なんかまっ○ろくろすけに懐かれた。   作:レトルトところてん

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疲れたよ__パトラッシュ。

続きです。


未知への歓喜。もしくは星々の変容。

 

 

 そして____放課後。

 

 

 俺は未だに星野からバレンタインチョコなるものを貰っていなかった。

 

 え? こういうのって下駄箱とか机の中とか朝の早い段階にくれたり入ってたりするもんじゃないの?

 

 もしかして____自信過剰? まさかチョコはあるけど俺にあげるようじゃない……?

 

 そんな馬鹿な……。

 

 一応俺も覚悟はしていた。していたんだよ。

 

 未だに星野アイは施設暮らし。

 バレンタインチョコなんて人の満足感以外に満たすものがない無益なものに金を割く余裕なんてないこともあるのではないか?(陰キャ特有の価値観)

 

 と戦々恐々としながらも最悪の想定は欠かさずしていたのだ。

 

 だがッ! だかしかし……!

 あの言葉が嘘だった以上、チョコがあることは間違いない。

 しかし俺にくれないということは。

 

 

 『チョコは一応あるんだけど……ごめんね? 佐藤くんのじゃないんだ』

 

 

 という事だ。……ちょっと、普通に泣きわめくぞ? 泣きわめいちゃうぞ? なんだったら今なら電撃放てる気もしなくもないぞ?

 

 俺にとってまっ○ろくろすけは、やつは……星野アイは……初めて出来た、対等な友達だと思ってた。

 

 なんだかんだ振り回し振り回され、良い関係を築いてきたと思っていた。

 

 

 ガッデムッ!!!!

 

 

 馬鹿か俺は。

 

 調子に乗っていた。たかだか人の嘘がわかる程度の小童であることを、己が陰キャ代表にノミネートされるほどの存在であることを。

 

 俺は忘れていたんだ。

 

 これまでが上手く行きすぎていたと考えよう。

 たかだが半年しないくらいの仲だし、幻想を抱きすぎた俺にこそ問題がある。

 

 相手はまっ○ろくろすけ級の嘘つき。

 嘘のヴェールの先に、たった半年で到達出来ると思うな。

 

 しかし卑屈に考えすぎることもダメだ。俺はちゃんと前に進んでいる。ただ少しだけ、足りなかっただけ。

 

 

 チャイムが鳴り、担任が帰りのHRを始める。

 

 

「えー、明日は水曜日ですが、皆さんもわかっている通り開校記念日なので休みとなります」

 

「間違って学校に来ないようにしてくださいね」

 

 

 さっさと家で反省会と精神統一をせねば……。後は……そうだな。何をしようか。

 

 

「あと佐藤くん? 後で学校の備品についてお話があります」

 

「え"っ"」

 

 

 嘘ぉ!? あのせんこーガチ調子乗ってるって! 全然壊れてないのに俺をいびるためだけに呼び出そうとしてるって!

 

 

「ではお別れの会の号令!」

 

 

 

 ________さようなら!

 

 一斉にガキンチョ共が帰る準備を始める。

 

 

「やっぱりだめだったみたいだね。あの後から教室のドアを開け閉する時ギシギシ言うようになったんだよ」

 

 

 ____なんかこう……ギシギシ〜みたいな?

 

 何やら隣の星野が手でジェスチャーしているが、まっ○ろくろすけをどうにかしてからやってほしい。

 

 

「oh......泣きっ面にBeeとはこの事か」

 

「微妙に腹立つ言葉遣いやめない?」

 

「とりあえず先生とこ行ってくるわー」

 

「人気者も大変だねー?」

 

「世界を恨まずには居られない……!」

 

 

 星野は何も言わず手をひらひらさせて帰る準備していた。

 

 

 俺は気にしてない風に振る舞うのだけは得意なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日が差し込んだ廊下を文句を言いながら進む。

 

 

「先生話長いんだよなぁ〜」

 

 

 自分の教室にたどり着き、既に帰る準備が整えられたランドセルを背負い込む。

 

 なにか違和感を感じる。

 

 

「なんで私生活の態度まで文句を言われにゃならんのか……。むしろ挨拶も欠かさず掃除も真面目に行い成績も優秀のこの俺を褒め称えるべきだろうに」

 

 

 先生の妨害工作によって帰宅時間の延長を余儀なくされたし、チョコは貰えないし、あまり良い一日とは言えなかったなぁ。

 

 

 2月14日。まだ冬の範疇だ。

 

 

 俺は夕暮れ時にランドセルを背負い、校舎を出ようとする。

 

 

「待てよ? 俺ランドセルにめんどくさくて何も入れてなかったのに、なんで綺麗に入ってんだ」

 

 

 外靴に履き替えながら思考する。

 

 

「先生は俺と居たし、星野か?」

 

 

 靴を履いている俺に影が差し掛かる。

 

 

「大正解だよ」

 

「だよなぁ。あいつ以外に俺仲いいやついな……ん?」

 

 

 頭をあげると、そこには星野がいた。

 

 え? なんで? 帰りのHRから軽く1時間は経ってるし、星野は特に部活動はやっていないはずだ。

 

 

 じゃあなんで________。

 

 

「私さ。あんまり人を好きになるとか、そういうのわかんなくて。それなのにこういうのあげていいものなのかなとか、色々考えたりもしたんだけど」

 

 

 星野は数秒止まって

 

 

「やっぱ佐藤くんのために作ったものだし、食べて欲しいなーって思ってさ」

 

 

 はいこれ。とクマの包み紙で包まれた小さな箱をくれた。

 

 

「……星野」

 

「なになに? もしかして感激して泣いちゃいそうだったりする?」

 

 

 いやー私の可愛さが憎いね! 困った困った。とからかうように可愛いポーズを取る。

 

 

「星野」

 

「いやー、本当は佐藤くんのランドセルの中にチョコ入れても良かったんだけど……なんか渡した時の反応気になっちゃってさー」

 

 

 あははーと笑う星野。

 

 

 暫しの無言の時間。

 

 

「……人ってさ、本当に嬉しい時って涙が出るんだな。初めて知ったよ」

 

「……うん」

 

 こんなの初めてだ。

 

 嬉しくて嬉しくて、心が天に届きそうな程に。俺は今猛烈に、

 

 

 

 めっっっっちゃ嬉しい!!!!!!

 

 

 

「ほんとに、ほんっとにありがとう!!!!」

 

 

 今俺は人に見せられないほど感情剥き出しの表情をしていることだろう。

 嬉しすぎて表情がコントロール出来ないとは……これも初めて知ったな。

 

 

「…喜んでくれたなら、私も嬉しい…よ」

 

 

 こちらを見て恥ずかしそうに少しごにょごにょと言い籠もる星野。

 

 

 こいつ可愛すぎないか……可愛すぎないか!?

 

 

 もうまっ○ろくろすけだからどうとかどうでも良くなってきた。

 

 なんならまっ○ろくろすけだから良いまであると思いますもはや。(錯乱)

 

 

「なぁ、星野。明日、うちに遊びに来ないか?」

 

 

 星野の言葉には何一つ、行動には何一つ。

 何にも嘘はなかった。

 

 星野は自分が持つ最も強い力である嘘を使わず、裸の心で俺に向き合ってくれたんだ。

 

 それが何より、嬉しかった。

 

 

 前言撤回。今日は全く、人生で最高の1日だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、明日は……ちょーっと厳しいかなぁ」

 

「え"っ"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 にしても……少しだけ……嘘が薄くなったような……気のせいか?

 

 

 

 気のせいじゃなかったら、いいな。

 

 

 

 

 




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