シリウス所属最凶ウマ娘   作:影後

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焼き焦がす者達

「非公式レースだと?」

 

生徒会室にてナリタブライアン、エアグルーヴも

いる中でシリウスシンボリはシンボリルドルフに

話し始めた。

 

「そうだ、アンタを有馬に引きずり降ろすとか言ってたが、

アクセルは仲間思いだ。

後輩達の戦場を破壊するつもりはねえんだろうさ」

 

「…私と彼女だけのか?」

 

「んな訳ねぇだろ、1on1したいならしたら良い。でもな、

アクセルはお前に勝ちを譲られたとか思うぞ?

それ相応の相手が居ないと駄目なんだよ。

ソレこそ、俺等レベルのな」

 

「それは……」

 

そうだろう、ルドルフは知っている。

アクセルは決着をつける時は常に本気での戦いを望む。

どんな状態でも、本気で走れば受け入れてくれた。

だが、いつの間にかこうなってしまった。

目の前のシリウスとアクセルは変わらず友人である。

何故、同じシンボリに連なる者であるにも関わらず、

自分はあのように目の敵にされシリウスは変わらず

友情が続けられるのか。

 

「…ルドルフ、何考えてるか知らないけど

アクセルに変な事を言うなよ。今度こそ、彼奴は

アタシらの前から消える。

幼馴染のアクセルトライアルは消える」

 

「……なら、シリウス。お前には判るのか!

私は…私はすべてのウマ娘の幸福を望んでる!

なのに……なのに幼馴染1人救えない」

 

シリウスは肩を竦め、静かに言葉を続ける。

 

「救いなんて、アクセルは求めてないんだよ。

皇帝様との決着、彼奴の中にあるのはそれだけだ」

 

「だがッ!…だが……それはあまりにも」

 

「あまりにもじゃない。ルドルフ、教えてやる。

シンボリ家がお前と彼奴のレースに嫌がらせ……

違うな、妨害してたのはマジだ」

 

「なっ……それでは」

 

「……お前の意思なんて関係ないんだよ。

当時、あそこまで酷くは無かった。

私も彼奴が入院した時に話したさ。今も定期的に見舞いに」

 

彼奴、ルドルフにはその相手が理解できなかった。

見舞いと言われても誰のことかわからない。

おそらくは、共通の知人であると…

 

「忘れたか……なら名前でわかるか?ブリッジラインだ」

 

「!」

 

「そうだ、あの事故の被害者にしてアクセル以外の唯一の

生存者。身体中に重い火傷と両足は複雑骨折。

夢も何もかも絶たれたウマ娘さ」

 

「……何故……彼女は」

 

「私はアクセルに頼まれた。

ルドルフには知らせるなってな。知ったら、

きっと手加減する。お前は家の罪を自分の罪だと思うと」

 

「……まて、なら」

 

「対外的に、彼奴はお前と距離を置く為に芝居を打った。

んで、自らが囮になって私のシンパとシンボリの過激派

を潰した。今頃、奴等は獄中さ」

 

「なっ……」

 

ルドルフは知らなかった。

自分の知らない所でそんな闇が繰り広げられていたこと、

そして、次期当主たる自分に何も知らされていないこと。

それがありえない。

 

「次期当主様に話せる訳無いだろ?こんな不祥事。

シンボリはチームシリウスに補償をした。

まぁ、命の補償なんて出来やしないがな」

 

「……でも、あの目は……あの言葉は…

アクセルの言葉は本気」

 

「……アクセルがアンタと本気で決別したのは

『リギルに来い』あの台詞だ」

 

「違う!私は」

 

「アンタは彼奴の居場所を、

守ると誓った全てを価値のないものとした。

少なくとも、アクセルはそう感じたんだよ。

アクセルはそうして爆発した、抑え込んでいた憎しみ。

怒り。憎悪。その総ての捌け口がアンタだ。

何故、自分は抑え込んでいるのにお前はのうのうとしている。

何故、自分は苦しんでいるのにお前はチームメンバーと

笑っていられている。

何故、総てを失う事になった元凶が笑い、自分は惨めなのか。

彼奴は耐えてたんだ。耐えて、耐えて、耐え続けた。

私達、シンボリを憎まないよう心に、自分に言い聞かせた。

なのに、アンタは」

 

「知らなかったんだ!私は……そんな事を誰も」

 

「……そうだ、誰も話さない。誰も教えない。

だから今、私が教えてるんだ。

私はな、幼馴染が……親友が苦しむのは見たくない。

だからこそ話す。お前はあの時、有馬に出ていれば良かった。

アクセルを終わらせてやれば良かったんだ」

 

「………できない……そんな事を聞いて私は」

 

「なら惨めに泣いてろ。非公式レースだが、フルゲートだ。

彼奴は、お前に負けるだけじゃない。

他の誰にも負けられない。なら私が終わらせる」 

 

「そんな事は」

 

「………やるしか無いんだ。

アンタが『〘皇帝〙シンボリルドルフ』ができないなら、

親友の私が終わらせるんだ。3人ほどメンバーも決めてある。

シービー、マルゼン、そこにいるブライアン、

この3人は喜んで参加してくれた。

彼奴相手にするならこれぐらいは必要だ。

オグリキャップとタマモクロスは……判らんが、

そこにオペラオーレベルは必要だ。

お前は絶対に判るなよ、判る必要ないんだ。

奴は燃えかすが無理矢理燃焼してるに過ぎない。

そろそろ、鎮火してやらないと何もかも終わりだ」

 

エアグルーヴは既に泣きそうなルドルフを見つめる。

知るべきじゃなかったと後悔しても遅いのだ。

シリウスは敢えて、二人もいる中で話したのだ。

ブライアンもレースの事は知っていたが、

その原因は知らなかったのか驚愕顔だ。

 

「ブライアン、日程は追って伝える。

じゃあな皇帝様、俺は彼奴の所に行くさ」

 

シリウスが生徒会室に数時間後、

当の本人はチームメンバーのトレーニングを行なっていた。

 

「休憩するぞー!

飲み物はタキオン印のスポーツドリンクに、

トレセン学園購買部推奨のやつ、あと煮干とかのつまみ。

塩分タブもあるからな」

 

「タキオンさんのは飲みたくないです」

 

「えー!別にドーピングにも引っ掛からない、

最高のサポート飲料なのに」

 

「……私としては飲み続けてくれるのはうれしい

不思議だねぇ……なんで、そこまで実験に…あ」

 

「タキオンさん」

 

タキオンがハッとした顔をすると、

アクセルトライアルはつぶやく。

そこには確かな怒気と憎悪、哀しみが感じられる。

 

「俺に質問するなッ!」

 

「ご…ごめんよ、アクセル君」

 

持っていた耐ウマ娘用ボトルが弾け飛び、

その破片で切れたのだろうかアクセルトライアルの頬に

すっと赤い線がにじむ。

 

「タキオン、お前は何一つ悪くない。

……ごめんな、ちょっと全力で走ってくる」

 

そう言うと、アクセルはジャージでターフに入る。

カフェはその姿を今にも泣きそうな顔で見る。

 

「……止められないなんて、悲しすぎます」

 

アクセルトライアルは一瞬にしてトップスピードまで

加速する。そこから減速することなく、

只管にターフを駆け抜ける。

その走りを受けたウマ娘は皆、絶望する。

勝てない、超えられない、ただその絶望に呑まれてしまう。

 

「……」

 

「…おや?アレは」

 

そんなアクセルトライアルを観ていたタキオンは木陰から

彼女を覗き込む人影を目にする。

 

「話し掛けるなんて無理だろう。

皇帝はアクセルトライアルにとって、敵以上だ」

 

「カフェのトレーナー君じゃないか」

 

「先程戻って来られて。タキトレさんも」

 

「タキオン、なんかアクセル凄く速くね?」

 

「……こうもウマ娘の限界超えられると嬉しいのやら、

止めたほうが良いのから」

 

タキオンからすれば素晴らしいレベルでデータが手には入って

行くのだが、相手が相手でありそれを自身のデータに

組み込むというのは些か疑問が残る。

 

「妄執ですわね。私がメジロ家の悲願に準ずる様に、

アクセル先輩は妥当皇帝という物に妄執していますわ。

それこそ、選手生命も、全てを、とてもじゃありませんが、

真似できる走り方ではありません」

 

「マ、マックイーン君」

 

「うん、アクセルお姉ちゃんのは真似しちゃいけない。

それに、真似できる筈がない」

 

―トライアル

 

アクセルトライアルの光が青く変わり、

光自体がまるで意志を持つかのように軌跡を残す。

 

―トライアル マキシマムドライブ

 

「絶望がお前のゴールだ」

 

ゴールし、そこに立つのは一人の復讐者。

女神よりその名を受けたウマ娘は、

まるで始まりの彼のように憎しみの炎を燃え上がらせるのだ。

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