Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP2:HIBANA/感覚ピエロ


#20 WINDS GOSPEL 05 風の福音 05

DFT級ディーゼル機関車を手に入れヒロ達はミアとシオンがMQ-9による上空からの偵察で発見した隕石落下地点、ニュージーランド北島南部テラウィティ岬を目指す。

 

「~♪」

 

そんな中、先程空腹を嘆いていたイリスは繋がれている旅客車の中でビスケットを何とも幸せそうに頬張っている。イリスに限らずここまで歩き続けていた人形達も客車の席に着き一息入れている。

だがよく見ればシオンの姿だけは客車内には見えない。

 

シオンはチカゲと共に先頭の動力車で周辺の警戒を行っている。さすがに1人で全方位はカバー出来ない為チカゲが列車の左舷側、シオンが右舷側を警戒している。

 

そんな中で列車で行こうよろしく南北縦断を試みていると、

 

「指揮官、2時方向に軍用車両(ハンヴィー)を確認」

 

列車右舷側を警戒するシオンがそれを発見した。

ヒロがその方向を見ると、確かに軍用車両HMMWV(ハンヴィー)の姿があった。

しかし最後に確認出来たのはヒロ達が女性の人影を回避し1本北側のオークランド道路に出た時。その時は既に南へ4ブロックも進んでいたはずなのだがその時のスピードを考えると思ったより進んでいないようである。

 

どうやら向こうは(ツキ)が味方しなかったようである。

普通ならすぐに追いつくのは難しい状況だっただろうが、恐らく事故かE.L.I.D(ゾンビ)の攻撃により道路が塞がれていた為に迂回を余儀なくされたのだろう。

 

それを察せたヒロは頭に悪い考えが浮かび、端末を手に取るとミアとイリスに繋ぐ。

 

「ミア、イリス、悪いけど少し手を貸してくれ」

 

《どうしたの?》

 

「何、余計な時間を食わされたからちょっとからかってやろうってね」

 

それは腹いせの為に相手を軽く煽るという何とも子供じみた事。年齢的に言えばヒロは確かにまだ子供ではあるが。

そしてそれはミアとイリスも。2人は明るい性格と言うかイリスは天真爛漫、ミアは元気溌剌と性格が少し似ている事もあってか仲は良いがそのせいもあってか時折こうしてヒロの子供じみた提案に乗っかってしまう。

 

列車が軍用車両(ハンヴィー)に近づき、両者の距離が100mを切った所でヒロが機関車の警笛を鳴らした。

列車の車輪と駆動音で既にこちら側に気づいていたとしても、近距離でいきなり大音量の警笛を鳴らされれば流石にビックリするだろう。

ヒロ達はそのまま軍用車両(ハンヴィー)の左隣を追い抜いていくが、その際に平台貨車に移動していたミアとイリスが何やら悪戯な笑みを浮かべており、

 

『べぇ~ッ!』

 

2人が乗る貨車が通過する際に2人同時に右手人差し指で右目の下瞼を引き下げながら舌を出す、所謂アッカンベーである。

そしてそのまま列車が完全に軍用車両(ハンヴィー)を追い抜いた際に、更に挑発するように警笛を鳴らし列車は遠ざかる。

 

軍用車両(ハンヴィー)の運転手も頭に来たのか速度を上げようとするが途端に急ブレーキを掛けて停車する。

車両の眼前には恐らく避難民達が乗り捨てたであろう車による長蛇の列が出来ておりとても通れるような状況ではない。

 

対してヒロ達が乗る列車は悠々と線路を行き、順調に南への歩を進める。

 

途中にヒロのトイレや休憩等で数度停まったものの、それ以外は線路の寸断もE.L.I.D(ゾンビ)の襲撃も無くすこぶる順調である。

 

・・・いや、ヒロは1つだけ違和感を感じていた。

しかもそれは、南に近づくにつれ大きくなっている。

 

「・・・」

 

「どうかしたのヒロ?」

 

その違和感を感じ取り、運転席から出てきたヒロが怪訝そうな顔をして周囲を見ている事をチカゲが変に思い訪ねる。

 

ヒロが感じた違和感。それは・・・()()()()()()()()のだ。

 

ニュージーランドは環太平洋地域に属しており、その地域一帯は北蘭島事件における大規模コーラップス汚染により人間等がまともに住めるようは状況ではなくなっているはずなのだ。

 

そのはずなのに何故空気に澱みを感じないのか。ヒロはそこに違和感を感じ胸騒ぎを覚えて仕方なかったのだ。

 

するとヒロは徐に端末を取り出し何やら操作を始める

 

「何してるの?」

 

「端末のセンサーで大気汚染のレベルを計る」

 

「移動中の列車の上で?風とかで数値狂わないかしら?」

 

「分かってる、その上でやるんだ。そもそも端末のセンサーも簡易的な物で本格的な計測器には負けるんだ」

 

そこで、移動中にも関わらずヒロが端末による簡易的な大気の汚染レベル計測を行う。本格的な汚染の測定は出来ないがある程度の目安には出来るだろう。

 

・・・するとどうだろうか。

端末の簡易計測機能が測定した大気汚染のレベルはD、しかも目的地であるテラウィティ岬のある南へ近づくにつれ徐々に汚染レベルも下がっていっている。

 

一般的に汚染区域の区分は危険区域(レッドゾーン)注意区域(イエローゾーン)安全区域(グリーンゾーン)の3つに分けられる。

 

私設武装組織(フェンリル)ではその3つの区域分けの更に細分化し危険区域(レッドゾーン)をレベルA、注意区域(イエローゾーン)をレベルBとCとD、安全区域(グリーンゾーン)をレベルEに分けている。

 

その汚染レベルの簡易計測の数値はレベルD。しかも安全区域(グリーンゾーン)である事を示すレベルEまで下がりそうな程数値も低い。

環太平洋地域に該当するニュージーランドなら最低でも危険区域(レッド)寄りの注意区域(イエローゾーン)レベルBはあると思われるのだが・・・。

 

「どういう事かしら・・・」

 

端末の計測値を見てチカゲもヒロが思っていた事と同じ事を呟いた。

大規模コーラップス汚染の被害に遭ったはずのニュージーランドがこれほどクリーンなのはどういう事なのか・・・

とは言ったものの、ニュージーランドの汚染状況を知らない為に一概には言えない。

 

真実は目的地に着けば分かるだろう。

 

 

 

 

その後も数時間列車に揺られ続け、列車は北島南部のニュージーランド首都ウェリントンに着いた。

テラウィティ岬までの路線は流石に繋がっていなかったようで、ここからは別の移動手段が必要だ。理想としては悪路走破性を備えヒロ達が1度に全員乗れるような物。

 

住民達が国から脱出する際に乗り捨てた車両がそこかしこにあるがどれも一般用の乗用車(セダン)で全員は乗れない。

 

が、天はここでもヒロ達に手を差し伸べてくれたようである。

 

「指揮官、あれは使えませんか?」

 

隊列右側を警戒するシオンが発見し指を差した先には、暴徒鎮圧用に展開されたと思われるニュージーランド陸軍の軍用車両NZLAV*1があった。

 

もし動くのであればこの上なくありがたい。NZLAVは乗務員として3人の他に兵員6、7人を乗せての運用が可能だ。ヒロ達の人数も収まり長距離の移動も出来る。

 

ヒロ達が周辺を警戒する中シオンがNZLAVの状態を確かめに行く。

鍵は差してあるまま。後は動くかだが・・・

 

シオンが操縦席のレイアウトを確認し、エンジン始動を試みる。

 

「無事に動けばいいですが・・・」

 

シオンも無事に始動する事を祈りエンジンをスタートさせる。

最初は弱弱しい音で力なく回る様だったが、1度勢いが付き回り出すとやがてエンジンが始動した。

 

エンジンが始動しハンドルもギアも問題なく動作する、その事にシオンは安堵の溜息をつきヒロの方を見る。

 

ヒロもシオンに向け右親指を立ててサムズアップ。そして右腕を回して全員をシオンの下に集める。

その指示にすぐさま全員が集まりNZLAVの後部席へ乗り込み、今度はシオンの運転で目標地点へ向かう。

 

 

 

 

テラウィティ岬。ニュージーランド北島南西端に位置する岬。

 

ヒロ達が目標とする隕石は偵察の情報通りならここに落下したという。

安全を考慮し落下地点より離れた位置に停める。

 

「俺はNZLAV(こいつ)を見ておく。皆は先へ、すぐ合流する」

 

『了解』

 

少女達はNZLAVの点検を行うヒロより先に目標地点の確保に向かう。

 

積んであった予備のケーブルとバッテリーに交換するだけである程度調子は上がる。

それを確認し、ヒロはすぐさま先に行った少女達を追いかける。

 

しかし、ここへ向かう道中から感じてきた違和感がここに来て1番強くなったような感じがしていた。周辺に咲き乱れる白い花もそうだがこの周辺はより空気が澄んでいるようだ。

 

「・・・」

 

違和感を拭う為にヒロは再度端末による汚染レベルの簡易測定を開始。

するとどうだろうか。端末のセンサーは周辺大気の汚染レベルを安全圏のレベルEと認識。つまりこの一帯は人間を始めとする生物が住んでも問題ないという事になる。

周囲に咲いているこの白い花が原因なのか、それとも他の要因・・・と言うより落下した隕石が原因で白い花が咲いたのか・・・。

 

どの道、原因は調べてみれば分かるだろう。

 

端末をポケットにしまい進行を再開したがヒロが思っていたより早く先に行ったはずのチカゲ達と合流出来た・・・いや、何かイレギュラーが発生し進行を躊躇っているかのようである。

 

「どうかした?」

 

「司令官、目標地点付近に既に別勢力が潜伏しているようです。その上、調査対象が・・・」

 

シズカのどこか言い淀む雰囲気にヒロは戸惑い、確認の為に双眼鏡で確認。

 

まずシズカが言っていた別勢力。

それはちょうど隕石落下のクレーターと思われる大きな地面の窪みの左側。確かに何者かが潜伏している。

 

しかしその姿に見覚えのあるヒロには特定は難しくない。

 

 

猫耳のような物が頭から生えているシスターのような服装をした少女:戦術人形P7。

 

グレーのへそ出しルックと帽子、赤いマフラーを首に巻く少女:戦術人形MP-446。

 

ボタンが外れている黒い上着に黒ブーツ、ベレー帽風の黒い帽子の少女:戦術人形C96。

 

カーキのインナーとジャケット、帽子を身に着けた少女:戦術人形M1919A4。

 

長い金髪に黒いドイツ軍服調の服装を纏う少女:戦術人形StG44。

 

ロシア帽(ウシャンカ)を被りロシアの民族衣装を纏う少女:戦術人形PPSh-41。

 

最後の1人はミアと同じ姿、戦術人形Vz61 スコーピオン。

 

 

「ヒロ、もしかしてあの子たち・・・」

 

「ああ、グリフィンだな」

 

あんな分かりやすく戦術人形だけの部隊を組む組織は、ヒロの知る限りG&K(グリフィン)くらいしか思い当たらない。

 

次はクレーターの中にあると思われる隕石を確認・・・しようとしたが、見えた物に対し思わず目を疑ってしまった.

クレーターの中心にあるはずの隕石は何処にもなく、代わりにあったのは地面に横になって蹲る少女らしき人影。

 

下側でターコイズにフェードしている肩に少しかかる程度の短い黒髪。服装は白いシャツに灰色のパーカーだけ。

 

どういう事なのだ、落下したのは隕石ではなかったのか?

 

その疑問がヒロの頭の中で渦巻いているが、目に飛び込んできた状況に疑問なんて吹き飛んでしまい、そして叫ぶ。

 

「待て!撃つなぁッ!!!」

 

ヒロが叫んだ先には榴弾をランチャーに装填しクレーター内で蹲る少女に向けるグリフィンのStG44がおり、止めようとするがグリフィンの人形である彼女が部外者(アウトサイダー)であるヒロの言葉に耳を貸す訳もなく榴弾が発射。そしてその榴弾は少女に直撃し少女はバラバラになる・・・。

 

 

「!!!!」

 

 

突然少女の目が見開いたと思いきや、少女を中心に竜巻が発生し榴弾を巻き込む。

巻き込まれた榴弾は空高く上がりそして炸裂した。

 

まるで襲い掛かろうとしてきた外敵から自己を守るかのように突然発生した竜巻が、今度は少女が腕を大きく広げた事で打ち消される。

 

竜巻が晴れて再び姿を現した少女は、先程確認した時の姿と大きく異なっていた。

 

 

少女の髪のターコイズ部分は光っている。

服装は白いドレスに胸部分が開き青緑(ティール)のアクセントが入った腕を覆う黒いオーバーコート、首には白いマフラー、両手には青緑のグローブ、腰には風車の形をした緑のリボンを着けている。

両足には包帯が巻かれており、更に背中には髪の色と同じようなターコイズブルーの翼が生えている。

 

そして見開かれた彼女の瞳は髪や翼と同じターコイズブルーで、その瞳は光に染まっている。

 

 

どうやら先程の榴弾での威嚇を攻撃と認識して刺激してしまい、彼女はヒロ達を外敵と判断したようだ。

こうなってしまっては取る手段は1つしかない。

 

「仕方ない・・・皆、構えろ!!」

 

G36Cのチャージングハンドルを引くヒロの掛け声にチカゲはスカートから大鎌状マニピュレーターを展開、シズカ以下他の戦術人形達も自身の半身を構え臨戦態勢を整える。

 

 

 

 

WARNING

 

THE AREA TARGET

HERRSCHER OF THE WIND

IS APPROACHING FAST

*1
スイス・モワク社で開発された装輪式装甲兵員輸送車ピラーニャ、その発展型で1996年に開発されたピラーニャ Ⅲのニュージーランド陸軍仕様。




ED2:HORIZON/TEAM SHACHI
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