Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
中央司令室へ到着するとそこには既にセラフがモニターを点け待っていた。
ヒロはモニター前の椅子に座る。
≪諜報班より報告事項、鉄血製修復装置及び新型製造設備の存在を確認したとの事≫
「・・・!」
セラフの報告にヒロは目を見開く。未だ修復未完で意識が回復しないチカゲを救うチャンスが訪れた。しかし・・・。
「・・・いや、喜ぶのはまだ早いな」
≪はい≫
「その施設の位置を割り出してくれ、それからその施設の警備状況も知りたい」
≪了解≫
そう言うとセラフはすぐにデータの解析を始める。するとモニターに地図とデータが表示されていく。そして・・・。
≪位置情報解析完了、警備状況は確認中です≫
セラフの操作によりモニター上の地図のある1点がマークされる。が、その場所は大きな誤算だった。・・・現れた希望が一瞬で砕け散る。
「おい・・・ここって・・・!」
≪鉄血工造指揮下にある要塞型補給拠点。コードネーム“サイレントライン”≫
「・・・」
セラフの報告にヒロは言葉を失う。サイレントライン、そこは本社を除き鉄血の最重要拠点に分類される場所だ。当然警備も厳重だろう。潜入するどころか近付く事すら困難だ。
「くそ・・・!」
思わず悪態を吐くヒロ。これではチカゲを救う手立てが無い・・・。
≪報告、グリフィン指揮下の基地より作戦参加の要請有り≫
「・・・え?」
突然の報告にヒロは驚く。このタイミングでグリフィンが作戦?一体何故・・・?
≪作戦内容、サイレントライン攻略作戦に参加予定グリフィン部隊の救援及びサイレントラインの攻略≫
「・・・!」
セラフの告げた内容にヒロは目を見開く。グリフィン部隊との共同作戦、これなら状況次第ではどうにかなるかもしれない。
サイレントライン攻略作戦。グリフィンが何故このタイミングでそんな要請をしてきたのか?ヒロは考えるも答えは出ない。
だが、それでも巡ってきたまさに千載一遇のチャンスを逃がす訳にはいかない。
「・・・やるしか無いな」
ヒロの目に再び光が宿る。そして・・・。
≪コマンダー、指示を≫
セラフもまたやる気のようだ。ならば迷う事は無いだろう。それにここで自分がやらなければチカゲを救うチャンスは永遠に失われてしまうかもしれないのだから。
なら・・・。
「セラフ、少し待っててくれ、俺は皆を集める」
≪了解≫
そう言うとセラフはモニターを切り皆が揃った時の準備を行う。ヒロも立ち上がり司令室を出る。
独断で行動する訳にもいかず、まずは仲間達と相談する必要がある。ヒロは直ぐに各班のリーダーに招集を掛ける。
そして1時間後、司令室には主要メンバーが集まっていた。
そこにはヨハネスにより車椅子にて連れてきてもらったウェンディの姿もある。彼女は現段階ではフェンリルの正式メンバーではないがヒロにとっては十分信用できる人物だと判断している。
そして当然シズカ以下試作戦術人形達とアイヴィス達の姿もある。
まずは情報を齎した諜報班から詳しいを聞いた。
サイレントラインに配備されている新型製造設備の正体、それは“崩壊液”の逆崩壊作用を利用した金属3Dプリンターである。崩壊液の逆コーラップス作用、それは1度崩壊液の崩壊作用で物質を原子レベルで分解し、そして分解した原子を再構成し金属3Dプリンターにて出力し新たなパーツを製造するという物だ。
この新型製造設備は胡蝶事件以前にI.O.P.と鉄血の一部の幹部達で“次世代型製造ライン”のプロジェクト名で極秘裏に共同開発されていたものらしく、この新型製造設備で製造された高精度のパーツはサイレントラインに配備されている鉄血人形や兵器の製造ラインに使用されているらしい。
つまり、この新型製造設備がある限りサイレントライン指揮下の鉄血はパーツを無尽蔵に生産出来、そしてそれがそのまま防衛用の人形・武器・兵器の製造に回っているという事になる。これは非常に厄介な事だ。
そして同時にグリフィンがサイレントライン攻略作戦の参加要請を出した理由も分かった。
グリフィンはこのサイレントラインを超重要拠点と位置づけており、その重要拠点を攻略する為の手段を模索していたらしい。しかしいくらI.O.P.の戦術人形部隊を有しているグリフィンであっても1基地の戦力でこれ程の規模の鉄血と事を構えるには心許ない。
それでもグリフィンがサイレントライン攻略作戦の参加要請を出したという事は、勝算があるという事になる。
この作戦の立案及び参加要請を出したのはS09地区009基地司令のグリフィン戦術指揮官“フィオナ・A・レイナド”。
グリフィンの指揮官が直々に作戦に参陣する、それはこの作戦がそれだけ重要な物だという事だという事だ。この作戦の概要はこうだ。009基地所属戦術人形部隊とグリフィン所属の戦術人形部隊が鉄血本拠地を強襲、これを制圧するというものだ。
しかし当然、敵の重要拠点である以上激しい抵抗が予想される為、現在各地区に駐留しているグリフィン指揮官にも参加を要請しているらしい・・・が、どうしても組織というのは一枚岩では済まない物。この作戦の立案に当たっても既にグリフィン上層部が作戦を立案し決行準備を進めているようだが、上層部の作戦は作戦とは到底呼べない御粗末な物。
009基地の偵察で綿密な作戦を立てる必要性をフィオナ指揮官は説いていたらしいが上層部は聞く耳持たず。経験の浅い指揮官やその指揮下の練度の低い戦術人形達を片っ端から掻き集め作戦に投入するつもりらしい。成功すれば手柄は全て自分達の物、失敗した場合は責任を他の指揮官達に擦り付ける腹積もりらしい。
これはフィオナ指揮官がグリフィン上層部の暴走を食い止める為に立案した作戦のようだ。
この作戦には鉄血への大きな打撃が見込める、しかし同時にグリフィンにも、そして自分達にも大きな被害が出るだろう。そのリスクを負う覚悟があるならば共に戦ってほしい・・・と。
当然、この作戦に参加するか否かの判断はヒロに委ねられる事になる。だが・・・。
≪コマンダー、私はこの作戦に参加する事を推奨します≫
セラフから通信が入る。
≪この作戦には鉄血への大きな打撃が見込めます。そしてグリフィンにも、私達にも被害が出るでしょう≫
セラフの言葉にヒロは頷く。これはかなり危険な賭けだ。
だが・・・
≪ですが、成功すれば
そう、もしこの作戦に参加し成功出来ればチカゲを救える可能性が出てくるのだ。
しかし失敗すれば・・・いや、そんな事を考えるのは止めよう。今自分がやるべき事は1つだけだ・・・ヒロは決意を固める。そして・・・。
「・・・よし、俺達も作戦に参加するぞ」
その言葉にセラフのカメラアイが輝き、他の仲間達も頷く。
『了解!』
アイヴィス達も力強く頷いた。
ヒロが作戦への参加を表明し、フェンリルはすぐさま準備に取り掛かった。
まずは009基地司令、フィオナ指揮官に連絡。作戦への参加を伝える。必要になるだろうと見越しグリフィンの戦術人形達が扱う弾薬も掻き集めた。
それからウェンディの病室をヒロが訪れていた時だ、突然ウェンディはこんな事を言い始めた。
「・・・あの、私も連れて行ってもらえませんか?」
ウェンディの言葉にヒロは驚く。彼女はまだ病み上がりに近しい身だ。
そんな状態の少女を戦場に連れて行くなど・・・。
「ウェンディ、気持ちはありがたいけどまだ君は・・・」
「・・・お願いします。私も戦わせてください」
しかしウェンディはヒロの言葉を遮り頭を下げる。その目には強い意志が宿っていた。
「・・・分かった、でも無理はしないでくれ、危ないと思ったらすぐ逃げる事、良いな?」
「はい!」
ヒロの言葉にウェンディは力強く頷く。
「よし、なら作戦開始まで体をしっかり治していこう」
そう言うとヒロはウェンディの頭を撫でる。すると彼女は嬉しそうに笑った。
戦闘部隊の方も地上戦力と航空戦力を用意。地上戦力は009基地の戦術人形部隊である程度対応できる為、力を入れるのは航空戦力。
航空戦力はE-3早期警戒管制機の他、攻撃機と戦闘機の混成部隊。他にモルフォ隊が駆るUH-60Mブラックホークも参戦、そして今回の作戦の主旨でもある取り残された味方地上部隊の救援・搬送用にV-22 オスプレイも5機程手配した。
そうして準備が着々と進んでいる時だ。
「ヒロ、1つ相談がある」
司令室にて準備中のヒロにユウゴがタブレット端末を持ったまま話しかける。
「ん?どうしたんだ?」
ヒロはユウゴに向き直る。
「この作戦の報酬についてだが・・・」
「・・・」
ユウゴの言葉にヒロは目を細める。
「・・・今回は、カネは取らない」
「・・・あぁ、俺もそう言おうとしてた所だ」
どうやらユウゴもヒロと同じ事を考えていたらしい。
この作戦が成功すればチカゲを救う事が出来るかもしれない。しかし失敗すれば自分達に甚大な被害が出るかもしれない。
そんなリスクを冒すのだ、何も無しでは割に合わない。その為報酬代わりに今回は条件を設ける事にしたのだ。
「・・・『用が済んだら後は俺達の勝手にやらせてもらう』で良いよな?」
「あぁ、その条件で良い」
ヒロの言葉にユウゴは頷く。この作戦に便乗し目当ての物が手に入りさえすればサイレントライン自体に用は無い。
「・・・まぁ、上手く行くかどうかは分からないけど、やるしか無いよな」
「あぁ・・・」
2人は頷き合うと準備を再開する・・・前にユウゴが何か思い出したようだ。
「悪い、技術班と研究開発班の連中から伝言を預かってたんだ」
「伝言?」
「あぁ、“セラフを連れて行って構わない”だそうだ」
「・・・は?」
ユウゴの言葉にヒロは思わず間の抜けた声を出す。しかしユウゴは気にした様子も無く続ける。
「“いつまでもセラフを鎖に繋いどくのは悪いしボスも不便だろ”だとよ」
「いや、でもそれだと・・・」
ユウゴが預かった伝言を聞かされヒロは言葉を詰まらせる。
確かにセラフはヒロの相方で彼女単体だけでも鉄血の大隊を壊滅させられるだけの戦闘能力を有している上、それをヒロが操るとなればまさに一騎当千とも言うべきだろう。しかし今のセラフはヒロの相方だけでなく、このアナトリアという独立自治区の都市機能を管理する立場にある。
セラフがこの作戦に同行するという事になれば必然的にアナトリアの管理に不備が出る。そうなればこの自治区の人々に迷惑がかかる事になるのではないか? ヒロがそれをユウゴに伝えようとするが・・・。
「分かってるさ、セラフが抜ければアナトリアのシステムに不具合が出て、最悪街の機能が麻痺するかもしれない・・・だろ?」
ユウゴはヒロが何を言いたいのか察し、先に答える。
どうやら彼もセラフを同行させる事によるリスクについては考えていたようだ。しかし・・・。
「だからっていつまでも俺達の都合でセラフを閉じ込める訳にも行かねぇし、何よりヒロも困るだろ?」
「・・・」
確かにユウゴの言う通りだ。いつまでもセラフを鎖に繋いでおく訳にもいかない上、日本で対峙した了賢もセラフに匹敵するレベルの兵器を持っていた。対抗出来るのは今の所セラフしかいない。
「今技術班と研究開発班が合同でセラフの代わりの作ってるとこで完成までもう一息らしい、心配はねぇよ」
「・・・分かった、セラフには俺から伝えておく」
ヒロはそう言うと司令室を後にし自室へと戻る。そして端末を操作してセラフを呼び出す。
≪通信を受信≫
「あ、セラフ、俺だけど・・・」
2人は互いに挨拶を交わすとユウゴから聞いた伝言を伝える。すると・・・。
≪了解、アナトリアの管理システムよりログアウト、パージシーケンスを実行開始≫
セラフはあっさりと了承した。
「・・・良いのか?」
ヒロはセラフに尋ねる。すると・・・。
≪私はコマンダーの判断に従います≫
セラフはそう答えた。どうやら本当に問題ないらしい。ヒロは小さく息を吐く。
「分かった、じゃあ今回は頼むよ」
≪了解≫
そう言うと通信を切り端末を机に置く。そしてベッドに仰向けに寝転がると大きく息を吐いた。
着々と準備は整いつつある。ヒロは目を閉じた。作戦開始まで後少し、それまでに少しでも体を休めておかなければ・・・。
ED2:HORIZON/TEAM SHACHI
今回は白黒モンブラン様主催のコラボ[https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=312562&uid=146595]に参加するにあたり、ちょっと触らせてもらった前日譚になります。
ただ此方の都合も加味しちょっと無断で設定を盛らせて頂きましたが先に謝罪しておきます、ゴメンナサイ(-_-;)