Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP3:Garnet Moon/島谷 ひとみ


#46 NOMAD 流浪者

ヒロが腹痛と風邪で寝込んで一夜明けた日、チカゲの復帰はアナトリア中を駆け巡りすぐに復帰祝いのパーティが催された。

最初はチカゲは単に自分が抜けただけで大袈裟にされるのは悪いと言ってパーティの開催を断ろうとしたものの、ユウゴやエイミー等に説得され渋々開催を了承した。

そして今、パーティ会場となったヒロ御用達のバーでは皆が思い思いに料理を食べ談笑している。そんな中でヒロは1人ソファーに座りグラスを傾けていた。ちなみに中身は普通の水だ。

 

「隣、いいかしら?」

 

そんな時、チカゲがそう声をかけて隣に座った。

 

「・・・ああ」

 

ヒロの返事を聞きチカゲは隣に座るとそのまま彼の肩に頭を乗せた。

 

「・・・どうした?」

 

「別に・・・ただこうしたいだけ」

 

「・・・そうか」

 

ヒロはそれだけ言うとグラスに口を付け、チカゲもそんな彼の肩に頭を乗せたまま何も言わない。

 

「・・・」

 

「・・・ねえ、ヒロ」

 

そんな時、不意にチカゲが口を開いた。

 

「ん?」

 

「私・・・これからも貴方の事を支えていけるかしら?」

 

そう呟くと不安げな表情を浮かべるチカゲの髪を優しく撫でるとヒロは言った。

 

「当たり前だろ?お前は俺の相棒で・・・そして家族だ。だからこれからもよろしく頼むぜ」

 

2人の間に流れる空気は穏やかなもので、2人はそのまま暫くの間言葉も無く寄り添っていた。

 

 

 


 

 

 

それから2日後のある日。

I.O.P.に修復とデータ提供で出張っていたシズカ達がアナトリアへ帰ってきた。そこでヒロはチカゲと共に出迎え、彼女達に労いの言葉をかける。

 

「ただいま戻りました、司令官!」

 

「お帰り」

 

ヴァルキリー分隊を代表し敬礼しながらそう言うシズカをヒロは出迎える。

 

「ヴァルキリー分隊、ただいま帰還しました。これより報告を行います!」

 

そう言ってシズカはヒロに今回のデータ提供の成果を報告する。それを聞き終えるとヒロは静かに頷く。

 

「分かった、皆も長旅で疲れてるだろう、今日はもう上がっていいぞ」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

シズカは敬礼しながらそう言うと他のメンバーと共にその場を後にした。

 

「・・・ふぅ」

 

そして1人になったヒロは小さく息をつくと背伸びをする。すると背後から誰かが近付いてくる気配を感じた。振り返るとそこにはチカゲが立っていた。

 

「終わったの?」

 

「ああ、まあな・・・」

 

そう答えるとヒロは軽く伸びをしてから再びソファーに座る。そんなヒロの隣にチカゲが座った。

 

「お疲れ様」

 

そんなチカゲの言葉にヒロは苦笑しつつ礼を言うとテーブルに置いてあるタブレット端末を手に取る。

ヒロはタブレット端末を用途によって使い分けており、今手に取った端末はフェンリル各班からの要望リストになっている。

 

「・・・また仕事?」

 

「ああ、まあな」

 

そんなヒロにチカゲがそう問いかけると彼は苦笑しつつ答える。

 

「組織の頭は大変ね」

 

「仕方ないさ」

 

そんな会話を交わしつつヒロはタブレット端末を操作していく。そしてあるページで手を止める。それは医療班からの物で薬品が不足気味になっていて次の納品日までに不安があるとの事だ。

 

「・・・」

 

「・・・どうしたの?」

 

ヒロがタブレット端末を見ながら難しい表情を浮かべているとチカゲが声をかけてきた。

 

「いや、ちょっとな」

 

そんなチカゲにヒロはそれだけ言うと再びタブレット端末の操作に戻る。そして暫くして操作を終えるとそれをテーブルの上に置き、そのままソファーから立ち上がる。

 

「悪い、ちょっと出てくる」

 

そう言ってヒロは足早に部屋を出て行った。そんなヒロの背中を見送りながらチカゲは首を傾げる。

 

「・・・?」

 

ヒロの見た端末に何か書いてあったのだろうかとチカゲはタブレット端末を見る。そこには医療班から薬品が不足気味で次の納品日までに不安があるとの事が書かれていた。

 

「・・・フフッ」

 

それを見てチカゲは微笑み、そしてヒロと同じようにソファーから立ち部屋を出る。

 

その頃ヒロは1人で外出の支度を始めていた。これから彼がやろうとしている事はとても褒められた物ではないが、それでも彼は仲間達の為にそれをやると決めた。

ヒロは自室のクローゼットを開けるとハンガーに掛けられたコートを手に取る。そしてそのまま部屋を出ると真っ直ぐに廊下を歩き、やがて格納庫へ辿り着く。

そこには移動中にセラフに連絡を入れ用意してもらった車があるのだが、何故かその車の前に人影がある。

 

「・・・チカゲ?」

 

ヒロがそう呟くと同時にその人影も彼の存在に気付いたのか、ゆっくりと振り返る。

 

「・・・何してんだ?こんな所で」

 

「私も行くわ」

 

ヒロがそう問いかけるとチカゲは即答した。その言葉にヒロは思わず目を見開く。

 

「行くって・・・お前」

 

「貴方1人じゃ心配なの、修復ついでにオーバーホールもしてくれたこの身体の慣らしもしたいし、それに私も貴方の力になりたいから・・・」

 

「・・・そうか、分かった」

 

そう言ってヒロはコートを羽織ると車、何時ぞやにセラフに修理を頼みピカピカになったシルバーの2013年型フォード・マスタング シェルビーGT500へ乗り込みエンジンをかける。そして助手席に座ったチカゲがシートベルトを締めた事を確認すると車を発進させた。

 

 

 


 

 

 

アナトリアを発ち向かうはトルコ国土と地続きになっているアゼルバイジャン。目的は薬品の確保。

ヒロは薬品と聞いて思い付く場所へシェルビーGT500を走らせている。

第3次世界大戦の影響で世界各国は疲弊し首都を残し地方都市の運営はままならない状態。それは向かっているアゼルバイジャンも例外ではなく道中には人1人の気配もない。その為、ヒロ達が走っている道路も荒れ放題で所々に穴が開いている。

 

「・・・」

 

そんな荒れた道路をヒロは無言で走らせていく。助手席に座るチカゲも特に喋る事無く静かに外の風景を眺めているだけだ。

やがて目的地に着いた。アゼルバイジャンのナヒチェヴァン市だ。

 

「・・・」

 

だが直接入らず、ナヒチェヴァン市の郊外にある小さな村。そこにシェルビーGT500を停車させたヒロは車から降りると周囲を見渡す。

 

「・・・ここからは歩いて行こう」

 

「分かったわ」

 

ヒロの言葉にチカゲが頷く。そして2人はそのままナヒチェヴァン市へ向かって歩いて行く。暫くすると街の入り口が見えてきた。だが街の各所で黒煙が上がっている。誰かが戦っているのだろうか?

 

「・・・チカゲ、後ろは頼んだ」

 

「えぇ」

 

その掛け合いだけですぐにチカゲは後方へ下がり、ヒロは前方を警戒する。

 

「・・・」

 

持参してきたG36Cのセーフティを解除し何時でも発砲出来るようにしておく。

そして2人は街の中へ入るが、黒煙が上がっているのが見えるだけで変わらず人の気配は感じない。

そのまま2人は街の奥へと進んでいく。すると目の前の道路に何かが落ちているのを見つけヒロは止まる。すると後方警戒で前を見ていなかったチカゲは背中をヒロの背中に当てる事になる。

 

「・・・何か見つけたの?」

 

「あぁ、これなんだが・・・」

 

そう言ってヒロはチカゲに拾った物を見せる。それは黒いサブマシンガンだった。だがその形は何処かで見た事がある様な形をしていた。

裏返してみると、そこには鉄血工造のマークが描かれていた。

 

「・・・これは」

 

「鉄血の武器か・・・?」

 

2人は顔を見合わせる。何故こんな所に鉄血がいるのか?

すると何か気配を感じヒロはG36Cの銃口を道路正面へ向ける。

 

「ワン!ワン!」

 

すると道路の向こうから2匹の子犬が走ってくるのが見えた。

 

「・・・なんだ、ただの犬か」

 

ヒロは警戒を解くとG36Cを下ろす。

2匹の子犬はヒロの足元まで来ると遊んで欲しそうにヒロの右足にじゃれついて来る。

1匹は黒い体毛に下腹部と脚が白い体毛、もう1匹が明るいグレーに下腹部と脚が白い体毛の子犬だ。

 

「なんだお前等、飼い主はどうした?」

 

ヒロがそう問いかけると子犬達は首を傾げる。どうやらこの2匹には分からないらしい。するとその様子を見ていたチカゲが言う。

 

「多分、その子達だけよ」

 

「・・・そうか」

 

そう言ってヒロはその場にしゃがみ込むと子犬達の頭を撫でた。すると2匹の子犬は嬉しそうに尻尾を振り始める。そんな時だ。

 

「見ず知らずの人間に心を開くとは・・・不思議な事もあるのですね」

 

突然聞こえてきた声にヒロは子犬達を撫でるのを止めすぐさまG36Cを構え声の聞こえた方向へ向ける。

 

「誰だ!?」

 

そう問いかけるが返答はない。すると再び声が聞こえた。

 

「・・・貴方、見た限りでは人間ですね」

 

「っ!?」

 

その言葉にヒロは驚きの表情を浮かべた。何故ならその声は女性の声だったからだ。だが周囲を見渡しても人影は見えない。

 

「・・・何処だ、どこにいる」

 

「そう警戒しないで下さいますか?私から何かしようとは考えておりませんので」

 

そう言って声の主はクスクスと笑う。ヒロはその笑い声に不快感を覚えつつも周囲へ警戒を続ける。だがやはり人影は見えない。

 

「・・・そのご様子ですと相当警戒されているようですね、分かりました。では此方もあなた方と敵対する意思は無い事を示しましょう」

 

そう言うと声の主は建物の影から両手を上げつつヒロの前に姿を現した。

 

「っ!?」

 

その姿を見てヒロは驚いた。何故なら声の主が女性でしかも鉄血のハイエンドモデル“代理人(エージェント)”と似ているからだ。

見た目の年齢は10代後半だろうか?恐らく160cm後半と女性にしては高い身長と、銀に見える白髪のミディアムショートヘアにもみあげ辺りから結っている三つ編みに髪先に緑のリボン、頭にホワイトブリム、青い瞳、服装は青と白を基調としたメイド服の様な格好をしている。

そんな少女はスカートの裾を掴み優雅に一礼すると言った。

 

「初めまして、人間。私は元鉄血工造所属、製造型式番号SPA601、個体識別名“魔術師(マジシャン)”と申します。以後お見知りおきを」

 

そう言うと少女は微笑んだ。




ED3:DREAMCATCHER/ナノ
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