Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
敵長距離レーダー基地に潜入し発電施設の冷却設備を破壊する為、ヒロは施設内を移動していた。
発電機を破壊せず冷却設備のみを破壊する理由は、敵基地の電力供給に使われる発電機に
仮に敵が外部電源からも電力供給を行っているのであればその送電ラインを破壊しても良いのだが、そこはチカゲを信じ任せている為ヒロは冷却設備の破壊に専念する事にしたのだ。施設の見取り図は入手済み。
ヒロが目指す冷却設備は施設の中央部にある。その為、まずは中央部へ向かう為のルートを進む必要があるのだが・・・。
≪コマンダー、敵部隊が接近≫
セラフからの警告を聞きヒロが足を止める。そして周囲を見渡してみると、暗闇の中から複数の人影がこちらに向かってくるのが見えた。
暗闇で相手の顔は見えないが、その人影の手にはアサルトライフルやサブマシンガン等の銃器が握られている。
敵部隊の目的は発電施設の警備だろう。発電施設を警備する部隊にとって潜入したヒロは当然敵部隊のターゲットだ。
だが、ここで戦闘を行っては警備が強化され発電施設の破壊が困難になる。
そこでヒロは敵部隊に気付かれる前に移動を開始し、敵部隊の死角へ回り込む事にした。
幸いにもこの区画は施設を支える太い柱や交換用のスペアパーツを入れたコンテナがあり身を隠す場所は幾らでもある為、ヒロは暗闇の中で静かに移動する。
そして敵部隊が通り過ぎるのをやり過ごし、再び移動を開始する。
敵部隊に気付かれていないとはいえ、いつまた鉢合わせになるか分からない為ヒロは移動中も常に周囲を警戒し続ける。
敵部隊の死角に回り込む際、ヒロは柱の陰から敵部隊の様子を確認する。どうやら敵部隊は2人一組で行動しているようで、2人組が4組程巡回しているようだ。敵部隊の巡回ルートを把握したヒロは、今度は柱の陰から飛び出すと巡回中の2人組の背後に回り込み1人を蹴り飛ばしもう1人の頭を掴み地面に叩きつける。そしてそのまま2人組を気絶させると、装備していたアサルトライフル A-91を奪い取り敵部隊に見つからないようその場を後にする。
奪ったA-91アサルトライフルを構えながら再び移動を開始したヒロは、施設中央部まで後少しという所で立ち止まり物陰に身を隠す。
物陰から注意深く様子を伺うと、そこには2人組の警備員が巡回していた。
ところがその2人組の警備員は先程までの迷彩服を着ていた人間ではない。
フルフェイスのヘルメットに上半身から腰に掛け白い装甲板で覆われている様から恐らくは何処かの自律人形と推測出来るが、ヒロの記憶にある限りそのような歩兵型人形を製造する企業や勢力に心当たりが無い。
いや、厳密に言えば見覚えがあるような記憶があるのだがその辺りの記憶はぼんやりと曖昧な為確信を持てないのである。
そこで人間で言う所の脳を破壊し機能を止めるべく、装備を先程の警備員から奪ったA-91から自分の
警備の人形がヒロの潜む場所へ近づく中、ヒロは息を殺しタイミングを計る。
そして警備の人形がヒロの潜む物陰まで残り2メートル程の距離に迫った時、ヒロは引き金を引き警備の人形の頭へ弾丸を叩き込む。
消音器によって銃声を抑えた為、ヒロに気付く事無く頭に銃弾を受けた警備の人形はそのまま地面に倒れ動かなくなった。
しかし1体倒しただけでは敵の増援を呼ばれる可能性が高い為、すぐさまもう1体の警備の人形にもSFP9で銃撃し機能停止させる。これで増援が呼ばれる心配はない。
ヒロは倒した2体の警備人形を引っ張って物陰に隠し、そのまま施設中央部へ進んでいく。
施設の中央部に到着すると、そこは冷却塔の内部のようで巨大な冷却装置が4基鎮座していた。
熱媒体は太いパイプを通り冷却装置内で冷却され装置に搭載される4基の巨大なファンからは熱気と水蒸気が排出されている。
しかもどうやらこの冷却施設は発電機だけでなく、レーダーや管制コンピュータで使われている熱媒体の冷却も行っているようだ。
おまけにこの区画は冷却効率向上の為に室内の温度を下げているのだろう。その証拠に室内には冷房が効いているかのように肌寒い程だ。
この冷却装置を破壊すればこの区画の熱媒体が暴走し、周囲の温度は急激に上昇するだろう。
そうなれば施設内は灼熱地獄と化し発電機やレーダー管制に使われる精密機器は熱暴走、敵味方問わず甚大な被害が出る事は想像に難くない。
ヒロが持参してきた装備の中には爆破に最適なC-4 プラスチック爆薬もある。
生憎と持ってきたC-4爆薬は時限起爆方式しかないがこの区画の熱媒体を暴走させるには十分、基地から離れる時間も設定出来る。
そこでヒロはメンテナンス用の階段を降り冷却装置の底部へ。冷却装置の底部にはメンテナンス用の通路が張り巡らされており、ヒロは整備員と警備員に見つからないように物陰に隠れながら奥へと進む。
そして装置内の目的の場所に辿り着くとC-4をセット。
設置位置はファンの根本と熱媒体が通るパイプが通る場所。冷却に高圧で水を霧状に噴射し熱を奪っている為に熱気と湿気が凄まじいが爆破の効力が最大になる場所がそこしかないのだ。
ヒロはC-4を4基の冷却装置全てにセットすると、すぐにその場から離脱する。
《ヒロ、こっちは爆弾の設置が終わったわ》
「了解。すぐに離れるんだ、それと耳を塞いでおけよ?」
丁度別行動中のチカゲも外部電源ラインを発見しC-4の設置を終えたらしい。
後はヒロが持つ起爆スイッチで爆弾側の装置を起動させるだけ。
そしてヒロが発電施設を離脱しすぐさま携帯で設置した全ての爆弾の起爆装置を起動、C-4にセットされたタイマーが起動しカウントを始める。
カウントは1分から始まり徐々に減り始め、爆発前にヒロとチカゲは基地の敷地から離脱し速やかに合流、外周で待機していたシズカとも合流し退避。
やがて0になると装置内で大爆発が起きる。爆炎と衝撃波が冷却装置内を駆け巡り、熱媒体のパイプやファンを吹き飛ばしていく。
施設内に警報が鳴り響き、基地内は慌ただしくなる。
施設から退避したヒロ達は、基地から離れた位置にて起爆させたC-4がもたらした結果に満足していた。
そして基地が大混乱になっている隙に離脱し、シズカが待機している間に確保した73式小型トラック*1に乗り込み移動する。
――――――主力部隊到着及び
破壊したレーダーサイト基地とは別の防空レーダーが恐らくユウゴ達フェンリル主力部隊を乗せた輸送機と護衛機の大編隊を捉えた頃だろうか。
先んじて中部地方・石川に到達したヒロ達は、まず周辺の状況を偵察する事に。
「おいおい、あいつら町を要塞にしたのか・・・?」
その様子を町を見下ろせる高台から双眼鏡で偵察するヒロは思わず言葉を零した。
フェンリル主力部隊をぶつければ多少の時間稼ぎは可能と踏んだが、相手がこれ程の規模となればフェンリル側も犠牲者は避けられないかもしれない。
可能であればヒロとしては仲間の誰にも死んでほしくない、しかしこの作戦に参加したフェンリル兵士達は皆ヒロに忠誠を誓い、覚悟を決め臨んでいる。
ここで今更決意を鈍らせる訳には行かない。
森谷 闘真が言っていた何者から分からない政敵が持つ私兵軍とヒロ率いる私設武装組織 フェンリル・・・2つの勢力の直接対決の火蓋が、間も無く切って落とされようとしていた。