Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP2:HIBANA/感覚ピエロ


#28 JAPAN VS FENRIR 05 日本 VS フェンリル 05

山犬(ワイルド・ドッグ)・・・それは狼の別名であり、了賢がヒロに自ら名乗った名前でもある。

山犬は狼の様に獰猛で狂暴な存在であるという意味を込めて名付けられたのだが、その真意を知る者は誰も居ない。

映像に映る了賢はヒロの記憶にある姿よりも少し成長しているが、その顔立ちや黄色い目は変わっていない。映像に映る了賢は隣にいる少女と共に部下らしき人物に指示を出し、部下が電源コードが繋がったままの医療機材からコードを抜く。

そして少女と数人の部下と共に病室を去って行く。

 

・・・目標の少女が眠るベッドと繋がれている医療機材ごと運び出して。

 

ヒロは映像を止め、チカゲとシズカに言う。

 

「今すぐ追うぞ!」

 

2人は頷き、3人は急いで病院を後にする。

 

しかし、了賢には少女の身柄確保と同時にもう1つ目的があった事を今のヒロ達は知らない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――フェンリル地上部隊 交戦開始から15分、敵部隊は戦車の砲撃と攻撃ヘリの支援攻撃で大打撃を受けながらも戦闘は続行。

 

《ハウンド2、一帯を制圧。北上します》

 

《ブラスター1、同じくこのエリアを抑えた。楽勝で欠伸が出そうだぜ》

 

作戦は順調、フェンリル地上部隊は前進を続けるが敵もただやられてばかりではないようである。

 

《こちらプレデター3、敵機接近!F-16・・・いや、あれは日本のF-2だ。このタイミングで来たって事は正規軍じゃないな》

 

AH-64D部隊の内の1機、3番機を務めるプレデター3から警告。

それは日本正規軍の戦闘機部隊ではなく、敵私設軍兵が駆る機体だった。

 

これまで上空を制圧され好き放題去れていた為、支援を削ぐ為に制空権の確保に移行したようだが既に手遅れであろう。

 

「サイヴァリア、出番だぜ?」

 

《了解。サイヴァリア1、交戦(エンゲージ)

 

制空権確保の為に既にフェンリルの戦闘機隊が展開を終えており、ニール(プレデター1)からの要請を受けサイヴァリア1がF-2を迎え撃つ為に急行。

プレデター隊正面より獲物を狩るべく急接近してくる深緑色の機体F-2A、そしてそのプレデター隊後方から別に接近する機影。

 

ロザリア(サイヴァリア1)が駆る青い機体、2重反転式6枚プロペラと左右対称に搭載された1対2基のターボチャージャー。フェンリルのレシプロ戦闘機スカイリィ J3である。

 

ジェット戦闘機相手にレシプロ戦闘機など勝てる筈がないと思うだろうがそれは乗り手・兵装・戦術次第で逆転出来、それは実際に歴史が証明している*1

 

ロザリアが駆るスカイリィ J3とF-2Aとがヘッドオン。スピナーから顔を覗かせるモーターカノンと主翼内蔵の機関砲4門が一斉に火を噴き一瞬の内にF-2Aに風穴を開けまくりやがてF-2Aが炎に包まれた。

 

敵機(バンデット)撃墜!》

 

ロザリアからの報告が飛び込む中、ロザリアは頭で別の事をしていた。

 

⦅サクラ、2時方向のバイパーゼロを⦆

 

⦅了解⦆

 

ロザリア含め彼らがサイヴァリアと称される所以、それは文字通り彼らが“超能力者”であるからである。

元々は違法な研究施設で非人道的な実験の被験者だったのだがそこを依頼を受けたヒロにより制圧され保護。その後はヒロ達の下で手厚い手当と環境で暮らしてきた。

もっとも、フェンリルの研究者達は「超能力は実験の後遺症により発現した」という説が今の所有力であるが・・・。

 

そして今、ロザリアから念話(テレパシー)で受け答えしたのはサイヴァリア隊の2番機を務めるピンク色の髪の少女サクラ。

 

そして彼女が駆る赤色のスカイリィ J3がすかさずF-2Aに追撃を仕掛ける。

直線速度では手も足も出ないが、サクラに追い回されるF-2Aは振り切ろうと躍起になっており速度がガタ落ち。そうなってくるとスカイリィが有利になって来る。

レシプロ戦闘機は速度ではジェット戦闘機に太刀打ちできないが、代わりにジェット戦闘機はその大柄な図体を飛ばすために大きいジェットエンジンを搭載する為どうしても重くなる。その為低速域となればその機体を上手く振り回す事が出来ない。

 

敵のパイロットはまさにその状況に陥り、やがてサクラのスカイリィに搭載されるレーダーがF-2Aを捕捉。

やがて主翼ハードポイントからサイドワインダー空対空ミサイルが発射。冷静さを欠いていた敵パイロットは成す術無くミサイルの餌食となった。

 

更に2機のF-2Aが飛来しヘリ部隊へ迫るが、それもヘリ部隊後方から飛来した2機の白いスカイリィ J3がサイドワインダーを放って撃墜する。

 

「助かったよ」

 

《面倒見てやるっつったろ?》

 

敵戦闘機の脅威を払ったサイヴァリア隊にニールは謝礼を言い、それに答えたのはロザリアとは違うはっきりとした男性の声。

サイヴァリア隊の4番機“麻霧 悠平(ユウヘイ・アサギリ)”、乗機は白に水色のワンポイントが入ったスカイリィ J3。

しかし軽口を叩いた悠平に対しニールは不服そうだ。

 

「ならなんでこんなギリギリまで近づけたんだ?」

 

それは格闘戦(ドッグファイト)をしたのがヘリ部隊と至近だった事。下手すれば同士討ちもあり得た状況だったのだ。

 

《ごめんなさい、これでも最速で来たのよ》

 

と、そこへ通信に割り込み謝罪する別の女性の声。

サイヴァリア隊3番機を務める“ケイ”である。乗機は白に黒のワンポイントが入ったスカイリィ J3。

実際彼女等、サイヴァリア隊からすれば最速で来たかもしれないが、レシプロ機の最高速などたかが知れている。

 

「そうかよ。ま、礼は言っとくぜ」

 

《どういたしまして》

 

《それはどうも》

 

ニールの謝礼にケイと悠平の2人が答える。ニールは助けられた事には感謝しているようだが、その口調からして素直になれていないようである。

そして上空ではサイヴァリア隊と他フェンリル戦闘機部隊が制空権を抑える中、地上部隊は前進を続ける。

 

戦闘が一段落した事で、ユウゴ(ハウンド1)は無線機を取り出し通信を掛ける。相手はエイミー(フォートレス)

 

「ハウンド1よりフォートレス、手の空いてるブラックホークを寄越してもらえるか?」

 

《え?あ、はい!至急連絡します。ですが何を・・・?》

 

エイミーはユウゴの意図を理解出来ず困惑するが、ユウゴはすぐに別の部隊へ通信。

 

「ヴァルキリー分隊、ノワール分隊、お前等はボスんとこに行け」

 

その部隊というのが、今回ヒロの部隊から外され主力部隊に編入されたミア(スコーピオン)イリス(MG08/15)フィリーネ(HK433)シオン(LR-300)。4人で構成される“ヴァルキリー分隊”。

作戦開始直前に姿を現した、()()()()()()()()()()()()()()をしている機械の下半身を持つ5人の少女達で構成される“ノワール分隊”。

 

その2分隊にユウゴは共に行けと指示を出す。

 

「しかしユウゴ、それでは地上部隊の戦力が・・・」

 

「おいおい、戦術人形にフォローしてもらわないとどうしようもない程お前達はひ弱になっちまったのか?気にする事はねぇ、ここは任せてお前等はボスを頼んだぜ」

 

《了解~!》

 

《了~解!》

 

《了解です》

 

《了解》

 

ミア、イリス、フィリーネ、シオン全員の応答が返ってくる。そして無線機からエイミーの声が入る。

 

《フォートレスからハウンド1へ、ブラックホークを派遣しました!コールサインはモルフォ3-1とモルフォ3-3です》

 

それを聞いてユウゴはすぐに部隊を動かす。

 

「了解、モルフォ3-1、モルフォ3-3はヴァルキリー分隊とノワール分隊をボスの所へ運んでくれ」

 

ユウゴの指示で分隊は移動を開始。

 

《了解!》

 

パイロットはそう返信し、UH-60M ブラックホークのパイロットは機体をユウゴの部隊付近へ着陸させる。

そしてヴァルキリー分隊とノワール分隊がヘリに搭乗する。

 

《ハウンド1からフォートレスへ、到着したぜ》

 

《こちらフォートレス、お疲れ様です。フェンリル航空部隊が敵航空隊を抑えている様子ですので今の内に》

 

《ああ。助かったよフォートレス》

 

《いえ、ご武運を。幸運を祈ります》

 

《ありがとよ》

 

ユウゴとエイミーの通信が終わり、ブラックホークは飛び立つ。

それを見送ったユウゴはすぐにハウンド隊の指揮に戻り、部隊は前進を再開。

 

 

 

 

 

――――――一方。

 

ヒロ、チカゲ、シズカの3人は山犬(ワイルドドッグ)こと白狼 了賢を追って北上している。

 

何故北なのか、と言うと病院のサーバーから外部カメラが拾った記録映像を引き出しセラフが解析、結果として了賢の部隊は北上したという結果に行き着いた。

北の何処かまでは探してみなければ分からないが入れ違いだけは何としても避けたい所だ。

 

「北と言っても広いですよ?」

 

「ああ。だから手分けして探す」

 

ヒロはそう答え、チカゲとシズカに指示を出す。

 

「俺はこのまま北上するから2人は西回りで頼む」

 

「了解」

 

「了解です!」

 

チカゲとシズカの2人はそれぞれ別方向へと進み始めるが、やはり土地勘の無い場所なのであまり効率的とは言えないだろう。だが今は時間が無いので仕方ない。

2人が移動を開始した頃、

 

「あれ・・・?」

 

ヒロが何かに気づく。

それはヘリのローター音だった。しかも徐々に近づいてくる。ヒロは音が聞こえてくる方向を見てみる。

すると、そこには向かってくる2機のUH-60M ブラックホーク汎用輸送ヘリ姿が見えた。

ブラックホークはヒロ達の前で着陸すると、内1機から白い人影が飛び出したかと思いきや・・・

 

「指揮官~!!」

 

「ぐふぅッ!?」

 

思い切りヒロの腹に突進を仕掛けてきてヒロが思い切り吹っ飛ばされた。

改めてよく見ると、白い人影の正体はイリスで白く見えたのはイリスの髪だ。

 

・・・イリスの突進とも呼べる抱き着きにヒロはKO寸前だが。

 

『ヒロ!?』

 

「司令官!?」

 

「指揮官様ッ!!」

 

吹っ飛ばされたヒロを心配しチカゲ、ミア、シズカ、フィリーネが容体を確認しようと駆け寄りヒロに確認を取ると、ヒロは問題無さげに右手をヒラヒラと振り無事を示す。

とにかく話を進める為にヒロの腹の上に跨り馬乗りになっているイリスを降ろさなければ。

 

いや、よく見るとフィリーネ達の更に後ろから別の人影が近づいてきている。

背丈と髪が伸びている個体も含まれる()()()()()()()()()()()()()()をしている機械の下半身を持つ5人の少女達。

同じ姿となれば一見すると誰が誰なのか判別は不可能。しかし成長している個体以外に判別出来る方法は既に確立している。

 

「アイヴィス達も、来てくれてありがとな」

 

「今の私たちはあるのも全てはお兄様のお陰です。私たちで役に立てるのであれば本望です」

 

一回り程身長が高く髪も伸びている赤いネクタイを着けている個体の少女をヒロは“アイヴィス”と呼んだ。

 

彼女達もある事情によりフェンリルで保護、と言うものの殆どヒロが面倒を見ているのだが・・・彼女達と()()姿()()()()()()であるエステルを保護し聞いた限りの話では、彼女達は複製(クローン)人間である可能性が出てきた。後程詳しく調査する必要がある。

アイヴィスの他にもいるのだが、他の個体の紹介は後程行う事にしよう。

 

一先ずはイリスを腹の上から降ろし起き上がる。

そのタイミングとほぼ同時だった、セラフから通信が入るのは。

 

「セラフ、どうした?」

 

すぐに右耳下に右人差し指と中指を当て、セラフとの回線を開く。

 

≪コマンダー、先程日本軍及び政府の通信を傍受。小松空軍基地が所属不明部隊の攻撃を受けているとの事。該当基地のカメラ映像より山犬(ワイルド・ドッグ)の部隊と判明≫

 

「何!?」

 

 

 

 

着々と対決の刻は近づいている・・・・・・。

*1
レシプロ機によるジェット戦闘機の撃墜記録はベトナム戦争。レシプロ戦闘機A-1 スカイレイダーがジェット戦闘機MiG-17Fを撃墜した記録が2回残っている。1回目は1965年、4対1の状況で、2機ずつがチームを組んで旋回戦を挑む「ラフベリィ・サークル(別名、芝刈り機戦法)」で撃墜し、2回目は1966年MiG-17Fがオーバーシュートしたところを機関砲により撃墜したものである。




ED2:HORIZON/TEAM SHACHI

いや~難産だった( ̄▽ ̄;)

コラボ先の作品はこちらになります!↓
[https://syosetu.org/novel/294168/]
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