「それで、メジロマックイーン。何故リギルでなく、シリウスにしたんだ」
「簡単です、ほぼ全てのG1を制し、3冠ではありませんが持っているトロフィーの数は学園一。そして、メジロ家の悲願をいとも容易く勝ち取ってみせた御方。アクセルトライアル先輩」
「……なら、俺の二つ名は知っているな」
「蒼い死神、赤い流星、刧炎、蒼炎」
「…つまりだ、最後のも知ってると?」
「望まれない勝者、何故ですの!先輩は」
「簡単だ、俺が仲間の命の上に立っているからな。幸いオグリは問題ない、何とかヘイトは俺が持っているからな。さてだ……チームに入るのは歓迎する。俺が教えるんだ、天皇賞、取らせてやるよ」
「…それはどういう」
「俺がお前に天皇賞の盾をやる。天皇賞で勝てる走りを教えてやる。だが、コレは契約だ。俺という存在を継ぐことになるかもしれないぞ。メジロマックイーン。皇帝の寝首を今か今かと待っている暗殺者。それが俺だ、世代すら越え未だに最前線だ。そのアクセルトライアルの最後の希望に、お前はなれるのか?」
私は…いや、俺はもう走るのにも疲れている。勝って金を貰っても使い道はない。貯金は貯まる一方、家族もとっくにいない。
親戚達とは絶縁してある、金目当てのゴミ共なんて必要ない。
「………正直に話すぞ。俺は正直走るのも飽きている。雑魚しかいない、皇帝は勝ち逃げし女帝も怪物も所詮二軍だ。一軍との試合でそのままサヨナラ打たれコールド負けしている奴等だ」
「流石にそれは言い過ぎ……というより野球好きなんですの?!」
「……33-4、嫌な記憶だった」
「そうですわね……ちなみに先輩は」
「俺は基本的に観戦派だが……楽天イーグルスが最推しだ。地元なのもあるが……2013年、あの時は嬉しかった。心が踊った……」
「いい話ですわ、あの……先輩は球団に」
「……そうだな、あの皇帝に泥つけたら勝ち逃げして楽天イーグルスのメイン」
「落ち着いてくださいまし!」
「すまない、取り乱した。本題に戻る、今シリウスにはマンハッタンカフェ、アグネスタキオン、ブリッジコンプ、俺アクセルトライアルがいる。良いんだなメジロマックイーン。逃げるのは今のうちだ。タキオンやカフェはまぁ…気が向いたら走るだろう。」
「…では、トレーナーさん。改めてメジロマックイーンですわ、宜しくお願いしますわ」
そうなこんなを続けていたのだが……
「……マックイーン!私から2バ身……流石だぞ。メジロ家!!」
私は並走していたマックイーンの頭を撫でる。
「止めてくださいまし!」
「え〜〜マックイーンちゃん、お姉ちゃんの撫で方気持ちいいんだよ!」
「コンプさんも」
私は二人の姿ニ笑う、それに丁度いい。
「メジロの最高傑作と伝説の妹、ねぇ、二人に見せて欲しい。私達を継ぐ世代の走りを」
私は心の底から微笑んだ。二人も頷いてくれた。
「お任せくださいまし」「うん、やれるよ」
私の前で並走の準備を始める2人。
メジロマックイーン、ブリッジコンプ。
ごめんね、面倒をかけて。
「おやおや……我らがアクセルくんが笑っているよ。トレーナーくん」
「うん、それは良いんだけどタキオン。俺の事治して、これから会議なの。流石に変色しながらの参加は不味いの」
「………後3時間は治らない」
「タキオンさん、何しているんです」
実はカフェとタキオンにはトレーナーがいる。
だが………専属トレーナーがいてもチームに参加してはいけないというルールは無い。
二人のトレーナーは偶に協力してくれるが、基本的にタキオンとカフェ専属だ。
何かあれば聞けるが、タキオントレーナーにコンプが話しかけているのは見たことがない。
「……アクセルさん、お友達が」
「カフェ、お友達の言葉を教えてほしい。今、俺の背中で走っていたのは誰だ?マックイーンじゃない、懐かしい気分だった」
『カフェ、コレ伝えるのか?』
「伝えます、アクセルさん。今、貴方と共に走っていたのはのはシャルロットポワールさんです」
シャルロットポワール、私の同期のウマ娘。
あの事件で亡くなってしまった筈なのに。
「………アクセルさん、ポワールさんはまだ居ますよ」
「……今更、私から何を言えば良いの?のうのうと生き延びて、私だけ………ポワール。居るなら、いつものしてよ。……私に抱き着いてよ」
カフェは悲しそうな者を見ているんだろう。
私は幽霊を信じている、カフェとお友達さんから私は皆の存在を教えてもらった。
見えないけど、近くに居るんだと。
「……ポワールさん」
カフェの悲痛な顔で判る、ポワールは泣いているんだ。あの、笑顔を曇らせたのは私なんだと。
「………見るのに耐えないね」
その時、背中に優しい衝撃が来た。カフェじゃない、私を暖かく抱擁してくる感覚。
「ポワール、ありがとう。私は、まだ……頑張れる。だから……見ていてね」
会議に参加すると光るトレーナーが増えたと苦情を言われたが、逆に
「その光るトレーナーに戦績で負けてる奴等が黙れ」
と言ってやった。
そもさん、私に並ぶ戦績自体が居ないのだから文句は言わせない。
「ふぅ〜…会議終わり、ありがとう。タキトレ」
「うん、ごめんね!うちのタキオンが」
そう七色に光りながら答える。
光量を抑えられるとか、光り方を変えられるとか、どう考えても人間じゃない彼だけれど、良き人だ。
「じゃあ、私はこれで」
私は彼と別れるとチーム部屋に向かう。
「……よし」
門限までは時間はある。
グラウンドを走る奴等は居ない。
なら、問題ない。
「………行くぞ」
《トライアルマキシマムドライブ》
身体の中でタイマーが動く。
加速する、加速し続ける肉体。
隣には誰も居ない。
居るはずがない、でも、感じる。
感じられる、
「………終わらない!私は…俺は……負けられん!!!」
(負けない)(私の方が……アクセルよりも)
居ないはずの声が聞こえる、居ないはずの影が見える。終わらせない、続けたい。行かないで
「……満足しましたか」
「…カフェ?」
「……皆さん、満足してます。負けたのに、清々しい。私も、私自身も……格好良いと思ってしまいました」
私の走りはこのときだけ、昔と同じだったのだろうか。もう一度、光が見えるのだろうか。
「ねぇ、カフェ。もうすぐ、メイクデビューだ、メジロマックイーン。そして、ブリッジコンプ」
「貴女の後継者達の……ですか?」
「……私は、長く居すぎたと思う。そろそろ、邪魔でしょ?私は」
「そんなことは」
「……決めてるんだ。天皇賞にルドルフを……皇帝を引きずり落とす。そこで、勝っても負けても、私は引退だ」
「……そうですね、でもチームは」
「残るさ、チームトレーナーだしね」
「安心しました、私もタキオンさんを止められないので」
「ストッパーか、大変だ」
「大変なのはアンタらだよ」
「ヒシアマゾン、見てたのか?」
「まぁ……そりゃあ。私が憧れたあの時が戻ってきたみたいだった」
私はそんな可愛い事をいうヒシアマゾンを抱きしめる。
「ちょっと、苦しいだろうが」
「ヒシアマゾン、私はね。終わりたいんだ、でも、負けやしない。血反吐を吐いても、皇帝を倒して、皆に報告する。そして、トレーナーとして生きるのさ」