Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
ヒロ達のニュージーランドでの任務は事実上失敗という形で幕を下ろした。
2機の機動兵器によって少女を奪われてしまったヒロ達は、その悔しさを胸に秘めながらアナトリアへと帰還した。そして今回の任務の報告を行う為、セラフがいる中央司令室でユウゴを始めとする幹部達を呼んで事情を説明する事にした。
あの場所で何があったのかを聞いた皆は驚愕し、特にユウゴは信じられないといった表情を浮かべている。
そして一通り報告を終えたヒロは、大きくため息を吐いてから口を開いた。
「・・・という訳で、今回の任務は完全に失敗だ」
そう告げると幹部達が信じられないといった様子でざわつき始める。
だがそれも無理はない。セラフのバックアップ有りとはいえヒロの任務成功率の高さは皆が知っている。にも関わらず、ヒロとヒロが選んだ精鋭が返り討ちに遭い挙句の果てには目標の少女を奪われてしまったのだから・・・。
しかしユウゴはすぐに我に返ると、焦りと心配が入り混じった様な表情を浮かべながらヒロに詰め寄る。
「それで・・・その女の子は今どこに?」
「分からない、機動兵器の片割れが連れ去ったから追跡も出来ないし・・・それにあの2機には俺達では歯が立たない」
その言葉にユウゴは悔しそうに歯噛みする。
そんなユウゴを宥めるようにセラフがカメラアイを点滅させ発言する。
≪コマンダーの判断は最適と判断しますユウゴ。コマンダーの報告通りであれば1度に2機を相手にする事は避けるべきです≫
「・・・分かってるけどよ・・・ッ!!」
そう言ってユウゴは苛立ちを隠そうともせず舌打ちをする。
そんなユウゴを見てヒロが困ったような表情を浮かべていると、今度はシオンが口を開いた。
「指揮官の仰る通りですユウゴさん、今回の作戦は失敗しました。ですがまだ終わった訳ではありませんのでご安心ください」
そう言うとシオンはヒロに視線を向ける。
「指揮官、今回の作戦で捕獲を試みた少女の事ですが・・・」
「ああ、分かっている。あの子をどうするかは話し合って決めるつもりだが・・・まずはあの2機に奪われた以上そう簡単には捕まえられないだろうからな」
ヒロの言葉にシオン達は同意するように頷く。
クアンタと黒いセラフの戦闘力はとても高く、更に連携も完璧だった。あれでは例え戦術人形であるチカゲやシズカ達でも歯が立たないだろう。
しかしだからといって諦める訳にはいかない。少女の事をこのまま放置しておけば実験の被験者にされるか最悪解剖されるかも、更に最悪なのはそれに恐怖した少女が大きな災厄を引き起こす事になりかねない事に繋がるからだ。
だからこそ何としてでもあの少女を捕らえなければならないのだが・・・現状ではそれも難しいだろう。
そこでヒロはシオン達に視線を向けると静かに口を開く。
「・・・この任務を成功させる方法は大きく見て2つあると思う」
1つはヒロ達、私設武装組織フェンリルの主戦力を投入して攻撃を仕掛け、力尽くで少女を確保する事だ。だがこの作戦の場合、もしかすれば少女の命を奪う事になるかもしれない。その上相手が予想以上の戦力を保有していた場合は逆に返り討ちに遭い全滅するリスクもある。
もう1つは少数精鋭で拠点へ潜入し、気づかれずに少女を確保する。だがこの作戦の場合、少女を確保出来たとしてもヒロ達の戦力ではあの2機に勝てるかどうか分からない上に、潜入した事がバレた場合のリスクも大きい。
どちらを選んでもリスクは付き纏う。だからこそヒロ達はどうすべきか迷っていた。
するとそんなヒロ達を見ていたセラフが再びカメラアイを点滅させながら発言する。
≪・・・コマンダー、提案があります≫
その発言にシオン達は一斉にセラフの方へ視線を向ける。
そんな皆の視線を受けながらもセラフは淡々とした口調で話を続ける。
≪今回の任務は失敗しました、しかし幸いにも目標の少女は奪われましたが未だ少女による破壊や捕獲には至っていません≫
その言葉にユウゴとシオン達はハッとした表情を浮かべる。確かにまだ少女を捕らえただけで、破壊や捕獲といった明確な被害は出ていない。
つまりまだチャンスはあるという事だ。その事に気付いたシオン達は互いに顔を見合わせると頷き合う。
そして戦術人形達はヒロに視線を向けると口を開いた。
「指揮官、ここはもう1度だけ作戦を練り直しましょう」
「幸いにもまだ時間はありますし、もう一度やり直せば必ず成功します!」
シオンフィリーネのその言葉に他の人形達と幹部達も同意するように頷く中、ヒロも力強く力強く頷き返しながら口を開いた。
「・・・分かった、ならもう一度作戦を練り直そう。今度は必ず成功させるぞ」
ヒロの言葉にシオン達は力強く頷くのだった。
それからヒロ達は再び少女を奪還する為の作戦を練り直す事となったのだが・・・。
しかしあれから数時間が経過したが未だに良い案は浮かんでいなかった。
あの2機の機動兵器に対抗できる戦力を整える事が難しい上に、潜入して少女を確保するという目的がある以上あまり多くの戦力を投入する訳にもいかない。
だからこそ少数精鋭で挑むしかないのだが、そうなるとどうしても作戦の成功率は下がってしまう。現に今までヒロ達が成功させた任務だって、そのほとんどがヒロ単独か少数精鋭によるものだったのだから・・・。
ヒロは作戦会議室で難しい表情を浮かべながら考え込む。しかしどれだけ考えても良い案が思い浮かばず、逆に焦りだけが募っていく。
するとそんなヒロの姿を見たシオンが心配そうに声を掛けてきた。
「指揮官、あまり思い詰めない方が良いですよ。焦りは判断力を鈍らせるだけですから」
その言葉にヒロは苦笑いを浮かべながら頷く。しかしその表情にはやはり疲労の色が濃く滲み出ていた。
(・・・このままじゃ埒が明かないな)
そう思ったヒロは気分転換も兼ねて少し休憩を取ろうと席を立つと、そのまま司令室を後にしたのだった。
そうしてヒロが立ち寄ったのは馴染みの飲み屋、昼間は
(・・・はぁ、やっぱりここのコーヒーが一番落ち着くな)
そう思いながらホッと息を吐くと、今度は店内に視線を向ける。するとそこにはいつものように常連客達が楽しそうに談笑しながら食事を楽しんでいた。その光景を見たヒロは少しだけ気持ちが安らぐのを感じながら再びコーヒーを口に含む。
そしてそのままコーヒーを飲みながらぼんやりと店内の様子を眺めていると、不意に声を掛けられた。
「あらヒロちゃんじゃない♪今日もお仕事お疲れ様」
そう言って声を掛けてきたのはこの店の店主の
この飲み屋の店主夫妻は元は別の国で喫茶店を経営していたのだが、胡蝶事件で国を追われ難民生活を余儀なくされていた所をヒロが保護した。
今では喫茶店と飲み屋の経営を再開出来ただけでなく、営業に興味を持った子供達に仕事も教えているという。お陰様で店の後継者の心配も無いそうだ。
彼女はニコニコしながらカウンター越しに話しかけてくると笑顔で話しかけてきた。
「ふふっ、なんだかお疲れみたいね?大丈夫?」
その言葉にヒロは苦笑いを浮かべながら口を開く。
「ええ・・・まあ色々ありまして・・・」
そんなヒロの言葉に女将さんは優しく微笑むと言葉を返す。
「そう、でもあんまり無理しちゃダメよ?ヒロちゃんはいつも頑張ってるからたまには息抜きしないとね」
「ありがとうございます、女将さん。・・・ところで、何かオススメはありますか?コーヒーのおかわりを貰いたいんですが」
「あらそう?ならちょっと待っててね♪今淹れてくるから」
そう言って女将さんはキッチンの方へ引っ込んでいった。そんな後ろ姿を見つめながらヒロは小さくため息を吐くと再びコーヒーを啜る。
(・・・これは本格的に参ってるな)
そんな事を考えつつ、ヒロは窓から見える景色に目を向ける。
窓の外では夕焼け空が広がっており、その美しい光景を見ていると不思議と心が安らいでいくような気がした。
(・・・たまにはこういう時間も必要だな)
そんな事を考えつつコーヒーを啜るヒロであったが、やがてヒロを睡魔が襲い始める。
(・・・いかん、眠い)
そう思いながらも何とか睡魔と戦っていたヒロであったが、やがて耐え切れなくなり静かに目を閉じる。そしてそのまま深い眠りへと落ちていったのだった。
それからどれくらいの時間が経っただろうか?ふと何か温かいものに包まれているような感覚を覚えながらゆっくりと意識が覚醒していく。
(・・・ん?なんだこれ・・・)
まだ少し寝ぼけている頭を働かせつつ目を開けると、そこには見知らぬ天井が広がっていた。
(あれ・・・ここは何処だ?俺は確か飲み屋でコーヒーを飲んでて・・・)
そこまで考えたところでヒロの意識は一気に覚醒する。
(そうだ!俺は確か飲み屋でコーヒーを飲んでいて、それから寝落ちして・・・って、あれ?じゃあなんで今こんな所にいるんだ・・・?)
そう思いながら周囲を見渡すとそこは何処かの部屋のようで、自分はベッドの上で眠っていたようだ。しかし何故自分がそんな場所にいるのか分からず困惑していると・・・。
≪おはようございますコマンダー≫
そんな声と共に目の前にセラフの顔が現れた。突然の事に驚いたヒロだったが、すぐに冷静さを取り戻すとセラフに声を掛ける。
「あ、ああ・・・おはようセラフ」
するとセラフはカメラアイを点滅させながらゆっくりとスピーカーから声を流す。
≪コマンダー、ここは私達が使用している司令本部です≫
その言葉にヒロは首を傾げる。何故自分が司令本部で眠っていたのか?そしてそもそも自分はあの飲み屋で寝落ちしたはずなのにどうしてここに居るのか?それらの疑問を解消すべくヒロは質問を投げかける事にした。
しかしその前にまずは現状を把握する必要がある。そう思ったヒロはまずセラフに質問を投げ掛けた。
「・・・なあセラフ、俺はあの飲み屋で寝落ちしたはずなんだが」
するとセラフはカメラアイを点滅させながら淡々と答える。
≪肯定、コマンダーはあの飲み屋で寝落ちしました≫
その言葉にヒロはやっぱりかと思いながら質問を続ける。
「じゃあどうして俺はここに居るんだ?」
その問いにセラフはカメラアイを点滅させながら答えた。
≪店主の妻より報告を受け私がチカゲとユウゴに回収を依頼しました≫
その答えを聞いたヒロは思わず頭を抱えたくなった。
思っていたより自分の身体に疲労が蓄積していた事に気づかずに自分が寝落ちしたせいでセラフ達に心配をかけてしまった・・・。だがまあ、とりあえず今はその事については置いておくとして。
ヒロは改めて周囲を見渡すと、そこには見慣れた司令本部兼研究所の内装が広がっていた。部屋の広さや家具の位置なども特に変わった様子は無い為、どうやらここは本当に自分達が利用している拠点のようだ。
それを確認したヒロはホッと安堵の息を吐くとセラフに視線を向ける。
「そうか、なら良かった・・・とりあえず皆には心配をかけたな」
そして改めて謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、突然部屋の扉が開いたかと思うとそこからシオン達が飛び込んできた。
「司令官!大丈夫ですか!?」
そんなシズカの声と共にシズカ達は一斉にヒロの元へ駆け寄ってくると心配そうに声を掛ける。その勢いに圧倒されながらもヒロは慌てて口を開いた。
「あ、ああ・・・大丈夫だぞ?ちょっと飲み屋で寝落ちしただけだからな」
それを聞いたシズカ達はホッと安堵の息を吐く。
「良かった・・・」
「ったく、心配させんなよな!」
そんなシズカとユウゴの言葉にヒロは苦笑いを浮かべる。
「悪かったよ、だがもう大丈夫だ。とりあえず皆も座ってくれ」
そう言ってヒロが促すとシオン達は素直に従って椅子に座る。それから改めてシオン達に謝罪と感謝の言葉を伝えたヒロは、今度はセラフに視線を向けた。
「セラフ、俺が寝ている間に何か変わった事はあったか?」
するとセラフはカメラアイを点滅させながら答える。
「いえ、特に何もありませんでした」
そんな答えを聞いたヒロは安心したように息を吐くと静かに頷く。
(・・・どうやら本当に何もなかったようだな)
そう判断したヒロは改めてシオン達に視線を向けると口を開いた。
「さて、それじゃあそろそろ本題に戻ろうか」
その言葉にシオン達は頷くと真剣な表情でヒロを見つめる。
あれからヒロはずっと作戦プランを考えていたが結局は行き詰まり疲労で寝落ちするという結果となってしまった。
やはりどうあってもリスクを回避する事は出来そうにない。すると今度はセラフが発言する。
≪コマンダー、提案があります≫
その言葉にヒロ達は一斉にセラフへ視線を向けた。
そしてセラフはカメラアイを点滅させながら淡々と説明を始める。
≪まず最初に、私達の戦力は現状では圧倒的に足りません。その為、まずは敵の戦力分析から始めるべきです≫
その提案を聞いたヒロは大きく頷く。確かに相手の情報が無いまま戦うのは無謀だろう。だが逆に言えば相手の情報さえ手に入れば勝機はあるかもしれないという事だ。
そこでセラフが提案した作戦プランはこうだ。
第1段階に敵地に少数精鋭の部隊が潜入し、敵の情報を待機する主力部隊へ伝える。
その中でもし主力部隊への脅威になる物があった場合は稼働前に潜入部隊が破壊工作を行う。
第2段階としては潜入部隊への注意を逸らすべく主力部隊が敵部隊へ攻撃を仕掛ける。
そして第3段階として潜入部隊が敵拠点から脱出すると同時に主力部隊も撤退し、そのまま離脱する。
要は2つの作戦の折衷案。つまり第1段階で潜入部隊が敵軍の戦力を把握或いは排除、第2段階で主力部隊が敵部隊に攻勢を仕掛け陽動するという作戦だ。
この作戦の問題点としてはまず敵の情報が少なすぎる事だろう。いくら少数精鋭とはいえ敵の情報が無いまま挑むのはあまりにも危険過ぎるからだ。それにもし仮に少女を確保する事が出来たとしても、その後の脱出に失敗する可能性もある。
だがそれでも今自分達が取れる手段はこれくらいしかないだろう。ならば少しでも可能性のある作戦を実行に移すしか無い。
そこでヒロはユウゴに確認を取る。
「ユウゴ、今動かせるこちらの戦力は?」
するとユウゴは少し考え込んだ後、口を開く。
「そうだな・・・まぁでも、例え準備してなかろうがどこの連中もヒロが一声掛けりゃすぐ準備するだろうよ」
その答えにヒロは苦笑い。確かにユウゴの言う通り、自分が一声掛ければすぐに準備は整うだろう。アナトリアの住民はヒロに救われた結果ヒロに信頼を置く者が全てを占め、フェンリルは命を懸けると忠誠を誓った者達が集っている。
だがそれでもヒロとしてはなるべくなら皆には危険な目には遭ってほしくないと思っている。その為にもやはり出来るだけリスクは避けたいというのが本音だった。
(・・・とはいえ、もう既に後戻りできないところまで来てしまっているからな)
そんな事を考えつつヒロはシオン達に視線を向けた。
するとチカゲとシズカ、シオン達も真剣な表情で頷いてくる。どうやら彼女達も同じ気持ちのようだ。ならばもう迷う必要は無いだろう。
そう判断したヒロは力強く頷くと口を開いた。
ED2:HORIZON/TEAM SHACHI
AIのべりすとのお陰で予定より早く終わったな( ̄▽ ̄)
ちょっと変な部分あるのはご愛敬って事でw