前回からかなり空いてしまいましたが何とか書き上げることが出来ました……最近忙しくてまともに書ける暇がなかったんです!(今回は本当です!)
まぁ、言い訳はさておき、今回はグロも鬱もなく、平和な話なので安心して見れると思います!
良ければ読んでいってください〜(⌒▽⌒)
「これが最後の報告書になります」
机に書類の山が置かれる。何百枚の紙が重なり、瞳に悍ましく映っていた。
階級が上がるとともに、俺は銃よりペンを持つことが増えていった。ペン先から流れるインクを使い、ただひたすらに文字を書く。隣にいた部下や仲間、家族――その全てを置き去りにして、俺はそうした毎日を送っている。
運がいいだけでは済まされない。幾億の死骸が重なり、その山頂で生き残ってしまった生者達。出来上がるそれを黙認し、他人を蹴落とす。山の頂点へと上がるために人は悪魔にすら成り果てる。『死』というものに怯え、生に縋る愚か者。我々は生き残ってしまったという代償をその頂点で何を考えるのだろうか。
「おはようございます。現在、午前八時を回りましたことをお知らせします」
壁に取り付けられたラジオから流れ始める機械音声。それは時報を知らせるとともに、こう言った。
「本日より新政府が発足し、内閣が組閣され……」
あの日からもう一週間。私はこうやって地下深くにある司令部施設に軟禁されている。見て分かるようにこの書類の山がなくならない限り、外の空気すら吸わせてくれない。全く、とんだ厄介事に巻き込まれたことだ。早く元の鎮守府に戻りたいが、そうも行ってくれないらしい。
「続きまして、空襲情報です。昨夜、九州管区において空襲が確認されました。複数の爆撃が確認され、一部の地下都市に被害が出ている模様です」
戦争が日常に溶け込んだ日々。まあ、それも慣れたことだ。世界のどこで空爆を受け、死ぬ人々。俺がコップに注がれたコーヒーを飲み終わる間に一体何人が死ぬことか。
「よし、やっと終わった」
ようやく地獄のような作業が終わり、一服を挟めるようになった。無機質な壁に囲われた世界が、まるで時間の牢獄のように思えた。
部隊の再編を行うため、俺はこんな場所に取り残された。少なくとも安全が保証される司令部勤務だが、如何せん代わり映えのしない毎日だ。戦場に入り浸ったこの体では満足はしてくれない。
深海棲艦という憎き敵を滅ぼすため、俺は軍に入ったというのに、それが今では奴等とは程遠い場所に来てしまった。あの時から誓った契りを俺は守らなければいけない。それ以外に俺は――
「全く、情けない顔ですね。滝沢大佐」
「なんだ?嫌味でも言いに来たのか、葛城」
臨時の秘書がいなくなったかと思えば、とんだ大馬鹿者が現れたようだ。葛城は背を扉にあずけ、余裕の笑みを浮かべながら腕を組む。
「残念ながら、私にそんな時間はありません」
「なら要件はなんだ?なるべく手短に言え」
「大佐、貴方の所属が決まったようです」
「どこだ?」
葛城は目を細めて静かに口角を上げる。その笑みには作り物めいた違和感があり、目の奥で何かを企んでいるような光がちらりと揺れていた。
「『統合参謀本部直属、横須賀鎮守府司令長官』です」
「今までと何が違う?」
「そうですねえ、資源の融通と艦娘含めた護衛艦等の運用と言った所でしょうか」
今までより随分と気前のいい処遇だ。とは言え、旧式化しつつある護衛艦が奴等に通用するかは分からないところではあるが……
「それでお前はどこの所属になったんだ?」
「ふふ、私は『統合参謀本部情報局長』に加え、大佐への昇格も約束されましたよ」
「勿論、貴方の権限よりも大きいものです」
細い目が一段と鋭く縮んだような気がした。この反乱が葛城にとって大きなチャンスだったのだろう。何が目的かは知らないが、目を配っておくほうが良さそうだ。
「そうか、それはおめでたいことだな」
「ええ、そうです。これで貴方と同等――いやそれ以上の地位を得ました」
奴の細い目が光りを放つ。同時に訪れる沈黙に二人は取り残されていた。
「――何が言いたい?」
人間はどこまでも執念深い。それを一番知っているのはこの俺だ。奴もまた、俺と同じ目をしていた。まるで心中は廃墟のように。――悪夢のさなか、憎しみと恨みに飲み込まれた浪人のように。
「情報局長としての地位には『特務的性格に基づいた特権的な発言権』が認められています。並の将官と同等の発言権があるのと同じです」
権威を高らかに掲げる葛城。昇格するほど過激化する内部の派閥や謀略。奴にとっては本望なのだろうが、その権威は俺にまで脅威を突き付けているらしい。
「それで、望みはなんだ?」
「そうですねえ……そう言えば、貴方は戦闘終了後、とある場所に訪れたようですね。それも情報規制を敷かれたその中に入ったとか」
「局長の権限を使い調べては見ましたが、如何せん中身が掴めていないのです。分かるのはここ一週間の資源確保が著しく低下していること。そこで貴方に聞きたい」
「……」
「あそこには何があったのか、貴方は一体何を隠しているのか?」
これをこの男に教えていいのか。俺の脳裏には葛城の本性が浮かんでいた。奴の性根の腐った性格であれば、確実に俺を駒として使い潰すつもりだろう。だが、それならこちらも同じ手を使えばいい。
情報を与える代わりに葛城には上に進言してもらおうか。俺個人では変えられないことを奴を使えば可能性が近づく。むしろ好都合なのかもしれない。
「教えてやってもいい。だが一つ条件がある」
「『教える代わりに頼みを聞け』というのですね」
「いいでしょう――わかりました。さあ、教えて下さい」
俺は奴にその中で行われていたことを語った。我々が食し、利用してきた資源の約半数が彼女達の犠牲によって作られていたこと。それが
知りたいことを俺は葛城に教えた。奴の面持ちは相変わらず冷たいものだったが、顔に影を落としているように見えた気がした。
「なるほど……我々が食べていたものや物資までが艦娘という
「それも、その指揮をしていたのが現内閣総理大臣という立場だとは思いもしませんでしたよ。しかし、艦娘を資源にするとは……中々面白い発想ですね」
拳が無意識に握りしめられていた。脳裏には朝潮や霞、彼女達が浮かんでいた。葛城の冷めた分析口調が怒りを駆り立てていたのだ。
今まで何度も感じた仲間、友人の死。俺は死んでいった彼ら達と重ねている節があるのかもしれない。年端もいかぬ見た目をした彼女達が人間のため、血を流す。仲間のために命を顧みない行動をする彼女達。――ただ、目的のために利用しようとしていたはずなのに、俺は彼女達に何を感じているのか。自分でもこの感情がわからない。失ったものが多すぎるのか、奴が気に食わないだけなのかもしれない。
葛城は俺の様子を見たからなのか、落ち着かせるように促し始める。
「まあ、落ち着いて下さい。私は艦娘などに興味はございませんよ。ただ、この依存しきった体制を打破するために閉鎖という判断は愚行に過ぎないことです。何か考えでもあるのですか?」
艦娘を犠牲にせず、国家を存続させる方法が一つあるにはある。しかし、それは一人の佐官だけでは難しいことだ。そこで奴を使う、葛城を利用し、俺は目的を果たす。
「米国を味方に付ける」
「……
その臆病なハゲワシを叩き起こす方法。新孤立主義と唱え、外界との連絡手段を切ってしまったハゲワシ。飛ぶことを忘れ、腐肉を漁ることしか出来ない臆病な小鳥を再び白く輝く鷲に戻す材料が一つ存在した。
「ハワイ諸島だ」
「彼の国にとってハワイは戦略的、地政学的にも重要な場所だ。本土を危険にさらしているなど、あの国が許すはずがない」
「しかし、彼の国とどうやって通信するにも殆どの周回衛生は使い物になりませんよ」
葛城の目が鋭く光る。奴の分析は的確なものだ。その洞察力は情報局長としての資質を著実に表している。
「奴らの衛生は何機か生きているのは知っている。それを使い通信を行うことは可能だ」
俺は壁に立てかけられた地図に指揮棒を差しながら説明を続ける。
「深海棲艦の攻撃や他国の紛争により、多くの通信衛星は機能を停止している。だが、軍事用暗号化衛星の一部は生き残っている。特に極軌道上の偵察衛星『キーホール』シリーズの数機は、まだ稼働状態にある。これらは本来、画像情報収集用だが、緊急時の通信中継機能も備えているということを士官学校時教えてもらっただろう?」
俺は葛城の方を見据えて続けて言った。
「問題は、これらの衛星へのアクセス権だ。通常の外交ルートは断絶しているが、直接的な軍事通信であれば可能性はある。ペンタゴンの緊急通信プロトコルを使用すれば、簡易的な交渉の場を設けることも可能だ」
「なるほど……それでしたら可能性は少なくともある……流石、授業を真面目に聞いていただけのことはありますね」
これは奴なりの褒め言葉のようだ。まったく、嫌味にしか聞こえないのが残念だが。
「もし、この作戦が成功した場合、戦況も大分有利に進むことになる。そうすれば、艦娘に依存したこの体制を打破できると私は考えている」
話を終え、俺は指揮棒を書類の山の上に置いた。葛城は大きくため息を吐き、息を落ち着かせる。その表情から呆れのようなものが現れていた。
「本当にぶっ飛んだ人ですよ、貴方は。はあ……一度進言してみる事にしますよ」
「これで条件は飲みました。後から言われても無駄ですよ」
「好きにしろ」
そして奴との話が終わり、椅子に再び座ると、臨時の秘書が扉から顔を覗かせていた。しかし、申し訳なさそうな顔をしている秘書。
「あの……お取り込み中のところ申し訳ないのですが……」
「いや、大丈夫だ。話は終わっている」
「そ、それでしたらよかったです!でしたらこれをお願いします」
はち切れんばかりに置かれた机の上には、更なる紙の山が連なり始めていた。
「おい……これは」
俺は震えたような声で秘書の方に顔を向ける。さっきとは裏腹に秘書ニコニコと笑顔を見せ、こう言った。
「そのですね、他の部署が終わってないらしくて、丁度終わったと報告に行ったら任されちゃいまして……えへへ」
秘書は頭に手をやり髪で遊び始める。彼女の後ろにはキャスターに乗せた大量の紙の束がぞっとするように、こちらを睨んでいた。この状況で一体コイツは何を考えているのだ。
……まさか、本気でこれをやれというのか。
「おやおや滝沢大佐、まだ一服は出来なさそうですね」
葛城は他人事のようにクスクスと笑っている。いやいや、笑うところではない。どちらかといえば、絶望に近いのだが……
「では、よろしくお願いします!」
「……勘弁してくれ、本当に」
何故か最後は逆より路線に…提督、書類仕事大変だね(その気持ちよくわかるよ(´;ω;)ウッ)
まぁ今回はこんな感じですけど基本は暗い話が多いのでわかりますよね?(ここまで読んでくれてるならわかるはず…)
次回は出来るだけ早く出せるようにします…はい。(´・ω・`)
もう少しコアな表現入れても大丈夫ですか?
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大丈夫だ、問題ない
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いやです!これ以上艦娘をいじめないで!