Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
アナトリアを発ちどのくらい経っただろうか熟睡して夢の中にいるヒロは知る由もない。
ヒロは今、暗闇の中を通る1本の光の道をただ歩いていた。何の理由も分からずただ歩き続けるのみ。
どのくらい歩いただろうが、いい加減足の感覚が鈍くなってきた頃。目の前に光が差し込んできた。
そしてその光の中には蹲っている人影が見える。
何故蹲っているのか、放っておけなくなったヒロは自然と歩幅が大きくなっていき歩く速度も上がっていく。
だが、蹲る人影はヒロが近づくのを察知したかその姿を道の先へと進める。
人影が遠ざかるのを見てヒロは更に歩く速度を早め、ついには歩きではなく走って人影を追いかける。
限界を訴える肉体に鞭を打ってひたすらに走り続け、人影との距離は徐々に詰まり始めていく。
やがて人影に追いつき、右手を人影に伸ばす・・・。
「ヒロ・・・ヒロ?」
ヒロの名を呼ぶ声と肩を揺さぶられる間隔によって現実に引き戻され、ヒロはゆっくりと瞼を開ける。
そこには顔を覗き込んでいるチカゲの顔があった。彼女の後方には肩を揺すっていたであろうヴェスピドもいる。
「( ̄^ ̄)ゞ」
「おはよう、ヒロ。ニュージーランドに着いたわよ?」
「おはよ・・・チカゲ・・・」
寝起きで頭の回転が鈍っているようでヒロの声には力がこもっていない。
ヒロとチカゲがいる場所、
彼らが降り立ったのはニュージーランドのオークランド空軍基地
北蘭島事件における環太平洋地域へのコーラップス汚染の影響は大きく、住民の大半は
軍は最後の最後までE.L.I.Dに抵抗したのかもしれないが汚染の侵食には抗えずE.L.I.Dになったか恐怖に負け逃げたか数の暴力に屈し壊走したか。中には
そんな最早国と呼べるかすら怪しいこの地にてヒロ達の冒険の幕が上がるのだから分からない物である。
機内で身体を伸ばしたりして準備体操を終え、ヒロもKC-10機内からニュージーランドの地面へ降り立つ。
KC-10の格納はリッパーとヴェスピド達に任せ、ヒロとチカゲは管制塔を探索。何か使える物が残っているかもしれない。
チカゲが管制塔内の倉庫を漁る中ヒロは管制塔上部の管制室へ。
しかし生憎と塔内の管制・通信設備は大半が劣化し使えそうにない。
どうしたものかと頭を軽く搔き、辺りをよく探索してみる。
何か使えそうな物を求め室内を漁りに漁ったものの収穫は無し。これで当たりが出なければ諦めようと最後に手を伸ばしたのは管制機材を収める台、機材が故障した時の為に設けられたメンテナンス用の引き戸だ。
鍵こそ掛かっていたものの、そこはヒロの護身用装備SFP9で撃って開ける。
ところがいざ戸を開けたは良かったものの、中身は機材の配線だらけで使えそうな物は見当たらない。
どうやら完全にハズレだったかとヒロが台の中から頭を出そうとした時に、左手が何かに触れた。生憎と何に触れたかは確認出来る状態でなかった為に感触を頼りに探す。
やがて手が何かを触る感触がし、それを元に探って遂にそれを掴んだ。
左手を台から引き抜き、掴んだ何かを確認する。
手にしていたのは1本のアンテナのような物がついている携帯電話のような物、俗に言うトランシーバーだ。だが一般的はトランシーバーと違うのはアンテナ上部が太くなっている事。その事からそれがどういう物かは推測出来る。
「衛星通信トランシーバーか。誇りこそ被ってるけど状態は悪くなさそうな」
ヒロが手に入れたそれは衛星通信によるトランシーバー。
呟いた通りトランシーバーは埃こそ被っているものの外観からは劣化は見て取れない。
ひょっとしたら使えるかもしれない。そう考えたヒロはトランシーバーに付着する埃を払って端末を有線接続し通信状態を確認する。
その結果からトランシーバーは生きており通信が可能な状態である事は分かった。
通信用の人工衛星が生きている事もセラフが以前ハッキングした事で分かっている。後は端末からトランシーバーを操作する。繋がるかはぶっつけ本番だが。
トランシーバーの電源を入れしばらくはスピーカーから
試しにトランシーバーに向け発声してみる。
「こちらヒロ。セラフ、聞こえるか?」
こういった物は例え繋がったとしても相手に伝わるまでに
返答が来るには少し待たなければならないがどうか・・・。
《こちらナインボール・セラフ、通信を受信》
トランシーバー越しから聞きなれた女性の声が聞こえてきた。
どうやら成功したようだ。
「セラフ!良かった上手く行ったな」
《声紋解析。コマンダーとの一致率97%。コマンダーの現在の活動地域では通信有効範囲外。説明を要求》
「あぁ。衛星通信のトランシーバーを手に入れた。端末を介して音声位相を反転させてる」
《了解。探知及び傍受回避の為、周波数の定期的な変更を推奨します》
「分かった」
無事セラフからのバックアップ手段も確保した。
万一の場合に備えセラフが予備プランを用意してくれるだろう。
《コマンダー、留意事項が1つ》
「ん?」
だがここでセラフから待ったが掛かった。気に留めてほしい事があるらしい。
《残存衛星にて偵察を行った所、該当地域に接近中の勢力有り》
「近づく勢力?鉄血か?」
《否定。衛星からでは接近する勢力の詳細は判別不可能。しかし周辺に人間らしき生体反応を検出した事から鉄血工造の可能性は極めて低》
どうやら隕石による暴風騒ぎで動いていたのはヒロ達だけではなかったようだ。
だがセラフが偵察衛星でスキャンをかけてくれた結果、それが鉄血である可能性は低いという。
確かに人類に反旗を翻した鉄血工造が人間と共にいるというのはヒロと
となれば人間の勢力である事が濃厚だが、だとすれば事情によっては少し厄介な事になる。
「分かった、覚えておくよ。何かあったら連絡する」
《了解》
トランシーバーの電源を切り通信を切断。
今現在ニュージーランドに近づいている勢力に留意しつつ探索と調査を行わなければならないという突然の課題。
どうやら私設武装組織フェンリルのニュージーランド遠征は一筋縄では行かなそうだ。
一先ずは外で作業中のリッパー、ヴェスピド、ミア達と合流し、セラフからの助言を伝えてからどう行動するかを相談しよう。
そう決めたヒロは管制室を出て倉庫の探索を終え待っているであろうチカゲと合流する。
ニュージーランドのとある地域。
まるで隕石が落ちかかのような大きな窪みの中に人影がいる。
その人影は蹲って微動だにしない。まるでこの世の全てを拒絶するかのように。
そしてその窪みの周囲には、その人影を見守るかのように白い花が群生している。
ED2:HORIZON/TEAM SHACHI
締め切りまではまだ1週間ちょっとはあるけど、ニュージーランド導入って事でね。