Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP:BAD CANDY/yukaDD(;´∀`)


#15 WINDS GOSPEL 00 風の福音 00

シズカの突然の帰還、及びI.O.P.のヘルシカリアより試作戦術人形達の実地運用試験(フィールドテスト)の依頼を受け早10日。

 

溜息をついていても状況は好転するはずがない為、観念してあれから彼女達にアナトリアやフェンリルでの事業内容やその中での仕事を説明した。

 

小さい子供達までも戦闘に参加している事を知ったらHK433は良い顔をしなかったが、それが子供達の意思だという事を知り折れるしかなかった。

しかし非戦闘員にも子供はいる為、HK433は非番の時は子供達の相手をしてくれる事に。

 

戦力面でも助かっている。

3日程前にスーパーライナーに3,000ガロンの燃料(ガソリン)タンク2つを連結し現トルコ政府アンカラへ輸送を行った際に戦術人形故の高い戦闘能力を遺憾なく発揮し、誰一人欠ける事無く無事輸送を終える事が出来ただけでなく、アナトリア以東のユーラシア大陸東部方面から時折流れてくるE.L.I.D(ゾンビ)達の対応もしてもらえている。

 

ちなみに何時までも銃器の名称では呼びづらいとの事で、ヒロが人形達に名前(コードネーム)を与えた。

 

 

Vz61 スコーピオンには“ミア”

 

MG08/15には“イリス”

 

HK433には“フィリーネ”

 

LR-300には“シオン”

 

 

LR-300(シオン)以外は名を与えられた事を喜んだ。

どういう事かというと、LR-300(シオン)は「戦術人形はASST(スティグマ)で繋がれる銃の為に製造されたので個人名なんて不要」との事だが、そこはヒロがペルシカリアから一時的とはいえ預かっている指揮権限による命令で黙らせた。

 

そして今、その彼らはと言うと・・・。

 

「~♪」

 

MG08/15(イリス)がヒロ行きつけの飲み屋(バー)にてバウムクーヘンを頬張りご満悦。

 

ここ数日で分かった事だが、イリスは身長145cmという小柄ボディにも関わらず異常な大食いである。

現に今回もバウムクーヘンを食べる前にカレーライスにオムライス、パスタにサラダと。おまけにその全てが大盛り・・・明らかに胃袋の許容量(キャパシティ)を超えているように見えるのだが、幸せそうにバウムクーヘンを1切れではなく1本丸々食すその表情には余裕が伺える。

 

「・・・」

 

その場にいる他の全員が唖然とする中、アナトリア(ウチ)がある程度自給自足出来る環境で良かったとヒロはこの時つくづく思った。

ヒロの傭兵事業とアナトリアの燃料(ガソリン)事業の収入で土地の復興と開発も進み、農産物や畜産物鶏卵、砂糖の供給が安定してきていた事が救いになった。

 

もしそんな状況でなければ、今頃アナトリアは食糧危機に陥っているだろうという自信すらある。

 

「ふぅ~、ごちそうさまでした!」

 

ヒロの気も知らず、イリスは満足そうに腹をさすると両手を合わせ食事終了の挨拶。

 

そうして昼食を済ませた後、ヒロの予備車として用意した2003年式 フォード・エクスカージョンに人形達全員を乗せた後に乗り込み飲み屋を後に。

向かったのは開発途中の農業地域。食糧自給が安定してきたとはいえ今後更にアナトリアの人口が増える事を見越し拡充を行っている。

 

既に作業を始めているVz61(ミア)と合流しヒロを始めチカゲやシズカ達も開墾作業に加わる中、LR-300(シオン)は思う事があるのか作業が進まない。

 

「どうかしたシオン?」

 

「・・・指揮官、私たちを体のいい労働力だと思っていますか?私たちは戦術人形で戦闘が本分です」

 

ヒロも一旦作業を止めシオンに伺うと、どうやら今の仕事に不満らしい。

確かに彼女等戦術人形の本懐は戦闘にある。ASST(スティグマ)で繋がれた半身とも呼べる銃を手に取ればその戦闘力は並の人間の比ではない。

 

だがヒロには思う所もある。

 

「確かに、戦術人形は戦闘が主任務だろうな」

 

「でしたら・・・」

 

「でも、配属される基地によっては戦闘だけが仕事じゃない。その内分かるよ」

 

そう言ってヒロは作業に戻り、シオンも納得はしていないがヒロが戻った為仕事を再開。

人形達の協力もあり作業は予定より早く終了、休憩を入れる。が・・・

 

「~♪」

 

「あの・・・イリスさん?」

 

思わずHK433(フィリーネ)が二度見し伺ってしまう。

何故なら、ご満悦な表情を浮かべるイリスが腰をつける地面には、フィリーネが休憩にと作って持ってきてくれたプリンのカップが既に5個も転がっているからだ。

昼食にドカ食いしたにも関わらず良く入るものである。

 

「イリスお前、さっきも結構食ったろ・・・大丈夫なのか?」

 

「全然!」

 

心配しヒロが確認するもイリスは笑顔でそう返した。

勘弁してくれ、とヒロは頭を押さえて天を仰ぐがその意味が分からずイリスは首を傾げたままプリンを食す。

食糧危機に陥る前に、あまりの食べっぷりに見てる側が気分を害しそうだ。

その結果ヒロは食べる気を無くしフィリーネにプリンを返そうとしたものの、食べないならちょうだいとミアが手を出しプリンを横取りしようとした所をイリスがズルいと言って割り込み取り合いに発展してしまった。

既に空になった容器(カップ)は6つ、もしイリスがヒロの分まで食べれば7つ目である。

 

ヒロを始めシオン、フィリーネ、チカゲ、シズカも未だにプリンを取り合うミアとイリスを見て深い溜息をついた。

 

そんなこんなもあったが休憩は終了。ヒロの次の仕事は製油所(ファーム)の見回り。従業員から要望や改善点等の意見を伺う事も含まれている。

 

「さ、休憩は終わりだ。次行くぞ」

 

ヒロの言葉に人形達全員立ち上がり、足や衣服についた砂を(はら)ってエクスカージョンに乗ろうとする。

 

その時。

 

 

ゴォォォォォォッ・・・・・・!

 

 

「ん・・・?」

 

「どうかした?」

 

何か地響きと言うべきか風が唸ったと言うべきか、何やら低い音が南東方面から聞こえたように思えたが、何も起こらない。

気のせいだろうか、とヒロも意識を外して車の運転席に着こうとした、その時だ。

 

 

ヒュオォォォォォォッ!!

 

 

「ッ!!」

 

大きな音と共に強烈な風が突然吹き荒れ、巻き上げられた砂が容赦なくヒロに襲い掛かる。

幸いにも既に車に乗っているチカゲ達はヒロが咄嗟に運転席ドアを閉めた為に砂による被害はない。

 

両目を右腕で防護し砂嵐と化した暴風が収まるまで耐える中、やがて風は少しずつ収まり視界も良くなってきた。

両腕も目から外してゆっくりと瞼を開ける。先程の砂嵐が嘘のように青く晴れ渡る空が見下ろしている。

 

「ヒロ、大丈夫!?」

 

辛抱たまらず車内にいたミアがヒロの安否確認に飛び出してきたが、ヒロは右手をひらひらと振って無事をアピールする。

それにミアは安堵の溜息をつき車内へ戻る。

 

仕事が1つ増えた。

 

「まずは街に行こう。さっきの風で被害が無いか確認する」

 

『了解!』

 

ヒロの指示に人形達はすぐ答える。

先程の暴風での被害の有無を確認すべくヒロは車の運転席ドアを開けるが、乗り込む前に風が襲ってきた南東方向の空を睨み、そして零す。

 

「・・・お前は、誰だ?」

 

 

 

 

 

 

同時刻:管理地区番号S09

 

突然襲ってきた防風も収まり安心して外出できるようになった地のグリフィン基地に止められている1台の車、

 

 

輝くようなキャンディアップルレッドの1950年式 マーキュリー・エイト 2ドアクーペ。

 

 

製造年は1世紀(100年)以上も前で、もはや今では絶滅危惧種とも呼べる年代物の車に近づくピンク色のショートヘアの女性とメイド服姿の金髪の女性。

 

S09地区794基地の戦術指揮官ジャンシアーヌと基地所属の戦術人形G36だ。

 

「・・・ご主人様。こちらのお車、どのようにして・・・」

 

「い、いやいやいやいや!ちゃんと自分のお金(ポケットマネー)で買ったわよ、横領して買ったとか盗んできたとかしてないから!結構良心的な売主だったし!」

 

希少車(レア物)を目の当たりにし、G36はジャンシアーヌの行動を疑うが彼女は潔白を証言。

実際に彼女はこの車(マーキュリー)を売主から買い取り正規の手段で入手はしている。

 

・・・勘の鋭い方は気づいたかもしれないが、その売主とは私設武装組織(フェンリル)だ。

 

暴走族から接収して修理・改造した車を領地(アナトリア)と組織の運営資金確保の為に転売に出し、既に何件か商談が成立している。

 

そしてジャンシアーヌ指揮官もその内の1人だ。

 

そんな彼女は今日は珍しく非番。折角だからと買った車(マーキュリー)私用(買い物)に行こうとした所をG36に発見され、今こうしている訳である。

 

 

件の50年式マーキュリーは、リビルドされたキャブレター、アルミニウム製シリンダーヘッドでパワーアップされた255cu in(4.2L)フラットヘッドV8エンジン、エキゾーストマニホールド、トランスミッションオイルクーラー付アルミニウム製ラジエーター、新品プラグワイヤー、12V(ボルト) 100AMP(アンペア)変換、イグニッションコイル、バッテリー、セルスターター、AOD 4速オートマチックトランスミッション、前後ビルシュタインダンパー、管状(チューブラー)コントロールアーム、前後パワーディスクブレーキ、前後ステンレスメッシュブレーキホースと強化(アップグレード)てんこ盛りだ。

 

万一の場合に備え、盗難防止用の警報装置(セキュリティアラーム)も付いている

 

 

ジャンシアーヌ指揮官が運転席に、G36が助手席に座りジャンシアーヌがキーを差し込んでセルスターターを回すとセルが回る音の直後にV8エンジンはスムーズにかかり低く唸るようなアイドリング音を響かせる。

 

しばしアイドリング音を堪能した所で、シフトをD(ドライブ)に入れ出発しようとした時だ。

 

「はい?・・・分かりました、お伝えします」

 

助手席に座るG36が連絡を受け、相手に返事を返すとジャンシアーヌの方を向く。

 

「ご主人様、たった今ヘリアンさんから緊急の連絡が入りました」

 

「え・・・?」

 

「休暇は返上でございます」

 

G36からの無慈悲な宣告にジャンシアーヌがふらついたと思いきやハンドルに頭をぶつける。

そして、(マーキュリー)から発せられるクラクションが虚しく響き渡った。




ED:Prototype/石川 智晶


オマケ:現時点でのキャスト(イメージ)


ヒロ・スメラギ:榎木 淳弥

チカゲ【執行人(エンフォーサー)】:鈴木 愛奈

シズカ【九九式軽機関銃】:内田 彩

ミア【スコーピオン】:松井 恵理子

イリス【MG08/15】:悠木 碧

フィリーネ【HK433】:小松 未可子

シオン【LR-300】:若山 詩音



オマケも挟んだ所でご報告があります、というより、今回はお誘いだ!
今回から数話にかけ特別戦役という名の大型コラボをやってみようかと踏み切った次第です!

詳細は下記リンクへ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=301553&uid=79933
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