主人公の脳内いっつも終わってんな。
2月14日。
この日は一体何があるのか。
勘違いイキリ非モテ陰キャぼっちの非生産的で残念な人間には到底わかるわけもないが、
この日は女の子が男の子にチョコレートをプレゼントするという崇高にして偉大な催しが繰り広げられている。
ちょっと言い過ぎたかもしれない、がまぁそこは小学2年生の戯言だと聞き流してくれ。
そして、自分で言うのもなんだがそこそこ悪くない顔立ちをしている俺には当然数多のチョコレートが届けられて____いなかった。
あっ、これ世界のバグです。
と現実逃避するのは簡単だ。
冷静に考えるとわかりやすい問題であるのだ。
人はIQが10以上違う他人とは笑いのツボが違う。
小学2年生の割には精神年齢が高いと自負している天才君こと俺も当然IQは180を越えており(当社比)、心のIQ、EQ?も高い(当以下略)。
そんな俺が普通の小学2年生と仲良くワチャワチャ意味のわからん遊戯にのめり込み、遊ぶことが出来るのか。
虫を潰してキャッキャウフフと喜んでいる心のIQゲロ低のキ○ガイ共に見事迎合することは出来るのか。
否。断じて否である。
この事柄は見事に性悪説を体現していると言えるだろう……実にやめて欲しいところだ。
倫理観の教育失敗してるじゃないか。
日本の教育制度にも問題があるのだ。アメリカの如く飛び級制度を作ればメリットとデメリットの差は歴然としているだろうに……
おっと話が逸れた。
無理にキ○ガイ共の思考のレベルにまで俺の思考を下げることもできなくは無いが、流石にストレスを感じざるを得ない。ていうか馬鹿になりたくない。
俺はそこそこプライドが高いのだ。
ただでさえ俺は目が怖いと評判なのに(星野調べ)、付き合いも悪く、笑いどころにも笑わず、嘘がバレるとなると当然俺は小学生社会から隔絶され、ぼっちを体現する存在となった。
入れて欲しいとも思わないし、これはこれで快適である。
人とのコミュニケーションもおばあちゃんが居れば満足出来たし、おばあちゃんが営んでいる居酒屋で、俺が嘘を見抜くガキだと知らない大人と世間話することも出来た。
大抵はめちゃくちゃ頭のいいガキと思われるので承認欲求も満たされるし……。最高!
おっとまたもや話が逸れた。
これまでの年は上記で終わりだった。
だがしかしッ! 今年は違うのだ!
小学3年生を間近に控える俺には1人、前年度から今年度に掛けて仲良くなった女子(?)が居る。
そう、星野アイことまっ○ろくろすけだ!
やつとは小学生の中では割と親密に関わりあっており、他の小学生共の誰よりも星野とは仲が良いという自信がある。
なんなら
「星野〜、俺って小学生の中では誰よりもお前と仲良いって自負してるんだけどどう?」
と確認を取ったら
「そこは否定しないであげよう。2組のぼっち王子こと佐藤涼くん」
サムズアップを返されたくらいである。
ところであの時は何も聞かなかったけど2組のぼっち王子ってなに?????
よくわからないが王子と名が付くあたり俺の顔面偏差値は小学生たちから見ても保証されているということだろう(ポジティブ)。
でもベジータみたいに認識されてたらやだな。M字ハゲでもないし大丈夫だとは思うが。
あかん、本日がバレンタインということもあり俺のテンションが界王拳している。
「涼〜? あんたさっさと学校行かないと遅刻しちゃうじゃないの〜?」
「わかってる! 精神統一してたの!」
「精神統一? 若い子は今どきそんなこともするのねぇ〜……」
ふぅ……よし。精神統一は終わりだ。
呪われた過去を振り払う星の愛(⚠ただのチョコ)を貰いに、登校するとしよう。
「いってきま〜」
▼
滑らかに外靴を脱ぎ、下駄箱に入った学校用の靴に履き替える。
如何にも余裕そうな表情をキープし、先生に挨拶をしながら自らが所属する2年2組の教室を目指す。
そして階段を登り、目的地へと直通する教室の扉へと手を掛け____________。
「チョコ? あーごめん、忘れてきちゃった! うは〜、やらかしたな〜」
「ちぇ、なんだよ! そんくらい持ってこいよ! 女なんだから!」
「ほんとごめんね?」
扉越しに星野がモンキーズ(同学年の男子小学生)に詰め寄られている声が聞こえた。
常人ならここで俺の夢は絶たれたと勘違いしてしまうだろう。
だがしかし、この俺は佐藤涼。見え透いた嘘なぞ見破ってしかるべき存在である。
星野アイは嘘をついている。あいつは忘れずにチョコを持ってきているということだろう。
そしてわざわざ嘘をつき隠すということは……つまり! この俺にプレゼントするためだぁぁ!
これには思わず流石の俺も思いっきりドアを開けてしまった。
勢いが余ったドアが枠にあたりガシャンと大きな音がした。
「……星野。おはよう」
「ずいぶん自己主張強めな挨拶だね。あとで担任ちゃんに怒られても知らないよー?」
いつもの星野だ。
ちなみに担任は飲み会のことで嘘ついてたことを他の先生にバラしてやったら、俺に深く触れなくなった。
最近はまたちょっと俺を舐め始めているが。
「大丈夫。あの先生割と俺にビビってるから」
「嫌な打算をする小学生だね……」
星野が嫌な顔をしているのが声でわかる。
「で、星野に何か用?」
モンキー共、今日の俺は。ひと味違うぞ?
必殺☆独占欲眼力ビィームッ! 効果! 相手は死ぬ!
冗談は置いておこう。
俺は昔から目で人をビビらせるのが得意だった。
いやマジで嫌なガキだとは自分でも思う。でも本当のことだ。瞳に悪魔を宿してる、なんて言われたこともしばしば。
自分ではあんまわからないが、人をビビらせようとしてる時の俺はめっちゃ怖いらしい。
「な、んでもないです……」
こいつは確か……お山の大将を気取ってるやつだったか?
泣きそうになっちゃって。まぁ大人でも本能的に恐怖を覚えるらしいし小学2年生でこれならむしろ耐えている方だろう。
「そう? ならいいや」
そして口数を少なくし、声のトーンを一定にするこの技術。割と完成度高いと自分では思っている。
俺は俺が真似出来ないほどの嘘の怪物に出会ってから、嘘を練習し始めた。
俺は嘘を視認することができ、嘘の質もよーく見れば吟味できる。ほんの僅かだが嘘の質が高いと黒い煙はより濃く、重厚な光沢を帯びるようになるのだ。
だからこそ、俺は嘘の質が高い話し方を追求していくだけで嘘の天才になれると思っていた。
お陰で天狗になっていた俺の鼻はやつのコールタールのような嘘を見る度にへし折れ、敗北感を抱くようになったが。
チャイムが鳴り、先生が入室してくる。
「はい皆チャイム鳴ったよ! 座って!」
どうでもいいが普通先生はチャイム鳴る前に教室に居るべきなのではないだろうか?
てかあいつら全然座んないやん。脅かしすぎちゃったかしら。
ちなみにうちのおばあちゃんによって俺の眼力は有効活用されており、よくデロデロに酔ったおっさんやジジイ共に睨みを効かせ酔いを覚ましている。
どういう原理なの?????
▼
先生の言葉を聞こうとしても、どうしても頭は先程の出来事でいっぱいで、上の空になってしまう。
佐藤くんの嘘は普通の人より上手いけど、でもまだそのくらい。
でも、なんだろう? アレ。
「私でもアレは怖いかなぁ……」
その眼光は私に向けられたものではないのに、ただ近くで見ていただけなのに。
私は死を幻視した。
闇夜に輝くお星様。その全てを食べ尽くしてしまいそうなほど、暗く昏く、真っ黒な星。
まるで星に睨まれたような、重圧と必死の予感。
飲み込まれちゃいそうだったなー。
どんな経験をしたらあんな感情を眼に込められるんだろう?
佐藤くんに睨まれてたあの子。きっと必死だったんだろうな。
死神に睨まれたような重圧の中で、ただ生きるために声を出した。本当に凄いことだと思う。
そして日常的に嘘をついてきた私だからこそわかったことがひとつある。
思ったより佐藤くんってヤバい人なのかも?
だからどうするって訳でもないけど。
小説書くのって楽しいけどアホ時間掛かる。