「……シリウス。栄光は消えて残ったのは俺だけか。なぁ、トレーナー、皆、お前たちが居たら俺をどう思うだろうな」
誰も居なくなり、ガランとしたチームルーム。
そこには俺の仲間とトレーナーの集合写真、そして一本の線香が置いてある。
シリウス、それはゲームウマ娘プリティーダービーの世界線で作られた最強のチームだ。
俺とトレーナーはそいつを創り上げた。
俺という存在を作ってくれたトレーナーには感謝しかない、だからだろう。俺は未だにここにいる。この場を守っている。
「……次のレースはG1だチャンピオン走って、有馬だ。ダートじゃあ負けなし。有馬は……今年こそルドルフに勝ってやるさ。だから、安心して眠ってくれよ皆」
「アクセル」
「オグリ……そうか、オグリも休むのか」
「アクセルは」
「ごめん……私は……俺はそっちにはいけない」
「なら、私もまだ走るぞ」
「………ありがとう、オグリ。必ず、必ずその時が来たら呼ぶから。ありがとう……ありがとう」
トレーナーも居ない状況でたった一人で俺は走り続けた。眼の前でルドルフはリギルの奴等と楽しそうに談笑している。
「……なんで、駄目なんだよ。何処まで………俺の邪魔をしやがるんだ。皇帝様はよ」
「……なぁ、止めないか。君の走りは共に居て不快感しかないぞ。アクセルトライアル」
「黙れ皇帝、敗者になんのようだ」
「…リギルに来い、いい加減に」
「てめぇ……」
悔しさで崩れ落ちた俺の頭に血が上る。
「ルドルフ、てめぇ……下んなよ。一線でいやがれ。必ず、必ず潰す」
「良いだろう、再戦を待っている」
奴と交わした言葉は最後だ。
理由は簡単だ、奴が勝ち逃げしたからだ。勝ち逃げし、一線を退いた。
奴が消えた、俺に憎しみだけを募らせた彼奴が。
俺はそれから我武者羅に走った、トレーナーなんて居ない。
彼奴以外のトレーナーは必要ない。
「俺には……あいつ等以上の仲間は居ねぇ」
引退って訳じゃねぇが、世代交代の時期にはなった。潰すと誓ったルドルフは居ねぇ、面白い奴は居ねぇ。だが、俺は一線は引けない。
「ここに居ましたか、アクセル先輩。会長が」
「…おい、エアグルーヴ。とっとと失せな、今機嫌が悪い」
「アクセル先輩、会長と何があったか」
「なぁ、エア。俺は失せろと言ったんだ」
彼奴の話題となるとむしゃくしゃしちまう。
呼ばれても移籍の話になるだけだ、許さねぇ。
誰が乗るか、騙されるか。俺が守る、奴等の居場所を。
「ちっ…誰も来ねぇか」
俺はトレーナーの資格を持っている、片手間で合格し現役でありながらトレーナーもこなせる。だから、俺は走れている。
「あの…ここがシリウスの選抜レースの会場ですか?」
それは身長140ほどの小柄なウマ娘だった。
たが、俺はこいつを知っている、だから嬉し涙が出た。
「ブリッジコンプ……よく来たな」
「アクセルお姉ちゃん!!」
ブリッジコンプ、俺の親友の妹だ。そうか、こいつも今年から中等部か。
「…悪いな、レースするほど人は居ねぇ」
「アクセルお姉ちゃん、変わったよね」
「ラインもネモもライデンもアスカも居ない。オグリは引退したけど、一緒に出かける中だ。
でも……全部、あの日に壊れたよ。私も……今では幼馴染を憎み潰そうとしただけの燃え滓だ」
「アクセルお姉ちゃんは燃え滓なんかじゃないよ。必ず、必ずお姉ちゃんは蘇るもん」
気付くと俺はブリッジコンプを撫でていた。
140cmほどの小柄な身長、ここから成長するか、どうなのか。
「お姉ちゃん、私はシリウスに所属します。だから、だから勝たせて下さい!ブリッジラインを…超えるために」
「……良いだろう、ブリッジコンプ。お前の覚悟、信じる。行くか、併走なら可能だぞ?」
「お願いします!!」
正直、俺の圧勝なのは変わらない。
俺が転生したときからパドックに入る事も一切恐怖はない。だから、出遅れる事は無い。
ゲートが開いた、俺は前に出る。後ろにはチームメイトの、親友の、戦友の妹がいる。
だから見せる、俺の本気を。
これから入るチームメイトに
「懐かしいな、これが誰かと走る。ブリッジコンプ、見て欲しい。これが……俺の本気だ」
《アクセルマキシマムドライブ》
赤い業火が立ち昇る、俺の心に火が灯る。
「まだだ……まだ終わりじゃない!」
加速する、赤い炎がより燃える。
より熱く、より激しい蒼い炎へと。
《トライアル》
《トライアルマキシマムドライブ》
タイマーがなる、
「9.9秒それが俺の希望へのゴールだ」
その日、俺は思い出した。誰かと走る楽しさを。
――――――――――――――――――――――「……負けた……けど、激しくて、綺麗で………ラインお姉ちゃん。言う通りだよ、私も……魅せられちゃった」
私には血のつながるブリッジラインというお姉ちゃんがいる。
今はもう走れないけど、お姉ちゃんの栄光を汚す人は誰もいない。
「またあのバ鹿は……ねぇ、コンプ。私の変わりにさ、彼奴の……アクセルの目を覚まさせてほしいんだ。私は…まだ走れないから」
「お姉ちゃん」
「私は彼奴の走る姿に魅せられたんだ。だから、あの人のチームに所属した。だから、コンプ。彼奴の目を……頼んだよ」
お姉ちゃんは男勝りってよく言われるけど、アネゴハダ?って昔アクセルお姉ちゃんは言ってた。
「どう?ブリッジコンプ!私の走り!いやぁ…気持ちいいわね!誰かと走ると!」
私の前で良い汗かいたわ!と笑顔を振りまく美人がいる。これが〔俺〕とか言ってたアクセルお姉ちゃんなんだから……。正直、アクセルお姉ちゃんは二重人格だと思う。
周りで見てるウマ娘の皆も凄いってずっと言い続けてるもん。
アクセルお姉ちゃんの走りは全てを魅力する。
はっきり判るね!
「ふむ、いい走りだな」
空気が凍った、お姉ちゃんの目が濁って血が出るんじゃないかってレベルで拳を握っている。
「あん?皇帝様はこんな弱小チームに偵察か?
お暇らしいな」
「なに、蒼い死神が新入生と走っている。そんな話を聞いてな、まさか今君がそんな顔をするとは思わな」
「黙れ」
シンボリルドルフ、私でも知ってる。お姉ちゃん達のチームシリウスのライバル、チームリギルのウマ娘。アクセルお姉ちゃんが憎んでるウマ娘。
「コンプ」
「なに?」
「悪いな」
「は?」
気づくと私はお姉ちゃんに誘拐同然に連れ去られた。
――――――――――――――――――――――「ごめんね、コンプ。でも、流石に」
「うん…でも考えたらお姉ちゃん前人未到してるよね?」
コンプからの言葉、確かにだ。伊達に6年間走ってない。今の所春と秋3冠というかティアラも奪ったし、ダートは行ってないけど芝のG1は基本荒らした。走らないとチームを守れないのだから。
周りの娘からしたら悪夢だろうが関係ない、
俺に負けるのが悪い。
「コンプもやる?楽しいよ、周りがうわっ…て絶望する顔も」
「お姉ちゃん、ドS?」
「さぁね?」
「でも、本当にそうなんだよね。だって、雑魚しかいないもん。そのくせ、ボロ船にしがみつくだけの無能やら何やら……裏で怪しい事してる――トレーナーや――トレーナー。この前汚職してたし、私に勝てないからって自分の担当にドーピングよ、バカだよ。ドーピング程度の強化で私に勝てるかっての」
私の後ろあたりで倒れ込む音がする。
「それに…そういう奴等の証拠と情報は既に警察とかURAに送ってあるし?トレーナーが消えるウマ娘、何人いるかしら。まぁ、私に負けるのが悪いのだけれど」
コンプを撫でながら全方位をみる。
トレセン学園で私に話しかける奴はいない、
オグリ、タマ、シリウス、ゴルシだ。
「コンプ、そろそろお昼食べよう」
「うん、お姉ちゃんは」
「……ごめんねコンプちょっと待ってて」
たづなさん、苦しそうな笑顔を向けながら俺を呼んでいた。
「お疲れ様です、どうしました?」
「……実は、チームシリウスを解体しろとURAから最後通知が」
「なに?」
「いくら戦績が良くともメンバーがいないチームで貴方を走らせるのは」
そのときわ俺の頭は動いていた。メンバーのいないチーム、ならメンバーを増やせばよい。
「…たづなさん、チームにメンバーが居れば良いんですよね」
「え、トライアルさん?!」
私にも、2人だけ確実にチームに入ってくれるという宛がある。
「カフェ、タキオン、私のチームメンバーになって欲しい」
「ぶっ!」「ゲホ!ゲホ!」
放課後、私とコンプはタキオンの研究室に向かった。ここにはカフェのスペースもある。
「……まちたまえ、アクセル。一体何が」
「まずった、戦績だけで戦ってたんだけど上が消しに来た。私はまだ、あのホームを奪われたくない」
「理由はわかります、それに」
「私はまだ、あの事故を事故だと思っていない」
「それは…………」
「まさか、URAにいると?」
「………コンプには話してない。カフェ、タキオン。お願いします。私のチームシリウスに入って下さい!」