Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
-私設武装組織 フェンリル-
最初期はヒロはセラフと呼んでいた女性と2人だけで
だが各地を転々としては色々と不都合もあった為に、セラフが目を付けたのがグリフィンすらも手を付けていないと言われたトルコ南東部シュルナク県だった。
セラフからの薦めもありシュルナク県を拠点としヒロは傭兵稼業を続けていたが、仕事先で身寄りがない子供達が身を寄せ合う光景を見ていられず自分の拠点で引き取っていた。
しかしそうなれば自ずと出費も嵩み、その日自分が暮らす分の稼ぎではとても子供達の分までは賄えなかった。
そこで彼らを救ったのがヒロが自身がいた研究所から抜け出す時にサンプル管に封入された状態で発見した微細藻類の微生物、ヒロが過去に調べた知識から
OILIXは光合成により高純度の
北蘭島事件、オーロラ事件、第三次世界大戦、胡蝶事件と立て続けに全世界規模で大惨事が続いた世界でも燃料には一定の需要があり、彼らは安定した収入を得る事に成功。
そしてその収入を元手にヒロと彼が保護した子供達は更に各地から孤児達を保護し、そしてその話を聞きつけた1部の慈善事業の人間達も挙ってシュルナク県に移り始める。
中には燃料事業の横取りを企てて潜り込んだ者もいたがそれは全てセラフが察知しヒロに密告。結果としてその者はヒロと子供達にタコ殴りにされた末、パンツ一丁で県外に放り出される事になった。
やがて生活環境の改善に回すだけの経済的余裕も生まれたシュルナク県は、ヒロの記憶とその地方の名前にあやかり“
そして生活環境が整い人が更に集まった頃、ある日保護した子供の1人が言った。
「ヒロ兄ちゃんだけ危ない目に遭ってるのに自分たちだけ待ってるのなんて嫌だ!」
それは子供達に残っていた“良心”からの発言だった。
その発言を機に他の子供達からも同様の声が挙がり始めヒロや慈善事業の人々は困惑したが、保護した子供の中には少年兵も混ざっていた事とセラフからの後押しもあった為にヒロは渋々ながら子供達に武器の携行を許可した。
そしてアナトリアの事業や製品である
それを受けセラフはヒロに自分等を一組織として取り纏めるよう進言。子供達もそれに賛成し慈善事業の人々もそれに賛同した。
そうしてヒロは自分に組織のトップなんて似合わないと思いつつもなし崩し的にアナトリアを取り纏める組織の首領に就任。
自分の記憶にあるゲーム内の組織と欧州に展開するPMCの名前にある
“
そうしてフェンリルは事業の収入で更にアナトリアの生活環境を整え多くの難民や孤児達を迎え入れ、それに伴い志願兵も増え力をつけていく。
だがフェンリルには“掟”と称される厳守事項がある。
“依頼された場合、事業行為の妨害或いは権利領域の侵犯による自衛のみ武力を行使する”
ヒロとセラフが取り決めたこの厳守事項によりフェンリルは基本的に危害を加えなければ無害である為、現トルコ国政府は勿論グリフィンもフェンリルを野放しにしている状況だ。
もっとも、傭兵として仕事に就くのは専らヒロの役目で少年兵や志願兵達はアナトリア領内の警備が主な仕事だが。
シュルナク県改めアナトリアに帰ったヒロは都市シュルナクにてチカゲと別れる。
チカゲは子供達に引っ張られ何処かへ行き、ヒロは都内の研究所のような廃墟に車を入れる。
ガレージごと地下へ入ったそこにはシェルビーGT500の他にも車が何台か保管されているがヒロが用があるのはその更に奥。コードで繋がれた“赤い巨人”である。
背部の大型ブースターユニットが威圧感を放つそれにヒロは声を掛ける。
「ただいまセラフ、俺とチカゲが戻るまで問題なかった?」
≪アナトリア各地において現時点にて異常ありません。帰還を歓迎しますコマンダー≫
ヒロの言葉に反応したその巨人から聞こえるはヒロがブラックを捕える際にサポートした女性の声。
そう、ヒロの目の前にいる赤い巨人こそセラフの正体である。
身体全てが金属で作られたその赤い巨人の名は“ナインボール=セラフ”*2。
ヒロと共にこの世界を渡ってきた相棒にしてアナトリア、フェンリル創設の発案者、そしてこのアナトリアの機能の管理人でもある。
ヒロはセラフからの報告を聞き、車の修理をセラフに頼んで代わりに自転車で再び研究所の外へ。
向かうはシュルナク都内の
その席でヒロはカンノーリとコーヒーを注文する。
「よう、帰ってきてたなら声くらいかけろよな?」
そこに声をかけたのはヒロと同じ黒短髪の青年。
身長からヒロと同じか少し年上だろうか、服装はオレンジの差し色が入った黒のジャンパーに黒いインナーと黒ズボン。
「今帰ってきたばっかなんだよユウゴ。仕方ないだろ?」
ヒロの返しにユウゴと呼ばれた青年は「そうかよ」と返し、注文を取りに来たウェイターにヴェスパー*3を注文する。
それに僅かにヒロが呆れるような表情を浮かべる。
「まだ日中なのに飲んでもいいのか?」
「何頼もうが俺の勝手だろ?」
ユウゴのそんな言葉にヒロは思わず溜息をついた。
それから少し経ち、お互いに注文した品が届き一時の休止を挟む2人。
そこにヒロの耳に着信を告げる音が鳴り、ヒロは右手の人差し指と中指を右耳の下辺りに当てる。
「セラフ、どうかした?」
≪トルコ政府からの
通信相手であるセラフからの言葉にヒロの表情が引き締まる。
「
≪既に通達済みです≫
「さすが仕事が早いな」
≪恐縮です≫
その言葉を最後にセラフからの通信は終了。ヒロは残っているカンノーリを口に押し込みそれを出されたまま残っていた水で無理やり流し込む。若干咽ながらも飲み込みカウンターの店員に声をかけ代金の紙幣を手渡して釣り銭を受け取らずに店を後にする。
そして外に停めていた自転車で既に準備をして待っているであろう従業員達をこれ以上待たせない為に、全力で精油所へ向けペダルを漕ぎ出す。
ED:Prototype/石川智晶
いつか過去編でもやってみようかな~(願望)