「トレーナーか、アクセルがそんな事を」
「なぁ、会長。仲直りするのは」
「……無理だな、私が歩み寄っても彼女が拒絶する。それ程までに私が言った言葉が、彼女を傷付けたのさ」
生徒会室、普段そこにいるのは皇帝シンボリルドルフ。女帝エアグルーヴ、シャドーロールの怪物、ナリタブライアンの3人だ。
「だがなアマさん、先輩は基本的に優しいぞ」
「それはアンタが肉を強請るだけだからだよ!ブライアン!この前、ハヤヒデに怒られてたし」
「……姉貴め、だが……先輩は良い人だ。怒られても、必ず肉を分けてくれる。今度のシリウスのBBQにも誘われた。マックイーンとコンプの前祝いらしい。ふふ…」
ジュルリと大量の肉の想像をしているブライアンに呆れる3人。
「だが…私には」
「あのねぇ、エアグルーヴは会長の名前を出しすぎだよ。会長が関わらなければ優しいんだよ、先輩はさ」
「あぁ……」
「所で、会長はアクセル先輩があれ程敵視する理由は」
「判らない、というより私だけでなくリギルすら敵だと思っている節目がある。アクセルは」
ルドルフは徐ろに懐かしい写真を取り出した。
「それは……会長とアクセル先輩ですか?」
「…初等部の頃だ。私と彼女は仲がよかった。それが……今ではコレだよ」
友情は破綻し、憎悪を向けられる関係。
敗北を与えた事か、それとも別の何かか。
シンボリルドルフは判らなかった。
「兎に角だ、会長。あんまり関わらない方が良いよ?アクセル先輩はピリピリしてるから」
「あぁ……ありがとう」
――――
翌日、メイクデビュー前の最後の無礼講という事でチームシリウスのメンバーはBBQを開催していた。無論、これはアクセルの自腹である。
「こらブライアン、野菜も食べろ!」
「むっ…姉貴、だが……主催者は」
「ハヤヒデ、今日は無礼講だ。でも、最低限の野菜は食べろよ?ほら、あ~ん」
「子供じゃない!」
「ふふっ……私以外の姉か、良かったなブライアン」
「くっ……」
「悪い悪い、虐めたくなっちまってな!ほら、」
「姉御!焼きそば焼けたぜ!」
「おっし!ゴルシ流石だな!こっからが戦いだぞ!ほら、栗毛の怪物のお出ましだ!」
「アクセル、良い匂いがするから来てみたのだが」
「オグリ!アンタはもう……アクセルやないか!」
「タマもいらっしゃい!!今日は無礼講だ!」
「あのアクセル先輩、よろしくお願いいたします!!」
「スカーレット、硬いだろ」
「バカねウオッカ!先輩の好意で」
「スピカとは良く並走する仲だし、沖野トレーナーには借りがある。楽しめよ、二人共」
「「はい!」」
シリウスだけでなく、スピカや友人達が仲良く集う。ここのメンバーもライバル足り得る。
そう、マックイーンとコンプは私を継ぐ者になってもらわければならない。
けど、私のように誰かを憎む必要はない。
「………へぇ?」
「やぁ……アクセル」
「………今だけは無礼講だ。だからアクセルトライアルとしてじゃない。ただのウマ娘として話をしようか、ルナ」
怯えているシンボリルドルフ、この姿を見たのは久し振りだ。だが、私が求めているのは弱者じゃない。『皇帝シンボリルドルフ』だ。
「…アクセル、何が」
「知っているか、言った本人は気持ちがわからないらしい。とある生徒会長がその典型的な例だよな?」
場の雰囲気が凍った、あのオグリですら私を辛そうな目で見ている。
「……リギルに来いだったな。有馬記念、あの日俺はお前に無様に負けた、その時に言った言葉だ。理解できるかな?皆だ!
……ブリッジライン、ネモ、トドロキライデン、アスカヒビキ、シャルロットポワール。判るよな?生徒会長様なら」
「違うだろ、アレは事故の」
「あの地獄の中で、俺は生き続けている!あの日から何も終わっちゃいない!ラインは走れず、他の皆は墓の下だ!俺は…皆の魂を背負って走っている」
「アクセル、止めるんだ。ルドルフは」
「オグリ、駄目なんだよ。あの時の皆の悲鳴がこびりついてる。俺は……あぁ……そうだな。だって、ルドルフの家のせいだもんな。隠したくなるよな。オグリも怖いよね」
「待ってくれアクセル…落ち着いて話を」
「だって……シンボリの名前、無敗の7冠?そうだよねー…だって、居なかったから。ライバルが皆死んだりしたもんね、ねぇ……ル・ド・ル・フ」
「知らない……私はそんな事は」
「家に縋ったの?私は見ていたぞ、誰かが私達の言葉を見捨てるのを!あの日!バスが事故を起こした日!黒服が歩いているのを!私達の悲鳴を!叫びを!全てを無視し、歩き去る者達を……ルドルフ?シンボリ家何だろ?なぁ………だろ?」
「会長はそんな事は」
どす黒い言葉が口から出てくる。そうだ、俺は皆の魂を背負っている。
「トウカイテイオーだったか、知らないだろうがな。レースは闇が深いんだよ、勝ちたいという欲、勝たせたいという欲が塗れてる。一部のトレーナーはウマ娘にドーピングさえする、裏ではライバルを蹴落とす為に闇に染まる屑もいる。お前のトレーナーも、そうだったんじゃないのか?」
「東条トレーナーを侮辱するのか!」
「俺達のトレーナーを侮辱したのは貴様らだ、今更、何を」
「アクセル!」
「来いよ、ウマ娘全員の幸せなんて幻想持ってるゴミに俺が」
「止めて!」
「オグリ、抑えるで!」
「あぁ!」
俺の身体はオグリとタマ、コンプに抑えられ、ルドルフはブライアンとエアグルーヴが寄り添っている。
「お前の言う幸せってのはな!ただの幻想だ!
所詮、まやかしなんだよ!」
「………違う、君もかつて」
「エアグルーヴ、会長を頼むぞ」
「……あぁ」
ルドルフはエアグルーヴに連れて行かれた。
そして、俺はと言うと近くにあった氷水を頭から被る。
「……アクセル」
「オグリ、ごめん。パーティを楽しんでね、まだ食材はたくさんあるから」
お通夜になってしまった原因である俺は三女神の像の下にいる。
「なんで………皆を殺したの」
「神様なら、救って見せてよ」
「神様なら、ラインを……走れるように」
俺の賞金の大半はブリッジラインの治療費に当てている。
家族が死にたった一人になった俺にとって、チームメンバーは親友以上の存在だったからだ。
「やってやる。次のレースもだ!俺は負けん。そして、潰してやる。ここに誓う、名家など知らん、屈辱的に、全てを、廃し、俺の、俺達の為の勝利を捧げる」
「……アクセル先輩」
「エアグルーヴ、私は皇帝を引き摺り下ろす。次のレース、二人のメイクデビューで俺は宣言しよう。俺の余った資産で個人のレースの開催をだ。俺の、俺の不死身を終わらせてみろ」
「……そんな事は絶対に」
「お前達にやられるものかよ、俺を倒せるのは……もう、居ないな」
三女神の像に祈りを捧げ、エアグルーヴの隣を歩く。弱者に意味はない。それを知らない者は居ない。
「………敗北はゴミ」
「違います!挫折を味わいつつも、それを」
「それすら許されなかった…オレたちには!
あの人の作ったチームだ!燃え上る炎、それが……それが……闘志であれ!俺達はその言葉を…その言葉が正しいと思っていた!だが……違ったな、俺にとってシリウスとは『灼熱』燃え焦がす、それが……シリウス!今いる者達は違うだがな!俺には俺以外を燃やす灼熱であるしかなかった!お前に……お前如きに理解できるはずがあるものか!」
頭に血がのぼる、それを抑えるため一度水に頭を突っ込む。
狂っているだろう、だが……絶対零度すら燃やし尽くしてやるという、俺の憎しみは止まらない。
「エアグルーヴ、付き纏うな。貴様の生徒会長の様に私は優しくないぞ」
生徒会のメンバーは怪物らしい、だが俺はそれすら殺してきた俺には……