Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP:BAD CANDY/yukaDD(;´∀`)


#16 WINDS GOSPEL 01 風の福音 01

突然吹き荒れた暴風によりアナトリア領内にて被害が発生していないか各地区と連絡を取り合い大至急確認をするヒロ達。

 

製油所(ファーム)での目立った被害は無く、突然の暴風に煽られ従業員数人が転倒した事くらいだろうか。

集落や市街地では被害はやや大きく、暴風で荷物運搬用トラック数台が横転した他、送電線が切れ一部で停電が起こっているらしく現在は復旧作業中との事。

 

それにもう一つ気掛かりなのは、暴風が突然襲ってきた事だ。

ある程度であれば領内に設置された気象観測台の職員(スタッフ)が察知し事前に知らせてくれる。だが今回に限って言えばその事前報告が無い。職員(スタッフ)の怠慢と言われればそれまでだろうがヒロの第六感がそれだけではないと告げている。

 

領内各地にいる仲間達と連携しセラフと共に突然の暴風の原因を調べる。

 

≪コマンダー、各国の残存サーバーにアクセスした結果、暴風発生直前ニュージーランドにて地震が発生。原因は当時当該地区上方軌道を経過中の偵察衛星カメラ画像より隕石の落下と判明≫

 

「隕石?もしかしてそれが風の原因だとでも?」

 

≪推測ですが高度に有意。隕石落下の数分後にはコマンダーが体感された暴風が欧州だけでなく日本列島、北米大陸、南米大陸、世界各地にて同時多発的に発生≫

 

ナインボール・セラフ(セラフ)はその高い演算能力によりアナトリアの都市機能管理だけでなくサーバーや衛星にハッキングを仕掛けての情報収集をも得意とする。

そのセラフが言うには、アナトリアを襲った暴風はアナトリアだけでなく欧州各地、果てには日本や北南米大陸にまで及んでいるとの事。

 

確かに隕石が落下すれば衝撃による突風は起きるが、それは落下地点を中心に半径数キロ程度の範囲だけ。ニュージーランドに落ちたとなればとてもではないが届く距離ではない。

だとすれば観測台の目を抜けて暴風が襲ってきた原因は隕石の落下による衝撃波ではなく、恐らく隕石自体。

 

詳しい事を調べるには現地へ赴く事が一番だが、如何せんアナトリアからニュージーランドまでは直線距離で約16,000kmと距離がありすぎる。

 

しかも厄介な事にニュージーランドを始め環太平洋地域は北蘭島事件における大規模コーラップス汚染による被害も大きい。

ヒロは目覚めた時にいた研究所での研究での影響からかコーラップスに対し耐性が出来ており問題無いが並の人間では即アウト、コーラップス被曝により死ぬかE.L.I.D.(ゾンビ)に仲間入りかだ。

 

どうしたものかと悩んでいると、突然右肩をポンポンと叩かれ何事かと振り返るとそこにいたのは妙にニコニコしているミアとイリス。

 

何故ニコニコしているのか理解に時間を要したが思い出した。

Vz61(ミア)MG08/15(イリス)は戦術人形、チカゲにシズカ達もそうで何の為に戦術人形が製造されたのかを。

 

戦術人形の前身にあたる自律人形は、北蘭島事件での膨大な死者による労働力不足を解決する為に作られた。そしてそれを戦闘に特化させつつ発展させたのが戦術人形だ。

姿形こそ人間と同じだが彼女等は人間と違いコーラップス汚染のような劣悪な環境にもある程度耐える事が出来る。

 

「よし。ミア、イリス、準備にかかるんだ。俺はチカゲ達を集める」

 

「オッケー!」

 

「は~い!」

 

ヒロの指示でミアとイリスが準備にかかる中、ヒロは街の様子を確認するチカゲ達に無線にて召集をかけてすぐまた別の所へ通信を繋ぎ、何かの指示を出した後に自分も出発準備にかかる。

 

 

 

 

 

数分後には市街地の巡回から戻ったチカゲ達を連れ領内の飛行場へ。

 

私設武装組織(フェンリル)はヒロの傭兵稼業中に身柄を保護した科学者・技術者等も多数抱えている故に可動状態にある航空機も何機か存在するのは運用するUH-60(ブラックホーク)から明らかではあるが、ヘリでは航続距離が圧倒的に足りない為に今回動かすのは輸送機だ。

 

既に飛行場ではセラフからの指示の下、KC-10 エクステンダー*1が準備されている。

フェンリル技術班の改造(チューニング)によりエンジンは推力・燃費共に向上している為KC-10(エクステンダー)のカタログスペック上の航続距離よりは遠くへ飛べるはずだ。

 

しかしアナトリアへ来てまだ10日のイリス達からすれば、その機の離陸準備を行っている人影が問題であり思わず半身とも呼べる各々の銃を構えてしまう。

 

作業を行っていたのはバイザーを付けている女性2人とヘルメットを被っている女性2人。

鉄血工造製の戦術人形“リッパー”と“ヴェスピド”だ。

 

ユーラシア大陸東部方面からE.L.I.Dが時折流れてくる話はしたが、同じように本隊とはぐれた鉄血製の戦術人形も時折流れてくる。

鉄血の戦術人形は人間相手だと問答無用で攻撃してくるが、少数であれば武器と戦術次第で人間でも倒せる。

その結果どうなるかと言うと眼前の光景の通り、人間に破壊され機能停止に陥った後に修復され、今ではこうしてフェンリルの従業員になっている。

とは言うものの、実際に修復に成功しているのは目の前で働いている4体以外にはいないのだが。

 

『( ̄^ ̄)ゞ』

 

イリス達が銃を向けたままリッパーとヴェスピドに近づくが、そこでリッパー達が先頭のヒロを視界に収めた途端にヒロに対し姿勢を正し敬礼を行う・・・が、その敬礼の仕方が問題だった。

 

「・・・何でそれなの?」

 

思わず銃口を降ろしたイリスの口から言葉が漏れる。

 

その敬礼は姿勢を正した後に右手を1度左胸側で水平に構え、左手を拳にして下に向けたまま右手は右斜め上に突き出す、分かりやすく言う所のナチス式敬礼(ハイル・ヒトラー)なのだから。

 

 

 

 

やがて出発準備も済み、いよいよニュージーランドへ向けて旅立つ時間だ。

帰還の分の燃料も別容器(ドラム缶)にて機内に詰め込み現地の偵察手段も用意した。生憎と貨物の都合上移動手段()だけは現地調達になってしまうものの何とかなるだろう。最悪徒歩でどうとでもなる。

 

「じゃあユウゴ、行ってくるから頼んだよ?」

 

「了解、留守番は任してくれ」

 

見送りに来てくれた住人を代表しユウゴがヒロから言葉を受け取る。集まった人々を一瞥した後にKC-10に最後に乗り込み貨物ドアが閉まるとゆっくりとタキシングを始める。

 

《アナトリア管制塔(タワー)よりアルビオン1、護衛機の離陸が完了次第離陸を許可します》

 

KC-10の操縦士、副操縦士を務めるは先程見事なナチス式敬礼(ハイル・ヒトラー)を見せてくれたリッパー2体。ヴェスピド2体はレーダーと航行を管制する。

 

離陸した護衛機は4機。青、赤、白2機の、恐らく今の時代では時代錯誤であろうレシプロ(プロペラ)機だがその姿はレシプロ全盛期である第二次世界大戦時の物とは異なる。

 

大出力を伺わせるエンジン音に左右対称に配置された2基のターボチャージャー(ツインターボ)、馬力を受け取り機体を引っ張る牽引式(トラクタ)2重反転プロペラとハブに開けられたモーターカノン用砲口。真ん中辺りから緩い上反角がついている主翼下には空対空ミサイルもぶら下げている。

 

フェンリルが独自開発に成功した戦闘機 スカイリィ J3*2が主役の離陸を待つ中、KC-10が滑走位置に着いた。

 

《護衛機の全機離陸を確認。アルビオン1、離陸を許可します》

 

「( ̄^ ̄)ゞ」

 

管制塔より報告を受け操縦桿を握るヴェスピドがスロットルレバーはゆっくり押し込むにつれKC-10も地上を走り出す。

そして一定以上の速度に達したKC-10はその巨体をゆっくりと持ち上げ地上から離れ、飛行場外周の防護柵の外から手を振って見送る住民達を後目にKC-10はその巨体を高い空へと上げる。

そしてそれを見た護衛のスカイリィ J3がすぐ後方に付いて編隊を組む。彼らはスカイリィの航続距離限界までヒロ達が乗るKC-10を護衛する予定である。

第三次世界大戦にて攻撃や核弾頭による核爆発あるいは電磁パルス(EMP)の影響で最新鋭の戦闘機がほぼ失われているか役に立たない御時世に護衛など必要無いかもしれないが万一に備えてだ。

 

その後はKC-10を先頭としたV字編隊で飛行し、間もなくユーラシア大陸、南アジア・インドに差し掛かる。

 

《サイヴァリア1よりアルビオン1。間もなく航続距離限界の為帰投します》

 

無線から聞こえるのは年端も行っていなさそうな若い声。当然ならが今回護衛についているスカイリィのパイロットも全員ヒロが保護してきた少年少女だ。

最も、今回の護衛であるサイヴァリア隊は事情が非常に特殊なのだが・・・。

 

「了解サイヴァリア。ここまで護衛と見送りありがとう」

 

《ご武運を、ボス》

 

ヒロが無線で通信相手に返すと、サイヴァリア隊が駆るスカイリィ4機はアナトリアへ引き返していった。

それを見たヒロは無線機を戻すとキャビンへ戻ろうとするが、その前に操縦や管制を担当する鉄血製人形達に頼み事。

 

「俺はしばらく寝るから、着いたら起こしてくれる?」

 

『( ̄^ ̄)ゞ』

 

鉄血人形達からの了解の意を受け取ったヒロは頷くとキャビンへ戻り、武器の点検をするチカゲ、シズカ、シオン、ババ抜きに興じるミア、イリス、フィリーネの更に後ろ側のシートに横になりニュージーランドへ着くまでの仮眠を取る事に。

 

それを見たチカゲは一つ溜息をつきながらも、積荷の中からタオルケットを引っ張り出して仮眠を取り始めたヒロの身体に掛ける。

最近色々あったせいで疲れていたのかヒロはもう夢の中だ。

 

「ゆっくり休んでて。おやすみなさい、ボス」

 

 

 

 

時は遡り、ヒロ達がアナトリアを発つ1時間程前。

 

S09地区指揮官ジャンシアーヌは苛ついていた。

ヘリアントス上級代行官(ヘリアン)からの突然の通信により休暇が無効(おじゃん)になっただけでなく指示された任務内容が無茶苦茶だったからである。

 

 

“オセアニア方面に落下したと思われる隕石らしき物体を鉄血が無視する可能性を捨てきれない為、ジャンシアーヌ指揮下の戦術人形を派遣し調査せよ”

 

 

これがヘリアンから出された指示である。

そもそもS09地区からオセアニアなんて直線距離で15,000km以上も離れておりとてもではないが行ける距離ではない。

ヘリアンからの事前連絡によればインド洋沖で軍事訓練中のサウジアラビア海軍が補給に協力してくれる上、移動手段はグリフィンが用意するとの事だが、

 

「よりにもよって年代物(オンボロ)を寄越すなんてね・・・」

 

目の前の湖の湖面上に鎮座する物を見てジャンシアーヌ指揮官は頭を抑えながら嘆いた。

 

 

主翼下にフロートが付いている大型の4発機、マーティン JRM マーズ*3

 

 

グリフィンの技術班により4つのエンジンはターボプロップエンジンに換装している為に速度と航続距離は向上しているとの事だが、それでもどこかで燃料補給しなければオセアニアまでは届かない。

 

そしてその渡洋遠征任務に当たるのは、P7、MP-446、C96、M1919A4、スコーピオン、PPsh-41、StG44となっている。

主力は基地の防衛もあるので割り当てる事が出来ないが、選抜された面々も練度は十分だ。

 

やがて必要な荷物、弾薬、補給物資(MRE)の積み込みが完了し出発の準備が終わった。

 

緊張する趣で機に乗り込むPPsh-41とStG44と違い遠足気分で上機嫌なP7、MP-446、C96、M1919A4、スコーピオンは出発前にジャンシアーヌに敬礼。

 

「それじゃ指揮官、行ってきます!」

 

「全員、ちゃんと無事に帰ってきなさいよ?」

 

「了解です!」

 

遠征隊を代表しP7が返答すると残った人形達は敬礼を解きウキウキ気分で飛行艇へ乗る。

人形達が乗ったのを確認すると機の管理を担当する自律人形がドアを閉め、エンジンがスタートし4つのプロペラが回転を始める。

エンジン回転が安定すると地上員が固定を外し、首輪を外された巨人はゆっくりと湖面を走り始め徐々に加速。やがてその巨体を宙に浮かべ、見送るジャンシアーヌ指揮官と警護についているG36、地上整備員達を後目にその巨体を空へと上げて行く。

*1
アメリカのマクドネル・ダグラス社が開発した空中給油・輸送機。エクステンダーは「拡張するもの」の意。

*2
スカイ・クロラシリーズに登場する戦闘機スカイリィを基にした本作オリジナル機。ベースとの違いは機体右側にもターボチャージャーが搭載される左右対称(シンメトリー)ツインターボ、ミサイル運用能力の付与、風防一体型キャノピー、射出座席装置

*3
アメリカのマーティン社が開発し、1942年に初飛行を行った飛行艇。愛称の“マーズ”は火星の意。




ED2:HORIZON/TEAM SHACHI


なんでオリジナルのベースにスカイ・クロラのスカイリィを選んだかって?
カッコイイからに決まってんだろう。

一応下記の募集はまだ受付中ですけどダラダラと引き延ばす訳にも行かないんで、締め切りは2週間後とします。
色々と調べないといけないしね( ̄▽ ̄;)

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=301553&uid=79933


※2023/09/04
ご指摘により内容修正
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