自然とその言葉が口から出た。ただ、前に進むことしか出来なかった。そしてこの先、何があるのか、私には想像もつかなかった。
………………
次第に鎮守府が小さくなっていく。私と朝潮は外に広がる風景を見つめていた。
半壊したビルや橋、火の燻ぶる民家。道端に転がる黒い物体。『自業自得』という言葉が頭を過る。シーレーンが崩壊したあの時、それがこの国の終わりを知らせていた。軽蔑し、憎悪し、恨み、その挙句、国は滅亡寸前。提督を見捨てた大本営、この国が支払った代償なんだ。そう心の中で言い聞かせていた。
車体の揺れが心地よく体に響く。外の景色が段々と狭くなっていった。
一際大きな揺れが体を起こす。窓にもたれ掛かり眠っていた体はピクリと起き上がる。居眠りなんていつぶりだろう。けど、久しぶりに安心して寝れた気がする。
進んで行くに連れて嫌な緊張感が張り詰める。静かな車内に聞こえるエンジンの音が緊張を加速させた。直感がこれから起こること警告していた。
砲撃戦のような音が車外から轟く。直感は確信へと変わる。
「敵襲!敵襲!」
前から?それとも後ろから?わからない。けど状況を掴まないと。頭ではわかっていた、なのに体は素直に動いてはくれなかった。
「ちょっ!何すんのよ!」
「頭を上げるな!死にたいのか!?」
その声が私の行動を思い留めさせた。轟音が辺りに響き渡ると同時に何百発の弾丸が飛んでくる。屑の目は私をまっすぐ見つめ安堵の表情を浮かべていた。なんなのよコイツ…私達が小銃の一、二発で死ぬとでも思ってんの?
「いいか、ここから出るぞ」
声を掻き消すかのように何百発の弾丸が車のフロントガラスに当たっている。窓はもうボロボロ、いつ壊れても可笑しくない。
「霞、車を出たら頭を低くして提督について行くのよ!」
「わかってるわよ!そんなことぐらいッ!」
銃声が落ち着いて来るのを見計らって私達は車から脱出する。外は硝煙の匂いと車から漏れたガソリンの匂いが漂っていた。
「行くよ!」
声に背中を押されるがまま、私はついて行くので精一杯だった。煙幕が広がる方向を突き進むと大きな装甲車が目の前に現れる。
「早く乗れ!急げ!」
銃弾が頭上を掠めていく。数十センチ先では地面に弾丸が当たり、砂利が水柱のように立っている。安全な場所なんてない、この国自体が戦場だということを告げていた。
装甲車へと乗り込むと同時に後ろから聞こえる悲鳴。私達を輸送していた運転手の声だった。足を撃たれた彼は痛みに顔を歪ませ、来ることもない助けを呼んでいた。助かるわけでもないのにただ、懇願するように助けを乞う状況。それは彼でもわかるはず、なのに『生』に執着している。手を上げて助けを呼ぶが虚しくも彼の手はザクロのように周囲に飛び散った。彼の悲鳴は次第に弱く小さくなっていく。衰弱した男は血を流し、戦場の物体として消えていった。
「クソ野郎!これでもくらいやがれ!」
車内に金色に輝く薬莢が落ちてくる。怒りに任せて撃たれた弾丸は四方八方へと飛んでいく。その銃声が耳元で聞こえる度に周囲の音を掻き消していった。何発かの弾丸が車のボンネットを跳弾するのが見える。それに怖気づいたのか先ほどまで威勢のあった銃声は消えて私の体に彼の背中が当たる。
「ちょっ何腰抜かしてんのよ!しっかりしなさ……」
持ち上げようと力をいれると赤い鮮血が流れ出す。彼の頭は赤黒い穴が形成され、瞳孔は開いていた。その鮮血は腕から流れ出るもので赤く艶のある色をしている。
「む、酷い……」
「仕方ないでしょ…これは戦争なんだから……」
何度も見てきた光景。それでも見慣れるわけはなかった。いつも話していた人が頭を吹き飛ばされて死んでいく、笑い合っていた人が泣き叫びながら海中に消えていく、姉妹だった人が姉の名前を残して沈んでいく。信頼していた最高の人は人のために死んでいった。何を思い、正義を掲げても戦場は平等に死を与えたんだ。どれだけ足掻いても変わらないのは『死』だけ。生きたくて、生きたくて何度も叫んでも周りは助けてくれない。それが変えることのない現実だから。
この場を冷静に判断していたのはあの屑だった。戦うよりも逃げることをヤツは優先した。指揮官としては的確な判断だと思う。けど、気に食わない。どうしようもなく、あの屑が気に食わない。朝潮がヤツを信頼するのは勝手だ。でも、あの屑が他の屑とは違うということはわかる。何か大きな目的のために動いている。だから私達はこうやって生きて戦場から離脱することが出来た。
ある一つの民家が見えると車列が止まった。車のドアが開くとアスファルトに赤黒い跡を残す男を支えながら民家へと向かっていく。私達がその玄関に着くと同時に扉を叩く。
「お父さんっ!」
「あれ?おじさん達……誰?」
ドアから現れたのは私と同年代くらいの人間の女の子だった。髪を伸ばして顔の整ったそいつは明らかな落胆の表情をしていた。何人かの兵士が中に入ると負傷した男を机まで運んでいく。私と朝潮は呆然とその光景を見ているとそいつに話しかけられた。
「ねぇ…二人も軍人さんなの…?」
そいつは私達に向かってそんなことを言ってきた。何がしたいのか全くわからない。
「ええ、そうよ」
その言葉に応じるとそいつはあの屑に向かっていった。一体何を話しているのだろう。……屑との話が終わったのか顔に笑みを浮かべ戻って来る。
「少しだけでいいからお話しよ?白い服のおじさんはいいって言ってくれたよ!」
そいつの先に見える一輪の紫色に輝く花が目に止まった。花瓶中に一人寂しく佇む花は可憐でありながらもどこか儚い運命を知らせるようだった。――それはまるで私達のように淡くて消えやすい色をしていた。
「その花は『アネモネ』っていうんだよ!」
「綺麗でしょ?」
「『アネモネ』ね…」
花の名前なんて言われてもピンと来ない。そいつと私達は見た目は同じなのに全く違う。もし、私達がただの人間だったのならどんな人生を歩めたのだろう。
「お父さんが出てからアネモネを育てるようになったんだ。お父さんが帰ってきたら褒められるようにね!」
「そのお父さんは今どこの戦線に…?」
「うーん……確かシンガポールって場所だったかな?」
「……」
私は朝潮を目を合わす、理由は当然だった。シンガポールなんてもうとっくに存在しない。それは私が一番知っていた。あの戦線で生き残れた人の数なんてたかが知れている。私達はその話題に触れないように話を切り替えて他の話をするようにした。
少し楽しかった。久しぶりにまともな会話をした気がした。名前も分からない、今日会ったばかりの関係だからこそ気楽に話し合えたのかもしれない。
でも私達は女の子とは違った。
「それで二人はどこの部隊にいるの?」
「私達は……
当然よね…私達は人間の道具だもの。人間じゃない、私達それに仕える奴隷なんだ。
「――かっこいい!」
「いいなぁ〜艦娘って」
……かっこいい?艦娘が?人の目の仇にさせる艦娘が?何がかっこいいの?何が艦娘でいいわけ?私から見れば人間の、それに、普通の女の子だなんて羨ましくて仕方ない。
「艦娘なんてただの道具なのよ」
「そんなことないよ」
「私のお父さんは艦娘の事を絶対にそんな扱いしないもん!」
「お父さんはいつも艦娘に感謝してたし、私だってお父さんみたいに戦いたい!」
艦娘でもないこんな女の子が深海棲艦と戦ったら生きてなんか帰れない。よくて体の一部が帰ってくるだけで奇跡なぐらいよ。
「無理な話ね」
「で、でも……」
「クソっ!」
少女の言葉に被せるように大きく声が響く。
「なんで止血しても血が止まらないんだ!」
「クソっ!こんなとこで死なせるか!」
衰弱した人間から男は銀色に輝くものを千切る。駄目だったのね。男は謝罪して車へと戻っていく。どうやらお別れの時間が来たようね。
「また二人に会えるといいな…」
「生きていれば必ず会えます」
「まあ、そうね」
「じゃあ戦争が終わったらみんなで会おうね!」
戦争が終わったらね……全くいつのとこになるんだか知らないけど。終戦か、あれからもう何年だろう。数えるのもやめたわ。
「ばいばい」
そいつの悲しいそうな顔が夕日に照らされていた。全く散々な一日よ……ほんとに。
………………
とうとう私達は辿り着いた。『松代大本営』、遠い昔に聞いたことあるような名前だけど、来るのは初めてだった。「百聞は一見にしかず」ね、聞くよりも見たほうが早い。大本営とは名ばかりに広がる地下都市は混沌を極めていた。
「ひ、酷い」
「……」
終末の世界に相応しい光景が広がっていた。人が犬を襲い、人が人を襲う。大通りがこれだけ荒んでるのに何が安全なんだか…
大本営らしき建物が見えてくる。ようやく長い一日が終わることに安堵を浮かべ、私達は中へと入る。なぜ私達がここに呼ばれたのか。その理由は目の前にいた。
頭の髪が少し薄くなり始めている中年の男。私達を一目見ると再度屑へと視線を戻す。何よ、その態度。まあ仕方ないか。
大本営の中を進んで行き私達は更に地下へと潜っていく。一体どれだけ深いことなんだか、深海棲艦の空襲対策としてはかなりの防御とは言えるけどどこまで持つことやらね。地下深くまでやってくると人通りが多くなる。
「では、執務室に来てはくれないかね?重要な話がある」
「了解しました」
「そう言えばちゃんと艦娘も連れてきているようだね。それじゃあ、執務室前の椅子にでも座らせて置くとしよう」
「……」
品定めでもするような顔、なんど見てきたことか。まるで私達は犬や猫のようなペット、気に入られなければ殺処分される、文字通りにね。
「すまないが二人はここで待っていくれ」
「了解!」
「はぁ……はいはい」
また始まった。この聞きたくないことを聞かされる時間が。数秒も待っていると軍服に身をまとった人間が現れてくる。そしてこの人間はこう口に零す。「チッ…豚が……」、「海に帰れよ…裏切り者……」ってね。
やっぱりどこに行っても私達の待遇は変わらないようね。艦娘と分かれば明らかに態度を変える人々。分かりきっていたけど、これが人間っていう屑の生き物なんだ。みんなあの女の子何かじゃない。現実はもっと残酷なのよ。
数十分待っていると屑と中年の男が出てきた。無限にも感じられる地獄が終わり、私達は大広間に案内された。そこに行かれるのは西洋風の食器に肉と少々の野菜。野菜といってもどうせ合成された見た目だけのものなんだろうけど肉だけは本物だった。
そう、正しく本物の肉。当たることはない、当たるはずのない本物の肉だ。しかし、箸は進まなかった。直感はこう言った「食べてはいけない。食べてはならない」のだと。
「食べないのかい?」
選択肢の余地のない命令のように私達に向けられる。直感を信じるのなら食べてはいけない。しかし、朝潮は違った。朝潮は私の代わりに批評の対象とされた。
「お気に召されなかったかな?」
「い、いえ…そんなことは……」
「……」
私達の意見を聞こうとしないあの目、あれは本当の屑にしか出せないものだ。目の前にいる人間は深海棲艦と同等の化け物。私にはそう見えた。
「うっ……」
朝潮は無理やりあの肉を食べさせた。あの
人として見られない私達は動物と同じなんだ。よくある、動物実験のように私達の反応を確かめて害があるのかを確かめる。人のようで人ではないからこそ私達は道具として使われる。
「やはり…駄目だったか」
死ねばいい、選択肢があるのなら私がここで殺してやる。ここにあるフォークとナイフだけ奴の首ぐらいは切り落とせる。止まない憎悪を膨らませ、奴に視線を向ける。すると、頭に温かい感触が広がる。いつの間にかその温かさを受け入れていた。どこか懐かしさを思い出させる優しい感触。それは我に返るまで時間は掛からなかった。
憎悪を思い留まらせ、私は朝潮が入った扉を小突く。肩で荒い息をしながら涙の滲んだ目で見つめている。顔色は青白く、唇は微かに震えていた。
「もうしわけ……ございません…………」
掠れた声が朝潮の罪悪感を表していた。
「私のせいで提督が……提督が…」
「朝潮が謝ることはない。謝るのはこちらの方だ…」
「ほら、ちゃんと立って。早く部屋に行くわよ」
私は朝潮に手を差し伸べる。青白くなった手、今朝の手とは全く違う色をした手。私は朝潮の手を握る。彼女の冷たくなった手を次は私が温める番だから。
「……ありがとう、霞」
「…いいのよ」
辛い時だからこそ、姉妹で支え合っていかないとね。周りの人間は信用出来ない。けど私には大事な姉がいる。もし、また傷つけようとするのなら容赦はしない。
「今日は大変な一日にだった。しかし、明日は式典があるらしい。それまで二人はゆっくり休んでくれ」
「まったくよ!ほんとに忙しい日だったわ」
「了解………提督、ありがとうございます」
「また何かあれば教えてくれ」
………………
その言葉が当分先の話なるなんて思ってなかった。屑と別れて私達は部屋の中に入った。朝潮は俯いて顔を上げる様子がない。
「朝潮……大丈夫?」
「提督……提督の前で無礼を……」
「そんなわけないでしょ?あんなのどう見ても用意された食べ物が悪いのよ」
「提督…申し訳ございません…申しわけ……」
朝潮は私にもたれ掛かるかと思えばその場に倒れ込み、頬から涙を零す。どれだけお人好しなのか。その根性だけは見習うわ。
私は朝潮の肩に手をやると、もう片方の手で彼女の手を握った。ゆっくりと顔を上げ、顔を見せる。
「何愚図ってるのよ…姉なんだからシャキッとしなさいよ!」
私なりの励ましの言葉を朝潮に伝えた。ほんとに世話のかかる姉ね。
「……霞はまるでお母さんみたいね」
「はあぁ!!ちょっと何言ってのよ!」
「あはは!」
「かわいい〜」
塩で錆びついた南京錠が少しだけ開いた気がした。
…………
夜も更けた時間、扉が叩かれる。どうせあの屑だろう。
「朝潮、お願いしていい?」
「うん…」
ドアが開き誰かが入ってくるのがわかる。
「部屋の清掃に参りました」
若い男二人が部屋に入ってくると部屋の清掃を始める。
こんな時間に清掃?どう見ても怪しい、誰の命令?あの屑…いやあり得ない…
「道具に部屋をお与えなさるとはなんと愚かな人なのか…」
「なんなの、あんた達?」
「おっとこれは失敬…さっさと済ませましょう」
あの屑じゃない誰か……私達を狙うヤツらなんて…そうだ……あの男!?
「朝潮、早くあのク……提督にこのことを知らせなさい!」
「朝潮?」
そこにいたのは床に倒れている朝潮だった。うつ伏せ倒れ、顔は見えない。男に何をされたのだろうか。ピクリとも動かない。
「うそ……なんで…朝潮?」
その光景に唖然としている内に私は男に隙を見せてしまった。
なにこれ……体が動かない…どうして…?何か刺された…?
苦しい……息が出来ない…助けて……!誰か…
「あ゙ぁ…………ぅ……うっ………いゃ…ゃ……」
男が私に馬乗りになるに連れ首元が締まっていく。体を動かしたくても思うように動いてはくれなかった。涙に加え、口からは泡のような唾が出てくる。
「道具ごときが生意気なんだよ。気色悪い」
「任務完了…目標の……した。……わかった…………に知らせる……では」
声が聞こえなくなる…。これだから人間は嫌いなのよ…
早く…助けに来なさいよ………私達の提督なんでしょ…?
――提督
この投稿ももう2年立つんかな?早いですねぇ〜執筆というものを甘くに見ていた弱点ですね…正直結構つらたん(´・ω・`)でも少しでも見てくれる変な人たちもいるわけで続けられていたり…色々と感謝ですね…
取り敢えず来年も定期更新は厳守ですがどうしても1月は忙しくて1本上げるのが限界かも……できるどこまではやってみます!!
では皆さん良いお年を!!
もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?
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大丈夫だ、問題ない
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いやです!これ以上艦娘をいじめないで!