Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
シュルナクのバーから飛び出したヒロは必死に自転車のペダルを漕ぎ続け、アナトリア領内の荒野にあるOILIX精油所へ向かう。
ヒロが到着した頃には既に精油所にタンクトレーラーを連結した、黒の1989年式 マック・スーパーライナーが待っていた。
トレーラーのタンク容量は当然3000ガロンは収まる容量の物である。
そしてトラックとトレーラーのホイールには外敵の襲撃に備えてか大型スパイクが5本装着されている。
トラックの他にも護衛用の改造車も数台待機しており、周囲では既に武装した兵士や少年兵達が待機している。
その中で異彩を放つ存在が。
1人はアナトリアに帰還早々に子供達に引っ張られていったはずのチカゲ。
もう1人は胸まで伸びる長い横髪と青いリボンで纏めた腰まで届く黒ポニーテール、鳶色の瞳を持った少女と随分雰囲気が違う。
服装は旧日本海軍第1種下士官用軍装を模した服装とその服装と同じ紺色のプリーツスカートを身に着けている。
旧日本軍軍装の少女が持つのは九九式軽機関銃*1と、
「司令官!お待ちしていました!」
日本軍軍装の少女がヒロに気づき敬礼しながら挨拶するが、それに対しヒロは居心地が悪そうに苦笑いしながら右手で後頭部を
「シズカ、司令官は柄じゃないから止めてくれってば」
ヒロは日本軍軍装の少女を“シズカ”と呼んだ。
一見すれば普通の少女のように見える彼女だが、実は彼女は戦術人形だ。
昨今の戦術人形を始めとする自律人形のシェアはかつては“鉄血工造株式会社”と“
そして
「・・・まぁそれはいいか。準備は?」
「既に完了、いつでも出発可能です!」
「OK、チカゲ!」
シズカからの報告を聞き、ヒロはすぐにチカゲを呼ぶ。
その声にすぐチカゲは反応し駆け寄る。
「護衛用の車と武器の点検の方は?」
「とっくに終わってる。むしろ皆待ちくたびれてるみたいよ?」
「よろしい」
チカゲからの報告も耳にした、これで準備は完了だ。
既に他の子供達や兵士達もAK-102やグロック17で武装。準備万端と言った具合だろうか。
その様子を見てヒロも表情を引き締める。
「よし、全員乗車!」
その号令に全員が動き出し、各々の車に乗り込む。
そしてそれはヒロ、チカゲ、シズカも同じ。ヒロがスーパーライナーの運転席に、チカゲは助手席に、シズカはトレーラーの梯子を登りタンクに上る。
そしてヒロがキーを回し、煙突排気管から黒煙を吹きながらスーパーライナーのV8ディーゼルエンジンが目覚め、それに合わせるかのように他の鋼の獣達も目覚める。
1934年型フォード・5ウィンドウ クーペの
荷台にブローニングM2重機関銃を載せた2017年型フォード・F-150 ピックアップトラック
同じブローニングM2重機関銃を荷台に載せた1940年型ファーゴ・トラック
1971年型ホールデン・モナーロ HQ
2007年型ジープ・ラングラー アンリミテッド
2012年型キャデラック・エスカレード
等々と勢揃い。その全車がエンジン始動、中々の光景である。
「出発だ!」
トラックに後付けされた無線機でヒロがそう告げ、シフトを1速へ入れスーパーライナーはゆっくりと進みだす。
そしてそれに付き従うように他の車達も発進。それを今回同行しない人々が手を振って見送る。
やがてスーパーライナーを先頭とした車列はアナトリア領を仕切る防護柵のゲートを通過し、
ところで、
北蘭島事件、オーロラ事件、第三次世界大戦、胡蝶事件と世界規模での大惨事が続いた中でも
・・・そしてそれは、悪党も例外ではない。
アナトリア領から燃料満載のトレーラーとそれを守る護衛車の一団が出てくるのを遠目に見ていた2人組が無線で誰かに連絡しつつ、改造車を走らせていく。
向かう先は・・・トレーラーの車列だ。
ED:Prototype/石川智晶