Doll's FrontLine -Armored Outsiders- 作:天羽々矢
トルコ国首都アンカラに辿り着いたヒロ一行。
トラックと護衛車の一団はトルコ政府高官との取引地点であるトルコ財務省へ向かい、そこで待機していたトルコ政府のタンクローリー数台に
移し替えの作業中にヒロは政府高官に納品書を納め、政府高官はケースに入れられた現金を代わりに渡す。
そして数十分の作業の末、スーパーライナーのタンクローリー内
そしてアンカラからアナトリアへの帰路の道中・・・
どうしても撃破された仲間の事が気になってしまい同じルートを選択してしまったものの今度は敵と遭遇する事もなくのんびりとしたドライブである。
その時、スーパーライナーを運転するヒロが前方に人影を発見しゆっくりと速度を落とし、護衛車もそれに合わせ減速。段々と近づいてくる人影にヒロは喜びを浮かべる。何故なら正面の人影は先程敵に吹っ飛ばされたフォード・F-150に乗っていた仲間であるからだ。
「ヒロ!」
「マール!良かった生きてたんだな!」
ヒロがマールと呼んだ、身長から見て9歳程であろう逆立った赤髪の少年。
輸送隊ではフォード・F-150に乗っていたメンバーで敵が持っていたRPG-7V2の対戦車榴弾で吹っ飛ばされたと思っていたが、マールの話によれば前に乗っていたことと対戦車榴弾が辛うじて燃料タンクを外した事で乗員は全員生きているらしい。
しかし内2人が重傷を負ってしまった為、志願してこの場に残ったマールを除き全員が先にアナトリアへ戻ったそうだ。
トルコの国土で同じルートを使う保証が無い状況で待つ事が出来るなど、余程信頼していなければ出来ないだろう。
マールからの報告で全員が生きている事を知ったヒロは安堵の溜息を一つ。
だが後ろにある物を見て表情が引き締まる。
マールの後ろにあったのはヒロ達を襲撃したドゥビル・モンスタートラックに乗っていた黒ローブの4人。地面の砂に引き摺った跡がある事からマールがここまで引き摺って運んで集めたのだろう。全員息絶えたのか単に気絶しているのか不明だが意識は無く動く気配もない。
今回は誰も死んでこそいないものの負傷者が出てしまっている為、襲撃してきた奴らを特定し場合によっては
すると一瞬眩しさに視界を潰され顔をしかめる物のすぐに視界は回復、改めて対象を見るとヒロは既視感を覚えた。
金髪のツインテールに左眼に付けられた黒い眼帯、顔立ちからは女性、それも年端も行かない少女だろう。更にローブのボタンを開けて胴体も確かめると軽快さを意識させる身軽な服装と赤いバスケットシューズ。
それを確認したシズカも既視感を感じたのか、ヒロに確認する。
「司令官、この人は・・・」
「あぁ・・・
ヒロの中の既視感も確信に変わっていた。目の前にいる少女は本来であれば暴走族やテロリストが持っているはずのない代物・・・。
I.O.P.社製の戦術人形、Vz61 スコーピオンだ。
だがそうなると今度は新たな疑問も生じる。今回襲撃してきた連中が何故I.O.P.社製の戦術人形を保有していたのか。
一般的に知られる戦術人形の入手方法はI.O.P.社に発注を掛けるか、ドロップと称されるはぐれ物を回収するかの2通りが存在する。しかし仮に目の前のスコーピオンがドロップだとしても普通の人間相手には荷が重いはず・・・そうなると疑うべき所を疑いたくなるが如何せん証拠が無い。
偶然混ざっていただけという可能性も否めない為、他の黒ローブも身元を確認しなければ。
そう思い他の仲間達に指示を出し、残りの黒ローブ3人も確認する。
しかしいざ残りの3人を確認してみると、そちらに対しては覚えが無い。
長い銀のような白髪のツーサイドアップ、腰まで届く金髪ポニーテール、真っ直ぐに下した長い黒髪と3人共特徴こそあれどどれも見覚えもなければ合致する情報に記憶もない。
しかしヒロの中には1つ引っ掛かる事が。
それは同じI.O.P.社製戦術人形であるシズカこと九九式軽機関銃。
もしかすればこの3人もシズカと
「ヒロ」
思考を巡らせるヒロは呼び掛けるチカゲの声で現実に引き戻される。
そのチカゲの右手には、現在では見かけない携帯電話ソニーエリクソン K800が握られている。
「それは?」
「他の敵車両の残骸から出てきた物よ。無事なのはこれだけだったけど」
気落ちするように報告をするチカゲであったが立派な手柄である。
敵が使っていた携帯端末を辿れば襲撃者の背後に誰が潜んでいるか特定できる可能性が出てくる。
ヒロはそれを理解しており、チカゲの頭を軽く撫でつつお手柄だと褒め、チカゲは頬を僅かに朱く染めながらも受け入れる。
だが端末の逆探知は
他の面々も黒ローブ達を車に乗せ、更にマールも回収し撤収する。
アナトリア領に帰ってきた一行はブレインのいる研究所へ直行。
研究所の最奥でアナトリアを監視しているブレイン・・・
セラフがスキャンを掛けた結果、スコーピオン以外の残りの3人も自立人形である事が判明。攻撃してきた事から間違いなく戦術人形、I.O.P.で告知されていない事を考えればヒロの疑いがいよいよ現実味を帯びてきた。
その事を理解したのかシズカが悲しそうな複雑そうな表情を一瞬浮かべるものの準備は進められる。
やがて
ヒロが携帯の着信履歴からリダイヤルを選択し、黒幕と思しき人物を呼び出す。
何コールか掛かったものの、その時は来る。
《もしもし?》
携帯越しに聞こえる男性の声、それは間違いなく黒幕が釣れた瞬間だ。
《もしもし?》
相手の方は呼びかけているにも関わらず返事をしないヒロに腹が立ったのか通話は切られたものの、ほんの数秒さえあればセラフには十分だ。
「セラフ、着信先は特定出来た?」
≪現在解析中・・・完了。マップに表示します≫
どうやら電話の着信先、つまりは黒幕の居場所を突き止めたらしい。
セラフがテーブルモニターに地図を表示しその1ヶ所をマーキング。ヒロがモニターに両手を触れ広げるように両手を動かすと地図が拡大表示され、再度同じ動作で地図を拡大する。
やがて目標が鮮明になってきたが、お陰で頭が痛くなる問題に直面する。
「おい、ここってまさか・・・」
≪ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、管理地区識別名B03地区、G&K基地番号626≫
「なんてこった・・・」
誰かがそうぼやき、ヒロも思わず頭を抱える。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、地区名で言うB03地区の
「どうするのヒロ?」
頭を抱えるヒロにマールが問いかけるが、一応の得意先でもあるグリフィンの基地に組織の一存で殴り込みを掛ける訳にもいかない。
「・・・セラフ、回線を繋いでくれ。この事をヘリアンに伝える」
≪了解≫
事態が事態な為、グリフィンの内部状況をある程度把握出来る人物にこの情報を伝え裏付けを取ってもらうしかない。
ED:Prototype/石川智晶