Doll's FrontLine -Armored Outsiders-   作:天羽々矢

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OP:BAD CANDY/yukaDD(;´∀`)


#05 TRANSPORT 02 輸送任務 02

アナトリア領の精油所からトルコ首都アンカラへ向け3000ガロンの燃料(ガソリン)を入れたタンクを牽きながら進むマック・スーパーライナーとそれを守る護衛車の一団。

 

そのスーパーライナーのハンドルを握るヒロが右のサイドミラーをふと見た時に“それ”は映った。

 

右側から砂漠迷彩の塗装が施されているバハ・バグ*1が。

 

「お客さんだ!」

 

その一声と共にヒロは天井に張られているワイヤーを引いてクラクションを鳴らす。それは外敵襲来のサイン。

そしてそれを聞いた全員が臨戦態勢を取る。

 

トラックの右舷にいるM2重機関銃搭載のファーゴトラックがすぐさま攻撃開始、放たれる12.7mmの弾丸に車体を穿たれながらも加速してトレーラーに迫る。

するとファーゴトラックが右へずれる、その前には窓から身を乗り出しM79 グレネードランチャーを構える少年兵が乗る1971年型ホールデン・モナーロ HQが待ち構えていた。

 

少年兵が狙いを定めM79を発射。打ち出された榴弾はバハ・バグに命中し炸裂、爆発炎上しながら横転していった。

 

「フォーッ!!」

 

少年兵は撃ったM79を高く掲げながら雄叫びを上げる。

 

 

しかし間髪入れずに今度はトラックの左舷から1970年型フォード・ブロンコの改造車と1932年型シボレー・5ウィンドウ クーペの改造車が接近。

それを発見しトラック左舷側に展開していたフォード・F-150 ピックアップトラック、2012年型キャデラック・エスカレードがすかさず迎撃開始。

 

やはり銃撃も御構い無しにトラックに迫ってくる。

 

「チカゲ、ハンドル!」

 

「えぇッ!?」

 

ヒロが助手席に座るチカゲに指示を出し、足元左側のホルスターに収まっているH&K HK69グレネードランチャーを手に取り、更に右足が抑えるアクセルペダルを思い切り踏み付ける。

 

するとアクセルペダルの先端が僅かに奥に押し込まれそこでペダルが固定される。つまりはアクセル全開のまま走り続けられる。

 

ドアを開け外へ出るヒロに、チカゲは慌てて助手席から身を乗り出す形でハンドルを握る。

外へ身を乗り出したヒロはタンク上からブロンコを射撃するシズカに目配せし、それに気づいたシズカは懐からマークⅡ手榴弾を取り出す。

そして安全ピンを抜きシズカが手榴弾を投擲するのに少しタイミングをずらしヒロがHK69を発射。

 

HK69から放たれた榴弾はブロンコに命中し炸裂、そしてその爆炎にシズカが投擲したマークⅡ手榴弾も吞み込まれ誘爆。更に勢いを増した爆風によってブロンコは呆気(あっけ)なく横転。

更にブロンコに続いていた32年型シボレーも横転したブロンコに突っ込み横転、大破する結果となった。

 

他に追手が付いていない事にヒロは安堵の溜息一つ。トラックの運転席に戻りドアを閉める。

 

「代行お疲れ様」

 

「もう、いきなりハンドルなんて焦るじゃない・・・」

 

「悪かったよ・・・」

 

溜息をつきながらぼやくチカゲにヒロは苦笑いしながら謝罪する。

 

しかしその安堵も束の間。突然後方から瓦礫を跳ね飛ばずような衝撃音が響く。

ヒロとチカゲは吃驚(びっくり)し思わず一瞬身を竦め、サイドミラーで後方を確認する。

 

《司令官、後方より大型の車両が急速接近してきます!》

 

「こっちでも見えた」

 

シズカからの通信が入るのと同時に後方の砂煙の中から瓦礫を跳ね飛ばして接近してくる大型車両の姿がミラーに映りそれを捉えた。

 

フロントにはリッパーブレードが装着、リフトアップされた車高に66インチの巨大なタイヤが装着されたそれは・・・

 

車体に1959年型キャデラック・ドゥビル 2ドア クーペを用い改造されたであろうモンスタートラックだった。

 

そのドゥビル・モンスタートラックに乗っているのは黒いローブを羽織りフードを被って顔を隠している4人。口元は隠し切れていない為露わになっているがその他は分からない。

 

だがよく見ればドゥビル・モンスタートラックの更に後方にもう1台、ホールデン・50-2106 クーペユーティリティの改造車がいた。

そしてそのホールデンの荷台では、RPG-7V2を構えた人影が。

 

ロケットランチャー(RPG)だ!!」

 

誰かがそう叫んだ瞬間、けたたましい音と共にRPG-7の40mm対戦車榴弾がランチャーから射出され、車列最後尾のフォード・F-150に突き刺さった。

戦車すらも吹き飛ばす成形炸薬弾にたちまちF-150は爆炎と共に吹き飛んだ、そしてその炎と煙で乗員の安否も確認出来ない。

 

「1台やられた、誰か安否確認を頼む!!」

 

後方の様子をミラー越しに見ていたヒロは仲間がやられた事に苦悶の表情を浮かべるものの、無線で他の車両に指示を出し自分達は仕事から外れない。

 

無線で指示を受け吹き飛んだ仲間の確認に行ったのはキャデラック・エスカレード。減速してUターンしF-150が吹っ飛ばされた地点に引き返していく。

そして先程F-150を吹っ飛ばしたホールデンの相手は34年型フォード・5ウィンドウ クーペと40年型ファーゴトラックが既に務めている。

2発目を装填し発射態勢を取っていたRPG-7を持つ敵兵が乗るホールデンにフォードが左側からぶつけに行き、その衝撃で2発目は明後日の方向へ発射される。そしてそのままホールデンをフォードとファーゴトラックが左右から挟みホールデンとの撃ち合いが始まる。

 

一方スーパーライナーと残りの車両、71年型ホールデン・モナーロ HQとジープ・ラングラーは猛追してくるキャデラック・ドゥビル モンスタートラックを相手にしている。

 

《ボス気を付けて、あの黒いローブは防弾みたいだよ!》

 

「了解」

 

仲間からの無線越しの報告によると、モンスタートラックに乗る4人が身に着ける黒ローブは防弾との事。既にラングラーとモナーロの窓から外に身を乗り出した少年兵がAK-102をを発砲しているが、黒ローブの人物は弾丸が当たっても僅かに怯むだけであまりダメージは無さそうだ。

 

更にモンスタートラックの車体後部にはM2重機関銃より厄介な物まで搭載されており、それはタンク上にいるシズカが視認した。

 

《司令官、敵車両後部にM134を確認!》

 

「はぁッ!?」

 

その言葉に思わず言葉が漏れた。

 

M134は7.62mm弾を6門を一纏めにした銃身で毎分2,000~4,000発もの速度で発射する連装機関銃、所謂“ガトリングガン”*2 である。

いくら戦闘を想定して車体を強化しようとも、至近距離で毎分最低2,000発もの弾丸を喰らえば一溜まりもない。

 

モナーロとラングラーがM134の餌食になっていないのは、モンスタートラックという高い車高の車の後部という高い位置にM134が搭載されている故に仰角が合わないからだろう。

だが席の位置が高いスーパーライナーの場合は、もしドゥビル・モンスタートラックに前に出られたらハチの巣どころか挽肉(ミンチ)にされかねない。

 

すると助手席に座るチカゲが突然シートベルトを外し、助手席側ドアを開けて身を乗り出す。

 

「おい、チカゲ!?」

 

「手伝ってくるわ、ヒロは運転に集中して!」

 

チカゲはそれだけ言うとドアを閉めタンクの上に移動する。

言われた通りヒロがトラックの運転に専念する中、チカゲはSIG SG556に弾を装填し、トラック左舷まで近づいてきたドゥビル・モンスタートラックに射撃を開始する。

しかし、ドゥビルの窓には蜘蛛の巣状のヒビが入るだけで貫通には至っていない事から、どうやらローブだけでなく車も防弾仕様らしい。

 

「随分儲かってる所なのね?それかパトロンから援助でも貰ったかしら?」

 

思わずそうぼやいたチカゲだが、後ろでM134に向かって移動する黒ローブの人物を1人確認した為そちらに意識を切り替える。

黒ローブは防弾との事だが、SG556銃身の下部に取り付けられている物は果たして耐えられるだろうか?

SG556の銃身下部に付いているそれはM203 PI グレネードランチャー。中には既に40mm榴弾が装填されている。

 

敵がM134に付き、銃口がタンク上のチカゲとシズカに向けられ銃身の回転(スピンアップ)が始まる。間もなく7.62mm弾の嵐が降り注ごうとするが、その直前にチカゲがM203をM134に向け発射。

放たれた40mm榴弾はM134の銃身先端に触れた瞬間に炸裂。本体を構える黒ローブの人物ごと吹っ飛ばす。

 

その時、ドゥビルの車内から別の黒ローブが慌てた様子で出てきて吹っ飛ばされた黒ローブの右手を取り落下を防ぐ。だがその際に背中が無防備になった為チカゲがSG556を発砲。いくらローブが防弾とは言え、防げるのは弾丸で当たった衝撃までは殺せない。

 

そしてそれを連続で受けたもう1人の黒ローブは、手を取っていた方の黒ローブ諸共ドゥビルから落下。地面を転がりながら遠のいていく。

 

これでドゥビルはM134と乗員2人を一度に失う事となったが、残っている黒ローブがドゥビルのハンドルを握ってる黒ローブに何か話している。

 

運転席に着く黒ローブは話を受け、車内センターコンソール下にあるミサイルスイッチをON、スイッチに付いている赤ランプが点灯した事を確認すると骸骨(スカル)型のノブが付いたシフトレバーを手前に引く。

するとドゥビル・モンスタートラックが轟音と共に急加速し、遂にスーパーライナーの前に出た。

 

そして運転席の黒ローブに口添えした方の黒ローブが外へ出てくる。

身長は低いがローブ越しでも分かる胸部の膨らみから恐らく女性だろう。しかし低身長の女性という意識は両手で構えるMG08/15機関銃を見て吹き飛んだ。

 

黒ローブが装填を終え銃口をトラックの運転席に向ける。それを視認したヒロは直ぐに身を屈め、直後に運転席に向け機関銃の斉射が始まりお蔭でフロントガラスは粉々、運転席と助手席の背もたれも穴だらけになってしまった。

 

ここで斉射が止み、ヒロが顔を覗かせ様子を伺うと黒ローブがMG08/15の再装填を手動で行っていた。

 

MG08/15は製造年数で言えばシズカが扱う九九式軽機関銃よりも古い銃なのだが、それを抜きにしたとしても端から見て銃本体が碌に整備されていなさそうだ。

 

チャンスと見たヒロはシフトレバーを操作してトラックのギアを上げアクセルペダルを最奥まで踏み込む。

そうすればスーパーライナーが先程のドゥビル程ではなくとも加速し、そのままドゥビルの後部に体当たりをお見舞いする。

 

体当たりの衝撃でドゥビル・モンスタートラックは大きく揺れ、黒ローブはMG08を落としただけでなくあわや車体からそのまま転げ落ちそうになるものの、落下寸前にリアバンパー部を掴んで踏ん張っている。

 

「チカゲ、シズカ、掴まってろ!」

 

ヒロが無線でタンク上にいる2人に伝え、2人は支持通りにタンク上の手すりを掴み身体を固定する。

そしてヒロがハンドルを一気に右へ切りトラックはドゥビルの右舷側へ。

 

「いざって時に備えて積んでて良かった・・・!」

 

小声で呟くヒロの視線の先には、ダッシュボードに付いている“NITORUS(ナイトラス)”と書かれているカバーを開け中のトグルスイッチをON、準備完了の赤ランプが点灯しトグルスイッチのすぐ左に付いている赤いプッシュボタンを押す。

 

すると車内のエンジン回転数計(タコメーター)が一気に触れ、スーパーライナーの排気管が青白い炎を吹き出すと同時に急加速をかける。

勢いそのままにドゥビルに並び遂に抜き去るが、ドゥビルはそれに追い縋りタンクの後方にピッタリとくっついてくる。

 

そしてドゥビル後部では先程の黒ローブがよじ登って復帰し、再びMG08を持ちバイポッドを屋根(ルーフ)に乗せて射撃態勢を取り即座に射撃開始。

 

しかしそれはシズカの前に立つチカゲがスカートの中から大鎌状マニピュレーターアームを展開しそれを盾として弾丸を防ぐ。

 

「決めなさい、シズカ」

 

「了解!」

 

射撃が止んだ事を確認し、シズカがチカゲの構える大鎌状マニピュレーターの背後から九九式軽機関銃を構えて姿を見せる。

ただし今機関銃に装填されているのは先程までの通常弾ではなく、重装甲にも威力が期待できるMk211徹甲榴弾だ。

非常に高価である為に九九式軽機関銃の弾倉1ケース分、つまりは30発しか用意出来ていないのだがシズカの判断で使う事にしたのだ。

 

狙うはドゥビルのエンジンが収まるボンネット。標的を定め、シズカが半身である九九式軽機関銃の引金を引いた。

 

重装甲の敵にも効力を発揮する徹甲榴弾は防弾装甲のボンネットを貫通しドゥビルのエンジンを穿っていく。

やがてドゥビルのエンジンが黒煙を吐いた後に炎を吹き出し、運転席と後部にいる黒ローブはドゥビルから飛び降りる。

 

そして炎を吹くドゥビルは爆発炎上し横転。更に後方で34年型フォード、40年型ファーゴトラックと撃ち合いを続けていた敵のホールデン・50-2106 クーペユーティリティを巻き込み共に脱落していった。

 

 

 

他に敵性勢力と思しき車両も無く戦闘を終える一行の視界に、遂に現トルコ国首都アンカラがその姿を見えた。

*1
フォルクスワーゲン・タイプ1のモノコック部分を流用しパイプフレームで強化、カスタムボディワークで改造を施したカスタムカー

*2
M134は本来はM61バルカン機関砲を小銃弾サイズに小型化した物である為ガトリングガンという表現は適切ではなく、より一般的には“ミニガン”と呼ばれる。




ED:Prototype/石川智晶
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