最近感想で催促されるので
4月23日の当時の僕の頭に突如として現れた未来の涼くんとアイちゃんを供養しておきたいと思います。
過去に前書きに書いてた話ですね。
読み返したら昔の方が書き方上手いのよ……!
未知なる未来。もしくは虹の道標。
「まだ小5のチミにはわからないかもしれないが、おばあちゃんが作るするめの良さは世界一なんだよ!」
「えー? 佐藤くんだって小5でしょ〜? まぁおばあちゃんが作った食べ物は全部美味しいと思うけ……ど………さ…………」
星野がぼとりと傘を取り落とす。
遮るものがなくなり、雨が俺たちの体にぶつかっていき、体温を奪う。暗澹とした黒い雲から流れ落ちる水滴は、何か不穏なものを感じさせる。
「星野?」
「……ひっ……ひっ……」
ん……? なんか星野の様子が変だな。過呼吸? 何故このタイミングで?
漏れ出る声は普段の快活な星野と比べると驚くほどか細く、そして震えていた。
「おい、どした星野!?」
隣の歩くのを止めた星野に目をやる。
「え、おま、嘘が……!?」
まだ疎らに嘘が残っているが……見える、?
嘘が、剥がれていく。
星野の本当が、心が______晒されていく。
何故だ? 何故このタイミングで星野の嘘が消えていく?
降りしきる雨が俺の頭を冷やしてくれる。
考えろ。脳をフル回転させろ。
過呼吸気味で身体が震えている。これは恐怖によるものか? 以前から星野には過去に何かがあったと考察していた。過去のトラウマが刺激されたのか?
おそらくこれだ。
しかし何故今、このタイミングでPTSDが、過去のトラウマがフラッシュバックする? この道は今まで俺と一緒に帰ってきた道だ。過去に一度も星野がこんな状態になったことはない。俺も一緒に帰っているし、環境に変化は見受けられなかった。ということは環境ではなく、流動する何かに星野の過去の出来事を想起させたファクターが存在するはずだ。星野は動物が好きで、人嫌いな気がある。動物園やら猫カフェやらを一緒に回ったがその時星野には何も異常はなかった。流動する何かと言ってもそれは動物じゃない。動物ではなく、また今までこの道に居なかった新しくここに来た動くものと言えばひとつしかない________人間だ。
今までの事を思い出せ。
______ガラスか陶器の破片が混じった白米。
______人に愛されたことがないという本当。
______両親が居らず、施設暮らしの星野。
______
______最近増えていた女の不審者への注意。
……! 現実が俺の考える通りならッ!
クソッタレがッ! 最悪な伏線回収じゃねぇかッ!
思えばヒントは腐るほどあった。俺は今まで考えなかった。考えたくなかっただけだ。
友達の秘密を、無闇矢鱈に解き明かすことに、罪悪感と抵抗があったから。
だがもう気付いてしまった。
星野が目にしたのは________
居たのか。星野が見える範囲に。
星野に見えたということは俺も目撃しているはずだ。
星野には嘘が染み付いている。
言葉では本当のことを言っていても、どこか動きで嘘をつく。
表情、間のとり方、呼吸の仕方。他にも色々あるはずだ。
そんな自分でもやめ方が分からないほどの体に染み付いた嘘が、剥がれかけている。それはそこまで強いトラウマが星野にあるということで_____。
って馬鹿野郎がッ! 呑気に考えてる場合じゃねぇだろ!?
「っあ……」
「おい!? 星野!」
「しっかりしろ!」
星野の前に回り込み、顔を両手で包み込む。
まだ顔までは……剥がれてないな。
っ……!
添えた手に少しだけ温い水滴が伝っていく。
________ああ、泣いてんのか。アイ。
これは、ダメだ。
ダメなんだよ。これは違う。
俺が願ったのは、俺がお前にしてやりたかったのは!
本当はとっくの昔に決めていたんだ。
俺がお前を、『本当』に怯えるアイを救ってやるって。
俺は……俺はッ! こんなことでお前の、星野アイの素顔を見たくなんかない!
嘘は見られたくない本当を隠すためにある。
人の心は、無防備に世界に晒されるには少し弱すぎる。嘘は鎧なんだ。
だから人は
真正面から、星野を見つめる。
「アイッ! 俺を見ろ。俺だけを見ろ! お前が見るべきなのは、アイが見るべきなのは俺だ! 俺なんだよ!」
「約束を思い出せ!」
「……!」
「こんなことで嘘をつけなくなるお前じゃねぇだろ!? 俺が認めたすげぇやつ! それがお前、星野アイだ!」
「……で、でもぉ…っ……」
嗚咽混じりの声が聞こえる。
嘘がどんどん剥がれていき、口元まで見えてきた。
そんなの認めてやらねぇ。認めてやるものか!
こんな
「怖いならッ!! 苦しいならッ!!! 俺が一緒に居てやる! 嘘でもいい、本当でもいい! お前が、嘘を本当に変えるまで! 俺がお前の本当を嘘に変えるまで! 俺がずっと、傍に居るから!」
何言ってんのか自分でもわかんなくなってきた。
視界が歪む。目の前が霞んで、ぼやけて……
……ああ、俺も泣いてんのか。
「だからっ! だからぁ……!」
こういう時ってどうすればいいんだ?
漫画のヒーローたちはどうしてた……?
……笑ってたか。そうだな。俺も笑おう。
「今は! お前は嘘吐きのままでいいんだよぉ……!」
くっそ、泣いてるし笑顔だしでうまく喋れねぇ。
出た言葉は震えてるし、説得力の欠片もないだろうな。
「……」
星野の体はまだ震えている。
失敗か?
「………ひくっ…」
まだ少し嗚咽をあげている。
失敗なのか。結局俺は、
「……ぷふっ……あは、あはは…!」
吹き出すように笑い出す。
星野の嘘が戻っていく。剥がれ落ちた嘘が、修復されて____いや、より濃く復活していく。
良かったぁ……!
「……んだよ」
マジで安心した。
涙で滲んだ目を擦る。
星野の嘘が戻ったことで、余裕が生まれたのか俺にも平常の思考が戻ってくる。
え、めっちゃ恥ずかしいこと言ったくね?
「だ、だってぇ、んふっ……凄い顔してるよ? 笑顔が下手な癖に無理するから……っふ」
何笑ってんだよ! めっちゃ恥ずかしいこと言ったんだぞ! 俺今!
傍から見てたらどこのラブコメ主人公だよって言いたいくらいの啖呵切ったんだぞ!?
バカ恥ずかしいんだよ察しろ! 察してコメントを控えろ!
「黙らっしゃい! お前だって泣いてたくせに!」
「もー、そういうこと言ったら女の子にモテないよ?」
「うっせ……」
「……ほら、帰るぞ」
周りを見渡すとあの不審者は……いや、星野アイの実母は居なくなっていた。
結局あの女は何がしたかったのか。
それはわからないが、それは後でも考えられる。
今はやるべきことをやろう。
地面に転がったままの傘を拾い、星野に手を差し出す。
気付けば、雨は止んでいた。
「ん」
「え?」
「ん!」
察しの悪いやつめ。
「……まだ、ちょっと震えてんだろ。転ぶと危ないから」
「……ふーん? じゃあ、帰ろっか」
握り返してくる。
そのまま手を繋ぎ、俺たちは各々の家に……
「……やっぱやーめた。ねぇ、今から涼くんの家、遊びに行っていい? 私雨でベチョベチョだし」
「はぁ? はぁ……良いよ」
そのまま帰れないみたいだ。
▼
「ねぇ、さっき……嘘が剥がれたって言ってたよね」
「おお、あんだけ泣いてたのに覚えてんの? びっくりしたねあれは」
「もしかして私の顔って見えて……た?」
「安心しろ。なんか知らんけどパワーアップしてスーパーまっ○ろくろすけさんだよお前は」
「……はぁぁぁぁ……! 嬉しいのか嬉しくないのか、微妙な気分だよー」
「なんで?」
「だって私、多分人には見せられない顔してるから……」
「さっき星野の口元だけ見えたけどな!」
「むぅ……それ、やめよーよ」
「それ?」
「これからは、アイって呼んで。私もりょーくんって呼ぶから」
「……りょーかい、アイ」
なんだかんだ、上手く行きそうで良かった。
これ見返したら小説ノートに書いてあったんですよね……。
過去の僕によるメモには
虹は幸運と希望、そして転機って意味があるらしいですね。
サブタイトルまで決めてんなら続き書けばよかったのに……何考えたんでしょうかね?
まぁ当時はあほみたいな量の課題の嵐と進路に悩殺されていたので許してくだちぃ……!
もう私は出し切ってしまった……次は、君だ。
ほんとにノリと勢いで書いてるんで同じの書けって言われても書けないんですよね〜……よくぞ小説ノートに残しておいた過去の僕。