Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
不明勢力と思われる女性の姿を確認した為に迂回及び転進を余儀なくされたヒロ達。
今ミアとシオンが扱うMQ-9が飛行している位置を考えれば捕捉出来ない事は無いはずなのだが未だに連絡がない。
いよいよハッキングの線が濃厚になってきたか、街の中ではハッキングに使えそうな機材が豊富すぎる為に発信源を特定するのは今のヒロ達には難しい。セラフに意見を求めたい所でもあるがそれで通信を傍受され逆探知されれば迂回した意味が無くなってしまう。
はてさてどうしたものかと頭を回転させながら移動する。
そんな中で路地を抜け先程までいた道路より1本北側の主要道路へ出たヒロ達。
どうやら不明勢力は先程までヒロ達が進んできた道路を進んだようで一安心・・・とはいかないだろう。もし不明勢力の目的がヒロ達と同じなら一悶着起こるかもしれない。
そこに耳に通信の着信音が届く。この状況で連絡してくるという事はミアかシオンのどちらかだ。
「もしもし?」
《見つけたよヒロ、隕石の落ちた場所!南の方!》
声からすると通信を掛けてきたのはミアだ。どうやら隕石の落下地点をMQ-9を通して発見したそうだがヒロは何故か溜息をついた。
「落ち着けよミア、南ってどこの南だ?」
そう、ミアの報告では“隕石は南に落ちた”というだけで何処の南にあたるかが不明瞭なのだ。
ニュージーランドは大きく分けて北島と南島で構成されており、ヒロ達が今いるオークランドは北島にある。
南は南でも、もし隕石が落ちたのがニュージーランド南島であったなら、乗ってきた
《あ、ゴメンそうだったね・・・》
《何やってるんですかミアさん・・・指揮官、隕石落下地点は北島南部、ウェリントン郊外のテラウィティ岬です》
ヒロに問い質され落ち込むミアに代わりシオンが割り込んで報告する。
それによると隕石が落下した地点はニュージーランド北島南部、首都ウェリントンの西にあるテラウィティ岬*1との事。
「分かった。サンキュー、シオン」
《ぶ~、あたしが伝えようとしてたのに・・・》
役目を取られた事にミアは拗ねたようだ。
とは言ってもこれに関しては擁護が難しい。早く伝えたいが為に重要な事が抜けていたのだから。
通信を切ろうとした所でヒロがふと思い出し、通信越しのミアとシオンに確認を取る。
「ところで変な事聞くんだけど、ついさっき人影と遭遇してルートを迂回したんだ。俺たち以外に誰かいたか?」
《え?シオン、他に何か見えた?》
《いえ、指揮官の周辺を偵察してましたが不審な影は何も・・・》
ミアとシオンに人影の有無を確認させようとしたがどうやらハズレ、人影は見つけられなかったらしい。
そうなると上空からは死角になる位置に潜んでいるか、MQ-9のカメラとセンサーがハッキングされているかを疑わなければならない。
ハッキングの場合は何処で誰が仕掛けているのか特定し阻止する必要がありその分時間も掛かる。が、対策されていないなら短時間だけだがハッキングを排除する方法はある。
「ならカメラのチャンネルを切り替えてみてくれ」
《分かりました》
それは機器の操作回線を切り替える事。先回りされて移行先の回線も潰されていなければこれで短時間は凌げる。
ヒロの指示通り、MQ-9のセンサー類を操作するシオンはカメラのチャンネルを変更。映像の撮影位置が変わり再度偵察を行う。
・・・そして見つけた。
オークランドの主要道路を通って南へ向かう軍用車両
《発見しました。指揮官の現在位置より4ブロック南方に移動中の
「多分それだ。南へ移動中って事は・・・」
シオンが先程の女性が搭乗していると思われる車両を発見しそれは南に向かっているとの事。そのまま南下すれば北島の南部へ行く事になる。
もしヒロの勘が当たっているなら、彼女の目的もヒロ達と同じ可能性が高くなってくる。
「ハッキングを受けたと考えると追跡出来るか怪しくなってきたな・・・ミア、シオン、ドローンを戻してこっちと合流してくれ。俺たちは
《オッケー!》
《了解》
もしハッキングでMQ-9が機能不全にM陥りかけているのであれば追跡は難しいと判断し、MQ-9をベースキャンプに戻し合流するよう指示。
ここからはスピード勝負になる。
通信を切ってヒロ達はすぐに移動を再開。移動手段の確保を目指す。KC-10が使用不可な状況である以上陸路で行く他なく、ルートが寸断されていない事を祈るしかない。
そうして移動手段を求め市街地を彷徨い歩くヒロ達。
「お腹すいた・・・」
「我慢してくださいイリスさん」
空腹に落ち込むイリスをシズカが引っ張ろうとするが、実際ここまでずっと歩きっぱなしで休憩を入れていない。
出来れば彼女達に休息を与えて自分も一休みしたいとはヒロも内心思っているのだが、先程の不明人物との接触、そしてそれが隕石落下地点である南へ向かっているという事が彼を焦らせていた。
そのままどれ程の時間が過ぎたのか時間の感覚が分からなくなってきそうな程歩いたような感覚に陥りかけていると、突然チカゲの大鎌状マニピュレーターがヒロのジャケットの襟首を引っ掛け引き留めた。
いきなりの事でヒロは後ろに転倒しそうになり、何事かとチカゲの方を向く。
「ヒロ、あれ使えると思う?」
そのチカゲの視線の先には線路上に停まっている、後方にはズラリと貨車が繋がれたディーゼル機関車*2があった。
外装は長いこと使われていない証拠として大分汚れており、ちらほらと錆も浮き始めている。
しかも1つ妙な事に、繋がれているコンテナ型の貨車の中には何故かパイプ椅子が何台も置かれていた。まるで即席の旅客車として使っていたかのように。
「どういう事、これ?」
その珍妙ぶりに思わずイリスが首を傾げるが、ヒロはその機関車の先を見て答えを導き出していた。
本来なら人が乗り入れする駅があると思われる路線に同じような貨物列車だけでなく旅客列車も含めて駅に収まっていない列車が何編成もある。つまりは
「勝手な推測だけど、貨物列車でも何でも動かせる車両を避難民を運ぶのに使って主要都市の鉄道駅周辺がキャパオーバーを起こしたんだ。この列車が渋滞の最後尾で助かったな」
チカゲが発見したのは
目指す方向である南側の路線に動力車が向いている為南へ向かう分には何も問題はない。
強いて問題を挙げるとすれば、長時間放置されていたと思われる為稼働するか分からない状態だという事。
「よし、俺が見てくる。皆は周辺の警戒を」
ヒロが機関車のディーゼルエンジンを確認する中、他の人形達は
動力源となるディーゼルエンジンを覆うカバーを開け状態をチェック。交換用パーツは持ち合わせていない為破損しない事を祈るしかないが、緩みで脱落しそうなパーツなら手持ちの
脱落しそうなパーツの留め具を締め直し運転席へ。
生憎とヒロは鉄道の操縦士免許など持っているはずもなく、どのスイッチやレバーがどの機能なのか詳しいはずもないが動かしてみればある程度は分かる。
まずはエンジンが始動するか確かめる。スタートスイッチを押し込みエンジンをクランキングさせる。
何度か回した後に、黒煙を噴き上げると遂にエンジンが始動した。
「おぉ!動いたよ!」
「ああまだ見放されてなさそうだ、コイツはまだ十分使えるぞ!」
ディーゼルエンジンが始動した事にイリスが喜び、ヒロの声にも喜びが混ざっている。
幸いにも機関車は使える為に南への移動時間短縮が見込める。ミア達が合流する前に準備を整えるとしよう。
稼働したとはいえ劣化もあった為に無理はかけられない。そこで連なっている車両を切り離し平台車2台、コンテナ車1台、旅客車1台と動力車と計5両編成に変更、人数を考えればこれで十分だろう。
「お待たせ!」
「お待たせしました」
そして数分後ミアとシオンが到着。
「皆乗って、出発だ!」
ヒロが号令をかけ、少女達は全員列車に乗り込む。
運転席に座るヒロがブレーキを外し、レバーを力行に入れると列車はゆっくりと走り出す。速度が上がるに連れ出力レバーを更に1段押し込むとそれに答えるかのように速度も上がっていく。
道中でトラブルが起きない事を祈りつつヒロ達はオークランドを出発。
目指すは隕石が落ちたニュージーランド北島南部だ。
ED2:HORIZON/TEAM SHACHI