なんかまっ○ろくろすけに懐かれた。   作:レトルトところてん

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続きです。
後で見返して面白かったらいいなぁ。


未知への協力。あるいは才能の発露。

 

 

 俺の勇気を振り絞った決意から1週間が経過した。

 

 

「星野、おはよう」

 

「齋藤くんおっはー」

 

 

 成果は……挨拶。これだけです……。

 最初は密にコミュニケーションを重ねようとした。ほんとだよ? 嘘じゃないよ?

 

 しかし、この俺のメンタルを持ってすら星野アイという人物に対する恐怖は拭えなかった。

 

 だって黒い煙の塊だよ??? 虚言癖ですらここまではいかない嘘の怪物なんだよ?

 

 俺の中には潜在的に星野アイに対する恐怖がある。

 

 そうそう、最近気付いたことだが、星野アイはあまり人の名前を覚えない。俺もよく名前を間違えられるがこの怪物に常識の尺度を合わせる方が間違っているというものだ。

 

 

「齋藤くんってさー、あんまり私に興味無さそうなのに挨拶はしっかりするよね。なんで?」

 

 

 ミ゚ッ!!!!?

 どうしようどう答えるどうすれば正解なんだ!?

 こいつは嘘の女王、生半可な嘘を語れば爆速でバレるだろう。俺は嘘は見抜けるが嘘をつく練習なんてしたことないんだよお!

 

 

「あー、お前のことが気になる……からかな」

 

 

 何言ってんの俺ぇぇぇぇ!?

 なにが

 

 ―――お前のことが気になる……からかな(キラン)

 

 だよ! ぶち転がされてぇのかてめぇは! 人生の終止符をまさか自分で打ってしまうとかアホすぎでは?????

 

 

「ふーん? そこまで明け透けに言う人も珍しいね」

 

「星野相手に嘘が通じるとは思えないしな」

 

「……わかるの?」

 

「星野が嘘をついていることが、か?」

 

「へぇー、ちょっと見直したよ。齋藤くんって実は結構凄い? 私これでも大人たちとか友達にバレたこと無いんだけどなー」

 

「そう思ってくれるなら光栄だな」

 

「私も齋藤くんのこと気になってきたかも」

 

 

 やめてぇぇぇぇ!!!! もはや死刑宣告なのではないだろうか?

 

 いや、これはチャンスだ。この機を逃せば孤高気取りの陰キャぼっちこと俺が自分から星野に仲良くなるためのアプローチを仕掛けられるわけがねぇ!

 

 

「あと俺の苗字は佐藤だ」

 

「あははーごめんごめん、人の名前覚えるの苦手なんだよねー」

 

 

 腐るほど知ってますぅ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって体育館。

 今は体育でドッジボールをしている。

 

 小学生たちはまったくもってやかましい。

 なんで狙うの!? だとか 当てられて泣き出すやつとか、実に小学生を極めていて鼓膜に支障が出そうだ。まぁ俺も小学生ではあるが。

 

 

「ほっ、よっ」

 

 

 体育館の新しくニス塗りされ、光沢を帯びた木の床。

 

 その上を黒い煙がリズミカルにしゃがみ、飛び跳ね、飛んでくるボールを避け続けている。

 

 やつだ。

 

 ゲームが始まる前に敵チームの小学生から勝利宣言を宣告され、わざとギリギリでボールを避けている星野アイがそこには居た。

 

 

 

「ほらほらー、私に勝つんじゃなかったのー?」

 

 

 

 こいつ性格悪いな。

 

 運動神経良いなとは思っていたが……思ってたより大分良いな。

 当たらなすぎだろ。

 

 

「これじゃーあくびが出ちゃうよ〜?」

 

 

 煽り厨かな???

 ほら、やつが煽り散らかすせいで敵陣の小学生くんたち泣きそうじゃん。

 

 より一層猛攻が激しくなる。

 

 俺? 俺もまぁ生き残ってはいる。そもそもボールが飛んでこないだけだが……。

 

 

「いっ…たたぁ……!」

 

 

 あ、転んだ。

 

 そりゃあんだけ動いてたら足が縺れることもあるわな。

 

 飛んできたボールは運良く星野には当たらずに自コート内に転がったので、星野の代わりに拾っておく。

 

 ちなみに自チームの残りは俺と星野だけだ。

 どおしてだよおおおお!

 

 

「大丈夫そうか?」

 

「ちょっと無理かも、足首捻ったっぽい?」

 

 

 こいつも一応女の子だ。多分。

 ここで俺がかっこいいとこを見せれば心を開きやすくなるかもしれない。

 

 いっちょやってやろうじゃないか。

 

 星野のために!

 

 決して狙われずボールも来ずの手持ち無沙汰で面白くないからとかそういう理由じゃないぞ!(小学2年生)

 

 

「まぁ任せてくれ」

 

「ふー……勝たないとだめだよ? 流石に私もあれだけ煽って負けたら恥ずかしいし」

 

 

「頼んだよー? 齋藤くん」

 

 

 星野が先生の元に歩きづらそうにしながら去っていく。

 

 

「あいつ割と自業自得なんだよ、なっ!」

 

 

 あ、取られた。

 

 

 敵チームは残り4人。自チームは足首を捻って休んでいる星野と普通に当てられていた小学生ズで、残りは俺1人だけ。

 

 4対1とか勝てるわけないだろ! いい加減にしろ! と言いたいところだが、星野との今後のコミュニケーションの為にも負ける訳にはいかない。

 

 人間は無意識に物の動きを予測する。ドッジボールでもそうだ。ボールを当てる側も、避ける側も、敵の視線と体の向き、慣性を無意識に考慮する。

 

 星野がさっき避け続けられていたのも、運動神経の良さももちろんあるだろうが、相手をフェイクの動作で翻弄していたからだ。

 

 なら俺も同じことをやればいい。相手は小学生だ。星野レベルに高度な嘘は必要ない。

 

 

 俺も動きで嘘をつくの、練習したんだぜ? 星野。

 

 

 4人のうちの小太り気味の1人が俺を狙っている。

 

 視線は俺を捉え、左足を前に出して、右足は後ろ。頭の横で左手でボールを支え、右手で押し出そうとしている。

 

 その投げ方だと右側に投げづらいだろう。身体の捻りを利用した投げ方だ。

 

 俺はそこで相手にとっての右側に走り込み、俺の動きを予測し飛んできたボールは地面に弾かれた。

 

 ばかめ。

 

 俺は即座にボールを取り、視線と重心を小太りに向け、小太りの真反対のやつに投げつけた。

 

 騙されたな? ヒット。

 ふ、は、ふはははは! 最高に楽しい。

 

 

「悪いけど、負ける気はしない」

 

 

 ざわつきが広がる。

 

 

 小学生相手にイキリ散らかすのきもちよすぎだろ!!!(小学生)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、佐藤くんってほんとに凄いんだ」

 

 

 びっくりしちゃったなー。

 

 あの動き。私の嘘とそっくりだ。その他にも相手の動きを先読みして誘導するその技術。

 

 多分嘘をつくなら私の方が上手だと思う。

 

 だけど、トータルで見ると、負けちゃうかも

 

 

 眩いまでに輝く星を宿したその瞳が猫のように歪む。

 

 ようやく出会った同類に。

 

 楽しそうに嗤う、光を飲み込む黒い星を瞳に宿した君に。ちょっとだけ。

 

 

「本当に興味湧いてきたかも」

 

 

 




こいつら本当に小学二年生か?????
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