Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP:BAD CANDY/yukaDD(;´∀`)


#12 BLACK BASE RAID 05 ブラック基地襲撃 05

それは一発の銃声が始まりの合図であった。

 

「敵襲だ!!」

 

銃声を聞きつけ中庭へ終結する男達。全員がデヴィンターと結託した悪党なのだろう。

銃を手に取り中庭で暴れるヒロ達の制圧に向かう人影の中には基地所属の戦術人形もいるが、人形(彼女)等はプロトコルに縛られ従う他なかった被害者である為危害は加えないよう注意を払う。

 

基地の人形達は人形独自の通信規格を持っており無線機無しでの通信が可能で、事前にVectorから話は通っている為ヒロ達に対し発砲はしない・・・が、やはりI.O.P.製の人形故かチカゲを見ると一斉に銃を向けてくる。

 

以前ヘリアントス上級代行官から執行人(エンフォーサー)と呼ばれたチカゲの正体は鉄血工造にて造られた戦術人形の中でも高い戦闘能力を持つ“ハイエンドモデル”と呼ばれる物。

 

本来であればI.O.P.製の彼女達とは敵対関係にあるだけでなく、人間を見つければ問答無用で抹殺しようとしてくるはずなのだが何の因果か執行人(エンフォーサー)と呼ばれるチカゲはヒロと行動を共にしている。

 

これはいつか、機会があれば語る事としよう。

 

「城壁を昇るぞ。対空砲なんてあっちゃユウゴ達がヘリで来た時に撃墜されかねない」

 

「分かったわ」

 

「了解!」

 

基地の人形達を別の場所へ逃がした後にヒロ達は脅威となり得る城壁上の対空砲の破壊へ向かう。

 

補修用の扉から城壁内部へ入り上へ向かう最中に何かの中継装置とそこから伸びるコードを発見。気にこそなるものの時間が惜しい今は頭の片隅に追いやり石造りの階段を上って城壁の上を目指す。

 

やがて城壁最上部に付き、掛けられている錠前を撃って壊しドアを蹴破って突入。

そこに溜まっていた非正規の職員(スタッフ)も全員武装しており、突入してきたヒロ達に対し銃を向ける。

中には対空砲として使っているボフォース 70口径40mm機関砲の操作席に移動し直接ヒロ達を狙おうとする者もいた。

 

しかし、機関砲が狙いを付け砲手が発砲しようとする直前に突然何かが破裂したかのような音と共に砲手の頭部から血が噴き出し、そのままぐったりと倒れ動かなくなる。

 

突然の事に悪党共は軽い混乱状態に陥り、その間にヒロ達が態勢を整え交戦状態に。

敵が機関砲を障害物代わりにしヒロ達の銃撃を回避しようとしたが、先程機関砲を動かそうとした砲手と同じように頭部から血を吹き出し倒れる。

 

それを見た他の敵兵が動揺し、その間にヒロ達が突撃を仕掛け、残っていた敵兵を制圧する。

 

制圧後にヒロが山側の方向を見ると、レンズの反射らしき光を確認。

普通なら自分達の居場所を教える愚行をするはずがない人間がその行為をやった、つまりはヒロ達を敵として見ていないという事。そしてそれをやるとすればヒロ達が現状を知る限り1人しかいない。

 

「バレットだ」

 

レンズの反射を確認した方向に対し右手の親指を立ててサムズアップを返すヒロ。

 

先程敵の頭部から血が噴き出したのは、M107(バレット)による狙撃だったのだ。

M107を始めとするM82系列の対物ライフルから放たれる12.7mm弾をまともに受ければ人体なぞ一溜まりもない。

 

やがてバレットからのレンズの反射も収まり、改めて対空砲の排除に取り掛かる。

 

「チカゲ、頼む」

 

「任せて」

 

ヒロの一声にチカゲはスカートから大鎌状マニピュレーターアームを展開し、ボフォース 40mm機関砲を細切れにする。

 

だがここでまだ1ヵ所目。対空砲は全部で6基確認している。その全てを破壊しなければ安心は出来ない。

 

幸いにもルート上の敵はバレットが先に狙撃にて排除してくれている為、足止めを食らう危険は少ない。

道を開いてくれたバレットに心の中で感謝しつつチカゲの力で対空砲を排除していく。

 

しかし、対空砲排除の途中である物を発見してしまった。

 

「これって・・・!」

 

3基目の対空砲の設置位置に隠されていた物をヒロが発見したそれは、よく見るような小箱サイズでおよそ3000(立方センチメートル)。それに点滅する赤いランプがついておりそこから配線が伸びている・・・。

 

どう見ても爆弾である。基地に貯蔵してある物を考えれば恐らくC-4爆薬。3000㎤ともなれば石造りの城壁どころか主力戦車をも破壊しかねない量だろう。

配線を辿って起爆信号の発信源を見つけ、可能であれば解除しなければ。

 

「チカゲ、シズカ、ここは任せてもいい?」

 

「分かったわ」

 

「了解!」

 

城壁の対空砲を2人に任せ、ヒロは爆弾の起爆信号の発信源を探す事に。

配線が伸びている事から間違いなく有線起爆方式。既に破壊した対空砲にも爆弾が仕掛けられているとすれば和は全部で6つ、その全てを1本のケーブルで起爆させるとすればどこかに大本があるはず。

 

爆弾から延びる配線をひたすらに辿り発信源を探すヒロ。

やがてたどり着いたのは城壁を昇る際に発見した謎の中継装置。

何故中継装置から手前は無線式にも関わらず、装置以降は有線方式なのか。恐らくだが何らかの理由で無線が使えなくなった場合に備えこの中継装置から手動で起爆出来る仕組みなのかもしれない。

 

この方式を指示したであろうデヴィンター指揮官の思惑に頭を悩ませつつも装置を調べトラップの類が無いか確認。下手をすれば触れた瞬間起爆(ドカン)である。

 

装置に慎重に触れる中、どうやら重量や衝撃センサー等の物はないようだ。

そうと分かれば爆弾に繋がる大本のケーブルを切断するだけで解除できる。ケーブル自体の太さも1本のケーブルで全ての爆弾を起爆できるようそこまでの太さでもなくペンチで切れる。

 

太さとこの状態のままという事を考えれば、ケーブルのタイプは導爆線ではなく電気信管用の送電ケーブルのはず。

 

ヒロはベルトポーチからペンチと、万一に備え入れていたゴム手袋も取り出しケーブルを切断。

これで起爆の危険はなくなったが、念の為に端末を中継装置に接続しこの状況を確認し続けているセラフに調べてもらう。

 

その間にヒロは再度階段を上がって城壁の上へ。対空砲の排除を続けているであろうチカゲとシズカと合流を図る。

 

「お帰りヒロ、丁度最後の1基を片付ける所よ」

 

「お疲れ様」

 

ヒロの労いの言葉を後目にチカゲが大鎌状マニピュレーターアームで最後の対空砲を破壊。

これで航空支援が可能となり、役目を終えたチカゲのマニピュレーターアームがスカートの中へ戻っていく。

 

それを見てヒロは軽く頷き、チカゲとシズカと共に城壁を回って城の司令室と思われる場所の正面に構える。

双眼鏡で覗いてみれば、どうやらスミス達が到着しているが攻めあぐねているようだ。

 

その原因はスミス達の正面、ヒロ達からすれば後ろ姿で横顔が映っている、角刈りで身長176㎝程の白人男性。標的(ターゲット)であるバーナード・デヴィンターだ。

問題はヒロ達から見てデヴィンターが見る右側、戦術人形の95式が鉄骨に鎖で縛られ動けないでいる。そしてそんな95式を見るデヴィンターの右手には最大50口径の弾丸を発射可能な回転式拳銃(リボルバー)のトーラス・レイジングブル*1が握られており、その銃口が95式の頭部に向けられている。

 

そこでヒロは基地の保管庫から頂いたM110A2狙撃銃を構え、スコープ越しに状況を伺う。

 

«コマンダー、接続先の装置から基地の制御ネットワークへ侵入、これの掌握を完了しました»

 

するとヒロの耳に頼れる頭脳(セラフ)からの通信が届いた。どうやらヒロの読みは当たったようで爆弾の起爆信号の中継装置から基地内のシステムへ侵入出来たようだ。

 

「セラフ、基地司令室の会話を拾えるか?それで・・・」

 

そこでヒロはデヴィンターを一気に奈落へ陥れられるかもしれないプランを思い付き、それをセラフに実行可能か確認を取る。

 

«司令室に設置されている通信用マイクの感度にもよりますが、可能かと»

 

「OK、なら早速やってくれ」

 

«了解»

 

相方(セラフ)からの返答は“可能”との事。

ならば“ヒロ考案セラフ実行のデヴィンター殺し”作戦実行である。

 

一応動機も確かめたいとのヒロからの要望により、司令室のマイクが拾った会話を傍受するようにも頼んだ。さぁどんな言葉が出てくるのやら・・・。

 

《君達も戦術人形(道具)なら分かるだろう?私はビジネスマンなのだよ、あらゆる手段を講じ利益を手にするだけだ。多くの収益を得るための行動にとやかく言われる筋合いはない》

 

《試作段階の人形達は用が済めば解体処分ではないか。私はそんな彼女等に試験以外の価値を与えたに過ぎないのだよ。彼女等も処分されず我々の利益にもなる。双方にとっても喜ばしい話ではないか》

 

《そして私は資金を基にG&Kの株を買いG&Kの経営権を得る。その暁には今回の件に目を瞑ってもらう代わりに君達に更なる地位と名誉を与えてもいいのだぞ?何なら今この場で契約を結んでも良い》

 

デヴィンターの動機(言い分)は経済活動。その為に使える物を使っただけという。

だがその為にI.O.P.の業務にも支障をきたしただけでなく、基地の人形達やグリフィンと無関係の人々にまで被害が行く事態となったのだ。

 

更にデヴィンターの野望とも言うべき目的はG&K(グリフィン)の株式の購入という事実上の買収。その為には最低でも発行済株式の過半数が必要だがその為の資金もこのままでいれば用意するまでに時間は掛からないかもしれない。

 

《・・・成程、全て聞かせて貰ったぞ》

 

《は?》

 

・・・が、その野望が果たせる日は来るのだろうか?

 

来るはずがない。何故かは突然司令室のスピーカー越しに響いた男性の声が答えだ。

 

《突然626基地との通信回線が開いた為に何事かと思ったが、そういう事だったとはな》

 

その男性の声にデヴィンターはおろか、スミス達も固まった。その男が誰なのか戦術人形であるスミス達にはすぐ分かった。

 

《現時刻を以ってこの俺、G&K最高経営責任者(CEO)ベレゾヴィッチ・クルーガーの権限により、B03地区626基地司令官バーナード・デヴィンターを横領並びに特別背任の容疑にて指揮権限及び指揮官資格を剥奪。懲戒解雇の後に取り調べを受けてもらう》

 

その宣告を最後に男の声は聞こえなくなった。

 

先程司令室に響いた声の主こそ、DG小隊のボスにあたるG&K(グリフィン)の最高経営責任者ベレゾヴィッチ・クルーガーなのだ。

そんな大物が何故突然割り込んできたかと言うと、ヒロの相方(セラフ)の仕業である。

 

 

“セラフ、基地司令室の会話を拾えるか?それでその音声をグリフィンの本社に流すんだ。上手く行けば幹部か社長が聞いてくれるかも”

 

 

これが先程ヒロがセラフに出した指示だ。

結果としてデヴィンターの自供とも取れる基地司令室での独白は一言違わずに全て社長(CEO)であるクルーガーの耳に入り、先の宣告に繋がったのだが。

 

司令室の外では、ざまぁと言わんばかりにヒロとチカゲが笑いを堪えており、シズカはガッツポーズを取っていた。

 

しかし野望が潰えてもデヴィンターは諦めておらず、レイジングブルの銃口を95式の頭に向けたまま司令室のコンソールへ。

そして大きな赤いボタンを、カバーガラスごと思い切り叩いて押した。

 

・・・が、何も起きない。強いて言えばボタンを叩いた際に割れたガラス片が飛び散ったくらいだろうか。

訳が分からなくなったデヴィンターは何度も赤ボタンを押すが何も起こらない。

 

そして混乱する最中、突然デヴィンターの背後の窓ガラスが割れたと思いきやデヴィンターの右手にあるレイジングブルが弾き飛ばされた。

 

何が起こったかスミス達が窓の外を見れば、そこにはM110A2狙撃銃を構えたヒロとそれに寄り添うチカゲとシズカの姿があり、ヒロが照準器(スコープ)から目を外し右親指を立ててスミス達にサムズアップ。それを見たスミスも笑みを返しながらヒロにサムズアップを返す。

 

恐らくデヴィンターが押したのは基地の自爆用ボタンだったのだろうが、ヒロ達が先回りして自爆用と思われる爆弾を解除した為に無用の長物となったのだ。

 

これで詰みかと思われたが、デヴィンターはあろうことか95式が鎖で縛られている鉄骨を蹴り倒し、スミス達の意識が倒れた95式に向いた隙を突いて司令室から逃走。スミスは95式をレストと9A-91(ノア)に任せデヴィンターの後を追う。

城壁上にいるヒロ達もデヴィンターを先回りすべく移動を始めるが、そこに突然爆発音と共に僅かだが揺れが襲ってきた。

どういう事だろうか、自爆用の爆弾は解除したはずだが他にもあったのか?

確認すべくヒロはスミスとの通信回線を繋ぐ。

 

「スミス、何か爆発があったみたいだけど大丈夫か!?」

 

《あぁ俺はな。けどあのクソ野郎、懐に爆弾を隠し持ってやがった・・・おかげで通路が塞がれちまったよ》

 

悔し気なスミスの言葉からすると、デヴィンターは隠し持っていた爆弾で城の通路を爆破し封鎖したとの事。

逃げる為の時間稼ぎだろうか、おまけにG&Kが地元住民と締結した“古城その物には手を加えたりしない”という契約もこれで御破算である。

 

「分かった。先回り出来ないかやってみる」

 

《あぁ頼んだぜ。俺たちも道を塞ぐ瓦礫を退かしたらすぐ追うからな》

 

通信を終え、ヒロは後ろで控えるチカゲとシズカについて来いと合図を出し移動しようとするが、そこに何やら近づいてくる音が。

 

 

 

 

「おのれ・・・人形(ガラクタ)と小僧共めが!」

 

悪態をつきながらも基地の通路を走って逃げるデヴィンター。

これまでの行いと野望は全て社長(CEO)であるクルーガーに筒抜けになってしまい、地位と資格を全て剥奪される事になってしまったが、そうなれば別の手段を講じるまで。

 

通路を抜け城の庭へ出たデヴィンターは1度深呼吸して冷静さを取り戻そうとする。

 

「・・・まぁ良い。資金さえあれば後はどうとでもなる」

 

資金(カネ)と時間さえあればいくらでも立て直しは出来ると踏み、一先ずここは逃げの一手を選択。

立て直しを図った後にG&Kと提携先のI.O.P.の筆頭株主となった暁にはDG小隊を解体し文字通り鉄屑(ガラクタ)にしてやると頭の中で再び邪な野望を練りながら、彼は自身の愛車の2010年型ランボルギーニ・ガヤルド LP570-4 スーパーレジェーラに向かう。

 

ところが、そこに何やら風切り音とロケットの燃焼のような音が耳に入り、何事かと辺りを見回し始めた途端に目の前で愛車(ガヤルド)が突然爆発。

突然の事に呆然としていると、今度はヘリのローター音が聞こえ徐々に音が大きくなってくる。

少しすると城の直上を飛び上空に汎用ヘリコプターUH-60M ブラックホークが姿を見せる。

ヘリの機体側面には何やら走る様の狼のマークが描かれている、思案に耽る前にコクピット後方の窓に設置されているM134ガトリング機関銃が準備を終えデヴィンターに対し攻撃を開始。

 

銃手(ガンナー)は当てる気が無いのか逃げるデヴィンターに弾が当たらないが、デヴィンターは安全確保の為に先程出てきた城の通路へ逃げ込み来た道を戻る羽目に。

 

そこにデヴィンターを先回りすべく城壁から降り庭へ出てきたヒロ達を発見し、銃手はヒロ達へ向け手を振る。

それを見つけたヒロも手を振り返した。

 

そして逃げたデヴィンターは今度は別の通路から逃走を試みるが、そこに封鎖された通路を突破し追跡してきたスミス達DG小隊と、先程まで捕らわれていた95式を始めとするB03地区626基地()所属の戦術人形達とが鉢合わせた。

 

「追いついたぜクソ野郎!」

 

「おのれ、人間に使われる道具風情が・・・!!」

 

忌々し気に顔を歪めて悪態をつきながらも、デヴィンターは再び通路を戻りそれをDG小隊と元所属の戦術人形達が追う。

外に出れば再び上空のヘリ(UH-60M)からの機銃斉射を受ける事になるがその時はその時。

やがて通路の出口が見えてきたがそこでデヴィンターの足が止まる。

 

出口では各々の得物()を構えているヒロ達が待ち構えていたのだ。

 

そこに追いついたスミス達も、待ち伏せしていたヒロ達も、デヴィンターに銃口を向けたまま近づき・・・。

 

『チェックメイトだ!!』

 

ヒロとスミスが同時に宣言。

そして遂にデヴィンターはその場に両膝を付き項垂れた。

*1
2023年現在、50口径モデルのモデル500は生産が中止されている為、現在の最大口径は.454カスール弾を使う45口径のモデル454。




ED:Prototype/石川智晶

ここ最近の暑さでもうバテバテだ・・・(-_-;)
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