「タキオン、本気でやるぞ」
「構わない、現役最強の実力を見せて欲しい、君が引退したらもう見れないかもしれないんだろ?」
「今年の有馬に皇帝を連れて来る!そして……勝つ」
「左回り、距離は2000ですか。ゲートも使えるなら私も参加します」
「私もお願いしますわ」
「う~んと……2000はパス!私、適正なの短距離とマイルだから!」
4人がゲートに入る、だが……ソレを見ている者がいた。
「トレーナーさん、走りたいです!」
「いや、お前オーバー」
「走りたいです」
チームスピカ所属のサイレンススズカだ。
俺とタキオンにバーサーカーの様な瞳をぶつけ、私が最強だとでも言うつもりだろうか。
……面白い、終わる時代に取り残された俺の後継者は二人。
その二人と争うのなら、喜ぶべき事だ。サイレンススズカは強者、経験は力となり、敗北は常に勝利への渇望感へと変わる。
「サイレンススズカ、今回は駄目だ。と言いたいが、お前次第だぞ、沖野トレーナー。自身のチームのウマ娘が惨敗、大敗そうなる未来が見えるなら、止めるべきだ」
「…お前……ったく、スズカ。行けるな?」
「はい、トレーナーさん!」
こうして、1俺、5タキオン、3 カフェ、4マックイーン、2スズカがゲートに入った。
「…悪いが、皇帝を引き摺り出す為だ。蹂躙させてもらうぞ」
ゲートが開いた、それと同時に世界が変わる。
『アクセル』
「変……身!」
アクセルドライバーが存在するかのように、身体に炎が巻き怒る。そして、俺は瞬時に加速した。
「ありえねぇ…ゲート出た直後からあんなに」
「くっ…」
「させない……お友達さん!」
「これは………想定外すぎるねぇ」
全力を持って走っている、しかしタキオンは理解できた。
アクセルの走り方は自分の身体の総てを利用し加速している。
だが、その走り方は歪だった。勝つためなら自分の身体の事など無視している。ウマ娘ではあり得ない走り方、選手生命を捨てに行っているのだ。
(アクセル君は自分の選手生命すらベットしているのか!)
タキオン自身それを想定はしていた。だが想定で最も最悪なものだ。張り詰めた一本の糸は簡単に切れる。今のアクセルは張り詰めた一本の糸がより朽ち、千切れるかの瀬戸際に居るのだ。
「お前等みたいな…走るのが楽しい………そんなの……嗤わせるな!勝利とは蹂躙すること!手加減などせず、勝てないと相手に知らしめる事!俺は……それを皇帝に行うまでは折れもしない!」
『トライアル』
「さぁ…振り切るぜ!」
赤い炎は蒼炎となり、アクセルトライアルは更に加速する。
トレーナー目線でも判る、その走りは選手生命が絶たれる物だ。
だが、アクセルトライアルは止まらない。
「…負けませんわ!私は……私はメジロマックイーン!そして!アクセルトライアルの……チームシリウスの後継者です!」
「私が……私が一番速い!」
「お友達さん……お願いします」
「…もってくれよ、この体!」
それぞれがより加速する。アクセルトライアルとの距離が段々と近付いていく。
『アクセル アップグレード』
『ブースター』
「やめたまえ!トライアル君!」
タキオンの薬のせいだろうか、アクセルトライアルの肉体が金色の輝きを生み出す。
しかし、それに追従いや追い越さんとサイレンススズカが迫る。
「あはは!マックちゃんも走ってるじゃねえか!おいババア!!俺の邪魔だァァァ!!!」
「カフ?!」
走りながらタキオンは驚いてしまう。隣りにいたはずのマンハッタンカフェがの雰囲気が急に変化したのだから。
「誰がババアだ!!!お前...世界の壁を乗り越えて取り憑いたか!サンデーサイレンス!!」
「どうでもいい!私が一番早い」
「良いねえ、ババアに、マックちゃんに元息子が」
「黙れサンデー!」
「静かになさいサンデー!」
「へっ、喋ってても俺様の勝ちなんだよ!」
サンデーサイレンス、その実力は一級品だ。
しかし、それでもアクセルトライアルの走りには追いつけない。
「おい、ババア!死ぬ気か!!」
「俺に……質問するなぁ!」
「そんな……私が……私が追いつけない?!」
「いい加減になさいサンデー!アクセル先輩への暴言は許しませんわよ!」
先頭はアクセルトライアル、2番手争いがメジロマックイーンとマンハッタンカフェ=サンデーサイレンス。4番手にサイレンススズカ。だが、サイレンススズカの前でアクセルトライアルに追いつくように、話し声を上げながら二人がより加速する。
そして、アクセルトライアルは勝利した。
「……コレがガチのレースならレコードじゃないかな?」
「はぁ…はぁ…はぁ…トレーナーくん。彼等は狂ってるよ」
「カフェーーー!大丈夫か?!やべぇ、おい、カフェのトレーナー!カフェが?!カフェが?!」
「貴公の仕業だ亡霊。カフェの体を限界以上に酷使するなど……なんという」
「しゃあなしだ!マックちゃんもいたし!それに、ババアは」
「おい、サンデー。ババアと呼ぶな、俺はアクセルトライアルだ」
「けっ、年増のくせに」
「わかった、わかった。私は年増だ、後でキャンディやるからカフェに体返せ」
「ちっ……約束な」
サンデーサイレンスが消えるとカフェはターフに横になる。
ソレにアイスパックとスポーツドリンクをアクセルは手渡した。
「……惨敗はさせれなかったな。サイレンススズカ」
「いえ、マックイーンさんにも……カフェさんにも勝てませんでした」
「私は負けたねぇ!」
「タキオンはその脚をどうにかしないとな。俺をモルモットにしているんだ。研究成果は上がってるだろ」
「上がってるねぇ!でもそのモルモットが選手生命を総てBETする走りなんて想定外さ!」
その言葉にトレーナー達の視線が迫る。
幾ら専属トレーナーでないと言えど、彼等も指導者。
言いたいこともあるだろうと、アクセルは笑う。
「俺の限界は俺が知っている。俺は限界を迎えて居ない」
「俺はまだ戦える?……ねぇ、アクセルお姉ちゃん。それ」
「知らないのか?俺は不死身だ」
アクセルは地獄から舞い戻ったウマ娘。
ブリッジコンプは知らないが、他のトレーナーなら聞いたことがある一つの物語。
燃え盛るバスの中から血だらけになりながら這い出て、仲間の遺体を一つ残らず回収した英雄。
大火傷をおいながら、最低限の手術だけで戦線に復帰した英雄。
ソレがアクセルトライアル。不死身のウマ娘だ。
「カフェが……まったく。サンデー、後でお前しばくぞ」
「けっ…悪かったよ」
サンデーサイレンスの声が聞こえる。幻聴かとも感じたが、未だに会話を続けている。
「おい、サンデー。お前、今カフェの中にいないよな?」
「……?なぁ、ババア。なんで話せる?」
「俺に質問するな」
周りからすれば独り言に見えるだろうが、仕方ない。
アクセルはペットボトルの水を半分程飲み込み、後は頭からかける。
「さて、みんな疲れたろ。休憩だ、俺の客もいる」
「よぉ、アクセル」
そう言いながら現れたのはルドルフと同じシンボリの名を冠するウマ娘。シリウスシンボリだ。
「シリウスか、なんだ。内のチームに入る気になったか?お前にならエースの座を渡しても良いぞ」
「なんでルドルフにはアレで、俺にはそうなのかね?」
「ルドルフは俺を、このチームをおちょくった。お前は違う。
それにお前と俺のレースは被ってない。お前が俺を殺す理由がない。ルドルフとは何個か被ってた。その時に仲間共々殺されかけた。状況証拠だが、知ったことか」
「幼馴染なのにな」
「幼馴染でも敵は敵だ。容赦なんてするものか」
アクセルはシリウスの肩に手を当て問う。
「なぁ、非公式レースをやるって言ってら参加するか?」
「どういう」
「有馬に引き擦りだすのは難しそうでな。俺の幕引きにちょうど良いセレモニーを開きたい。俺の選手生命全てをBETする大博打。俺の競技人生最後のエンターテイメントさ」