「アクセル君、君のチームと言えばシリウスだろ?!まさか…遂になのか」
「私一人で走ってるのはアウトだって。タキオン、カフェは覚えてるかい。ラインの妹のコンプが来たんだけど、それでも二人さ」
「待ってください……それだと」
「うん、本当に駄目。あと最低3人欲しい、オグリは休んでるけど、今呼び戻せば……いや、駄目。オグリは頑張ったし………」
「それで私とタキオンさんですか。私はトレーナーさんがいますけど、タキオンさんはトレーナー無しの無所属のはずです」
「生憎、私は脚が脆くてねぇ」
「……でも、走れるんだろ?タキオン、お前も俺と同じだろ?走る事に情熱が湧くはずだ」
「考えさせてくれ」
「…すみません、私もです」
考えてもらえるだけありがたい事だ。
私いや、俺はありがとうと一言話してその場から消えた。
「カフェ…君としてはどうだい?」
「……死者に引き摺られています。お友達もあれ程可哀想な人は見たことないと言っています」
タキオンの隣で紙とペンが動く。
YESと簡単に書かれる。
「お友達君、流石に怖いからやめてくれないか」
〘ごめんね〙
そう言いながらもタキオンも慣れてしまったと思う。今更かと感じて静かに頭を悩ませるのだ。
―――――――――――――――――――
翌日、コンプと共に人集めに疾走している中つい、ベンチで一休みしてたときだ。
「よぉ!アクセル輩先!!!どうだ、アタシと無人島まで300km走しようぜ!」
ベンチで悩んでいると悩みとは無縁そうな後輩、ゴールドシップが話しかけてくる。
「……お前は良いよな、悩みとか無縁そうでさ」
「いや、ゴルシちゃんも色々あるからな。まぁ、その顔の先輩に言われちゃぁ……な?」
「そうかい、しっかし輩先とかいつのだよ、ちゃっかり先輩に戻してるし」
「なんつうか、先輩は先輩だからな。そうだ、どうせなら走ろうぜ!」
俺は何故かゴールドシップに連れられてスピカの練習につきあわされようとしている。
「おーい!トレーナー!!!先輩連れてきたぜ!!!」
「よぉ、相変わらず曇った目してるよな?ちゃんと飯食べてるのか?」
沖野トレーナーに質問される、気が立っている訳でもないのに俺は叫んでしまう。
「俺に質問するなぁ!」
「ピッ!」
何故かスピカのメンバーが俺に怯えている。
「悪いな、嫌な事がありすぎて色々やばいんだ」
「あぁ………わかった。スペ、日本一のウマ娘って言ったな!このアクセルトライアルは皇帝と同世代で走り続け、今でもG1を総ナメしてるマジモンの日本一だ!勿論、青い死神やら不死身のウマ娘、絶望の覇者なんて異名もある」
「……そして、そこのサイレンススズカのチームを潰すと誓った女だ」
「待てよ!スズカはリギルじゃない!今はスピカだ」
移籍した事は知らなかった。俺は素直にすまないと誤りスズカに近づく。
「今まで悪かった、これからはリギルの敵同士。何かあれば呼んでくれ、私はお前よりも速い、良い並走相手となれるぞ?」
「……トレーナーさん」
あえて煽ってみたが、正解だ。サイレンススズカは良い目をしている。
「マジかよー!先輩ってどれだけ速いんだ!」
「バカね、ウォッカ。私達と先輩じゃ背負ってるもの違うもの」
「え?なんだよそれ」
ウォッカは純粋だな、後でギムレットと一緒に何処かに連れてってやるか。
「並走は良いけどよ、お前は何処まで本気出すつもりだ?」
「スズカ次第だ、もし俺に100%の本気を出させる程の実力があるなら、きっとスズカとお前だ、新人。俺の走りを見て、目を奪われるさ」
俺は靴を履き替え、ジャージに着替える。
そして、サイレンススズカの隣に立つ。
「距離は?」
「2000だ、どうする?」
「簡単だ、スピカの諸君。シリウスのエースが相手だ」
開始の合図がなり、スズカが俺の前に出る。
逃げウマ娘らしく最初から俺に勝ちに来ている。
さて…あとどれくらいかな
「うそ……スズカさんにぴっちりと付いている」
「あれが彼奴だ、アクセルトライアル。皇帝をあと一歩まで追い詰め今尚勝利を掴むために走り続ける存在」
「スズカさん!」
新入り君の声だ、しかし…良い。あの頃とは違うものの、サイレンススズカ。このウマ娘は逸材だ。だからこそ、
「さぁ…振り切るぜ!」
《アクセルマキシマムドライブ》
加速する、エンジンに火の付いたバイクの如く。
サイレンススズカを突き離し、更に。
《トライアル》
まるでレーサーが車からスタートを見るかのようにサイレンススズカは感じた。目の前の存在が本当のレーサーのように。
スタートされたと同時に突き放され、気付くとゴールにいた。
「9.7秒、それがお前の敗北までのタイムだ」
あり得ない程の加速、末脚なんて物じゃない。
まだ1000あったのにも関わらず敗北した。
あの幻覚を見た瞬間から10秒かからずアクセルトライアルはサイレンススズカに敗北を与えたのだ。
「絶望がお前のゴールだ」
「お姉ちゃん、格好つけるのは良いけど……元を知ってると似合わないよ」
「ピィ?!」
「は?」「え?」「ウソでしょ」
「あの、はじめまして!チームシリウスのブリッジコンプです!お姉ちゃんがお世話になってます!」
一番見られたくない相手に決め台詞言うシーン見られた。
じにたい
「……えっとコンプでいいか?これが……彼奴?」
「はい、元々アクセルお姉ちゃんは優しい性格ですよ?むしろ、アクセルお姉ちゃんがこうならなくちゃいけなくなったトレセン学園が気になります。沖野トレーナーですよね、聞かせてください。チームシリウスの悲劇って」
「コンプ、戻るよ。所詮雑魚は雑魚だもの。駄目だね、皇帝レベルはそういないわ」
「ちょ!待ってよ!!アクセルお姉ちゃん!!!」
きかせたくない、コンプ。貴方は誰から聞いたの。あの悪夢を。
「コンプ、一つだけ言うぞ。あの悪夢は俺だけの呪いだ。誰にも話さないでくれ」
「でも、ラインお姉ちゃんはそんな事思って」
「……コンプ、ありがとうね」
翌日、シリウスの部室を掃除していると二人のウマ娘が入ってきた。いや、正確には3人か。
「カフェ、タキオン、それに…お友達さんも」
〔相変わらず湿気た面してんなぁ……〕
「カフェ、お友達さんはなんと?」
「相変わらず湿気た面してると、それに……トライアルさんは後ろの方々は見えないのですか」
「カフェ、もし私の後に誰かいるならきっと私に泣いているさ。でも…彼女達の為にも走る。それに、皇帝も全てを倒す」
「私もお友達を把握しているがねぇ……トレーナーは居るのはわかるけど、大変だね」
「でも、ありがとう。カフェ、タキオン」
「トライアル君の足には興味があるからねえ…実験には協力してもらうよ」
「トライアルさんは見ていて危ういので。お友達も危惧しています」
これでも4人、あと一人足りない。
「アクセルお姉ちゃん!大変だよ!!!」
「どうしたんだ、コンプ。何も慌てることはないよ、人は常に平穏が」
「メジロマックイーンさんがシリウスに入りたいって」
「……ほぉ………メジロ家が。良いねぇ………」
俺は昔のように熱くなるのを感じていた。